人理を照らす、開闢の星   作:札切 龍哦

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カドック「君が僕の知っている存在に、少しでも近しいなら。君は気づいているはずだ。彼女の真名がなんなのか」

桐之助「・・・推測は、ね。しかし私は『イニス』と契約した。契約の満了は、この特異点を桐之助として攻略するまで。だからまだ、イニスとの契約を放棄するつもりはないよ」

カドック「それでいい」

「え?」

「それでいいんだ。あくまで君達のベストな関係を貫いてくれれば。・・そんな君達の力が、リッカ達を救う切り札だ。・・・あの無敵の英雄ではなく、イニスとして。君が力を発揮させてやるんだ」

桐之助「成る程。念のため聞こう・・・彼女の真価とは?」

カドック「決まってるだろ、それは──」

イニス「・・・ずっとひそひそしていますね・・・」



紫「さーて、帰りのスキマをドンドン開くわよ。リッカちゃんのスキマは・・・」

(・・・すこーし、ドラマチックにしちゃおうかしら♪)


脱出!最後の適役!

『リッカ、マシュ、そしてサーヴァント二人もお疲れさま。紫さんが帰還のスキマで皆を迎えてくれているわ、安土城を脱出して合流しなさい。安土の空間の崩壊が始まっているから時間はそう無いわよ!』

 

勝利を修め、地震と崩落を迎える安土城・・・魔王の居城の最期。最早魔王は討ち果たされ、光溢れる楽園に還るのみだ。景虎が先導し、マシュとリッカがそれに続く。

 

【ノッブ!ほら、行こ!皆待ってるよ!】

 

【──うむ!待っている者がいるかおらぬか、それがヤツとわしの明暗を分けたという事じゃな!うはははは!それでは凱旋と──待て!この気配は・・・!】

 

鋭く制止するノッブの声と同時に、辺りの変化に身構える一同。後は崩れ去るばかりであった安土の天守閣に、招かれざる刺客が訪れる。無数極まる、骸骨の兵士の群れ。そしてその中核を担う──

 

【殺してやる!殺してやる・・・!!殺してやるぞォ!!!】

 

【ミッチー・・・死して尚、報われずとも尚。魔王に忠義を尽くすか・・・】

 

光秀・・・最早シャドウ・サーヴァントとしてしか存在を顕せぬほどに弱体化してはいるものの、無数極まる雑兵を従え、仇敵であるリッカらを討ち果たさんとする。雑魚の群れなれど、今の一刻を争う状況ではあまりにも厭らしい布陣だ。一体一体を刈っていては崩落に巻き込まれてしまう・・・!

 

【だがな、ミッチー。わしもまたリッカ先輩のサーヴァントにして同胞。リッカ先輩の未来を閉ざすというなら、微塵も手心を加えてやる訳にはいかんのよ】

 

展開、火縄銃数百丁。辺り一帯にひしめく雑兵を吹き飛ばさんが為に現れる、手向けの弔銃。

 

【さらば、我が忠臣。・・・結果論ではあるがな、わしを盛大な伝説としたのは、きさまの存在あってこそだろうよ】

 

【───】

 

号砲、発破。最期の餞別と共に放たれし必滅の制圧射撃が、光秀以下、総ての雑兵へと叩き付けられる。最早残りカスしか残っておらぬ有り様の兵達に、その発砲を受け止める余力は残ってはいなかった。文字通り粉微塵と化し、崩れ去り逝く光秀であったもの。或いは──

 

【或いは、魔王のわしが求めた臣であったのかもしれんな。・・・今となっては永遠の謎じゃが】

 

火縄銃の一本を、光秀の塵に投げ刺し墓標代わりに弔うノッブ。変態さのレベルは遥かに上ではあったが、彼は間違いなく明智光秀に間違いない存在だった。だからこそ、バサラ信長も傍に置いていたのだろう。

 

【地獄へと付いていく気概を見せい、最早阿鼻にて水入らずであろう。──時間を取らせてすまんの!では行くとするか!帰れる場所があるなんてわしったら幸せもの!】

 

【あ!いつものノッブだ!良かったぁ、シリアス過多かと思ったよ~!】

 

「しんみりしたりニコニコしたり忙しい方ですね、全く」

 

「とにかくお早く!兵は神速をB-DASHです!」

 

【そうじゃったそうじゃった!皆!進め進めーぃ?】

 

すっかり本調子となったノッブの手を引き、一同は城より脱出する。後は威風堂々と脱出するのみであったのだが──

 

 

【あの綺麗な流れでなんでまだ雑魚が湧いてくるのじゃ!?空気読み人知らずかあのキンカン!?】

 

すんなり帰してくれませんでした。じゃぁな、いい忠義だったぜ・・・なんて若いムーブを蹴散らすミッチムーブに晒され、廊下を敷き詰める骸骨兵に脱出を阻まれていくノッブ一行。ミッチの解釈違いへのアンチは遥か限界を超えていたと言う他ない。

 

【強くはないけど数が多すぎ!残り999って書かれてるみたいだよねこれ!】

 

「八手に武器を持っても絶妙に間に合わないような間に合うような・・・!とにかく切って斬るしかありません!」

 

「マシュシールド殴り!マシュシールドマッシュ!マッシュ!」

 

それぞれが背中を守る円陣で追い込まれる雑兵の群れ。安土の闇の領土の崩壊が一刻と迫っている最中、徹底的な足止めを喰らってしまい立ち往生を行ってしまっている一同。絶対に逃がさぬという意志に圧倒されてしまっている皆が歯噛みする。

 

【もう少し、あと少しなんだけど・・・!】

 

【えぇい!なんか都合よくスーパー助っ人とかいたりせんのかわし!?あ、よく考えたらわしったら回りに敵だらけな状況ばっかりな人生。うはははは!すまぬな皆、わしの業であったわ!】

 

「笑っている場合ですか!最悪リッカちゃんだけでも外へ、楽園へ──、・・・!?」

 

瞬間、辺りに満ちた異なる気配に顔を上げる景虎。景虎だけではなく、リッカ達にも解るような行き詰まる呪詛を和がせる優しい気風。

 

『──いやぁ、頼もしいかは解りませんが。無駄に数がいる援軍でよろしければ此処にいますよ、幸いな事にね』

 

一つの光が灯り、無数の輝きが集い骸骨兵達を押し返していく。それらは雑魚である兵であるならば圧せるといった強さだが、文字通り数はまさに圧巻。次々と安土城に集まっていく。

 

『行ってください。こんな所で死なぬよう』

 

『勝ったのに死ぬのはおかしいでしょう?作ってくださいよ、優しい平和の天下をね』

 

【おぬしら・・・何者じゃ!?】

 

『名乗るものでもない亡霊ですが・・・与作、こっちはゴロキチ、こっちは益生。故あって、あなた達の未来を信じる足軽の亡霊です』

 

頼り無くも真っ直ぐな魂は、確かに道を切り拓いた。波のように骸骨兵を押し込み、四人が進む道を抉じ開ける形で展開したのだ。この道の先に、脱出するスキマがある──!

 

『どうか、頑張ってくださいよ。想像も出来ないような『平和』ってやつ、作ってやってください』

 

『助けるなら変態より美女だぜ!』

 

『茶々様によろしく。・・・今度は忘れちゃダメですよ?』

 

【──そうか、茶々め・・・ようし、貴様らの名、忘れぬぞ!窮地を救いし忠義の兵として語り継いでやるからの!期待しておけぃ!】

 

【ありがとう、優しい魂さんたち!】

 

霊を告げ、頭を下げて走り抜けていく者に祝福が満ちる。頑張れよ、しっかりな、気をつけて──それは、けして消えぬ慈愛を受け地獄より解き放たれ仏となった魂。──叔母を救いし、姪の慈愛が起こした奇跡。

 

『スキマは其処よ!飛び込んで!』

 

『座標計算──ああだめだちょっと間に合わない!越後にはしたよ!後はなんとかなるはずさ──!』

 

【ロマンそれなんだかスッゴく不安なんだけど!?】

 

「どうしてこう、魔王は辺りを巻き込んで波瀾万丈してしまうんです?傍迷惑なんです?」

 

【風雲児だからネ!!】

 

「自信満々に言わないでくださーいっ!?きゃぁーっ!?」

 

転げ落ちるように、楽園越後へと帰還していくリッカ達を見届け、魂達も真なる終わりを受け入れる。

 

『おい、信長公が語り継いでくれるってよ。死に花咲かせるってのも悪くないな!』

 

『ばぁか、一番凄いのは魔王を倒したあの方々だよ。俺らは最後のオマケだオマケ』

 

『平和な世界で、こんな雑魚でもちょっとでも名前が残って誰かが思い出してくれるなら・・・うん、凄く凄い事だよな』

 

『──頑張ってくれよな、女の子二人。そりゃあ、人生は辛いことがいっぱいあるし、何もかも壊してほしい魔王を求めるヤツだっているかもだが』

 

『少ない悪人を見て、人間全部がそうだなんて思っちゃダメだぞ。十人十色だ』

 

『あぁ──あんな可愛い子達がいっぱいいる世界かぁ・・・』

 

『『『極楽なんだろうなぁ───』』』

 

紫の子も、黒の鎧の声も可愛かったなぁ。その言葉を最期に──迷い出た魂達は、安土の怨霊を阻みきったのだった。

 

そして、帰還を果たしたリッカ達が辿り着いた場所は──

 




楽園越後 上層高空

リッカ【わー!なんかすっごく懐かしいー!?】

マシュ「あぁあぁあ落ちています!まっ逆さまに落ちていますー!?」

いつもの、懐かしのレイシフト(失敗)からの山より高い高層上空。まっ逆さまにフォーリンダウンしていく四人が叫ぶ。雲が通り抜ける高さだ。

オルガマリー『あなた!人らしくなってトチったでしょう!?』

ロマン『ぐだぐだって怖いなぁ!?今すぐ転移するから──待った!?魔力反応、急激に接近中!なんて速さだこれ!?』

その正体、即座に理解する。大空に羽ばたく金色の大翼。一直線に駆け抜けし大鳥、其処に共に在りしは──

「──魔王攻略の最後の適役。それは誰かを倒すことではなく、君達グランドマスターを無事に帰還させる事!」

リッカ【!このイケメンすぎるボイスは!】

マシュ「まさか──!?」

イニス『──真名『飛翔せよ、我が金色の大翼(ラピュタイ・カイネウス)』。かつて不死を誇った英雄の死後、魂が姿を変えた宝具にございます』

桐之助「そう!なんと彼女!真名がそっくりさんな英雄の宝具を使えたのさ!不思議だね!!

リッカ【それでいいのー!!??】

ノッブ【うはははははははは!!わしらの旅路、捨てるところなき魚の如しじゃな!!】

金色の翼に保護され、今度こそ帰還する──否。『凱旋』を行う一行


『『『『良かった、良かった──』』』』

遥か天より見守りし霊も、このぐだぐだにはニッコリ──

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