人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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『○』

『・・・引いてみるものだ』

(安寧・・・ギリシャではあるが、きっと役には立つだろう。後は・・・羊を連れていくか)

『・・・ん?』

空中にふよふよと、何かが浮いている。巨大な、そしてあり得ないものが・・・

『あれは・・・『要石』代わりのものか』

それはやがて、ふよふよとゲートの向こうへと飛んでいった──


神格SSR~安寧の究極~

『神霊でなくとも問題なく高天ヶ原は受け入れますよ!ペルセポネーさん、ハデスさん、ケルベロスさん!共に受け入れを果たしましたもう!』

 

『まぁ、母が言うなら問題は無いのだろう』

 

意気揚々とイザナミ、全てを諦め納得し、悟った様子のタケルの放送を受け止め一同は安堵する。神霊を受け入れる地とは言うが、別に神霊でなくてもOKである。これが、イザナ味である。

 

「うむ、ユニバースでの我ですら退かせたある意味無敵の存在の理だ。任せておけば問題あるまい」

 

「ユニバース???」

 

(ねぇギル、やっぱり情報共有しておいた方がいいんじゃないかな?講演会とか、話を盛った感じでもいいからさ)

 

──部員の方からも提案がございました。これからのシーズンに期待する意味でも、共有には賛成します!いろんな事、お話ししたいですし!

 

《うむ。我等にやましい密事無し。どちらにせよ大勝利の英雄譚なのだ、語り聞かせるに恥などない!よし!語るぞ!召喚を続けよ!セイバーに聞き語らせる名目としても上々だ!いざ回せ!花を添えるぞ、大輪の華をな!!》

 

エア達の提案にテンションが上がり、夢見る星が尚輝く。そんな期待に胸を躍らせるギル。回転し始めるサークルに目を輝かせる姿は、宝箱を見つめる少年の様である。

 

(泥を塗る結果しか見えない)

 

──ふぉ、フォウ!ガチャにしては、その・・・否定できないのは、その・・・

 

「沢山ザクロもらっちゃったよ~。あれ?これ食べて大丈夫なんだよねこれ?」

 

「御安心くださいロマニ様!もし冥界に捕まってしまったならこのシバ!どんな犠牲を払ってでも取り戻させていただきます!どんな手段を、損益抜きにしてでもですよぉ!」

 

「絶対に後ろは振り返らないようにね、シバ。・・・マシュはやりそうよね。『先輩!出口ですよ!』振り向いたそこには」

 

「石になり、もう動かない私の姿が!」

 

「せぇえぇえぇんぱぁあぁあぁい!!!(号泣)」

 

「君は素直過ぎるんだよねぇ・・・」

 

「其処がいいんですよ!!素直な女の子って言うのは・・・それだけで・・・」

 

「でもまぁ、マシュの選んだ選択で死ぬならいいかな」

 

「先輩・・・(キラキラキラキラ)」

 

冥界の逸話は非常に有名であり、ハデスは絶対に私情を挟まない。例え顔見知りであろうとも、決められた禁忌を破れば問答無用で死をもたらす。それはきっと仲間であってもそうなのだろう。だからこそ、彼が・・・彼等が味方である事の頼もしさは疑う余地は無い。きっと、ギリシャの色欲と嫉妬から護りきってくれる事だろう。

 

「ギリシャガチャの神、SSRを引いたのは良い傾向だねぇ君たちぃ。うん、アフロディーテとかヘラじゃなくて本当に良かった。私は美醜で言えば確実にアウトだからね・・・」

 

「醜い者程他者を醜いと断ずる」

 

「突然のヘラクレス!?」

 

「ヘラ来たら呼んでください(真顔)」

 

「師匠、神様に翻弄されてばかりだったもんね。事あるごとに『強くてニューゲームしたい』って呟いてたから・・・」

 

のしのしとハデス召喚祝いにやってきたヘラクレス・・・

 

「ハデスが来ただと?それは良かった。目の前で冥界の価値を無に出来る瞬間を見せ付けられる」

 

歪んだ夢をニヤリと告げるアスクレピオス。だがしっかり祝いを告げてくれる医神。それらの交流が効を奏したのか、再びサーヴァント反応が──

 

「し、神霊!神霊反応です!今回のサーヴァント、神霊クラス!高天ヶ原にも反応あり!」

 

「なんと、更に神を招くとは。誰だ?予想の範疇ならばそう悪くないのだが・・・」

 

その輝きが、高天ヶ原にもこちらにも。その一同の反応に応えやってきたものは・・・

 

「めぇ~」

 

「羊!?」

 

「「「「「めぇ~」」」」」

 

「沢山!?」

 

羊。サーヴァントサークルから沢山やってくる羊。とめどなく溢れる羊が、召喚室を埋め尽くしていく。

 

「何これ!?なんの状況!?どうなってるのかね!?君達どんな場所に買いに行ったの!?」

 

「スヤァ・・・」

「ぐぅ・・・」

「むにゃむにゃ・・・」

 

「リッカ君!?マシュ君!?オルガマリー所長!?」

 

「「「「スヤァ・・・」」」」

 

「カルデア職員一同~!?」

 

眠ってしまったカルデア職員一同。寝損ねたゴルドルフはその状況を見守るのみ。羊に埋め尽くされた召喚サークル室。無論健在である王は愉快げに見据える。

 

「案ずるな、無害な者らだ。むしろ喜べ、貴様らのような現代社会に生きる者が懇意にすべき神格だぞ?」

 

「神なの!?この羊の皆が!?」

 

「まぁ見ておれ」

 

──皆様!さぁどうぞ!柵です!

 

「「「「「めめめぇ~!」」」」」

 

黄金の柵に引き寄せられ、跳躍を始める羊たち。一匹、二匹、三匹。ゴルドルフは見つめる事しか出来ない。

 

「何かねこれ!?何かねこれ!?」

 

「まぁそう逸るな。リラックスして眺めるがよい。聖杯酒だ。飲むか?」

 

「逆になんでそんな落ち着いてるの!?我々の主要スタッフ皆おねむなんだけれど!?」

 

「落ち着いて副所長。これは非常に高品質なヒーリング効果のあるぐぅ」

 

「シオンスタッフ!?並列思考の賜物なんだね解説ありがとう!」

 

──すやぁ・・・

(すぴぃ・・・)

 

やがて、形を成す。安らぎと睡眠をもたらす神。ギリシャのまともかつ良心を司る神が一柱。

 

『──ヒュプノス、召喚に応じた。これより、お前達の安寧を護ろう』

 

「ヒュプノス!?確かギリシャにおけるタナトスの縁者で、睡眠をもたらす神様だったよね!?こんなファンタジーでファンシーだったの!?」

 

『この羊は、お前達の睡眠効率を高める羊だ。寝れば全ての疲労と傷を癒す。床であろうと、屋外であろうとも。戦闘は不得手だが、お前達の安らかな生を・・・約束しよう』

 

「楽園の精鋭すらも問答無用で眠らせる安寧、貴様ら生き急ぐ現代人に最も必要な加護かつ安寧であると思うが、どうか?懇意にして損はないぞ、副所長?」

 

「「「「「めめめぇ~、めぇ~」」」」」

 

「解った!よーく理解できたとも!よろしく頼むよヒュプノス神!だからそのだね!」

 

「むにゃむにゃ・・・」

「すやぁ~♥️」

 

「「「「めぇ~」」」」

 

「この穏やかな大惨事をなんとかしてもらえないかね!?私一人でカルデア運用なんて出来るはずが無いだろう!?皆、きちんと自室のベッドで寝たまえよ~!?」

 

突如訪れた、安寧の嵐。楽園の精鋭にすら届く安らぎと穏やかな一時。それをまた、穏やかに受け入れる王。保護しつつも、困惑しきりながらも、なんとか受け入れるゴルドルフ。寝息響き渡る召喚の最中。もう一つの高天ヶ原、反応の出所には──

 

「あなやぁ・・・おっきぃ・・・」

 

「まるで意味が解らぬが・・・」

 

見上げる山のような・・・『かまど』が、聳えるように召喚されていた。見上げる者達の畏敬と困惑を、一身に集め──




NG召喚 全員おねむな為次回へ引き継ぎ──

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