人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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チルノ「どうして皆いないんだ?おーい!みんなー!リグル、ルーミア!大ちゃーん!」

(どうしたんだ?いつもならみんな一緒にいてくれるのに、どこにいったんだ?)

「おーい!凄いぞ~!皆、どこにいったんだ~?」

「お・・・」

『聖杯の欠片』

(もっと・・・もっとだな!そうだ!もっと強く、強くなれば必ず帰ってくる!)

「よーし!やるぞー!あたいはさいきょーだ!嫌われものじゃない!さいきょーなんだー!」

氷柱

大妖精『チルノちゃん・・・』
ルーミア『かちんこちんだ~・・・』
リグル『寒さを感じる暇もなかった・・・』

大妖精『それから、離れて!そんなものに頼っちゃだめ・・・!』



言葉の刃は吹雪より冷たく、氷柱より鋭い

「よぅし!戦力は揃ったな!じゃあ、調子こいた妖精一匹始末しに行くとしようぜ!」

 

魔理沙が言うように、戦うための戦力は十分以上に整った。竜殺しの大英雄、インドの憤怒の戦士、苦悩の画家。不足と言ったらバチが当たるレベルの戦力を確保し、更に強力なマスター達も付いている。聖杯の欠片を利用している存在であろうとも、手も足も出ないというレベルはとうに脱したであろう。決心する一行だが、其処に待ったをかける者がある。

 

「待たれよ。今回の件、そのチルノなる妖精を必ずや排除しなくてはならないという結論は早急に過ぎると進言する」

 

「シグルド?」

 

オフェリアのサーヴァント、シグルド。竜の心臓を喰らって得た叡智の結晶を輝かせ、状況と本質を整理する。

 

「話を聞く限りでは、そのチルノなる妖精は邪悪ではなく、また聖杯に固持しているという訳でも無い。まして以前からいる幻想郷の住人・・・ならば聖杯の欠片を破壊、ないし没収すれば暴走は収まるのではないかと思案する。相互不理解と断じるにはやや、無邪気に過ぎると所感を伝える。まだこの目で把握したわけではない故、確証は持てないのだが」

 

平和的、穏和的に事を運べるならそうすべき。その理性的な判断に同意を示したのは、意外な人物でもあった。

 

「あぁ、俺も賛成だ。拳骨かますのは悪ガキだって解ってからでも遅くはねぇだろ。実際問題、サーヴァントの俺らを抱き込む以上加減はねぇ。死ぬか殺すかになっちまって後から悔やまれてもどうしてもやれねぇからな」

 

「あら、流石は僧侶職!プンプンしてなかったなら極めて理性的なのね!デキるサーヴァントで頼もしい限りだわ!」

 

「フン、どこの世界に徒党を組んでガキを叩く戦士がいやがるってんだ。道理の通らねぇ戦いはゴメンってだけだ。俺の矜持、戦士の誓いってヤツだ」

 

「ウフ、エヘヘ・・・ゴッホとしてはいっぱいいっぱい遊んでもらって、素敵な絵のチャンスを見出だせたならゴッホ嬉しいです・・・離別はゴッホ悲しいので・・・皆様には、その力があるかと・・・」

 

三騎の進言に一行は方針を練り始める。そもそも、そこまで冬の在り方に拘る理由・・・その根源とは一体なんであるのか?

 

「どうだろう、幻想郷の住人からしてチルノの今の様子はどんな感じだ?おかしいか、いつも通りか?」

 

「力の規模はまぁ、聖杯のせいだと確定しているからいいとして・・・言われてみればそんな事気にするヤツだったかしら、アイツ。食べて遊んで寝て、な典型的なお子様だった筈だけど。私が知る限りでは」

 

「妖精としては有り得ないほど力を持っているのは事実だったけれど、だからといって幻想郷のすべてを塗り替えるだなんて大それた事を考えつくような邪悪な輩では無かった筈よ。そもそも聖杯を聖杯と理解して使っているのかも怪しいわね。それくらい、残念なの。頭が」

 

チルノはよくも悪くも気ままであり、それでいて単純な存在であり、知能犯も愉快犯の線も薄いという。しかし実際の現実は異なり、冬を好きになってもらうためと題目を掲げて力を行使している。どこかにあった筈なのだ。精神の改革に至る何かが、どこかで。聖杯を手にする、もっと以前で。

 

「そうだね・・・というと、誰かに何かを言われ、疑問を持ったという線が濃厚だろうか。他者と触れ合えば、それだけ新しい考え方が生まれるというものだからね。私達がそうだったように、だ。魔理沙君、何か君も思い当たる節は無いかな?何でも構わない、情報は大切だ。私も父を退陣させるために根掘り葉掘り弱味やスキャンダルを探し回ったからね」

 

「・・・まぁ、人間よりは妖精、精霊に近い私からも口を挟むなら、よっぽどショックな一言でも言われたんじゃない?それはもうホントショックな一言。私も項羽様から愛の囁きを受けた時は破裂したわ。もう心身ともに破裂したもの。実体験よこれ」

 

「項羽様にふりかかる突然のスプラッタ」

 

「心臓が飛び出そう、なんて冗談を本気で出来るものね・・・じゃあ、鋳造年数浅めのホムンクルスからも一言。子供って言うのはどんな些細な事も深く考え、追及したくなるものなの。それが気になる事なら尚更ね。私達にとっては気軽な一言が、ずっと引っ掛かっているのかも知れないわ」

 

「何かありませんか?例えば、そうですね・・・弾幕ごっこ遊び中に何か言った事とかに心当たりは?」

 

はくのん以外は有益なアドバイスに、魔理沙はうむむと頭を抱える。彼女もわりと明け透けかつ直感タイプなので、誰かに気を遣って接すると言うことはしないためだ。いちいち発言に気を配っている訳ではないというのは、良くも悪くも裏表がないという事なのだが・・・

 

「なんでもいいから思い出しなさい魔理沙!なんか言ったんでしょ!あんたは人を怒らせる天才なんだから絶対なんか言ったでしょ!心当たりが無いなら一字一句よ!頭ひっぱたいてでも思い出させるわよこらぁ!」

 

「振るな振るな気持ち悪くなる!んー、そうだなぁ・・・ピンと来るものは無いけど、何気無く言った一言なら思い出したぞ。あれは確か、いつだったかの弾幕ごっこの時だなぁ。私が勝った時に言った訳だ。確か──」

 

 

冷気や寒さが好きなヤツなんていないだろ?お前はどこに行っても、嫌われものなのさ。

 

 

「くらいだな。なんか決め台詞っぽい事言ってやりたくって──」

 

「この馬鹿ァ!!」

 

霊夢、渾身のビンタを炸裂させる。ぶっとぶ魔理沙。一同、騒動の根幹の元凶を無事特定するのであった。

 

「・・・幻想郷が性悪ばかりと言う私の持論を理解していただけた?俗に言う、ナチュラル畜生ばかりなのよ。この楽園」

 

「ハウッ・・・!人格形成に亀裂が入るレベルの暴言いただきま、ハウッ・・・!」

 

「嫌われもの、なら気にしなかったろう。どこに行っても、と冷気や寒さを枕詞に添える事で更に破壊力を増している。大した弁舌だ」

 

「リッカ君は口喧嘩をしたことが無いと聞くが、それに通じる火の玉ストレートな一撃だ・・・!精神年齢低めのチルノちゃんには大いに効いたのだろう・・・!」

 

魔理沙の言葉に精神のバランスを崩したとなれば説明はつく。やはり、チルノは気にしていたのだろう。存在と人格、在り方を全否定するどんな銃弾よりも凄まじい威力の一撃なのだから。

 

「そ、そうか・・・私のいらんこといいがそんなに気に障ったのか。だったら私が謝ったら丸く収まるかな・・・」

 

「すぐに謝りにうつる辺り決して悪人ではないマリッサ。・・・でもどうだろ。子供って根に持つから」

 

チルノの歪みの根源を把握した一行。チルノもまた、助けるべき者と把握し一行は再び決意を新たにする。

 

「準備が整ったら、私が現地に送って差し上げますわ。覚悟を決めたなら、全員で妖精をなだめると致しましょう?」

 

紫の言葉に頷き合う一行。誰もが異変の元凶になりうるが、本当の意味での悪人は存在しない。それが幻想郷の特色であることを把握、理解しながら一行は思案する・・・──




シグルド「成る程──完全に把握した。しかし皆、当方に必殺の秘策あり。皆の力を借りたい。きっと、行けるはずだ」

オフェリア「シグルド!本当・・・!?」

「然り。我が秘策には──カドック殿。特に貴殿の力も借りたい」

カドック「僕か?わ、解った。やれる事があるなら任せてくれ」

キリシュタリア「彼女はそういえば・・・一人なのか?友達付き合いは?」

霊夢「連れが三人いたけど・・・そういえば、見ないわね。どこにいったのかしら・・・」

キリシュタリア「・・・そうか。うん、解ったよ。私達が・・・遊び相手になれたらいいね──」

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