ギル『レクリエーションの余興でかの妖怪がばらまいたのかは未だ読めぬが、おそらくそれは印であろう』
「印?」
『勢力に一つずつ。クリアすればその勢力との同盟を確約するもの。吸血鬼の妹めの存在を解消できたなら、館としては願ったりであろうさ』
「あぁ・・・クリアスタンプであり、締結書といった感じですか」
『出所は我も調べるが、まずは適当に奴等に挑ませてやれ。精々死なぬ程度にフォローもしてやるのだぞ?リッカ程の活躍は期待しておらん。足掻き、奮闘する様子を我に伝えよ。よいな?』
「お任せください!・・・にしても、フランかぁ」
フラン「スヤァ」
「・・・このまま寝てなさいよ、本当に」
フラン「・・・・・・」
「・・・・・・・・・う(パチッ)」
「フラン様とお目通りし、生還しろ・・・ですか。とてつもなく難解、かつ難題があったものです」
一同にブリーフィングの息抜きの珈琲を振る舞う咲夜が静かに呟く。その反応は、非常に深刻な様子であり一同の危機感を煽らせるものだった。
「妹・・・つまるところレミリアちゃんと姉妹と聞き付ける。あの親しみやすくも人を惹き付ける彼女の妹さんとは、それほどに危険で厄介な存在なのかい?チーフ?」
「・・・危険度、と言うならば他の追随を許さないでしょう。太陽の畑に出没する妖怪ですら、警告と威嚇をする礼節はありましょう。しかし、フラン様は違います。子供の無垢さ、残酷さ、残虐さ、好奇心・・・それを吸血鬼というたぐいまれな素養で昇華させてしまった御方です。気に入るものは壊れるまで遊び、気に入らないものはすぐに壊す。蟻を踏み潰す様な無垢なる悪意・・・それを破壊衝動として転化する、戦慄の吸血鬼でございます」
会話の中で飛び交う、物騒極まる人物像。フラン・・・フランドール・スカーレットはそれほどまでに凶悪な存在であると伝えた上で、続ける。
「しかし幸いなのは、彼女自身にも自律と自戒の精神が残っていたことでした。彼女の能力・・・万物を破壊する能力の恐ろしさを危惧し、お嬢様との取り決めを受け、普段は地下室にて自らを封印なさっているのです」
「万物を、破壊するだって?」
「えぇ。フラン様の程度の能力・・・それは全ての存在・・・物質、生物、概念。それら全てを破壊、粉砕することの出来る能力となっております。小さな物体をも、人体をも。・・・かつて、空に浮かぶ月すらも砕いた事がございます。手に万物の急所・・・目となる部分を招来し、握りつぶす事により、物体の寿命を招き入れ一瞬にて破壊を行う能力。彼女自身も制御しきれない、最高にして最悪の殲滅機構なのです」
男性陣は息を呑む。かつてモリアーティは、計算にて星を砕く式を導き出した。かつてリッカを殺すためだけに、それらを本気で実行した事も記録にある。・・・天才の中の天才の悲願を、彼女は容易く果たせると言うのだ。それを、幼児の無邪気さの下に。
「それに今、話し合いは無理っぽいわよ。どっかから拾ってきたギターかなんかで余計はっちゃけてる。今はボイトレだかなんだかで大人しくしてるけどね」
どこからか現れた霊夢もまた、腰掛け会話に参加を果たす。博霊の巫女すらも手を焼き、紅魔館も封印するしか無かった究極の問題児。それこそがフランドールだというのだ。それに対峙し、生き残る。どれ程の恐ろしい賭けなのかが輪郭を帯びていく。
「・・・聞くだに恐ろしい情報の羅列だが、意志はきちんとあるのだろう?ならば争いではなく、一緒に遊ぶという選択肢を以て耐久するのはどうだろう?対話というならリッカ君以上に適役はいないが、彼女は別行動。旧友との再会に呼び戻すのは忍びない。ここは全員で彼女の遊び相手になってあげるというのは」
「それしか無いだろうな・・・。彼女を抜きにした作戦がどれほどのものか、今の力量を探るためにも挑むべきだ」
「あんまりオススメはしないわよ。遊び相手になるのはいいけど、よっぽど上手くやらないと機嫌を損ねて理不尽な怒りもセットな破壊が飛んでくる。子供の癇癪が一番理不尽な事くらい、察しはつくでしょう?五体満足じゃなくなるかもしれない・・・よく考えた方がいいんじゃない?」
霊夢もまた、危険度の高さから真摯に警告を行う。フランドール・スカーレットとはそれほどに危険な相手である。・・・だが、それでもだ。
「それでもだ。危険に尻込みしてたら成長はない。僕達に与えられた機会、選り好みしていたら成長はあり得ない。僕達は今度こそ、皆で成し遂げなくちゃならないんだから」
「カドックの言う通りさ。それに、子供には優しく女性にも優しくすべきだからね。インドア派の美肌吸血鬼だなんてモリモリ属性の女の子、一目見ぬにはあまりに残念だろう?」
「閉じ込め、封じているだけでは破綻が来る。一泊一食の恩として、疾患部分の改革程度は受け持とう。彼女もきっと、見て見ぬふりだけはすまい」
男性陣の決意は固く、その意思を揺らがせず示す。危険な難易度ですらも、自身の研鑽の為に。それらがきっと、世界を救う力となるから。
「・・・ありがとうございます。お嬢様もきっと喜びますわ。こっそり毎日会いに行っており、気にかけておりましたので」
「お人好しと言うかストイックというか。ま、王様の財を名乗るんだったら腑抜けのボンクラじゃいられない、って事でしょ?解らなくもないわ、その気持ち。暑苦しいけどね」
二人もまた、その印象を軟化させ逃げない選択をした一行を称賛する。そんな彼等ならば、或いはフランを・・・満足させられるという望みを微かに懐いて。
「そうと決まれば、早速作戦会議といきましょう。なんとなく会って帰ってくる、じゃあまず無理よ。私もアイツには割と手を焼くもの。ていうか焼いてきたわ、今」
「私達メイドもサポートは致します。フラン様は三分間最大火力で暴れまわった後に、ガス欠おねむタイムがございます。それらを乗りきれたなら、課題はクリアと言えるでしょう」
「おねむタイム!そこはずいぶんと可愛らしいんだね!どうする、カドック?短期決戦の作戦と戦力を展開するのかな?」
「勿論だ、それじゃあ僕とキリシュタリアで──」
そう方針を定め、難解な課題を見据え挑もうとするグランドマスターズ。──しかし。
「た、た、大変です!咲夜様、大変です!」
「どうしたの?報告なさい 」
「ふ、ふ、フラン様が起床後覚醒!『世界中が私を待っている!』等と言って地下室から脱走!ち、地上に出てきます!寝起きのフラン様がここに!」
騒然となる紅魔館。一目散に逃げ出すメイド妖精達。ただならぬ緊張感と焦燥が、館に満ちる。
「皆様、どうやら時間は無いようです。この場はなんとしても三分、生き残ってください」
「なんだ!?どういう事だ!?」
「フランは破壊衝動持ちって言ったでしょ?そんなものを持ってまともな精神は育たない。空腹、眠気、寝起き・・・そんなノリの感情が爆発した時に来るわけよ!地下室から、地上にね!」
瞬間、響き渡る破壊音に轟音。紅魔館の各地から、破壊と戦慄の前奏曲が響き渡る。
「──まーた私を仲間外れにして楽しいお話会やってたりしてるのぉ?あっ、ふーん・・・別に羨ましくないよないない。私はスペシャルインドア派の、インテリ吸血鬼だしぃ?」
「・・・!」
彼女を目にした瞬間、全身を悪寒が突き抜ける。会話も、対話も、和解も叶わないと諦めさせる純粋なる衝動の塊。人の形に収まった、爆発寸前な狂気と殺意。プロの暗殺者、或いは魔術師殺しですらここまでの重圧は無いと言えるほどの。
「でも残念でした。今の私は朝起きコーンフレーク無しの12時間睡眠。腹減り、睡眠不足のダブルコンボ。これらを癒すためには入念なストレッチと血液心臓一番搾りが必須です。咲夜、用意を怠るとは職務タイマン!怠惰です!」
「・・・申し訳ありません・・・普段より早起きなのは、読み取れず・・・」
「仕方無いね。ではこの非常に飢えたフランちゃんが次とる行動、三分までに私をなだめてね。ご飯か、本を読んでくれるか。それまではぁ」
朗らかな口調は、それでいて全く感情が無い。殺意と衝動に燃え盛る紅蓮の瞳が、ゆらりと・・・
「そこの霊夢とおまけの人間達から、心臓抉り取ってジュース飲みまぁす」
「「「──!」」」
「来るわよ!生き延びなさい!!」
餌たる人間を見つめ、おぞましい喜悦に歪み。狂喜と共に襲い来る──!
霊夢(例のギターは持ってない・・・本当に寝起きのようね。だったら飽きたら帰る筈!生き延びればいいわ!)
フラン「気が利くね咲夜。そこに活きのいい血液パックがあるよぉ・・・!」
キリシュタリア「私達の事かい?いやはや・・・想像以上に怖いなちびりそうだ!」
デイビッド「恐らく殺気ならば随一だろう。吸血鬼とは本来、夜の支配者だからな」
カドック「・・・や、やるしかない!ビビっていられるか・・・!」
フラン「白ゴボウ君!君にきーめた!」
「やってやる・・・!遊んでやるさ!徹底的にな!」
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