アルテミス「どうだった~!?弓矢は帰ってきたかしら~!?」
イアソン「あー、すげぇのになって帰ってきたぞ。見て驚くなよマジで。リッカは?」
ヘラクレス「姫の祝いの為の召し物代えに自室に戻ったぞ」
イアソン「そりゃあいいや。じゃあついでにこいつを・・・うぉ!?」
オルテギュアー『──!!』
「あ、おい!何処に行くんだ!?おぉーい!?」
アルテミス「あれ・・・!」
オリオン「アルテミスの・・・神体!?どうなってんだ・・・!?」
汝、月を担う女神
「いやぁ、お姫様が誕生日だとは実にめでたいですなぁ。これは思いきりニルヴァーナするしかありませんなぁ」
「そだねぇ!まさか数日の間買い出しと買い込みしていただなんて!気合いが入りまくりだよねっ!私達もなんか随分久しぶりな出番な気がするし!よーし、着飾って御祝いするぞ~!お姫様、おめでとう~!わぁーい!」
楽園カルデア、御祝いムード真っ盛り。お姫様たるエアの誕生日を祝福せんと意気込むリッカとグドーシ。数日間見られなかった王やロマン一行がなんと、エアの為に買い出しを行っていたと言ってテンションMAXなリッカ、それを穏やかに見守るグドーシ。この楽園の立役者であり、尊重のお姫様を祝福する用意は万全にして磐石である。着飾りの主導を、カーマが担当しているだけあって見目麗しく、同時に凛々しく仕上がっている。
「一週間は続くパーティーですから、しっかり一張羅を用意しましたよ。これでどこに出しても恥ずかしくない素敵な夫婦・・・エフンエフン!パートナーに見える筈です。いえ、見えてもらわないと困ります!」
フンフン、と鼻息荒いカーマに穏やかなアルカイックスマイルを表すグドーシ。リッカとグドーシが一緒にいる事に感動と感嘆を抑えきれない様子のカーマをよしよししながら、リッカをグドーシは見つめる。
「いやはや、めでたいと言えば・・・リッカ殿も素晴らしく魅力的になられた。健康的に、健やかになられて・・・最早何処に出しても恥ずかしくない少女にござるよ、リッカ殿」
リッカは美味しいご飯を食べ(竜のステーキドカ食い)、適度な運動をし(ギリシャ式組み手・訓練)、良質な睡眠(モーツァルトを初めとした館内睡眠演奏)、最良の環境(言わずもがな)であるカルデアにて大いに成長した。かつての傷みきった髪、あばらの浮いた体、土気色の肌・・・初邂逅の時の死んだ眼差し。それらの趣が、いい意味で全く見られない様子に笑みを隠さない。
「えへへ、皆のお陰だよー。お陰さまで体脂肪率一桁以下だよ!胸とお尻はきちんと栄養行ってるから大丈夫!腹筋はもちろん、薄くバキバキに割れております!」
リッカもまた、その成長を自覚している。ケイローンに精緻に鍛え抜かれた身体は、普段は全く目立ちはしないが戦闘とあらば一瞬で筋肉の鎧となる。それが、リッカの目指した世界を救うカッコカワイイ女性スタイルである。行き着いた末のスタイルを自慢気に誇る姿。そして、リッカには密かな夢と目標があった。
「・・・これ、じゃんぬとマリーにしか言ってないヤツなんだけどね?カーマ、グドーシ、内緒だよ?」
「ほうほう、約束でござるよリッカ殿」
「遠慮なく言ってください?私が全部受け止めるのはリッカさんと、グドーシさんの全てなんですから」
その言葉を信じ、それでも照れ臭そうにかぶりをふりいじいじと指をいじりながら、呟くように告げる。それは、誰もが見たことがない(筈)のリッカの乙女な一面。
「・・・伸ばし、伸ばしてみたいんです。はい・・・お姫様みたいに・・・マリーみたいに・・・」
「伸ばしてみたい・・・?」
「なんでしょう?アキレス健とかいうボケではないのは解ります。・・・あっ!もしかして・・・!」
カーマは一足早く察する。リッカの反応からして、伸ばしたいものは、世界を救う為に自重し、省みてきたもの。
「か、髪を・・・髪をね。ロングヘアーに憧れているのです、はい。どうしても戦闘やレイシフトの時には邪魔になるから、セミロングが限界なんだけど・・・いつか、伸ばしてみたいなぁって・・・」
女性の命である髪。それを伸ばしてみたいと言うのが密かなリッカの夢であるのだ。長髪とはリッカの憧れ。エアやオルガマリー、カーマやじゃんぬ、アルテミス・・・自分の周りにいる女性は長髪が多い。マシュが短髪である事は救いとなっていて、短髪も大好きではあるが・・・やはり実用という観点でも伸ばせていない自身の乙女な証を、腰の高さまで伸ばせたら。そんな細やかな素敵な女性の証に、密かに憧れていたりするのである。それは、本当に信頼できるものにしか告げていない切実な想いである。
「えっへへへ・・・いつか世界が平和になったなら、伸ばしてみたいなぁといつでも思っているわけです!その為にも、なんとしても完全平和を取り戻そうね!」
拳と武器を置いた時、いつか本当に平和に戻った時にロングヘアーに挑戦する。それがリッカの、細やかな夢なのだと語るのだ。エアや皆ほど似合っていなくとも、いつか新しい素敵な自分に挑戦してみたい。それを、密かに胸に秘めているのだ。
だからこそ、エアのような素敵な長髪の女性は憧れなのである。泰然と、毅然と、それでいて美しい立ち振舞い・・・お姫様の在り方を何より尊く感じているのだ。リッカにとっても、エアを初めとしたロイヤルズは何よりもの憧れでもある。無事に帰ってきて、彼女は安心と喜びを抱いていたのだ。
「リッカさん・・・。そうですね。格闘や戦いをする際に長髪は危険ですよね・・・」
「リッカ殿・・・心得ましたぞ。いつか、平和な世が訪れた時に必ずや・・・」
そう、秘めたる想いを聞き届けていた二人が頷いた時──それは、やって来た。
『───!』
「え!?あれ!?アルテミスの弓!?」
瞬間、猛烈な勢いで飛来してきたものにリッカは目を見張る。それは預けていた筈のアルテミスの弓。買い出しに行って帰ってきたのだろうか?しかし、先の見た目とはあまりにも豪華さが異なっている。そして、感じる力そのものも先とは比べ物にならない。
「これ・・・より神格に近付いていますよ。月の力に満ちています。一体どこでこんな事に・・・?」
「ふむ、これはリッカ殿に会いに来た様子でありますな。何かを、リッカ殿にしてあげたいと仰有られています」
「私に?・・・え?シューティングスター・オルテギュアー・・・?それが名前?本当の名前・・・?」
『──!!』
「わ、わ!?わぁぁあぁあ!?」
瞬間、リッカの周りを猛烈に回り始めるオルテギュアー。いつの間にか進化していた愛弓が、自身の周りを取り囲むように回り始める。黄金の嵐の如くに巻き起こる風に、カーマとグドーシは目を細める。
「な、なんですかこの弓!?いきなりリッカさんに何をするというんです!?」
「これは──心配いらぬでござる。これは祝福。リッカ殿に施してあげたくてたまらぬと言った御様子。信じて、託してみましょうぞ」
「ほ、ほ、ほわぁああぁあぁあぁあぁ!!?」
黄金の嵐の中で叫ぶリッカ。あわわとふためくカーマ、穏やかに見守るグドーシ。その黄金の嵐は部屋の中に満ち、やがて数分の後に収まり──
「はぁ、ビックリしたぁ・・・。どうしちゃったの、オルテギュアー・・・?」
「「───」」
「?どうしたの二人と・・・ん?あれっ?」
嵐から解放されたリッカが、違和感に気付く。頭に感じる重量がいつもより重い。なんぞや、と思う頃には『脚程に伸びた髪の毛』に思い至る。
「え?・・・ロング、ヘアー・・・?」
変化はそれだけに留まらない。リッカの身体には様々な変化が起きていた。しなやかに成長した肢体、先より膨らみが大幅に増している胸、そしてお尻。くびれも更に美しくボディラインを形取り、橙のロングヘアーに麗しく伸びた睫毛に彩られた二重の金色の瞳に、人外の領域に整えられた鼻筋、顔立ち。それは、誰がどう見ても明らかな──
「め、女神・・・──?」
「リッカ殿、リッカ殿。鏡をどうぞ」
「なんか制服がキツくなったかなぁ?あれ、鏡?・・・何この理想の私!?え、これ!?これが私!?」
「ま、まさか、その弓を持ってる間は・・・弓を使っている間は・・・」
「女神、それに類する肉体になるのでは・・・ないのでござるかな?」
「え、え!?──うぇえぇえぇ!?」
オルテギュアー・パワーにより突如得た『女神の姿』に困惑の叫びを上げるリッカ。オルテギュアーの持ち主はアルテミス。その祝福は狂気の月光の如く──
リッカ「スリーサイズ計ったらさ・・・91、53、89になってた・・・でも弓をオフにすると・・・」
オルテギュアー『スンッ』
「元に戻る!これ、アルテミスモード・・・なのかな?オルテギュアーの力・・・?」
カーマ「リッカさんの願いを叶えてくれたんでしょうか・・・?長髪になりたいというリッカさんの願いを・・・!」
グドーシ「まさに女神がごとき麗しさでござった。オルテギュアー殿がオンになっている間限定ではありますが・・・」
リッカ「うんっ!夢を・・・叶えてくれたんだね。オルテギュアー」
『♪』
「・・・ありがとう、アルテミス・・・ギル。お姫様・・・」
グドーシ「あ、成る程。そういう事でござったか」
カーマ「?何がです?」
「髪が伸びるのはもちろん、身体も豊満になるのは何故なのかと。それはアルテミス様の理想の女性像であり・・・」
リッカ「女神の理想像・・・!?」
「オリオン殿の、タイプなのでしょうな」
カーマ「・・・・・・・・・・・・・・・」
リッカ「あ、成る程ぉ・・・」
・・・カーマにより、男性の前でみだりにその姿を晒さないようキツく告げられたリッカであった。
カーマ「グドーシさんの前では積極的にお願いいたします」
割とカップリングに甘いカーマでもあった。
リッカ「これから、よろしくね。オルテギュアー!」
『♪』
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