人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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ダ・ヴィンチちゃん「愛弟子、このナノマシンを見てほしい!温羅ちゃんが纏めてくれた資料を見れば一発で理解できる筈さ!」

「・・・神の威光、ギリシャ時代の神々のナノマシン・・・!?そしてこれは、ゼウスのもの・・・!?こんなものを手に入れたのですか!?」

ダ・ヴィンチちゃん「あはは、資料にはいきさつも書いてあるから読んでおいてね。さぁ、それで本題なんだけどね?」

ロマン「医療にはナノマシン治療も存在する。かなり最先端の技術で、普及はもちろん難しい。だけど楽園の設備と、ゼウスのナノマシンの力があれば・・・身体を生まれ変わらせるくらいは、出来るんじゃないかな?」

オルガマリー「生き返らせる・・・身体を・・・、・・・!キリシュタリア!」

ロマン「あぁ。彼が全力を取り戻してくれたなら、きっと僕らの・・・リッカ君の力になってくれる。そして、ここからは僕の提案なんだけど。君と、キリシュタリアがいればきっと出来る筈なんだ。『理想魔術』が。マリスビリーが言っていた、アニムスフィアの真髄が」

オルガマリー「・・・ロマニ・・・」

ロマン「もう、世界をリッカちゃん一人に背負わせちゃいけない。ボクたちも、リッカ君と並び立てるくらいじゃないと。キリシュタリアなら、きっとそれが出来る筈だ」

ダ・ヴィンチちゃん「だからこれは、君に託されたんだ。最後に君の判断を、ギルくんは信じてくれる筈さ♪」

オルガマリー「・・・キリシュタリア・・・」

「・・・行ってきます!」


これからも、頑張るために

『私の身体が、治るかもしれない・・・?』

 

楽園カルデア、集中治療ドック。重篤患者を治療、或いは安静にさせデータを取るための最高峰の医療施設。北斗神拳のトキ、ナイチンゲール、アスクレピオスが管理する医療運用機関であり、此処を利用したのはマシュ、オールマイト。そして・・・今神代回帰ポッド『すまない』にて治療を受けている元Aチーム、キリシュタリア・ヴォーダイムである。その寝耳に水な報告を、カルデアス名誉所長オルガマリー・アニムスフィアより受けた彼は目を丸くする。

 

「正確には新生ね。あなたの破壊し尽くされた回路・・・その破壊されたラインを舗装し新たな道にして、全く新しい魔術回路を製作しあなたに譲渡、移植する。あなたは魔術師として、生まれ変わるということになる。ギル達が持ち帰った、未知のナノマシンによって」

 

キリシュタリアは幼少、或いは少年の際に魔術回路に致命的な損傷を受けた。それは父からの刺客であり、体内に密接に絡み存在している魔術回路をショートさせ破壊するという、才能と生きざまを破壊するに等しい悪辣極まるもの。キリシュタリアは服装と魔術礼装の杖で誤魔化しているが、服の下の肉体は枯れ木の如くに痩せ細り、劣化と老化が見るも無惨な状態であった。楽園に来てからは大分安定し、治療されてはいるが・・・ズタズタにされた回路はまだ治っていない。元来治るものでもない。それを、彼女は治せると断言した。

 

「私も驚いたけれど・・・彼があなたに宛てて託したもの、それはギリシャの天空神、ゼウスの祝福を宿すナノマシンだったわ。人類が歩みの進歩を止めてしまう程の超絶的な未来文明の産物。それを、あなたに投与して魔術回路を新生させることを試みる。あなたはギリシャの全能神、ゼウスの力をその身に宿すことになるわね」

 

『よしてほしい。そんな素晴らしいものはリッカ君やマシュに与えるべきだよ。彼女たちこそ、あらゆる祝福を与えられるべきだからね。私の人生の小競り合いの精算に、そんな至宝を使うわけにはいかない』

 

キリシュタリアはそれをやんわりと否定した。ゼウスの名前を知らない筈はない。それがどれほど素晴らしいものか、そしてそれを自分に託せると判断してくれたオルガマリーの判断がどれ程嬉しいか。だが、だからこそ自身は受け入れられない。

 

『私はまだ、楽園に来て重用されるような価値を示せていない。リッカ君やマシュ、君達やカルデアスタッフ・・・君達の慈悲と優しさのお陰で此処にいる様なものなんだ。そんな私が、王様達が手に入れた戦利品だけをもらうのは、その・・・』

 

「ズルみたい?」

 

『凄くズルいよ、間違いない!カドックはあんなに頑張って、マスター達のチーフのポジションを勝ち取った。Aチームの皆も、自分に出来る事を求めて頑張っている。私もそう在りたいんだオルガマリー。最低でも特異点をリッカ君とコンビ攻略でもしないと、自分の過ちを消すことは・・・』

 

 

「・・・。真面目、誠実、それでいて妙なところで頑固。あなたってそうだったわよね、キリシュタリア・・・」

 

苦笑するオルガマリー。キリシュタリアは楽園に来てからオルガマリーに『紅茶はいいよ・・・いいんだよオルガマリー・・・』とニッコニコでフジオカタイムに割り込んできながら紅茶キャンペーンしてくる為、本来の彼の人格は把握している。彼は『愉快な』人間なのだ。実力と実績で気後れしがちかもしれないが、話しかけたらまず友達になれるくらいには。現にギル達がいない間、マスター達とアニメ観賞会してガチ泣きしていたくらいだ。

 

「でも、あなたに万全になってもらいたい・・・なってもらわなくてはならない理由は他にもあるわ。あなたは、私達が万が一道を踏み外した際にストッパーになってもらう役割を託した筈。──そんな傷付いた身体で、リッカに勝てると本気でお思いかしら」

 

『・・・思わないし、君達と戦いたくはない。──だがそれは、私達が助け合う事で未然に防ぐべき問題だと思う。リッカ君には楽園の皆が、君が付いている。起こり得ない想定で、強力すぎる力を持つのはやはり・・・』

 

「理想魔術。──アニマ・アニムスフィア」

 

『・・・!』

 

それは、キリシュタリアが掲げていた魔術理論。実現出来ていたならば、間違いなく封印指定は免れない失われた魔術。キリシュタリアの秘奥。オルガマリーは告げる。キリシュタリアを全盛にしたい理由を。所長の決意を

 

「かつて、魔術とは宇宙から授かっていた力。占星術の元となった惑星の並び、人類が観測する最大級の魔術回路。神代環境にて振るうことの出来るアニムスフィア史上最大の『机上の空論』。・・・──ゼウスの力を宿し、私の固有結界環境を神代にカルデアスが同じ状況に変化させる事が出来たなら・・・実現できる」

 

『固有結界は世界を塗り替える大魔術。その心象に『神代環境』というコロニー、ビニールハウスを作り環境を整える。・・・天空を支配するゼウス神の力であるならば、可能だと?』

 

「出来るわ。いいえ──楽園に、出来ない事はない。リッカの対になるあなたが持てる、最大の術を取り戻す。それが今回の狙いよ」

 

オルガマリーは二つの可能性を考えた。マスターとしての最悪がリッカであるなら、最高の魔術師はキリシュタリアとの確信。その関係を遵守するならば、キリシュタリアが手落ち、不調のままでは話にならない。リッカと戦うのが想定なら、万全以上の万全でなくば土俵にすらならない。──リッカを抑止するマスターとしてのキリシュタリアの、最後の手段として。そして・・・

 

「そして、千年の歴史を持つヴォーダイムの君主たる魔術師のあなたが楽園を全力でサポートしてくれる。リッカと肩を並べて、一緒に戦ってくれる。そんな願いを込めての提案もあるけれどね」

 

リッカだけに重荷を背負わせない。戦いの重荷を、君しかいないというプレッシャーを親友に与えない。そんな決意を、キリシュタリアに彼女は託したいのだ。自分は所長、決して職務放棄や万が一はあってはならない立場である。本当ならマシュ、リッカの隣で戦いたいといつでも願っている。だが、リッカやマシュが自分に出来ないことをしてくれる様に、マシュやリッカに出来ないことが自分には出来るから。それが、所長という役割。自分は、彼女達の背中を見守る戦いを選んでいるから。

 

「アニムスフィアと言う名を冠した魔術を、あなたがリッカの隣で振るってくれたなら。・・・勝手だけど、私も傍にいてあげられている気がする。そんな風に思っちゃって」

 

『──素敵な考え方だ。理屈や建前を並べられるよりずっとずっと腑に落ちたよ』

 

キリシュタリアもまた、その想いと願いに正しく理解を示した。彼女は楽園の為、誰も失わない為に最善を尽くしている。最高の魔術師として、私の親友をサポートしなさい。そう、親愛の叱咤と彼は受け取ったのだ。

 

『解った。そういう事なら、私も提案を飲もう。リッカちゃんがサーヴァントと暴れまわっている間、私とドクターで後ろからビーム撃ったり隕石を落とせばいいんだね?』

 

「私の固有結界の中限定でよろしく頼むわね・・・まだ試してはいないけど、私の心象は二重構造になっているから破壊する第一風景ならきっとやれる・・・筈よ、きっと」

 

『やれば出来るさ、何事も!リッカ君には、普通の女の子としての人生も歩めるようにしなくてはならないからね。そういう魔術師関係の苦労は、私達でサポートしていこうか!』

 

あなたの力が必要。友情を、楽園を護る為に。そう告げられたキリシュタリアは応える事を誓う。彼女が掴んだ、無類の友情を護る為に。

 

(リッカ君。君の積み重ねてきた研鑽に並ぶために私は大変なズルをする。ごめんよ・・・でも、君は私達に出来ないことをやってくれた最高のグランドマスターであることは絶対に変わらない。君が私達の・・・私の憧れであることは、何があろうともだ)

 

その身に神の力を宿す決意を行ったキリシュタリア。どんな力を得ようとも、楽園で懸命に生きる少女への尊重は失うまい。そう固く決意を露にするのであった──




アスクレピオス「手術を受けるんだな?では家族辺りに会ってこい」

キリシュタリア「え?」

アスクレピオス「ゼウスの力を身体に移す。口では簡単だし、楽園の設備ならば可能だ。だが、治療の際の苦痛や苦悶は完全に消してやれるかは未知数だ。最悪、精神崩壊するかもしれない。可能性の話としてだ」

キリシュタリア「・・・ナノマシン投与。それほど危険なのですね」

「ゼウス程の力が無くば、死んだお前の身体は甦らないのが結論だ。医神の名にかけ全霊は尽くすが・・・物事に絶対は無いからな。やるんだろう?」

「えぇ。所長と・・・オルガマリーと約束しましたから」

「なら行け。死んでも引き戻すが、自分が誰だったかすら解らないのはイヤだろう。介護相手は見つけておけ」

キリシュタリア「・・・はい」

そうして、彼は訪ねる。今の相棒にして、楽園に招いてくれたサーヴァント・・・



イニス「あぁ、キリシュタリア。こんにちは」

キリシュタリア「うん、こんにちは」

・・・海が見渡せるテラスハウスにて佇む、イニスの下へと。

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