人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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前回はギャグでしたので、今回で英雄成分をどうぞ


異見――俊足の大英雄

「此処に部員どもから送られた素材がある。少しは足しになろう。好きに使え」

 

 

召喚サークルから物資を引き出し、ドレイクたちに引き渡す

 

 

「航行ができないくらいやられちまうとはぬかったねぇ・・・全く、えげつのないヤツがいたもんだよ」

 

「・・・」

 

 

「みんな、ぶじ、で。よかっ、た」

 

 

「貴方は無茶をしすぎよ、アステリオス!貴方がいなくなったら誰が私を運ぶのよ?」

 

 

「ごめ、ん」

 

 

――アステリオスには、船の全員が助けられた。彼がいなければ、最悪の事態になったであろう

 

「ほら、金ぴか。私のアステリオスになにか言うことはないの?」

 

 

ふふん、と胸を張るエウリュアレ

 

「――・・・」

 

 

「?どうしたの、ギル?」

 

「――」

 

・・・?どうしたのだろう。器が、深く何かを思案している様子だ。言葉を発しない

 

「なんだい、船酔いかい?」

 

「英雄王・・・?」

 

 

「――いや」

 

沈黙の後、器が口を開き、アステリオスに触れ、労を労う

 

 

「大儀であった、アステリオスよ。貴様の働き、我の称賛に値する偉業だ」

 

 

「うん、うん!」

 

「当たり前よ、アステリオスだもの!」

 

「すっかり自慢だね、エウリュアレ」

 

「あなたも、見直したわ。まさかあんな気持ち悪いサーヴァントと会話するなんて」

 

「先入観は損だよ?言葉と意思が通じるなら必ず解り合えるが私のモットーだからね!」

 

「先輩・・・はい。私もそう思います」

 

『・・・一般的な感性は大事ね』

 

『はい。とても』

 

 

「・・・・・・」

 

・・・器が深く思案している。何を考えているのだろう?

 

 

「――開拓者。これから船を補修する作業に入るな?」

 

「ん?そのつもりだよ?適当な獣を狩ってね」

 

「そうか。――少し我は席を外す。マスターとマシュを任せたぞ」

 

・・・器の提案は意外なものだった。喜んで行くものかと思っていたが・・・

 

ともかく、器が行いたいことがあるのなら、その王命に従ってみよう。キャストオフ以外なら大丈夫だ

 

「?立ちションかい?」

 

「野暮用だ。すぐに戻る。マスター、マシュ。励めよ」

 

「は、はい」

 

「う、うん。気を付けてね、ギル」

 

 

「うむ。・・・」

 

「う・・・?」

 

 

ちらり、と。器がアステリオスを見たような気がする

 

 

そのまま踵を返し、器は島へと歩みを進めていった・・・

 

 

 

 

――島の平坦なる平野にて、王は立つ

 

 

「――・・・」

 

空を見上げる。紅い瞳が天を見据える

 

 

 

「――フン。気紛れに連れ出してみれば。我の予測を上回る活躍を見せるとは。これだから無垢なる魂は侮れぬ。――見事であったぞ、アステリオス」

 

 

――見上げながら

 

――未来を、垣間見る

 

 

 

 

――ありがとう!

 

 

ぼくは、うまれて、よかった!

 

 

――笑顔で、槍に突き刺され、海へと沈む

 

 

――アステリオスの姿が、垣間見えた

 

 

 

 

 

――今のは・・・

 

 

まさか・・・未来の・・・?

 

 

「――幼児の奮闘には、正しく報いてやらねばなるまい」

 

器が、言葉を紡ぐ

 

「なぁ、『英雄』よ」

 

 

――現れたのは

 

「――なるほど。お前みたいなのが俺に声をかけてきたのはそんな理由か」

 

 

爽やかな青年の声

 

 

――瞬き一つの刹那に、腕を組む男が立っていた

 

 

「フッ、ずいぶんと暇をもて余している気配がこの島にあったのでな。招集をかけてみれば、随分と大層な英雄が釣れたものよ。なぁ、イリアスの英雄よ」

 

 

軽鎧に身を包んだ、薄緑の逆立つ髪。自信と確信に満ちた笑みを浮かべる青年

 

 

「『アキレウス』・・・貴様の真名はソレであったな。人類最速の英雄よ」

 

「ほう。黄金の英雄王に我が名が識られているとはな。まぁ、当然と言えば当然か」

 

――アキレウス・・・?

 

・・・詳しいことは解らない。解らないが・・・

 

 

・・・――直感で理解する。この英雄は・・・英雄の中の英雄だ

 

纏う雰囲気、滲み出る風格は・・・あのヘラクレスに勝るとも劣らない・・・!

 

 

「今更名乗るまでもあるまい。我の名はギルガメッシュ。人類最古にして、ゴージャスのクラスを持つ至高の王である」

 

「ゴージャスぅ?なんだそりゃ、エクストラクラスか?」

 

「我のみに赦されたレアクラスよ。――自己紹介はこれでよい。本題に移ろうではないか」

 

二人の英雄が、真っ直ぐに相対する

 

「此度の召喚、貴様は正しき経緯の召喚ではあるまい」

 

「あぁ。俺は誰にも御呼びがかかっていない、はぐれサーヴァントと言ったところだ」

 

「貴様ほどの格の者が、海賊風情に引かれる筈もあるまい。貴様は、ギリシャの縁に導かれ連鎖を果たしたサーヴァントであろうよ」

 

・・・ギリシャの縁・・・

 

「我等が対峙した海賊の一人に、槍を使う壮年のランサーであったな、アレは。おそらくは貴様の同郷であろうよ」

 

「・・・ちょっと待て。緑のランサー、緑のランサーだと?」

 

アキレウスを名乗る青年が食い入るように詰め寄る

 

 

「緑とは言っていないぞ」

 

「壮年つったら思い当たるのは緑しかいないんだよ俺にはな。ソイツはあれか?髭生やしてヘラヘラしてたか?」

 

「うむ」

 

「戦いかたがクッソ嫌らしくてイライラしたか?」

 

「船の戦いで底を抜くという無粋な戦法を取ったな。合理的ではあったが」

 

「ビンゴだ・・・間違いなくそいつはヘクトール・・・兜輝くヘクトールじゃねーか・・・マジかよ・・・いんのかよ・・・海賊なんぞに堕したのかよ・・・」

 

がっくりと座り込むアキレウス

 

「いや、奴は恐らく別の思惑にて動いている。海賊は恐らく隠れ蓑に過ぎまい」

 

――海賊が、隠れ蓑に過ぎない?

 

「・・・ヘクトールの野郎の後ろに、何かがいるってことか?」

 

「然り。此度の特異点の元凶は奴等ではない。恐らく、ヘクトールとやらが仕える何かが大本であり、貴様が召喚された理由であろうよ」

 

 

――ギリシャの英雄、連鎖召喚・・・

 

――思い至る。そして思い出す

 

 

カルデアにて、あれほどヘラクレスが訓練に誘った理由・・・!

 

 

まさか、この時代にも、まさか、彼がいるというのか・・・!

 

 

「――我が望むは元凶の首。恐らく其奴が、我の誅すべき敵であろうよ」

 

――ヘラクレス・・・!!

 

「・・・大体の経緯は掴めた。なるほど。俺が考えた通りの展開をあんたが考えているなら、わざわざ俺に声をかけたのも頷ける。・・・『アイツ』は強いからな。俺より、少しだが。ちょっと、ちょっぴりな?」

 

「紛れもない大英雄だ。当然であろう。本来なら、我一人で事足りる相手だが・・・多少の犠牲は避けられまい」

 

「・・・ほう」

 

「――今の我の背中には――容認できる犠牲はおらぬのでな。完全無欠、完膚なきまでの完勝を修めねばならぬ」

 

――・・・英雄王・・・

 

それは・・・マスターや、マシュだけではない

 

 

 

――

 

 

「いい、のかな」

 

「む?」

 

「おれ、かいぶつ、だから。・・・ここから、でて、いい、のかな」

 

「――たわけ」

 

「?」

 

「世界が貴様を赦さずとも、生前が貴様を赦さずとも、総てが貴様を赦さずとも」

 

「――」

 

「この、我が赦す。英雄王たるこのギルガメッシュが貴様の旅立ちを赦す」

 

「――!!」

 

「顔をあげよ、前を向け。――物事の道理が解らぬ内は」

 

「・・・!」

 

「ただ、我の威光に目を輝かせておればよい――」

 

 

――

 

・・・あのときの言葉を思い出す

 

 

…彼は、アステリオスの未来を護るために

 

自ら以外の力を、頼みにすることを選んだのか・・・

 

 

 

「貴様の力を貸せ。ヘラクレスに劣らぬ大英雄、アキレウスよ。旅に参じろとは言わん。ただ一度の邂逅の縁に従い、貴様の力を振るうがよい」

 

「――そこまでして護りたいものはなんだ。差し障りなければ、教えてもらいたいもんだ」

 

「フッ。未だ半人前のマスターとサーヴァント、そして・・・」

 

「――世界を見始めた幼児を一人、連れ出したのでな」

 

――・・・はい。英雄王

 

 

「――はははははっ!」

 

大笑いするアキレウス

 

 

「――気に入った。英雄王と聞くからには酷薄冷酷とタカを括っていたが、なんだよ、メチャメチャ面倒見がいいじゃねぇか」

 

「此度の我はゴージャスであるからな。財も気前も、大盤振る舞いよ」

 

 

「くくっ。なるほどなるほど。俺はラッキーって訳か。――相解った、英雄王」

 

笑みを消し、大英雄が向き直る

 

 

「ライダー・アキレウス。人類最古の英雄王、ギルガメッシュへの助力を誓おう。ヘクトールの野郎が仕える連中にのみという条件で、我が力を振るってやろうじゃねぇか」

 

「うむ。一時的ではあるが、貴様の力を頼みとしよう。我が想定する相手に、さぞ貴様は映えるだろうさ」

 

「当然だな。――ヘクトールはどうする?まとめて俺が蹴散らしてやろうか?」

 

「構わぬ。それはマスター達の仕事だ。奴等は今、己を研鑽する旅の最中。我や貴様では邪魔にしかならぬだろうよ」

 

 

「――ますます気に入ったぜ英雄王。なんて気遣いの細やかさだ。大したもんだぜ。ケイローン先生を思い出す」

 

「我は教師ではないわたわけ・・・が。まぁ、たまには遊楽も悪くは無かろう」

 

「そうそう。何事も楽しまなくちゃな!――で、だ。俺はどうする?合流するか?」

 

「いや、要りようになれば我が喚ぶ。それまで貴様は思うままに振る舞え。――ただし」

 

――それは、確約だった

 

 

「呼び出したとき、其処が貴様の死に場所であることを覚悟せよ」

 

「――上等だ」

 

「そして、貴様は五回、我は六回奴を殺す。その後は任せよ」

 

「ん・・・ん?待て、11回じゃヘラクレスの命には届かねぇぞ?」

 

「後の一回は、マスターどもに知恵を働かせ仕留めさせる」

 

「――成る程な。俺達はアイツのインチキを剥がすために戦うわけか」

 

「益のない戦いだと、落胆したか?」

 

「なわけねぇだろ。後に続く者の礎となり散る――最高じゃねぇか!英雄として、これほど相応しい振る舞いはない!」

 

――ギリシャの英雄、アキレウス

 

 

彼は紛れもない・・・英雄。大英雄なのだった

 

 

「うむ、ではな。限られた時を、有意義に過ごすがよい」

 

「おう。――あ、最後に一つ」

 

「ん?」

 

 

「…お前さんのマスターは、美人か?」

 

「少女だ」

 

「そうか・・・そりゃ残念」

 

「フッ。将来は有望だぞ?」

 

 

「そうなったら、是非喚んでくれ。――じゃあな、ギルガメッシュ」

 

「自慢の俊足にて、必ず馳せ参じろよ。アキレウス」

 

 

――こちらも気を引き締める

 

 

――総ては。悲しき離別を覆すため――

 

 

 




「あ、戻ってきた!補修終わったよ、ギル!」


「うむ。大儀であ・・・」


「貴方がAUO!?こんにちはこんにちは!アルテミスでーす!で、こっちは私のダーリンオリオン!」

「どうも、おりべえでー・・・おい?お兄さん?」

「――・・・仲間にするにも・・・低限があろうが・・・」

「ぷぷっ、ざまぁ見なさい。ね、アステリオス?」

「しっ、かり。おう、さま」

「――吐き気がしてきたな・・・すまぬがまた席を」

「とろいこといってんじゃないよ!さ、出航だよ!今度こそあの髭に目にもの見せてやる!」

――・・・

「う・・・?」

――護る。必ず

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