人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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エレシュキガル「ごめんなさい、スペース上京してから働き詰めで、スペースメソポタミアから都会に来たんだけど、物価が高くて格安の場所を借りていたの。持ち合わせはあんまり無くて・・・」

ギル「給与はどうした?困窮する立場でもあるまい」

「あはは・・・年金や保険、税金に持っていかれて全然なの。ただ生きるだけでも大変よね、最近は・・・」

フォウ(年金って破綻してない?本当に必要な時に貰えるの?)

──エレシュキガルさん・・・!もっと、もっと素敵な生活を送ってほしいです・・・!

ギル「そうか。・・・不満はないか?」

エレシュキガル「月並みだけど、平和な世界で生きれるならそれ以上は無いわ。富より、平穏に過ぎる時間が得難いもの。私はそのために頑張ってきた。だから今は、こうして帰ってこれて幸せよ。・・・ギリギリ、ガスと電気と、家賃を払いきったわ。給与、無くなっちゃったけれどね」

ギル「・・・たわけめ、だから貴様は冥界などを押し付けられたのだ」

エレシュキガル「?」

ギル《エア!》

──はい!お任せを!

《見せてやろう。──改築王の全霊をな》


紅き華たる女神に捧ぐ

「・・・・・・」

 

沈んでいた。嘆いていた。どうしようもなく沈鬱に気持ちが抑えきれなかった。四畳半のうらぶれたアパートにて今、王は非常にアンニュイになっていた。憂鬱さが形を為せば、人の二人や三人は自殺に追い込めそうな程にだ。それほどまで、王は彼女の処遇を憂いていたのだ。

 

「ど、どうしたのかしらギルガメッシュ。気分が優れないようだけど・・・」

 

「気分も沈むであろうよ。このような馬小屋に劣る・・・今は言うまい。本懐と本題を果たしてからだ。愉快に行うつもりであったが訂正しよう。真面目に、本気で、最適に事を運んでやる。貴様に免じてな」

 

リーン、リーンと風鈴が鳴り、カナカナと鳴くセミ。季節感どこやねんと突っ込みたくなるアパートの一室にて天井を見上げるギルガメッシュの眼には、湧き出た無限の残骸を蹴散らすが如くの決意に燃えていた。御機嫌王は、この現状を看過しない。

 

──押入れ・・・襖・・・これは秘密基地のような造り・・・!

 

(手入れは欠かさない所に性格が見える・・・!やるぞギル!こんな清貧な女神をこのままにしちゃいけない!)

 

《無論だ。──初めて改築に手を付けた心持ちを思い返し、最適に仕立ててくれる!エア、フォウ!続け!》

 

──はいっ!

(おー!)

 

「む、無理だけはしないでね・・・?」

 

この期に及んですら、自己のグレードアップを望まぬ赤き女神に一瞥し、御機嫌王は全霊なる改築に乗り出す──!

 

 

「まずは銀河警察所属人員のデータを寄越せ。三分で把握してやる。我の至宝と我の眼があれば容易いものよ」

 

「こ、こちらになるわ」

 

分厚い辞書のような名簿を渡されながらもエアとギルは流れるページさばき、下手すれば高速捲りのレベルで一字一句逃さず把握。それにより平行して好みの嗜好の品を財より選別、把握して搬入の準備を完遂する。姫と王のゴージャス把握、プレシャス搬入の実態だ。

 

「配給されている材質も話にならんな。我の秘蔵の品々と変えてやろう。我等と同盟を結ぶものがこのようなみすぼらしい様など、到底認可できる事態では無いからな」

 

続いて、配給されているものも全て最高級の物へと進化、変化させる。布団は羽毛に、枕は低反発に。貴重な素材を躊躇いなく注ぎ込み変化させていく。部屋の材質もまた、高品質にかつ要望にこたえられる様なカーペット、天井にはシャンデリアといった高級リッチ感を最低限とする。

 

──個室の大きさは一気に全員変えるのは少し大変なので、空間歪曲で新しい御部屋を!シャワー室はバスルームに変化させておきました!なんと!ラマッスをモチーフにしているんですよ!

 

「娯楽の類いも無いとはほとほと呆れさせる。我慢大会でもしていたのか?無論改築の断行だ。前体制の残り香、粉微塵にしてくれる!」

 

ヒロインXX、オルタ、Xにアーカイブ検索を依頼しユニヴァースの歴史や娯楽作品の様々を入れ込んだ端末を人数分配置。レクリエーション目的のスタジアム、プール、ゴルフ場、レジャー施設全般、ヒュプノス監修安眠ルーム、ヘスティア監修大食堂、ハデス監修大会議室といった施設をフルマックスペースで改築していく。一人で大建築チーム並に働くプラチナノッブ部隊にかかれば半日で完成するゴージャスムーブ。『あの時』とは何もかも違う。チートにして無法な事に、エアを擁する王は死者の影法師の領分を越えている。至宝と共に唯一無二の王として『成長』するのだ。それが、御機嫌王が他を隔絶する最大の要因である。

 

「食生活の文化が失われていたな。ならば銀河警察限定で復活させてやろう。就職意欲、特別と言う肩書きは現金にも活動意欲にも繋がるものよ」

 

ヘスティアの監修したかまどを置き、楽園の食生活の充実により役割を終えつつある北風のテーブルクロスをこちらに回し整える。調度品は最高品質に、材料は常に新鮮なものに。畑から作らせる産地直送改良。食いたくば耕せ、育め。テーブルクロスはエレシュキガル以下上級職員のものである。士気と待遇の徹底だ。

 

──一人一人に解りやすい材料や料理の説明のアプリをインストールしておきます!食べ過ぎ御注意!護らないと~!

 

《連日青汁の刑に処す!サーヴァントは成長しない?たわけ!気分の問題だ!》

 

(いいぞぉ・・・その調子だ・・・プラチナ企業はいかがかな?そのままブラックなんて風評を消し去ってしまえー!)

 

「(ぽかーん)」

 

「何を呆けている。貴様が署長なのだ、何を必要とし何を求めるか、率先して我等に伝えぬか」

 

「あ、そ、そうね!えーと、うーんと・・・!」

 

そのままエレシュキガルのほわっとした『図書館・・・?』『ゲームセンター、とか?』などといった曖昧みーな要求に真摯に応え続け、ネルガルが作り上げた犯罪者を見張る囚人収容所、といった施設を生まれ変わらせ、宇宙の番人が集うに相応しい様相に作り上げていく。プラチナ&レインボーノッブは姫の笑顔と王のカリスマに応えるぐだぐだ生命体。例え困難な仕事であってもゴージャスへの奉仕が最大の報酬と笑えるプレシャスチームなのだ。

 

(ありがとう君たち、本当にありがとう!先輩として実に鼻が高い!ありがとう!)

 

『『『『『ノブシャス!』』』』』

 

そうして出来上がった施設は最早、蒼銀銀河に並ぶものなき最高級の組織へと変化する。娯楽と労働を融合させたゴージャス本拠地、これがエレシュキガル署長の治める、新たなる法の在処だ。

 

「人員はそちらのハデスに把握させておく。公平な神であるヤツならば、不要に怠ける輩も過たず断罪するであろうよ。ついでだ、貴様のスポンサーは我がやってやろう。資金巡りで首が回らぬ場合は我が助け船を出してやる。頼るがいい!レート変換装置は忘れるなよ!」

 

「・・・あ・・・」

 

ありがとう、そう告げるエレシュキガルはまだ夢心地の様だ。ゴージャスの改築とは時空と次元、道理すら蹴散らす王の業、理解が及ばぬも無理はない。

 

「こ、こんなにしてもらえるだなんて・・・ど、どうやって返していけばいいのかしら・・・」

 

「正しく法を遵守せよ。貴様の出来る最善を宇宙に示せ。手にした平和と平穏、次シーズンまで護りきってみせよ。それだけで我等への報いとしては上々だ。──ではな」

 

改築するだけ行い、さっさと場を後にするギル達。銀河警察の改築は終わった。ならば此処で見るべきものは見た。足りなければ、エレシュキガルは都度報告するであろうから。

 

「ま、待って!何処に行くの!?」

 

「無論、最後の仕上げだ。この施設など前座に過ぎぬ。貴様も確認を終えたなら、自宅に帰るがよい。あのような納屋でも自宅であろう」

 

──楽園はいつでも、あなたの愉悦をサポートします!また必ずお会いしましょうね、エレシュキガルさん!

 

(君に幸あれ!ヘイルトゥーユー!普通の山でも関係無いくらい、君は美しい!)

 

困惑するエレシュキガルに手を振り、背を見せ宇宙に消えていくギルガメッシュ。単独顕現の虹色の粒子が、黄金の嵐に巻き上げられる。

 

「きゃっ・・・!さ、最後の仕上げ・・・?」

 

その言葉の意味を考えながら、やっぱり最善を尽くすためにオフィスに引っ込んでいくエレシュキガル。自宅に帰るまで三時間、彼女は新生銀河警察の把握に努めましたとさ──




エレシュキガル自宅

エレシュキガル「凄いのだわ・・・あれが、ゴージャスの力・・・プレシャス最高説なのだわ・・・」

(最後の仕上げ、だなんて言っていたけど何かしら?銀河警察はもう、いじるところなんて何も・・・あら?)

『ゼットライザー』

『エレシュキガルアクセスカード』

エレシュキガル「?これは・・・何かしら?」

ガチャリと手に取り、カードを差し込んだ瞬間・・・

〔Ereshkigal  access granted〕

「へ?は、え──!?」

『星そのもの』が変容し、エレシュキガルが過ごしやすい空間、エレシュキガルが思い描いた姿へと変化する。アクセスカードに『固有結界』と似た魔術を内包させた為だ。カードは何を隠そう、材料『手頃な聖杯』である。

『星は買い取っておいた。好きに使え』
『アパートも同じく!権利書をどうぞ!』

「え、は、え、は・・・はぃい!?」

目の前に置かれた、惑星とアパートの権利書。蒼銀の赤き女神に贈られた星とアパート。もう家賃や住み処に困ることはない。星が私有物である。あまりの豪気ぶりにエレシュキガルのキャパは限界を越え──

「ダワァ」

と叫んでバタンとぶっ倒れた。これを以て、王の改築は完了である。楽園にて行われるは、次なる催しだ。その楽園にて──

~ アパート備品浴室 ~

「やはりこの様なもの、風呂とは呼べぬな」

王は、エレシュキガルのアパートを模した風呂──かつてのカルデアを思い出させた──小さな浴場につかり・・・

「これでは落ちる疲れも落ちぬ。『なんだこの水桶は』。呆れたものよ・・・」

──すぅ・・・すぅ・・・
(むにゃあ・・・)

二人と一匹の時間を、静かに過ごすのだった──

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