人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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摩玖主 総本山

マシュ「これは・・・」

総本山、其処で繰り広げられていたもの・・・それは『宴』だった。肉や魚、酒などが無節操に食い散らかされ、酒を飲み食らう僧の怒号に溢れている。

僧「がははははは!酒だ、酒を持ってこい!女もだ、女はこっちで酌をしろ!」

リッカ「な・・・生臭坊主・・・!!」

景虎「真昼から酒を飲み、肉を喰らうとは・・・」

「ん?なんだお前ら。あぁ、摩玖主様への参拝か?それは良い心がけだな。通してやるからアレを寄越せアレを」

マシュ「アレ・・・?」

「・・・あるだろ、な?心付けってヤツだよ」

森「うははははは!聞いたか豊!坊主が賂とんだってよ!」

豊久「わはははは!生臭坊主が何で魂ば弔えっか!」

「おもしれぇ!ぶち殺して文字通り仏様にしてやんよ!!」

リッカ「ステイ!二人ともステイ!?」

僧「・・・ん?なんだお前ら。楽園の者か。となると、あの御大尽の連れなんだな?」

リッカ「あ、ギルの事?」

「う、うむ。・・・やはり通っていいぞ。あの男の蛇の様な笑みを思い出すとたまらん・・・」

リッカ「・・・うわぁ・・・めっちゃイラついてる時の笑い方だぁ・・・エミヤとステイナイトやってるときとか・・・」

本堂

キャスター「ようこそ、総本山へ。我が主がお待ちかねですよ、こちらへ」

リッカ「豊さん、ちょっと待っててくれる?」

豊「言われんでも。僧や坊主の説法なんざ眠くなろうともさ、こうじゃこう。かー」

マシュ「寝ちゃいました!?」

リッカ(カドック、桐之助さん。これで大丈夫だよね・・・?念のため、連絡も切ってと・・・)










一端!大本尊の力!

「こちらが我が主、摩玖主大僧正でございます」

 

本堂──静寂ながら何処か魔物の胎動を思わせる空間に招かれたリッカ一行。其処よりキャスターが、自身のマスターたる存在を招く。現れしは、最高位たる大僧正の身分を名乗り、黒の僧衣に赤き羽根をあしらいし出で立ちの男。摩玖主大僧正なる存在が笑顔を浮かべ現れる。

 

「ようこそおいでなされた。楽園の御歴々」

 

「こんにちは、藤丸リッカです!こちらは私の大事な仲間達!」

 

「ほう、あなたが。それはそれはよう訪れなされました。あなたが、ね・・・」

 

大僧正はリッカを独特な目線で見やる。奇異、或いは特異・・・珍しい生き物を見やる様な、細めた視線。その視線に思うところがあったのか、景虎は最短に本題を申し入れる。

 

「単刀直入に伺いますが。あなた達摩玖主は、我等楽園と和議を結ぶと」

 

その申し出が真のものであるかどうか──それを掲げる楽園の問いに、愚問とばかりに大僧正は返答を返す。

 

「はい。争いは衆生を苦しめる空しい行い。神仏の仇たるバサラ信長が滅した今、最早我等が争う必要はございますまい」

 

「バサラ信長とは、やはり敵対なさっていたのてすね?」

 

「勿論でございましょう。バサラ信長こそはまさに地獄より這い出し魔王の顕現。争いを望まぬと伝えた我等に聞く耳を持たず日本全土を脅かし、魔界を作らんとする有り様。ほんに、よくぞアレを倒してくださいました」

 

「まぁ、あの魔王でしたらね・・・それで楽園と和議を結び、あなた方はどんな『天下統一』を成し遂げるのでしょうか?」

 

そう、天下統一・・・地を一つにし何をもたらすのか。どんな世界を築き上げるのか。明確な像、ビジョンが必要となるのだ。それを問いかけた景虎に、当然とばかりに大僧正は問い返す。

 

「無論、摩玖主大本尊様の力で衆生を救うのみです」

 

「摩玖主の力、ですか・・・?その様な神が本当に?」

 

「その通り。我等の神、摩玖主大本尊様のお力は無限にございます。その威光で、この世に極楽浄土を築く。それだけが我が望み・・・」

 

その口ぶり、信じがたいことに嘘は告げていない。本気で彼は信じ、願っているのだ。自らの神の救い、神の到来を。

 

「そんな神様、初めて聞いた・・・!どんな神様なんです?あまこっ、けふん。天照大御神に通ずる神格ですか?」

 

「神が世界を救う。確かにそれは素晴らしきものですが、生きている人々が神仏に祈りすがるだけになっては世が末になっているのではありませんか?神を信じるものこそ、彼女の様に日々を謳歌・・・邁進していかねばならぬものです。しかし摩玖主を信ずるここの僧は昼から酒を飲み、肉を食べ、僧にあるまじき堕落の極み・・・その様なものらが語る神の救いに理が本当にあるのでしょうか?」

 

リッカの疑問、景虎の指摘を、大僧正は笑い飛ばす。それらはあまりに些末、些細な問題でしかない。我等が神は意に介さぬと告げる。

 

「ははは!良いではありませんか。僧が酒を飲み肉を喰らおうと。我等の神は総てを与えてくださります。やれ禁欲だなんだのと小さいことは言いませぬ。天照大御神などと女々しき神、毘沙門天などというつまらぬ神を信奉している景虎殿は実においたわしい。どうですかな?この際、我が摩玖主大本尊に宗旨替えしてみては?」

 

侮辱に等しい言葉を吐く大僧正に、反応は二種に別れる。本質をまるで捉えぬつまらぬ戯れ言にリッカは戯れ言で返し、信じ奉る毘沙門天に唾を吐かれた景虎は激昂を表す。

 

「あまこーが女々しい!?それって女性らしさに満ち溢れてるって意味!?確かに!」

 

「毘沙門天をつまらぬとはなんたる無礼!そも

摩玖主大本尊などという仏は聞いたこともなし。いかなる神仏であるといいますか!」

 

「これは失礼致しました。慈悲深き我等が摩玖主大本尊から見ますと、この世の神はいずれも小さき神に見えましてな。そちらのリッカ様も、早く我等摩玖主に下ってしまえばよろしいかと。魔王を前に立ち向かえる人など、怪物や化け物となんら変わりなく。恐ろしきあなたを受け入れるは我等が神仏のみ・・・」

 

その言葉にキョトンとするリッカに対し、景虎と森君の気配が変わる。明確な──殺気である。

 

「──貴様」

 

「あ?てめぇ今リッ殿バカにしやがったか?しやがったよな?殺されてーんだな?上等だ、ぶち殺していもしねー神様の下へと送ってやんよ!!」

 

「はて?異な事を言われますな。摩玖主大本尊は絶対の理として、確かに此処におわしますぞ」

 

その言葉の瞬間──。一同、特にサーヴァント達に、のし掛かるような強力な重圧が放たれる。腕を振り上げることすら困難な、驚異的な魔力重圧が空間から放たれたのだ。

 

「皆!?大丈夫!?これ、魔力のフィールドって事だね・・・!」

 

「ほほほ。どうやらあなたとあなたのお付きには、身を以て我等が威光を知ってもらう他無さそうだ。──キャスター、あの少女を少し痛めつけてやれ」

 

キャスターが指示を受け、背後より──魔導僧兵を列挙させる。その数は、リッカが相手をするには十分な数ではあるが・・・

 

「鎧、展開できないか・・・!久々にやらなきゃいけないのかな!」

 

鎧が展開できず、やや動きが制限されている状態では多少の不利は否めない。まともに動けぬサーヴァント達を庇い、天下の名刀と自らの龍刃を抜き放ち前に出る。

 

「戦えぬサーヴァントを庇うとは。やはりそなたは人間ではないな。怪異・・・紛れもない妖怪怪生と同等の類いだ」

 

「そう?でもどんな私でも、私が好きな私なら問題ないから!」

 

「憐れな。そなたが懸命に世界を救った所で世界はそなたを受け入れはせんよ」

 

大僧正は、リッカを憐れむように、そして嘆くように言葉を紡ぐ。こんな状況でも諦めぬ、人間離れした勇姿を奇怪と・・・恐ろしいと世界は下すと告げる。

 

「そなたを崇めも称えもせん。人を逸脱したそなたを衆生は疎み、蔑み、挙げ句の果てに追いやるであろうぞ。そなたは永遠に報われず、救われん。寨の河原がごとき人生を救うことが出来るのは、我が大本尊のみだ」

 

「私、もう救われてるもん。もう自分で歩けるし、道も決めれる。これ以上の救いは必要ないから!」

 

あくまで大本尊のみがそなたを救う。そう言って憚らぬ大僧正に、あっけらかんとリッカは答え。そして返す刀で龍は大僧正の本心を抉り出す。

 

「助けてほしいの、本当はあなたなんじゃない?救う、救うっていう人が実は一番救ってほしかったなんてよくある話だし。無限の魔力・・・そんな即物的な手段で救うのに拘る大僧正様、案外神様に救って貰いたかった時があったんじゃない?」

 

「──!」

 

「『神様は救ってくれなかった、だから私が救わなくちゃ』ってなった過激派の狂信者みたいな雰囲気してるもん。そういう人が神の名の下無差別殺戮とかをやったりするんだよ。──大僧正様。本当に救われたいのは・・・救いを目にしたいのは、誰なんだろうね?」

 

金色に光り、何もかもを見透かすような瞳が・・・何もかもを暴かれるような言葉がおぞましくなったか、リッカの問いを遮るように指示を飛ばす。

 

「──キャスター!あの小娘を黙らせよ!」

 

「・・・承知致しました。最も・・・」

 

(【鎧】を纏わせていない程度では、多少の傷が通る程度でしか無いのですが・・・)

 

指示の通り、サーヴァントが動けぬ今、リッカに迫る大量の魔導兵。

 

「リッ殿!ばかやろ、殿が無茶すんじゃねぇ!」

 

「先輩・・・程ほどに・・・!」

 

「くうっ、此処でリッちゃん任せだなんてなんと不甲斐ない・・・ッ!」

 

「かかってこい!!仲間は私達が護る!!」

 

構えるリッカ、迫る兵達。──だが。

 

「──こうなるとは思ってた。だって、わざわざ陣地に引きずり込むとかお手軽な王手だものな」

 

「フッ、だが残念。──此処には、数多の例外がいる!!」

 

サーヴァント動けぬ空間に閃く、光と影。軽快な風来坊衣装に、狂暴なる獣と麗しき霊獣のシルエットの男子二人がリッカに並び立つ。

 

「き、貴様ら・・・!?」

 

其処に現れしは、頼もしきグランドマスター達──

 




リッカ「カドック!桐之助さん!」

桐之助「遅れてすまない、摩玖主印の御団子が美味しくてついね。カドック、リッカ君の分もあるだろう?」

カドック「食べてるのはあんただけだ。リッカ、動けるな?ひとまず此処から離脱する。サーヴァントを霊体化させるんだ。マシュは君が抱えてくれ」

リッカ「わ、解った!」

「何をする気だ、小童!?」

カドック「見ていれば解る──!!」

瞬間、本堂の床に力の限り拳を叩き付けるカドック。轟音を響かせ、巨大な風穴が叩き開かれる。

「行くぞ、飛び込め!そして走れ!」

マシュ「ど、何処に向かうのですか!?」

(実はキャスターがね、道を記したマップをくれていたんだ。それを辿り・・・摩玖主の心臓に向かうのさ)

リッカ「摩玖主の・・・心臓・・・!」

「逃がすな!追え!──ぬ!?」

豊久「逃がさんのは俺の台詞じゃ、ばぁたれ!!」

後方で暴れ始めた豊久の声を聞き届け、リッカ達は一転地下へと向かう。

キャスター「・・・・・・・・・」

其処に在りしは、偽りの『無限動力機関』──

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