イアソン「こいつが、エキドナか・・・」
(なんだ?なんで何もしてこない?ぼーっと突っ立ってるだけか?)
エキドナ【──・・・・・・・・・】
オリオン「・・・・・・あ、あの?」
【・・・・・・(シュボッ)】
「「「「!?」」」」
エキドナが取り出したもの。それは──煙草。どこからか取り出した煙草を、ケルベロスの亡骸に腰掛け肺に煙を吸い込む。
【───あんたたちさぁ。なんか・・・】
エレシュキガル「・・・!?」
【すっぱいもん持ってない?】
人の姿を手に入れた魔獣母胎が求めたもの。それは、つわりに効くとされるすっぱいものであった。
魔獣の女神たるエキドナは、無感動と共にイアソンらをぼんやりと見やる・・・
【あんたらさぁ・・・せっかくまとまってた秩序を自分から壊すなんて相当業が深いヤツよね。なんでわざわざアタシら起こすわけ?そんなに生存競争好きなの?子育てもさあ、ようやくしなくていいかなって矢先にさぁ・・・最悪なんですけど】
呆れたように、うんざりげに煙草を吹かず女王エキドナ。圧倒的な力、そして威厳、威圧。そして──それにそぐわぬ気だるげなマタニティーブルーの権化な様子でイアソンらの前に、ケルベロスの残骸に腰掛ける。彼女はイアソンらを見ていない。ぼんやりげに、立ち上る煙草の煙を見つめている。
【クリロノミアを集めて旦那を叩き起こすにも、ほとんど持っていかれちゃったしさぁ・・・アタシもなんかアバズレと嫉妬やらなんやらの汚いクリロノミアで構成されてるし。もうホントなんなの?アタシ何の為にいるか解る?あんたら】
『暴走し、制御を喪っていたのではないですか?いえ、暴走したものには、その知性には暴走した果ての結論が在る筈。あなたは暴走の果てに目覚めた理性と知性で何をしようとしていたのです?』
ケイローンの答えに、エキドナはぼんやりと空を見上げる。濃紺の腰まで届く長髪に褐色の肌、そして紅眼黒目の恐ろしげな女神は、なんでもないように答えた。
【まー、旦那の復活ね。知ってる?テュポーンって言うんだけどさ。ゼウスをタイマンで負かせて、デバフ喰らって火山にぶちこまれたバカな旦那。そいつを甦らせて宇宙の実権を握る、・・・っていうか。奪われた復讐を果たせって言われたのよ。誰かは知らないけどさ】
「なんだそれ。暴走は誰かの差し金って事かよ!誰だソイツは!何だってわざわざ神を死体蹴る真似をしやがる!?」
【アタシに聞かないでくんない?アタシに元々そんな考えたりする機能とか無くて、クリロノミアで混ざった人格がこうしてエキドナとして喋ってるだけなんだもん。アタシだってさー、別に心とか人格とか要らなかったしさー。出来ることなら子供産んでるだけで満足していたかった訳。考えるの面倒くさいし。アタシの中の女神うっさいし】
怠惰、そして虚無。倦怠感、母の持つ負の側面を押し出した物言いのエキドナ。彼女の言葉を信じるなら、本来なら魔獣プラントでしか無かったエキドナに憎悪や復讐の概念を与え、結論を起動させた存在がこの宇宙の何処かにいるようなのだが・・・
(確かカストロのヤツもおかしくなってたって報告は聞いてた。・・・もしかすると、ギルガメスのやらかしに乗じて他の思惑も絡んでるって事なのか?・・・スペースイシュタルの件も含めて・・・かなり長丁場な攻略になりそうじゃねぇか。ともすりゃ、シーズン跨ぎになるくれーの・・・)
イアソンの沈黙にも、エキドナは特に何もする事はない。攻撃の意思も敵対の意志も極めて稀薄なようだ。彼女は夫の復活を暴走の結論としていたようだが、其処には断固としたものは感じられない。コインの表裏のように、まーなるようになれば?と言った様子だ。意志を得た結果、それらに意義を考えた結果・・・本当に自分のやりたい事では無かったのかもしれない。エキドナ自身は、野心を持った輩では無いと一行は感じ取る。こうして向かい合いながらも、エキドナはぼんやりしているだけだ。
「なんか、人型になってから毒気が抜けたなこの美人さん。戦わなくてもすみそう?」
【アタシ、夫にしか何も求めないタイプだから。アイツもアイツでギリシャの時代を終わらせる役割の星側の怪物だから、ギリシャ終わってる今起こす必要も無いって言うか。・・・あぁそっか、あんたらが魔獣、アタシの子等を殺してくれたわけだよね。ケルベロスも】
母として当然の疑問。憤怒と悲嘆に暮れるべき戦いの理由にも──エキドナは面倒くさげに煙草を吐き出しケルベロスの血溜まりにて火を消したのみだった。
【ウチの子供がお騒がせしました。まー子供がやらかしたって事で水に流してくんない?アタシ、オツムが弱いのしか産んでないっぽいし】
「か、敵討ちとか・・・しないんすか?」
【なんで?『また産めばいい』だけなのに。勝手に産まれるんだから一つ一つに拘る必要なんか無くない?ガキは産まれりゃ、上等じゃん?】
マンドリカルドの疑問に、エキドナは魔獣の女神として答える。母親は産むだけでいい。どうせ千、万単位で産まれるものに拘る必要が何処に在るのかと。それは弱く、次代に託す事を至上とする人間とは余りに異なるもの。
【代わりの無い子供なんていないわけよ。どれもが遺伝子でデザインされたり、そういうチューンがされて産まれてくる。産まれさえすれば勝手に土地に根付いて増えていく。そうして数は勝手に増えていく。アタシはそりゃあ、たくさんの子を生産したけどさ。本気で愛したガキなんて一人いるかどうか。顔もフォルムも同じなヤツで、勝手に増えていくようなガキに拘る方がおかしいわけ。まぁ、そりゃ品種改良やらなんやらはするけどね。いくらでも産まれるものを、代わりがあるものを一々大切に拘るなんてそれこそ無駄ってヤツ。気に入ったヤツが出来るまで、何度でも産み直せばいい。そういうもんじゃない?子育てって】
彼女にとって子供は労るものでも、慈しむものでも尊いものでもない。勝手に増え、代えがきき、死のうと産み増やすだけのもの。死んで悲しい命など無い。甦らせたい命などない。彼女の産み出す命には唯一性が無い。あるのはただ、生産版図を増やす為の生命体のみ。極めて強靭かつ、多種多様な生命を産み出すプラントが導き出した、愛情と尊厳の欠落した母胎。それが、エキドナの全てなのだ。だから、いくら子が産まれようと滅びようと感慨など無い。死んだ数だけ産み出せる。いくらでも産み出せば勝手に増える。それが、エキドナの母の在り方だ。
「そんなこと・・・!そんなこと、哀しすぎるわぁ~!産み出した痛みと苦しみと、生への歓喜と感謝もないなんて~!それは、あまりにも・・・!」
【・・・ヘスティア?あんたがヘスティア?マジに?】
その冷徹な母胎の女神に、家庭の守護女神たるヘスティアが言葉を突き付ける。それは、余りにも冷淡で、冷血で、物悲しい持論を哀れんだものだ。イアソンもそれに続く。別に子育て論はどうでもよく、態勢を整える時間稼ぎだ。
「ハッ!邪神やティアマト、アマ公やイザナミがいなくて良かったな!見てくれは綺麗でも、やっぱりテメーはギリシャの女神だぜ!根本からイカれてやがる!」
「やー、一夜の付き合いとしてはいいかな、ゲフンッ!命に責任を持たないなら産まない!だめ、一夜の過ち!」
「リッカに会わせるわけにはいかないわ。あなたは此処で止める!」
「王族の王子でももちっとマシなんじゃないすかね・・・まぁともかく、此処で決めるっすよ!」
「エキドナ・・・!あなたをこのままにはしておけない!私も・・・!」
エキドナを、少なくとも母たる存在として相容れてはいけない。彼女と、夫であるテュポーンが目覚めたならば。生命体の樹系図が全く違うものとなる。一同は、魔獣の女神を止めるべき対象として此処に定め武器を取る。
「全員!覚悟決めろ!別動部隊、アルゴノーツのラスボスはあいつだ!!」
今こそ、この美麗なる魔獣の女神を討ち果たす。最後のミッションが幕を開ける。
───そして。
【へー、あんたがヘスティアね・・・そう。なら・・・】
「・・・!?」
【アタシも【本気】でやったげる。そうしないとうるさいのよ。【こいつら】が】
エキドナが気だるげに立ち上がったその時──ヘスティア神に。純然たる【殺意】が向けられる──
オリオン「ッ!?ぐぉあぁあぁああっ!!?」
マンドリカルド「ぐっ、なん、すか!これは・・・!?」
エレシュキガル「あ、頭が・・・割れそう・・・!?」
イアソン「こい、っつは・・・!アフロディーテの・・・!?」
エキドナ【精神汚染の干渉、だっけ。それをヘラのクリロノミアで辺りにばら蒔いた訳。つわりよりはチョロいでしょ】
ヘスティア「み、皆・・・!?」
エキドナ【アタシの身体を形成したのはさぁ、ヘラ、アテナ、アフロディーテの三柱。本当ならいがみ合い殺し合ってこんな風にまとまったりしない訳。常時つわりみたいな気持ち悪さと吐き気がして気持ち悪いのホント。でもね、今だけは楽なわけ。一つになってるの。解る?なんでか】
ケイローン『皆さん!これは・・・!?』
【それは簡単。こいつらはね、ヘスティア。あんたに上に立たれるのが嫌なわけ。神々の女王の座を譲りたくないわけ。だから細胞が叫んでるのよ。【ヘスティアを殺せ】ってね】
ヘスティア「そんな・・・!」
エキドナ【言えた義理じゃないけどさぁ・・・醜いんじゃない?コイツらって。まぁ、アタシも人様の事情なんて知った事じゃないしさ】
魔獣の女神を構成する細胞の殺意と共に──
【だからさぁ・・・悪いんだけど、殺すから】
エキドナは、ヘスティア達に牙を剥く──
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