人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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リッカ【フッ】

『鎧生成』

ゴトン

『腕部崩落』

リッカ【・・・やはり人間の悪意で編まれた私のアーマー、とうとみの前に無力・・・ありがとうございます、いいプレシャスでした・・・】

『数分したら治った』

カーマ「何で生きてるんですか」

パールヴァティー「辛辣ですね!?実は、皆様に紹介したい方がおりまして。その方のお陰なのです」

リッカ「?何処にもいないような?」

瞬間、パールヴァティーの姿が変わる。インドの召し物から、桃色の着物へ。

「そう!ぱぁるばてぃ様に助けられし、江戸城にて御殿女中の勤めを果たすもの!あるいはかつて、三代将軍家光公の乳母であったもの!性は斎藤、名を福!賜りし名号、春日局(かすがのつぼね)と申します!」

カーマ「拾い食いとかみっともないと思わないんですか?」

パールヴァティー『拾い食いじゃありません!元凶に引き寄せられていた所、漂っていたこの方をこう、ぬるりと助けていただけなのです!』

リッカ「女傑だ!女傑をお救いになられた!」

春日局「私は女神に救われ、そして選ばれ申した。それらはきっと、かの大奥にまつわる異変を解決なされよとの天の思し召しによるもの!皆様!どうぞ私めをお仲間に入れてくださいませんか!この春日局!大奥に関して右に出るもの無きと自負しております!」

グドーシ「王様と姫様を見ているようですなぁ。リッカ殿、藤丸殿。如何なされましょう」

藤丸「もちろん歓迎します!よろしく、春日さん!」

リッカ「仲間はいくらいてもいいよね!皆で頑張ろー!」

春日局「ありがとうございます!それでは、いざ大奥へ!とりゃー!!」

カーマ「パールヴァティー、もう交代しないで結構ですよ♪お疲れ様でした♪」

パールヴァティー『トゲが、トゲが取れてないですよカーマ!?』

キアラ「はい、どうか穏便に♪いい子いい──」

カーマ「触らないでくださいっ!!?」

グドーシ(受難ですなぁ、カーマ殿・・・)

大奥 御錠

リッカ「しまってるぅ」

『ハッキングして開けよう』

リッカ「そだね!よろし──ふぁ!?」

瞬間、リッカの意志に反し左腕が持ち上がり、軽く扉に向けて振るわれた。──瞬間、扉が重々しく開け放たれる。

「と・・・徳川ギミック特効・・・」

シオン『リッカさん、でしたっけ?あなた、もしかして封印指定されてません?魔力数値とか、所有宝具数とかバグりまくってるんですけど・・・』

リッカ「ヒロイン指数はどのくらいでしょう!?」

はくのん『なくはない』

リッカ「ファー!!(死)」

カーマ「よしよし、甦れ甦れ・・・」

グドーシ「拙者にとってのグランドヒロインでござるから安心なされよ。ささ、前に進みますぞリッカ殿」

リッカ「うぅ、成長性E・・・」

カーマ「(о´∀`о)」

藤丸(オレにとってのヒロイン・・・。グドーシさんみたいにさらりと言えるようになりたい・・・!)

マシュ(立香さんのヒロインで、ありたいです・・・)


私の存ずる大奥がこの様な場所であろう筈がございませぬ

「え・・・なんですかこれ。私の知ってる大奥とまるで違うんですけど!?なんですかこの天竺風味な景観!?」

 

春日局が驚愕する程の混沌極まる大奥の様相が、一同をお出迎えする。徳川の為だけに作られた女の園であるその場所は、かつて春日局が把握していた地理とは似ても似付かぬものへと変貌していた。

 

全体的にとにかく薄暗く、襖に極彩色の絵巻がしたためられている。襖も床も天井も朱を貴重とし、それでいてどこからか妖しげな空気にさせる香の匂いが漂ってくる。大奥というよりは・・・いかがわしいホテル街のラブホテルと言った形容が相応しいと思われる程だ。

 

「今更ですけど、オレやグドーシさんは男なんですが・・・入って良かったんでしょうか?」 

 

「お聞きなさるな。この春日局、全力で見てみぬふりをしているところです。時代によって、その時の禁制は変わっていくものですし・・・というかですね!?襖、廊下!天井、座敷!欄間!」

 

「グドーシさんとリッカさんと一緒にやったマインクラフトでこんなの作りましたよね~」

 

「「ね~!」」

 

「そう!!なにもかもが私の知っている大奥とはちがぁーう!なので!ここは大奥ではありません!ですから大奥の法度を適用しませんしてたまるものですか!のーかうんと!のーかうんとなのです!」

 

どうやらよっぽどこの淫靡でいかがわしいデザインはお気に召さなかった御様子の春日局。だからこそ、グドーシと藤丸の存在は容認されるとの事である。

 

『確かに、本来の大奥は世継ぎを恙無く産み育てる場所。他の胤が紛れたらえらいこっちゃですもんね。此処は大奥ではない!で乗りきりましょう!』

 

「うふふ。此処が大奥。学もない私は入るのも初めてでしたが・・・このように薄暗く閉塞感があり、息苦しい程の暗き情念、同時に甘露のごとき『何か』に噎せ返りそうな場所だとは・・・」

 

『確かに私とリッカの知る大奥とはちょっと違う。ホバー移動、全自動襖、ほとんどが空き部屋、全く表情が変わらない女中の皆様、おドム。尻のCGは逸品・・・』

 

「へー、大奥記って大分配慮してたんだね~。昼も夜も見境無く・・・フフフ、セッ」

 

『止めないか!(フランクリン並感)』

 

「なーんだ、動物園と変わらないじゃないですか。お猿さんの遊び場なんですね、大奥って。爛れた場所に相応しい爛れた愛憎、適材適所ですね♪」

「拙者、別に営みは穢れとは思わぬでござるよ。神も人も、二者合一で完成するものですからな」

 

「あわわわわわ・・・」

「マシュ・・・オレ、頑張ってスイートホテル最上階を予約できるようになるから・・・!」

 

「すとーっぷ!!ちょっと待ってください、皆様大いに大奥を誤解なさっておりますね!?なんですかホバー移動って!?」

 

大いに誤解を招く描写の数々に、大奥のプロからNGが入る。それはそうである。フリー営み自由空間などと言われては大いに心外と言うものだろう。

 

「こんな薄暗い地下迷宮の様な有り様は常の奥ではありません!確かに広く入り組んではありましたが、本来は解放感と清潔感に溢れた快適空間です!庭だってありました!」

 

大奥の存在意義、それは正室と側室が世継ぎを産み育む為の場所。手当たり次第に手を出し盛んになる外国のハーレムとは大いに違うのですと春日局は力説を行う。一同、ほへーと感嘆し大奥への印象を改め一つ賢くなるのであった。

 

『わ、私もてっきり・・・』

「ぱぁる様も!?むむむ、これは大奥の意味と意義についてご教育せねばならぬ予感!ご心配なく、乳母は即ち上様の養育係!人にものを教えるは慣れておりますゆえ!ささ、そこに正座です正座!」

 

『ほい。──じゃ、その前にやることをやる』

 

「───ッ!?」

 

はくのんの言葉と全く同時に、リッカの左腕が鼓動のように脈打ち震える。弾かれるように突きつけられた左腕は、びしりと眼前にある二つの扉の内の片方を指し示していた。

 

「おや、龍哮殿は正しき道──即ち、徳川がおられる地へと我等を導かんとしているのではないでしょうか?」

 

「と、徳川への殺意が凄い高い・・・」

 

『礼装『遠見の水晶球』。CCC御用達の、マップフルオープン。これと強化スパイクさえあればもっさり探索とはサヨナラバイバイ。部員の皆の反応も入れて・・・』

『隣で迷宮の観点を全部ひっくり返してる人がいた時、私はどんな顔をすれば・・・』

 

『時間をかけていられない理由が、私達にはある。タブレットにマップ送ります』

 

はくのんの記した迷宮の見取り図を、全員で確認する。リッカの左腕は、マップの先に続く道を示している。どうやら、龍哮は最短で徳川とそれに連なる全てを喰い殺したくて堪らないようである。

 

「これは善哉。藤丸殿、この情報を参考にし、何処に赴かれるかを決められよ。寄り道も近道も、道草食うもそなた次第。今回の騒乱、解決すべきはそなたなれば。そなたが先頭を切るは道理にござる」

 

グドーシは優しく藤丸に判断を委ねた。あくまで助力、手助けの位置を崩さない在り方に、藤丸は頼りきりにならないように気を入れ直す。

 

「進んでみよう。何か拾えるものがあったら出来るだけ回収する感じで、奥に進んでいこう!」

 

そう判断した藤丸に同調する一同。そして、一同は一階層目をなんら問題なく攻略していく。

 

「辺りにいる女中はどうしましょう?」

 

「なんですかあの不気味な外観は!公家の娘ならざる者を雇うとは言語道断!」

 

「・・・。皆様、此処は無闇なる殺生は避けた方がよろしいかと」

 

「良いことを言うじゃないですか、キアラさん。一寸の虫けらにもフィフティ・フィフティ・ソウルでしたっけ?」

 

『諺とは』

 

「一切衆生悉仏性、草木国土皆成仏。あらゆるものには魂が宿るもの。糧にせぬなら命は奪わぬが吉ということですな。では、此処は拙者が彼女らを停止させましょうぞ」

 

「峰打ちですね?おまかせください、峰打ちに関してはこのマシュ・キリエライトは一家言!盾にて峰打ちの真髄を御見せします!」

 

「ちょっと皆止めてぇ!?左腕が!私の左腕が見敵必殺しようとしてるぅ!?私の・・・!私の左腕がめっちゃうずいてるぅ!!」

 

「リッカ様!?疑問でありましたのですが、貴女様もしや薙刀振るうが似合う女傑なのでは!?」

 

(・・・あまりに脆弱な敵の配置。壊してくれと言わんばかりの点在。どうやら第一の禁は殺生な様ですな。マーラ殿、人が悪い仕掛けを作りなさる)

 

グドーシ、キアラの言葉に従い、女中の破壊は最小限に留めている。見つからぬ様、番人だけを仕留める様に細心の注意を払い。

 

「ほら、パールヴァティー?頭や首が転がっていますよ?いつもみたいに戦利品として飾ったらどうです?好きでしょうそういうの?」

 

『それはドゥルガーやカーリーの際の話です!パールヴァティーの私には関係ありませーん!・・・ガネーシャを思い出すので、供養していってよろしいですか?カーマ、あなたも手伝ってくださいな』

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ。楽園の皆さんに感謝してくださいね(いそいそ)」

 

「カーマ、パールヴァティーと同じくらいやさしい・・・!」

 

「カーリーやドゥルガーじゃなくて良かったですね~?間違いなくこんな風に点数稼ぎは出来なかったと思いますから(くすくす)」

 

『そ、それは確かに・・・。でも、優しくしたいと思った気持ちを、無視したくはないのです。だからこうして・・・』

 

「リッカさん、グドーシさん、はくのんさん。阿修羅」

 

『ブフー』

 

「遊ばないでくださーい!?」

 

「・・・切羽詰まった窮地ではあるのですが・・・なんだか凄く気分は楽になりましたね、立香さん」

 

「うん。・・・窮地にも笑顔を忘れない。オレたちは本当に、頼もしい人達に助けてもらっているんだなって──」

 

首か鳩尾か頭しか狙わないリッカの左腕をグドーシが鎮静しながら、一同は行き止まりを回避し一階層の区切りの部屋へと辿り着く──




リッカ「此処・・・区切りかな?」

キアラ「扉に、広き間取り。次の区画に通ずる場所なのは間違いなく──」

【──どうやら、食べ残しと時期尚早なお客様が同時にやって来たみたいですね。ですが、それもまた歓迎します。ようこそ、私の孵化の寝床へ】

シオン『・・・ビースト反応・・・!何処か嘘だと思っていましたが現実は非情でありましたか・・・!』

響き渡る、カーマと同じ声。現れしは、角を懐きし美女。カーマを淫靡に成長させた女体を示す、同じ顔の美女。

マーラ【こんにちは、楽園の皆様。まだお召し物は不十分ですが・・・こうしてお会い出来たこと、嬉しく思います】

リッカ「マーラ・・・ううん、ビーストⅢ・ラプス・・・!」

カーマ「───」

【はい。そしてこんにちは。戦う前から無様に、憐れに、惨めに負けてしまった私の片割れさん?】

淫靡に微笑むマーラ、不愉快げに眉を潜めるカーマ。──陰陽の側面が、此処に対峙する──

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