人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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承太郎 部屋前

リッカ「承太郎君、テスト採点してほしいなんて張り切ってるなぁ!いつもは日曜日にやるのに、金曜日に声かけなんて!よーし、私も頑張らなきゃ!挨拶回りも終わらせて、今日は予習もやっちゃお!・・・ん?」

【全身全霊で捉え、打ち込め】

リッカ「・・・貼り紙?」

【昨日の自分を越えろ】

【二手遅れたら死ね】

【一人で駄目なら仲間に頼れ】

【スタンドはスタンドでしか倒せない】

「ジョジョの奇妙な冒険の・・・モットー?」

承太郎「リッカ」

リッカ「わっ!?」

「・・・。呼んでおいて悪いんだが・・・」

「あ、予定悪くなっちゃった?いいよ大丈夫!ゆっくり休んで?」

承太郎「・・・いや。ジュースくらいはある。おめーも少しは休まねーともたねーぞ。一日くらい、俺とサボってけ」

リッカ「もー、不良なんだー!・・・じゃあ、採点の後にね!」

承太郎「あぁ」

(・・・流石に、リッカにまでは手出しはしねーと思うが。やれやれ・・・悪いことしちまったかもしれねーな・・・)




日常の中の非日常 その1

「承太郎君、課題出来た?採点するから見せてくれる?」

 

「あぁ、頼む。こいつだぜ」

 

リッカは今、空条承太郎の楽園に設けられた部屋へと脚を運んでいた。最高級の家具が仕入れられた和室・・・過ごすに何の不自由の無い部屋にて承太郎と学校の勉強を集中して行っている。学校から出された課題の勉強、そして志望する大学のテストを自作してもらい、リッカに教えられながら解いている。言うなればリッカは家庭教師な立場で彼に勉強を教えていた。

 

「承太郎君、やっぱりやれば誰よりも出来るんだね!ホリィさんの育て方が凄いんだよ、流石!」

 

「ったく、親を褒められるのは嬉しいもんだが、返せるもんはそんなにねーんだからよ。持ち上げるんじゃあねぇ。こっぱずかしいぜ」

 

リッカは高校生ではあるが、大抵の大学の範囲の勉強は完璧に暗記しているし、教える事ができる。それは彼女が、誰かの代わりとして。二度目の人生の器として期待された為に詰め込まれた知識である。そのため彼女にはよく意味の解らないものではあったが、楽園に来てから自身の身にするために必死に勉学に励み身に付けたのだ。こうして、誰かに教える家庭教師の道も閉ざさないために。それが今、承太郎の血肉として存分に活かされている。リッカは確かに、手応えを感じていた。

 

「学校にはちゃんと行ってるし、喧嘩もしてねー。品行方正な学生ってヤツだぜ」

 

「うん!暴力は、本当に必要な時にだけ。流石承太郎君!やればできる黄金の精神!」

 

「そんなんじゃねー。同年代でこんだけ踏ん張ってるお前を見て、コイツは腐ってる場合じゃねぇと焦ってるだけだぜ」

 

決して口には出さないが・・・承太郎はリッカを深く尊敬し一目置いていた。世界を救う旅路を歩み、やり遂げた女。泣き言一つ言わず成し遂げたタフガイ。自分とそう歳も変わらない少女。来歴を聞き、親の愛など全く無かったドス黒い環境から、決して道を踏み外さなかった魂。其処には確かに祖父、ジョセフ・ジョースターの言う『黄金の精神』が宿っていると確信していた。

 

そんな彼女が奮闘し、まっすぐ生きている。それを知った以上、てめーも自分を甘やかした生き方をする訳にはいかねぇ。真っ直ぐ、誰にも恥じねぇ生き方を選ぶ。男女ではなく、クラスメイトでもなく。一人の人間として、彼女を承太郎はスゴいヤツだと認識している。そんな彼女のように、自分も誇り高く生きてみたいと思う。だからこそ彼はタバコも止め、不登校もせず、勉学に力を注ぎ込んでいた。学生とは、勉学が本分だからだ。(生活の規範が改まった事を知った母と祖父が楽園に毎日連絡を入れた事を知った際には流石に怒鳴り散らしたが)

 

「ホント覚えた事忘れないよね承太郎君!やっぱり学者に向いてるよ!感想文とか論文みたいだし!学会とか出れるよ!」

 

「やれやれ、褒めて伸ばすと調子に乗るぜ。こんな風にな」

 

『オラァ!!』

 

「わっ!?あ、ジュース!スタプラかぁ!ありがとー!休憩しよっか!」

 

それに、承太郎から見てもリッカはうっとーしくない。これは大事だ。学校はどーだとか、家庭はどーだとか、旅はどーだとかを深く聞いてこない。必要以上に踏み込んで来ないのだ。きちんと友達だろうと越えてはいけないラインを弁えている。それでいて、答えるべき事はあちらから聞いてくる。

 

(スタンドは見えねーようだが・・・一安心だ。めんどくせー事件に巻き込まれねーんだからな)

 

男女の関係ではないが、もっと気心の知れた付き合い・・・週二日家に集まりダラダラするような友人的感情は懐いている。一緒にいてうっとーしいと感じない女性は、母に続いて二人目だと感慨深げに思案していた。彼は、日本的女性が好みなのだ。

 

・・・しかし、承太郎の気持ちはざわついていた。リッカが部屋にいることではない。頼りになる戦友めいた感情であり男女同士のときめきではない。もっと物騒な、毎日行われる『試練』。

 

「・・・リッカ。気を付けろ。実は俺は毎日『試練』を行っててな」

 

前までの自分ならば『さっさと帰れ、アマ』と済ませていたが、今日は尋常ならざる静けさと、リッカが此処にいることそのものに意味を見出だし、あえて彼女に全てを語る事とした。

 

「試練?・・・ニャルくんの?」

 

「あぁ。詳しい話をするとだ。俺は一日一回『全身全霊の連打』と『限界の時間停止』をヤツに要求されている。それが出来なきゃ、ヤツに殺されるというルールの下にな。・・・楽園に来てからずっと、俺は一日一回『全力で』戦っている」

 

そう、スタンド『星の白金』のパワーとスピード、そして特殊能力たる時間停止の極限を常に問われている。あの小さい邪神の・・・仮にスタンドと仮称した場合。自室にて彼は常に『襲撃されている』危機を切り抜けているのだ。そして──

 

「『今日は一度も襲われていない』。・・・たまたまリッカが来るこの日にだ。だが・・・キナ臭いとは思わねーか。あの邪神が、手を抜くとはおもえねー」

 

「──もしかして・・・『私が来るのを待っていた』?」

 

リッカがそう、口にした瞬間──。二人しかいないその空間の空気が重く、どろりと濁ったものへと変貌した事を二人は肌で感じ取る。リッカは素早く机の下に潜り、承太郎は警戒を行う。

 

「わ、私スタンド見えないし持ってない・・・!ごめん承太郎君!頼らせて!」

 

「あぁ。どうやら今回は『おめーを護りながら戦え』って注文らしいな」

 

素早く周囲に、全身全霊の注意を払う承太郎。今まで受けてきた邪神からの試練は、かつて母を救う為に行った旅路と同等、それ以上にハードかつ壮絶なものであった。何故ならば、邪神は『今まで戦ったスタンド』と、恐らく『これから戦うであろう』スタンド能力を振るってくるのだ。それも、自身が全力でなければ突破できないギリギリの力で。一瞬の油断と気の緩みが、文字通り死を招く。

 

それを終わらせるには、一日一回小さな邪神を捉え、渾身の連打を叩き込めばいい。だが、それも容易ではなく・・・『昨日より多く、威力の高い連打』を『正確無比に直撃させる』という、極限までスタンドパワーを酷使する条件が付けられている。どちらも欠ければ不合格。試練は一からやり直しだ。常に昨日の自身を越える・・・それが、邪神が要求した課題なのだ。そしてその際、【邪神は本気で命を狙ってくる】。彼にとって、その試練が終わるまで微塵も油断は出来ない緊張が常に付きまとっている。(休みの日は襲ってこない)

 

(今日はたまたま平日にテストを見せようと思ったのも操られたのかはわからねーが・・・とんでもねー責任を背負わせてきやがって。あとでクレームを送らせてもらうぜ・・・)

 

もう既に試練は始まっている。耳の痛い静寂の中、承太郎は辺りを見渡し、天井を見上げ──

 

『このラクガキを見上げた時』

 

誰が、いつの間に書いたかも解らぬラクガキを見つけ。

 

『君は』

 

背筋の凍るような悪寒と共に振り向き。風も無く捲られるノートから這い出る【それ】を認めた瞬間に──

 

『死ぬ』

 

「───!」

 

【クスクスクスクス・・・】

 

試練の始まりを、心で理解した──。

 

「『星の白金(スタープラチナ)』!!」

 

【死ぬニャルゥウゥウ~~~ッ!!】

 

日常の中の非日常が、今日も始まる。




星の白金『オラオラオラオラオラオラァ!!!』

【ニャルウ~~~ッッッ!!】

スタープラチナの息をもつかせぬラッシュが轟く!しかしニャルの対応は驚異的に速いッ!ラッシュの間を、流れるようにすり抜けていくッ!

承太郎(速い!これは、灰の塔か!)

【ニャブゥーッ!!】

『オォオラァアッ!!』

迎撃するスタープラチナ、しかしそのスピードは驚異的に速かった!スタープラチナのラッシュをすり抜け駆け抜け、掠めた承太郎の制服が『削り取られる』!通った場所の全てを削り取る、恐るべき消滅攻撃ッ!

【捕まえて見るニャルよ!見るニャルよ~!】

その速さのまま部屋を飛び回るニャル!推定される速さは新幹線の速さ!スタープラチナの精密さと動体視力が捉えられるギリギリだッ!

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!』

ラッシュをブチかます!しかし当然当たらないッ!隙を認めた承太郎の頸動脈目掛けて、ニャルの触手が迫る!

【死ねィ!お兄ちゃんニャル!!】

だがしかし!これは承太郎の蒔いた罠ッ!!

『オラァッ!!』

【ニャブフ!?】

あえて懐に潜り込ませ、スタープラチナが両拳にてニャルを挟み込む!動きを読ませ逆に捉えたのだッ!後はラッシュを叩き込むのみ──だが!

「ぐ、ぬぅ──!」

【ニャフフフ♪同じ技にかかるのはマヌケの証ニャルよ♪】

カミソリッ!かつての『女教皇』のようにッ!スタープラチナの手の中でニャルはカミソリに変化したッ!

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!!』

【やぶれかぶれは当たらんニャルよ。君のスタープラチナはゼロから誰にも触れぬ速さに加速するのがウリニャル。それを活かして、わかっちゃいるけど止められないスタンドにするニャル!かっぱえびせんのようにッ!相撲で言う電車道!アメフトでいう北南ゲームッ!君のスタンドを攻略不能にするのはたった一つのコンセプト!】

「ッ──」

【シンプル・イズ・ベストニャルーッ!】

瞬間ッ!ニャルが弾けるッ!その破片はまさにッ!まさにかつての仲間たる花京院のスタンド!『法王の緑』のエメラルド・スプラッシュ!

「く、ぉおぉおぉっ!!」

ガードを行い難を逃れる承太郎!違う!今日のニャルは殺意が違うッ!攻撃手段があまりにも違うッ!

【今から君は何かを護る為の戦いをするニャル。護るべき相手に、君はどうするか。それを見つけるニャルよ】

「いつにもまして、訳のわからねー事を・・・」

リッカ「承太郎君・・・!」

【たまにはリッカちゃんを護られる側にしてあげるニャルよ。君が『一手』遅れない為の選択を選べるか──じっくり採点してあげるニャル!】

「──!」

【できないなら、『天国』に行けず死ぬだけニャル~~ッ!!】

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!!』

リッカを護り、邪神を完膚なきまでにブチのめす・・・両方やらねば、明日は来ない。

「やれやれ・・・ヘヴィな試験だぜ、こいつはよ・・・!」

リッカ「じょ、承太郎君・・・!」

承太郎の全盛を保つ為の戦い。世にも珍しき『リッカが対処出来ない』戦いが今、始まる──!

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