人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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宇宙船

ナイア「皆様、大丈夫でしょうか・・・」

XX「大丈夫大丈夫!だって私達はギルが選んだプラチナ企業戦士ですよ?理不尽なリストラ以外、負けるはずがありません!」

ナイア「そう、ですね。狩人の報酬や仕事も、ずっとやりやすくなりました。皆様のお陰です。だからこそ、護らなくては。皆様を」

XX「はい!楽しい職場の仲間を、なんとしても──ん?」

ロバ『ブフン』

ナイア「まぁ!?ロバ・・・!?」

「ど、何処から入ったんです!?」

『ブフヒン』

「?設計図?」

『フヒン』

「これは・・・」

「「かまど・・・?」」


ギルガメスのシーズン作り

『人工知能、起動を確認。ディオスクロイは上手くやってくれたようですね。人格パターン・ケイローンを励起。それでは、講義を始めるとしましょうか』

 

招かれた地下室で待ち受けていたもの。それはケイローンが編み込み、組み上げていた人工知能設備、そして・・・いくつかの流体金属らしきものが納められている瓶。彼は自分が消え去った時の為に、あらゆる会話パターンを組み込んだAIを製作していたのだ。此処に来ること、自分が帰らぬことすらも想定して。

 

「うぉお!?あ、アンタどこまで用意がいいんだよ!引くわ!大いに引くわ!」

 

『ははは、自分がやられて全てが御破算になるのは王のみです。財産はこうして分割し遺しておくもの、そう、賢者ならではの破滅への対策です』

 

(最近じゃ明日の献立くらいしか考えたこと無いぞ俺。一応王様だけど・・・)

 

『空に浮かぶ射手座のスキャンで、皆さんの個体認識は終わっています。これが、あなたの新生アルゴノーツということですね?』

 

「ハッ、残念だが今のオレはキャプテンだがリーダーじゃない。単なる侘しい一部隊だ。そんな事はいいから本題に入れ本題に!アンタは俺達に何を残したんだ?」

 

イアソンの言葉に頷き、ケイローンは説く。これより行うべき方針と、これより取り戻すべき未来の為の布石を。

 

『よろしい。・・・知っての通り、ギルガメスの裁定・・・否、シーズン掌握により銀河全域の破壊、いえ・・・『改革』が行われました。きっかけは些細かつ愉快なものでしたが、私達ギリシャもまた神を討ち果たされ、神が主導となるギリシャ宙域は完全に停止。それほどに電撃的に、ギルガメスは迅速に現シーズンの方向性を定めたのです』

 

「質問、いいかな?ドクター、元サーヴァントの観点から見て、ただ一騎のサーヴァントに神を、宇宙を破壊できるのかな?そりゃあ、ギルは強靭かつ無敵といってもだ。サーヴァントはあくまで、生前の一側面を切り取ったもので、例えるなら戦闘機一機みたいな戦闘力が相場な筈なんだけど・・・」

 

『確かに、サーヴァントの格式においてギルガメスは特別強靭ではありません。トップクラスではありますが、強度だけならヘラクレス、オジマンディアス、カルナといった方々も並ぶでしょう。──しかしギルガメスは『世界を切り裂く』事が可能な英雄だ』

 

天地乖離す開闢の星。そして、乖離剣エア。最早説明不要のそれにて、ギルガメスは示したという。

 

『天の理。そう彼は呼称していました。ただの一刺しで物理法則毎『世界』を破壊し、混沌原初の宇宙・・・【地獄】を顕現。荒れ狂う三つの宇宙を重ね合わせ、かき混ぜる事により発生する時空断層、それらを世界に叩き付ける創成前夜の終着。・・・それが、『天地乖離す開闢の星』の最大出力』

 

シーズンを一撃で終わらせ、自らがシーズンを創る反則クラスの一撃。世界そのものを討ち果たす、人類最古の宝物の真価。世界が準備も対策もする暇もなくに撃ち込まれたそれは文字通り破壊した。世界の理を、世界そのものを。

 

「・・・ギルが一回、ゲーティアと魔神達に叩き付けたあの一撃が近いのかな。あの一撃は本気で、全身全霊ではあったけれど。エア姫や人理そのものに配慮していた事は間違いない。それを・・・宇宙にかぁ・・・」

 

 

「相当笑い者にされていたのと、花嫁探しに本腰入れるつもりだったのかぁ、ギル君・・・オルガマリーの固有結界も無しに撃てばこうなるわけか・・・」

 

「まぁそうなるだろ。財宝は凄いが本体は大したこと無いなんて言うヤツは何も解ってねぇ。『指先一つ』だけでヘラクレスを倒せるヤツが本気を出して堪えられるわけないだろ。慢心を嗤うヤツがいるが、慢心してないあの金ぴかがどういうもんか、俺達は見てきた筈だ」

 

奇しくも、二人の王は異なる自身への感情で本領を魅せた。片や、尊く雑じり気の無い尊重と敬愛、そして至宝の覚醒と愉悦に満ちる人理の守護という王道。片や、自らの愉悦と星を掴む為に、醜態を嘲笑い続けた世界への裁定。其処に違いは無いのだろう。世界を護るも、滅ぼすも『決めた』のなら躊躇はない。英雄王が求めるものは、自らの愉悦、王道。そして、彼が『決めた』事こそが天地の真理。それが絶対王者の証なのだから。

 

『──原初の地獄を前に、最早今シーズンのサーヴァントに残されていた道は一つでした。主人公が次回作で不覚を取るように、強制的に次シーズンの在り方に落とし込まれた。セイバーとなるか、ランサーとなるか。そして神々は、狩られる立場の『ランサー』として、弱者へと貶められた。混沌の宇宙ならではの裁定ですね』

 

即ち、滅びか、何かを遺すか。ギリシャ宙域に叩き込まれ、現シーズンを叩き壊し、セイバーウォーズの到来を示した。それらは全て、礎として使われた。神体を砕かれ、砕かれたものは捨て置かれた。

 

『神々・・・否『理』を示す存在は皆破壊されました。そして残ったのは、ギルガメスが望むセイバーを選定する宇宙。今シーズンの成り立ちの経緯は、こんな所です』

 

「・・・インド宙域は、どうなったのだ?あそこも神々の多い、私の出身地域だ。ギリシャに勝るとも劣らない場所だと自負しているが・・・」

 

『まず、アルジュナが仕留められ、破壊神の手翳を奪われました。それらを蔵に納め、獲得したギルガメスは、躊躇いなくそれを使用したのです。・・・七回宇宙を滅ぼすとされるそれを、インド宙域に限定し、完全に消失させたのです』

 

「!──も、もう・・・インド宙域は、存在していないのか!?私が、ワープホールに飲まれた直後に・・・」

 

『・・・残念ながら。ギルガメスは傲慢ですが、公平です。彼が配信してきた動画の閲覧者の一人一人の素性を洗い出し、自らに不敬を働いた視聴者とその出身宙域を徹底的に破壊し尽くしたのです。無傷で残っている宙域は・・・そもそも自身らが配信で対抗していたローマ宙域、王妃の提供する動画しか見なかったフランス宙域、そもそも電波が届かない秘境、ZIPANG宙域のみ。そこ以外は、セイバーウォーズに巻き込まれました。そして、このシーズンを終わらせるには・・・ギルガメスを討ち果たすしかありません。ギルガメスを倒し、シーズンをリセットするしか。彼はまだ、シーズンを確定させてはいません。セイバーを花嫁にし、初めて完成させるつもりでしょう』

 

だが、保有している戦力に翳りはなく、磐石な態勢で待ち構えている。彼を倒すということは、宇宙を倒すと言うことだ。

 

『今の現状はこんな所です。・・・これを聞いて、きちんと立ち上がることは可能ですか?皆様方。サーヴァントユニバースならではの世界の脆弱さが生んだ、この黄金の戦争を討ち果たすことは出来ますか?』

 

ケイローンは、可能な限りに事実を伝えた。無用な犠牲や野次馬根性なら、早死にさせてはならないとの配慮の為だ。それは賢者の世話焼きであったが──

 

「長々とご苦労さんだ。今更心配するなよケイローン。宇宙をブッ壊したのが『黄金(ゴールド)』ギルガメスなら、こっちは世界を救った『白金(プラチナ)』ゴージャスが付いてるんだ。格ならこっちの方が上だ上!」

 

『なんと・・・』

 

「今更ビビると思うなよ、ケイローン。オレ達に乗り越えられない困難は無い!いいや、困難はな、乗り越える為にある!冒険譚を彩るスパイスとしてな!」

 

「ボク達の知ってるギルはね、そりゃあ大盤振る舞いの豪華散財の王様さ。そしてボクらはそんな王様の『財』なんだ」

 

「ギルガメスが自分だけなら、私達は皆で王道を突き進んでいるという訳さ。ならなんの問題もない。いつものように、私達が勝つだけで、蹴散らすだけなのさ!」

 

一同は頷く。誰よりも輝く王を知っているから、

そんな王様に財と呼ばれた誇りがあるから。困難に恐れを成している暇はない。

 

「ギルガメスの太鼓持ちはいい!そんなのよりあるんだろ、逆転の手法!さっさと教えろ、大賢者!」

 

『──ふふっ。えぇ、もちろんです』

 

ケイローンは頷く。必ず希望は繋がれ、此処に来ると確信していた。だが、それがまさか、同じ『英雄王』が造り上げたものだとは。王の財達だとは。

 

『流石にこれは、予想外でしたね。だからこそ』

 

だからこそ──世界は面白い。そう結論付ける、大賢者の頭脳であった──

 




ケイローン『よろしい、それでは此方も情報を開示しましょう。アデーレ、マカリオス。大丈夫ですか?』

マカリオス「・・・発想のスケールがでかすぎて・・・」

アデーレ「皆様、本当に凄いのですね・・・」

『ふふ、気を落とさず。ゼウス神に助け出されたあなたたちは、ギリシャの希望なのです。・・・それでは、これを』

牡牛『ブモ』

牡牛にインストールされる、二柱の神殿の情報、その座標。そして、ポセイドンの亡骸の映像

『ハデスの神殿、ヒュプノスの神殿は掌握すべきです。ハデスの神殿の効果は死と再生。生命ではない無機物、物質のリサイクルを可能とします。銀河警察と協力すれば、宇宙の秩序は復活するでしょう。そしてヒュプノスは睡眠、精神活動の停止、艦隊の機能を止められる筈です。ポセイドン神に関してはまた後程』

エレシュキガル「まさかのエルキドゥ案件なのだわ!?」

ロマン「あれ?ヘスティア神の神殿はないのかい?」

ケイローン『ヘスティア神の神殿は『家庭のかまど』全てです。家庭の数だけ、ヘスティア神はいるんですよ』

マカリオス「ヘスティア様は自分からオリュンボス十二神の座から降りるくらいの神様だからな」

アデーレ「だから、神がかまどを作りさえすれば・・・」

ケイローン『そして、これが本題です。皆様にはこれを』

そして、渡されたもの。それは、水銀形状の──ナノマシン。

『神々の力、そして技術。クリロノミア・・・人類を神にすら引き上げる、神の力の結晶です。今から、これらの使い方をお教え致します──』

楽園の叙事詩は今、神の領域に手を伸ばす──

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