人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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咲夜「こちらが、皆様への課題となります」

『咲夜のお仕事をこなせ!(チーム)』
『パチュリーのお願いを聞け!(任意)』
『レミリアと写真を撮れ!(クリア)』

レミリア「一つはクリアよ(о´∀`о)」

カドック「仕事って・・・」

「こちらになります」

はくのん「ファッ!?」

霊夢「書類で人が見えなくなるとか・・・仕事ってレベル?それ?」

レミリア「うー!?」(遮られた)

咲夜「今は7時、皆様の手際で夕方に終わるかと。それでは、期待しています」

カドック「これは・・・皆、遊んでる場合じゃないぞ!すぐに取り掛からなくちゃ終わらない!急ぐんだ!」

キリシュタリア「別に──」

「一人で終わらせてしまってもとか言うなよ!無理だからな!」

キリシュタリア「しょんぼり」

デイビッド「これはどうする?」

『サボり門閥をシバけ!(任意)』

ぐっちゃん「おいお前!起きなさい!中華の格好で恥を晒さないでくれる!?」

美鈴「あらぁ~!?」

「こちらは門閥、紅美鈴(ほんめいりん)。以上です」

「雑では!?み、皆さんよろし」

霊夢「──カドックとか言ったわね」

「ど、どうした」

(私、地下室に行くから。絶対に来るんじゃないわよ)

「・・・?」

『吸血鬼の妹から生還しろ! (メンバー厳選推奨)』






チーフの心得

「それでは、今回は紅魔館のお仕事体験と言うことで、私の一日の業務を皆様で担当していただくのが主題となります。どうか皆様で御協力を行い、課題の完遂が果たせるように尽力なさってください。大丈夫、皆様のチームワークが良ければこなせる、簡単な雑事でございます」

 

そう、メイド長の咲夜はグランドマスターズの皆に告げた。そして皆もその言葉を受け入れ、業務に入った。されど掃除、なんとかなるとの楽観もあった。

 

「洗濯物が上がったぞ!持っていってくれ!」

 

「茶葉は、茶葉はどこ!?食器たまっているわ!」

 

しかし、彼等は思い至らなかった。メイドとは、家事や炊事を完璧に終わらせる使命を持った者。身の回りの全てを終わらせる家庭の奉仕者にして守護者。プロフェッショナルの仕事を肩代わりするというのがどういったものか、屋敷のメイド長を努めるとはどういったものか──

 

「リストの確認だ!買い出しにいかなくちゃ夜の食事に間に合わないぞ!」

 

「俺が行こう。手空きのメイド妖精に掛け合わなくては」

 

「ケチャップどこかな!?」

 

カドック達は今、その身を以て体感していた──。

 

 

~少年少女奮闘中・・・~

 

「やることが・・・やることが多い・・・!」

 

はくのんの魂の叫び。滅多に感想を漏らさないはくのんの嘆きは、それを絞り出される程の忙殺が襲い掛かっている証左に他ならない。今取り組んでいる業務は、一日。一日であり、本来なら咲夜一人でこなしているもの。それに対し、カドック達全員で挑んでいる訳だが、その量は『壮絶』の一言だった。とにかく多く、多彩で、雑務が津波の如くの体力勝負なのだ。

 

「いいか!絶対に間違えちゃダメだ、リストを見て修復している暇なんか無い!全部一発勝負で完璧に仕上げないと全部おしまいだ!些細なミスも許されないぞこれは・・・!」

 

食器整理、庭の整備、花壇の水やり、買い出し、時計塔の整備、館の窓ふき、雑巾がけ、シャンデリア清掃、換気、食卓の準備、湯沸かし、風呂の掃除、サボりの粛清、シフトの確認。仕事のほんの一例に過ぎないだけでもこれほど迄に多彩な単純必須の雑務。それらのリスト消化に全身全霊で挑むカドック達。完璧な仕事の一挙一動が求められるチームワークと集中力の研鑽。まさにそこは、家庭の戦場である。賢王の次くらいには忙しいかもしれない。一同は懸命に目の前の仕事を消化し続けた。

 

「皆様ファイトです~!咲夜さん無しのメイド妖精はあてにしないでくださーい!いない方がマシのサボり魔なのでぇ~!」

 

赤髪に翼、悪魔の角が生えた少女、小悪魔めいた見目の少女はまんま小悪魔。サブチーフのポジションであるが、メイド妖精の指揮で全くカドック達のフォローは出来ていない。当然ながらてんてこ舞である。

 

「これだけで理解できるよ・・・組織運営の後方スタッフの有り難みが・・・!」

 

仕事のノルマで、研鑽や探求どころではない。自分の身の回りも、支えてくれる誰かがいなくてはままならない。自分自身の生活は、誰かに支えてもらえて初めて成り立っている水準なのだ。現に今、探検も、研鑽も、なんなら課題の平行も出来ていない。意志疎通の念話チャンネルが頼みであるのだ。

 

『こちらオフェリア、茶器の用意完了。キリシュタリアに紅茶を淹れてもらうわ』

 

『いい香りだ。我等がレミリア嬢を満面の笑みにしてみせよう』

 

『こちらアルトリア。酒樽ってどこです?厨房は?ディナールームはどちらでしょう。・・・ヤマカンでいきます』

 

『こちらアイリスフィール!青いバラが咲いているわ!凄い!』

 

『こちらペペロンチーノよ。時計塔凄いわぁ、いい眺め~!後で屋上でランチにしない?』

 

「各自その調子で頼む!・・・なんだか皆余裕があるな、流石だ・・・」

 

このままじゃだめだ、もっともっと・・・!そう気合いを入れ直そうとしたカドックに、声が掛けられる。

 

「真面目でいい指揮ね。でも、力みすぎな所あり。仕事のコツは、業務と思わず力まないことよ」

 

「十六夜チーフ・・・」

 

現れしは咲夜。カドックに激励を伝えつつ、然り気無く──

 

「ん、初めての課題にしては素晴らしい成果。優秀なスタッフね、皆様は」

 

(!?いつの間に・・・)

 

カドックも気付けぬ程の速さ・・・としか言えぬ現象・・・でノルマファイルを拝借する咲夜。咲夜が一日かかる仕事が、半日で終わる。実質ペースが速い頑張りに、笑みをこぼす。

 

「私の能力、時を止める力でいつもはこれを一人で行っているのだけれど、あなたたちは地力でこれ程のペース。メイド妖精とは比べ物にならない優秀さ。スタッフとして欲しいわ?ふふっ」

 

「時を・・・止めるだって・・・?レイシフトや認識魔術の応用か・・・?」

 

「あら、御存知無かったのね。幻想郷の住人は、それぞれ一つの能力。力に関心の無い、というか無頓着な住人は大抵それを『程度の能力』と呼んでいるわ。私は・・・はい」

 

パチン、と懐中時計を開いた瞬間咲夜が消える。瞬きの間に、咲夜は紅茶をカドックに差し出していた。

 

「時を止める程度の能力・・・。まぁ、ナイフが刺さらない相手には詰みだけど、時間の有効活用に使っているわ。はい、頑張りやさん」

 

「・・・時を止める程度、とかどんな嫌味なんだそれは」

 

「ふふっ、サプライズパーティーには大活躍よ?」

 

呆れながらもカドックは紅茶を飲む。リラックスハーブが混ざっているそれは、カドックの心身を平静に保つ。

 

「仕事ぶりと、あなたの頑張りを見て。メイド長の私からのアドバイス。・・・聞く?」

 

「聞かせてくれ。客観的な評価、チーフクラスの観点はありがたい」

 

「真面目。そう・・・あなたは肩肘を張りすぎね。自然体って解る?いつでも全力で、人は動けない。張りすぎた弦は切れてしまうわ。それが今のあなたに重なる」

 

咲夜はそう言い、カドックの探し物であった書類の山から一枚の紙を抜いた。山積みのリストから、カドックが求めていた目当てを。

 

「凄いな・・・!」

 

「皆の事を、正しく見ている。でも不可解なものや脅威を大袈裟に捉えがち。皆と比べて、胃に負担がかかっているわ。へたっぴね、力の抜き方」

 

「・・・モリアーティによく言われるな。『ハゲるヨ?』って。アナスタシアが凍らせてたけど」

 

「皆は大なれ小なれ、楽しんでいるように思えるわ。困難を楽しめる。それは磨ける才能よ。経験、或いは・・・ハッタリとしても」

 

今の状況、これからの状況。困難から逃げないのなら、せめて笑顔を浮かべるといい。牙がよく見え、魅力も出せる。

 

「余裕と風格は、男の魅力よ。きっとモテるわ。まぁ、私はあんまり男性経験は無いけれどね」

 

「・・・モテなくてもいいさ、見てくれる人に魅力が伝わるなら。でも・・・それが『チーフの心構え』か。・・・リッカも、こんなに気負わなかったんだろうな」

 

彼女はきっと、使命感なんてものは二の次だったんだろう。私がやりたいから、私が挑みたいから。いつだって、自分の赴くままに未来を切り拓いたのだ。・・・真似はできない。それはきっと、彼女だけの在り方だ。

 

でも・・・

 

「・・・皆、聞いてくれ。ちょっと『休憩』しよう」

 

カドックは即座に、自身へのアドバイスを取り入れる。

 

『おや、いいのかい?』

 

「ノルマはまだあるけど、きっと大丈夫だ。皆がいるから間に合う筈。それよりせっかくのレクリエーションだ、楽しまなくちゃ」

 

『解った。門番が中華料理を振る舞ってくれるそうだぞ』

『中華と言うなら黙ってられないわ。項羽様へ捧げる料理に、お前達を毒味に使ってあげる!』

 

『ちょうどよかった。ティータイムにしよう!リッカ君へのインスタ送りも兼ねてね!』

 

『ビュッフェ食べたいです』

『月に帰ったらネロをよしよしし倒します(鉄の意思)』

 

「あぁ。じゃ、ペペ。屋上で」

 

『待ってるわよ、チーフ♪』

 

「・・・アドバイスの実践は、こんなところでいいかい?十六夜チーフ」

 

「上出来。あなたは素敵なリーダーになるわ」

 

「リーダーじゃない。僕はあくまで、皆の潤滑油になりたいだけだ。皆が見上げるリーダーは、もういっぱいだからね」

 

「ふふっ・・・じゃあ、そんなあなたにレクチャーしてあげる。とっておきの・・・十六夜オムライスをね♪」

 

・・・こうして、昼に適切な休息を取った一同は、夕方になんとか業務を完了、一息つく事となる。

 

「ふわぁ~・・・おはよう。咲夜、皆はどうなの?」

 

「えぇ、お嬢様。──文句なし、でございます」

 

『紅魔館のお仕事をこなせ!(チーム)』のスタンプに、咲夜のナイフマークのスタンプが押され、レミリアは満足げに笑うのだった──

 

 

 

 

 




夕方

アイリスフィール「お、終わったわね・・・」

アルトリア「ちびのぶや、ホムンクルス。スタッフの皆様本当にありがとうございます・・・」

キリシュタリア「いやぁチームプレーはうまくいった時が痛快極まる!リッカ君が見たら驚いてしまうかもしれないな!私達の成長に!」

デイビッド「間違いなく正気を疑われるだろうな」

カドック「解っててやる辺り、本当に常人には無理だよ・・・ふぅ・・・」

ペペロンチーノ「あら?『解ってるならやらないでくれないか!?』なーんて言うかと思ったのに」

「・・・それも、エンジョイの証なんだよ。きっと」

デイビッド「・・・あぁ」

?「・・・レミィが言っていた団体はあなたたち?」

はくのん「なにやつ」

パチュリー「私はパチュリー。パチュリー・ノーレッジ。頼みとお願い・・・聞いてもらえる?」

紫の長髪に、小柄な本を持つ少女の依頼とは、果たして──








地下室

?「きたねぇ退屈は滅びろ!!この溢れるBIGBANGはもう止められない!ほとばしる情熱がパッションになって想い出をルラギルぜぃぇえぇえぇい!!」

霊夢「うるさっ!何よフラン、あんた今度は何に──!」

「時代はロックでパンクでパンキッシュなデスメタルなんだぜぃ霊夢っち!私は気付いたっ!狂っているのは私じゃノーでザ・ワールド!私のデストラクションが!退屈な世界に風穴あけるぜへいべいべぇえい!!」

霊夢「何処でかぶれたか知らないけど、王様への内申の為にも!大人しくしてもらうわよ、『フラン』!」

破壊の吸血鬼「マサクル、デストロ、カルネージ!私はこんなハコで燻る器じゃねぃ!私のメタルは!世界に轟くのだぁあぁ!!きたねぇ人間は滅びろっ、チェケラーイ!!」

地下の一室で、破壊の狂想曲に人知れず巫女は挑む──

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