人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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霊夢「じゃあまずは私が、調査をしてみるわ。皆はゆっくり待っていて」

魔理沙「おう、土地勘ある組に任せとけ!のんびりしといてくれよなー!」



霊夢「といったものの、割と探し物するには広いのよね・・・」

魔理沙「ホント、能動的に動くのって珍しいよな・・・霊夢がなぁ」

霊夢「そりゃそうよ!幻想郷と、私の面子がかかってるんだから!さぁ気合い入れて、出来れば皆に苦労はかけずに──ん!?」

魔理沙「・・・おいおい・・・なんだありゃ・・・!?」

瞬間、二人が目にしたもの。それは──天高くそびえる・・・

「「・・・氷・・・!?」」


恐ろしき氷娘

霧の湖──そこは紅魔館の近くにある、絶えず霧のかかった閑散とした湖。物好きな人間以外はほとんどのものが近付く事の無い、寂れた場所である。そこは本来静寂を良しとし、滅多な事では用向きで訪れる事など無いのだが・・・

 

「おいおい、ちょっとこいつは普通じゃあ無いな・・・まさか超局地的寒波襲来って訳でも無いだろ、これは」

 

上空で目の当たりにしていた霊夢、魔理沙はその異常事態を実感せざるを得なかった。そこは本来霧ぐらいしか無い場所であり、故に誰も見向きもしない場所である。だが、今はその光景に、目が離せない事となっているのだ。

 

「見ろよ、湖の真ん中から偉いデカイ氷柱だ。上から見てる私達くらいの高さまであるとかどんな芸術作品だ?おまけに湖一帯、全部氷漬けと来た。遊びにしちゃ加減なしだぜこりゃ」

 

湖とは水が張ってあるもの。だが此度の光景は全く異なっている。湖の真ん中を貫くように氷柱が天空向けて屹立し、その圧倒的な冷気により周囲あらゆる一帯が氷漬けにされていて、生命の気配すら感じられない。上空を飛んでいる霊夢、魔理沙の目の前に氷柱があるという事実から、恐ろしい程の高さと厚さ・・・力により引き起こされたものと理解せざるを得なかった。無論、人間ができる所業ではない。

 

「・・・こんなに犯人に心当たりのある異変も無いわね、ホント。候補、二人くらいしかいないじゃない」

 

霊夢が近より、氷結の柱を覗いてみれば、其処には湖の中にいるもの、そして辺りに住んでいる動物、果てには妖精すらも中に閉じ込められている有り様だ。誰か一人が、力付くで閉じ込めたといっていい惨状である。知らない現象ではない。この強すぎる冷気には、二人には心当たりがあった。ありすぎた。

 

「まー、まずアイツだよな。こんなバカみたいな凍らせやら氷漬けやら、間違いない。ミステリーにもならんあっさりぶりで残念と言ったら残念かな?」

 

「そうね・・・出来れば王様達の手を煩わせたくないから特定、かつさっさと退治してみようかしら。おーい!いるんでしょバカー!」

 

「出てこいよバカ!お前さんだろこの頭の悪いイタズラはさー!今なら弾幕ごっこで済む話になるぞー!」

 

「誰がバカだ!!あたいはてんさいだー!!」

 

「「!?」」

 

瞬間、二つの意味で霊夢と魔理沙の背筋が凍る。四方八方、それこそ周囲一帯の空間が一瞬で凍りつき始め、襲いかかって来たのだ。その規模もさることながら、『逃げ場の無い』無遠慮ぶりは尋常ではなかった。咄嗟に急上昇した後、それより逃れた二人は元凶を目の当たりとする。

 

「今のを避けるか!ふっ、やっぱり雑魚妖怪や妖精とは一味違うな!だが、次はどうかな!」

 

朗らかに告げる、ウェーブのかかったショートヘアー、六枚の氷の羽根、青い瞳。それは、冷気を操る氷の妖精。

 

「チルノ、やっぱりあんたね!この人騒がせな湖アートは!」

 

「そうだ!あたいがやった、これこそがぱわふるでアートな、氷の世界!すなわち、絶対チルノだ!」

 

チルノ。強すぎる氷の妖精。本来妖精は力が弱く大したことの無い悪戯しかしない種族だが、彼女は例外的に強力な能力と力を持っている特異な妖精とされる幻想郷の住人である。自信と覇気に満ちた振る舞いに見合わぬ、絶対零度もかくやの恐ろしい力を感じさせる愛らしき妖精。その関与を、彼女は即座に認めたのだった。

 

「パワフルなのは認めるが、外の世界の人間の冷蔵庫の真似をアートと言い張るとはな。面の皮は厚いんだな、お前さんは」

 

「あつい!?バカをいうな!凍えるほどに冷たいぞ!バカって言う方がバカなんだ!さてはお前たち、バカだな!」

 

「バカバカうっさいわね、バカ!いいチルノ、質問に答えなさい!素直にしたなら半殺しで許してあげるから!あんた最近、妙なものを拾ったりしたでしょ!出しなさい!」

 

「?変なもの?変なもの・・・あ、わかった!これの事だな!」

 

霊夢の問いに、ごそごそとチルノが取り出したのは金色に輝く、何かの破片。それを自慢げに掲げチルノは胸を張る。

 

「これはあたいが拾ったきゅーきょくのお宝!この欠片にあたいは祈った!そしたら力がわいてきた!あたいはさいきょー・・・あたいはさいきょーなのだ!わははははー!」

 

チルノの言葉に反応し、欠片──聖杯の欠片は脈動しチルノに無尽の魔力を与えている。欠片と言えど、それは願いを叶える万能器。一人の妖精の願いを出力する器として機能しているのだ。

 

「バカにハサミを持たせるなとは言うが、よりによってなんでも券を手に入れるとはなぁ。フランは自分を律していただけマシって事か?」

 

「どうでもいいわよそんなの!ちょっとチルノ!それは私のだーいじな御得意様のものなの!さっさと返しなさい!泥棒は魔理沙だけで十分なんだから!」

 

「欲しければ奪ってみろ!あたいは願った!誰よりもさいきょーなやつが幻想郷で一番偉いヤツになる!力こそ、力こそがパワー!あたいはこの幻想郷で、一番のパワーになってやる!その為なら、巫女も妖精も人間も全てカチンコチンのばいばいだーっ!」

 

チルノの叫びに呼応するかのように輝きを増す聖杯の欠片。その力は、欠片と言えど常軌を逸していた。

 

「ちょ、おいおいマジかよ・・・!」

 

チルノにて呼び出されたのは、氷の妖精部隊、翼竜、そして屈強な氷の巨人。それらは全て、チルノの実力が最大限に引き出されたが故の驚異的な実力の発露であった。

 

「弾幕勝負のルール忘れたの!?まずなんかカードの名前言ってからやりなさいよ!?」

 

「誰かの決めたルールなんて知った事か!あたいは自分が正しいと思った事をやる!ごっこ遊びなんてもう終わり!あたいがやるのは、すっごいすっごい本気の遊びだーっ!」

 

同時に、空間一帯が一瞬で凍り付いていく。空気中の水分を一気に凝結させ凍土を作り出しているのだ。弾幕勝負とは、美しさを競う誰も傷付かぬ優しき遊び。チルノ・・・いや、聖杯を手にした存在は、それを逸脱する力を振るっているのだ。

 

「霊夢!ずらかるぞ、これはちょっとやばげだ!」

 

逃げ場の無い、実利的な殺意の籠った『攻撃』に、魔理沙は即座に逃げ出す算段をつける。いや、逃げなければ氷漬けとなる未来しか待っていない。それほどの、無慈悲な自然の行使だった。

 

「癪だけどそれしかないか・・・!本気の殺し合いなんて巫女がやるわけにもいかないし!」

 

「わはははははー!逃げろ逃げろ!そのうち皆仲良く会わせてやる!氷の下でなー!わーっはっはっはー!」

 

チルノの高笑いを背中に受け、歯噛みしながら・・・霊夢と魔理沙は最大速度で離脱する。

 

「まさかチルノに背中を見せて逃げる日が来るとはな・・・!」

 

「くっ・・・どうしても、力尽くの解決は無理っぽそうね・・・!」

 

「はっはっは!わーっはっはっはー!」

 

妖精・・・いや、氷の化身と化したチルノは一人湖にて笑い続ける。黄金の欠片を、高々と掲げながら──

 

 




博麗神社

霊夢「・・・というわけで、あの聖杯の力を持っている一人は、妖精チルノ。その力は、ちょっと想像を越えていたわ」

魔理沙「あぁ。一山いくらの妖精じゃないことは解ってたけど、レベルが違ったな・・・」

紫「・・・。幻想郷は微細なバランスで成り立っているもの。妖精は自然の化身・・・彼女は、彼女自身のバランスを崩しかけている」

オフェリア「それは・・・」

紫「・・・御機嫌王」

「うむ、良かろう。──我が財、召喚を終わらせておらぬ者ども!貴様らに──召喚を許可する!!」

オフェリア「・・・!」

デイビッド「いよいよ、か・・・」

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