人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

1235 / 2547
イアソン「行き止まりを捉えた!?マジかローマ!」

ロムルス『マジ、ローマ。其処にて見据えたことにより見出だしたのだ。楽園とは、偽りでは無かったのだ』

ダ・ヴィンチちゃん「ふむふむ、確かに隔壁みたいな反応があるね。だが、これは──」

(このスペースシップの質量で・・・いけるのかな?ワープした速度でもギリギリ・・・?)

ロマン(僕らがルーンや魔術で補強して・・・うぅん、どうだろう・・・危険すぎるような・・・)

ギル『秘匿回線だ、そのまま聴け』

((!?))

『船長めの判断を信じよ。もしその判断が愚か、かつ痛快な判断であるならば。我等の備えが確実な一打になろう。よいな、怖じ気付くなよ?』

((・・・何をする気なんだろう・・・))

リリィ「行きましょう、皆さん。私達は、ギルガメスを討ち果たさなくては!」

マーリン「そうだとも。負けられない理由があるのさ!我々には!」

イアソン(・・・まだ情報は少ない、が・・・もう出たとこ勝負しかねぇ。スピードが無きゃなぶり殺し、どのみちこの船しかねぇんだ。クソッ、妨害がなけりゃ木馬が使えたんだが・・・!)

「うだうだ言っても仕方ねぇ!!──やるぞ!!」

リリィ「・・・見ていてください、マーリン・・・!」


突撃!アトランティス・ボーダー!!

『示した道の果て、私は感じ取る。この手は確かにZIPANGの門を捉えた。未だ勇猛と覇気は残っているか、楽園のローマ達よ』

 

理想郷より飛び出した楽園のメンバー達に降り注ぐ高潔な声。道を切り拓けしロムルスの道筋が、ついに暗中のZIPANGを捉えたという。無論引き返すという発想も退路も無い。最大戦速で飛び出したイアソン操るスペースシップが、夜空を駆け抜ける。

 

「当たり前だ!未来の王が志半ばで諦めてたまるかってんだ!そのままナビゲートしとけ!行き止まりにぶち当たるつもりでアクセルガン踏みしてやるんだからなぁ!!」

 

『それでこそ、ローマだ。行け!宇宙の未来を担いし者達よ!』

 

ZIPANGへと至るため、全速前進の突貫を敢行する楽園アルゴノーツ。最早まどろっこしいすべてを振り切るために、腹を括ったイアソンが迷いなく一行を導いていく。しかしZIPANGの試練は、まだ終わっていない。

 

「悪天候、来る!また宇宙船を襲ってくる!どうするんだいキャプテン!?」

 

嵐、雹、雷雨。それら全てが意志を持って道を阻む。神がもたらす超絶的な天変地異。それらの対処を仰ぐも、災害においてやれることなど、一個の生命にはあまりにも少ない。そう、災害はどうしようもない。無いならばどうするのか?

 

「ふふん、メンタルシェアは大いに奪われてしまったがまだ私には楽園所属という大きなアドバンテージがある!遠くから観ているだけの観客と、実際のキャストの住む世界がどれだけ違うかお見せしよう!」

 

「マーリン!?」

 

「見ていたまえリリィ!綺麗なだけの花が何を為せるか!それは彩ることさ!我々の行く旅路を、色鮮やかにね──!」

 

マーリンは歌うように紡ぎ、杖を掲げる。それらは何の変哲の無い綺麗な花を作り、産み出すだけ。だが、それはこの試練において最適解の一つと成り果てた。

 

「あ、嵐が花になっていく!?雨や雹が、綺麗なだけの花に変わっていくぞ!?無害化しているんだ!どういう事だいマーリン!?」

 

ロマンの言う通り、襲い来る災厄と災害が全て花へと変化していき、独りでに退けられていく。有害なものから無害なものへ。かつてのビーストⅡに行った生命の変化、それをマーリンは精神観点でおこなったのだ。

 

「見た限り、これは私達の認識と世界を誤認させていると踏んだのさ。本当の宇宙は金色だからね。だから懸けてみたのさ、皆の災厄のイメージを綺麗な花道の認識にね!幻惑と惑わしは私の得意技だもの、十八番といっていい!直接殴りかかってこなければキャスターは便利なクラスなのさ!」

 

迫り来る災害が、無害な花道に変わる。マーリンの幻術と近しい攻撃であったからこそのファインプレー。騙しあいならばこの夢魔に勝てる者はそういない。精神部門なら尚更だ。

 

「よぅし!このまま行けるかもだ!」

「珍しく役に立ちましたね、マーリン!」

 

「そうとも!やっぱりマーリンお兄さんが一番なの・・・──これは!?」

 

鼻高々であったマーリン、即座に顔面蒼白。一行の眼前に現れたものを捉えたが故だ。それは先の景観に繋がるものではない、極小隕石の流星群達。即座に花に変えようと試みるも、まるで効果がない。

 

「あれはこの空間を作り出している者の力じゃないな!力が直接的過ぎる!純然たるエネルギーだ!物理的になんとかするしかない!サーヴァントの皆、出来るかな!?」

 

「馬鹿言うな!あんな量、一人一人やってちゃどうしようもねぇ!死にに行くようなもんだ!」

 

即座に迎撃に移ろうとするも、最早その隕石は個人で対処出来る量を越えている。弾幕と言っていい程の量、一つ一つ砕いていては変わらない。こうなれば最早、隙間を縫って果てへと辿り着くしか無いほどの賭けに出るしか無い。気合いを入れて、ハンドルを握り直した時──

 

『否。神が道を阻むならば、こちらも神がごとき腕で未来を掴むまで。──進め!ローマ達よ!』

 

力強くロムルスが宣言すると同時に、イアソン達が進む道から紅き光線が無数に放たれ、隕石を蹴散らし吹き飛ばす。それはまさに、あらゆる神にも劣らぬ新しき神の御業。ローマそのもの。

 

「神祖ロムルス!?自分も攻撃できたのかい!?ならもうちょっと早くやってほしかったなぁ!?」

 

『見守り、導くもまたローマ。しかし進退窮まる困難ならば砕く。その苛烈なる激情もローマである。つまり』

 

「要するに皆ローマってこったろ!よし、サーヴァント組は動力室に行け!ワープ速度で行き止まりにぶち当たるぞ!!腹括れよォ!」

 

サーヴァント達の魔力を動力に回し、一瞬ワープ速度に達する勢いで障壁を突き破る賭けに出たイアソン。一行は躊躇うことなくキャプテンを信じ、動力室へと駆け抜ける。

 

「ルーンと魔術を前方に張れ!ぶち抜くぞぉ!!」

 

隕石をロムルスが蹴散らし、意を決したイアソンがワープスイッチを押し込む。瞬間、光速に限り無く近く加速した宇宙船が、目的地への距離をゼロにする。瞬間、大激震が船内に巻き起こる。

 

『ディメンジョンウォール、接触!力場発生!!』

 

「ブチ抜けぇえぇぇ!!!」

 

ZIPANG宙域の果て、境界に全身全霊で突き当たるスペースシップ。ここで案内は途切れている。ここさえ乗りきればZIPANGの道が切り拓かれる。──しかし。

 

(チッ!質量が足りないか・・・!ぶち抜くにはちょっと小型過ぎたのかもしれねぇ・・・!)

 

あとほんの少し、あと一押し。それを成すための絶対的な質量が足りないことをイアソンはキャプテンの勘で感じ取る。出力も速度も申し分ない。ただ、突破した先にスペースシップが無事か否かの保証が無い。最悪ZIPANGの地でバラバラになる可能性も存在する。だからといって撤退など出来ない。ともかく今、進むしか無いのだ。たとえ砕け散る事になろうとも。

 

「こうなりゃ、暴走上等だこの野郎──!!」

 

壊れきる前に穿つ。壊れきる前に駆け抜ける。誰か一人でも辿り着けばどうとでも・・・!そうイアソンが決断しかけた時。

 

『──ふははははははははは!!其処まで行けば上出来だ船長!最後の一押し、用意してやったぞ!!』

 

「あぁ!?」

 

イアソンに掛けられた、黄金の哄笑。安心するやらイラつくやらで外を見やったイアソン、いやクルー全員が度肝を抜かされる。

 

「──ポ、ポセイドン、か・・・!?」

 

そう、スペースシップの何千倍も巨大な戦略級戦艦。美空色の鮮やかなボディ。最古の景観から、今の技術では再現できない最先端の流線型フォルムに生まれ変わった海神神体。それらがZIPANGの障壁に、圧倒的質量ごと叩き付ける。

 

『寸での差だが間に合った様だな!これこそギリシャの海神を徹底改良せし、超高速航行型戦艦!ロールアウト直後の進水にすら堪えうる、マルドゥークに匹敵するスピードを誇る星の海を行く神!その名も!!』

 

──アトランティス・ボーダーですっ!皆様、一気に行きますよ!

 

『威を示せ、アトランティス・ボーダー!!これが我等の──お邪魔しますである!!ふははははははははは!!!

 

「(突っ込む気概も失せた)」

 

推定数千メートルあるであろう質量戦艦が、次元の障壁に叩き付けられた時。神秘のベールが脱ぎ捨てられる。

 

『──見事だ。人の子らよ。その気概と勇気、認めよう──!』

 

突入した者達の脳裏に響く、掛け値ない称賛と共に──




リリィ「う・・・ん・・・」

一同は、投げ出された先で目を覚ます。先の海神はワープホールに帰っていく中、広がる風景。

青い空、白き雲、のどかな草原。そこに一行は投げ出されていた。一行は、リリィだけが目を覚ましている。

「ここは──」

『──よーうこそいらっしゃいましたー!!スペース温泉街!『ZIPANG・アナヤランド!』!皆様を歓迎、歓待いたしまーす!!よーこそよーこそー!!』

遠くに見えるのは──超巨大な女神像が鎮座する、誰が見ても温泉街。ようこそ、イザナミスパへ!とネオン輝く、あまりにもレジャーなリゾート街的景観──

どのキャラのイラストを見たい?

  • コンラ
  • 桃太郎(髀)
  • 温羅(異聞帯)
  • 坂上田村麻呂
  • オーディン
  • アマノザコ
  • ビリィ・ヘリント
  • ルゥ・アンセス
  • アイリーン・アドラー
  • 崇徳上皇(和御魂)
  • 平将門公
  • シモ・ヘイヘ
  • ロジェロ
  • パパポポ
  • リリス(汎人類史)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。