光秀「信長公、いよいよです。いよいよあなたに、あのカルデアが挑まんとしている。あなたの生命、魔王たる輝きがあの方たちを招き入れんとしている!」
バサラ信長【是ぇ非にぃ、及ばずぅゥ・・・】
光秀「えぇ、そうでしょう。そうでしょうとも!あなたは誰にも倒されない、あなたは誰にも討ち果たせない。そう、あなたは魔王だから!そして魔王は地獄で蠢く私を拾いこうして傍に置いてくださる!あぁ、信長公!私は本当に、本当に・・・!楽しく!嬉しくて仕方がない!」
【なぁにぃを、さあぁえずるぅう・・・】
「いいえ、いいえ。私はそう。あなたを信じている。信じているのです。誰よりも、何よりも!あなたこそが信長公、だから私は、私を止められない!信長公、私は・・・!」
【光ぃいぃつ秀ェエェ・・・】
「───あなたの苦しむ顔を、見てみたい。だから殺したのです。蘭丸を、あなたの妻の濃姫を!あなたが再現されるその前に!」
【──・・・・・・・・・】
「あぁ、後は・・・あなただけです。信長公。私はあなたを・・・もう一度、殺したい。その為に私は、地獄からあなたの下へやって来たのですから!」
【哀れな、奴よ。・・・我が魔道、数多に阻む業の性とはァア・・・】
~
「報告!安土周辺の天候、急変!軍が進行できません!」
【天の操作もやってのけるか!バサラのわしめ、盛りすぎじゃろう!】
ノブノブ「あと一手・・・直接陣地に軍を送れるような手段があればいけるんだが・・・」
?『・・・あら、大変そうね。なら少し、私も力を貸してあげちゃおうかしら。だけど、その前に──』
「えーと、待ち合わせはこの辺で良かったのかな?確か此処に来るって話だけど・・・」
『外の世界の喧騒に触れたくなったの。どうか水先案内をしてくださらないかしら』という文を貰ったリッカ達は、国の関所前でその正体不明の来賓を迎えることとなりこの場で送り主を待っていた。何やら気品在る方が来るとの桐之助の予想にて、こうして先んじて待っている、との寸法である。
「イザナミ様という特大の来客を迎えた以上、最早大抵のことで驚きはしないと思うけれどね。そういう文書を大切にする方は、高貴で礼節を弁えていると相場が決まっている」
「だから礼儀正しくお迎えしましょう、という事なんだね!よーし!バサラ信長との決戦までもうすぐ!誰だろうと完璧におもてなししちゃうぞー!ところで、マシュは何処に行ったんだろう?」
「おや、リッカ君も存じないとは。私はてっきり寝食三つ全て共に在るのかと思っていたけれど」
「いやいや、マシュのプライベートの時間は必要ですから!いつも一緒にいることだけが仲良しの証、という訳でも無いはずですし!」
そういうものなんだね、と桐之助は頷く。成る程、離れていても心は一つ・・・という事に感心していた瞬間、またもや予想外な来客が現れる。
『友情の在り方はとても様々。あなた達のように離れていても繋がっている絆もあれば、近くとも交わらぬ絆もある。境界を見極めるはとても難儀なものが友情なのよね』
「・・・!?」
桐之助、リッカの目の前の空間が引き裂け、眼球が二人を一にらみした後に其処からひょっこりと顔を出す金髪の美女。胡散臭げな雰囲気と美貌に笑みを浮かべ傘を持つ、禍肚以来の協力者。
「こんにちは。あなたと私の八雲紫よ。お迎えありがとう、そちらは初めましてかしら」
楽しげに挨拶を行う紫に、桐之助は硬直しながらも挨拶を返す。リッカは慣れきった様子で目の前の異変を受け入れているが、何分空間が裂ける事態は記憶にない。
「桐之助です。今のは転移・・・いや、空間歪曲ですか?随分と特異な術を使いになられる・・・少し以上に驚きました」
「こんばんは紫さん!手紙はあなただったんですね!」
「えぇ、驚かせてしまったかしら?実は私の、温羅じゃない方の友人が外の世界のグルメをしたい、なんて駄々をこねはじめてね、知っての通り幻想郷は閉鎖的な集落、日本各地を回るのは骨でしょう?どうしたものかと困っていたら、あなたたちが日本を舞台にした仮想現実を遊んでいると掴んで、しめた!と思ったの」
紫は境界を操る妖怪である。シミュレーションで物資を集め、現実とシミュレーションの境界を操作すればそれは本物の物質となり確保が叶う。そうすれば手軽に珍味やグルメを持ち帰れると画策したが故、こうしてシミュレーションに顔を出したという事らしい。
「見たところ、戦国時代のシミュレーションをしているようね。どうかしら。今日一日付き合ってくれるなら、私の力を貸して何処からでも軍を侵攻させることも出来るようになるけれど」
そう、彼女の力をもってすれば、越後から安土に五秒と待たず進軍が可能になる。何日も行軍する事なく、即座に軍の展開が叶うのだ。最早戦の概念がひっくり返る、驚愕の反則技である。エスコートの対価としては、あまりに破格すぎる申し出だった。
「良いんですか!?」
「持ちつ持たれつ。関係はそういう円滑な方が長続きするわ。私も勿論、楽園とはいい関係でいたいしね。悪い話では無いと思うわ、如何かしら?」
「いや、これは受けるべきだろう。行軍が完全にカット出来ると言うならば、最早軍の憂いは改善されたも同然だ。魔王を打倒する最後のピースが揃う!リッカ君!」
「はい!よろしくお願いいたします!紫さん!」
「決まりね。それじゃあ早速、領土を色々回らせてもらおうかしら。そして、付き合ってほしい場所があるのだけれど──」
そうして始まった幻想郷への土産作り。たおやかな笑みの賢者が要求する条件とは──
~
「これと、これと、これと、これ。食材もいいけれど、やっぱり茶器も重要よね。あ、反物や着物も外せないわぁ。式神二人の分でしょ、霊夢や私の分に、幽々子の分も必要ね。えーと他には・・・」
うず高く積まれていく荷物、再現なく出てくる千両箱。ゴージャスの領地に相応しい豪遊まとめ大人買いの嵐。目にした端から買っていく超絶ド級の大人買い、いや賢者買いに・・・付き人を買って出た二人は開いた口が塞がらない状態へ陥っていた。
「ご、ご令嬢?今ので馬車五台分を突破なさいましたが、未だご購入なさるので・・・?」
「あら、もうそんなに?もどかしいわね、ゴージャス様のように店毎買う、という真似が出来ない中流階級は悲しいわ・・・こうして手当たり次第に買うことしか出来ないの・・・あ、そちらの茶器一式も。流石は関東最大勢力、品揃えも万全ね♪」
米俵、茶器、調度品、食料、名産品。およそ区別なく積み上げられていく買い物リスト。荷運びの為に増えていく馬車。紫は上機嫌なままに買い物と言う名の豪遊を続けていく。
「これが・・・セレブ買い・・・!紫さんは賢者じゃなくマダムだった・・・!?」
「たまにこうして買い出しをするの。流石は御機嫌王様の領土、最高級の品が適切な値段で大量に手に入る。本当にあの方は財の築き方が解っているのね」
「ほう。その財とはこういった物質以外の物にも存在すると?」
勿論、と賢者は頷いた。財宝とは目に見える紙幣、金塊、黄金を指すだけの言葉ではないと紫は語る。
「財とは流通により生まれる文化、流通による発展、建築、文明といったものを指すの。そういった類の財は、こうして誰かの手に渡らなくては生まれないもの。目に見えるものだけをかき集める俗物、拝金主義者とは似て非なる財宝の集め方を彼はしている。常日頃、あなたたちは我が財と言われていないかしら?」
「はい!とても光栄な評価です!」
「それこそ、あなたたちを王様が重宝する理由。あなたたちが織り成す今と未来こそ、かの御機嫌王が最も愛する財宝そのもの。それを産み出すあなたたちを指して、彼はあなたたちを財と呼ぶのよ」
賢者に告げられた、自身達の彼にとっての価値。それは彼の愉しむ未来を産み出すが故に楽園を財と呼んでいるのだと。カルデアは、世界は、今なお黄金を産み出す金脈であるのだ。
「だからこうして、有形の財には拘らない。いつかこの財が誰かの手に渡り、輝くことを期待しているから。だから彼は、こういった人類存亡の危機には立ち上がるの。彼は誰よりも、財宝を愛しているのだから」
「ギル・・・」
「ふふっ、したり顔で話しすぎてしまったかしら?そろそろこれくらいにしておきましょうか。幻想郷は資材不足だもの、買いに買うくらいが丁度いいの」
上機嫌な紫が、買い物を切り上げる。・・・最終的に買いそろえた物品は、馬車十台程の長大な数に上り、道行く人々を大仰天させるに相応しき偉容を誇っていた。
「あぁ、たくさん買ってしまったわね。大満足、大満足。・・・それではここで、試練と行きましょうか」
「試練!?こんなに買い物してまだ何か試したい事が!?」
此処に来て、紫の悪戯好きな性格が顔を出した。なんと十台にも膨らんだ荷物を連結し、一息に運べと言うのだ。運ぶどころか、一歩踏み出すも不可能極まる重量の馬車十台分だ。繋げてしまっては馬も、先頭にしか配備できない。
「えぇ、勿論。『この馬車全てを繋げて、外まで運んでくださるかしら』?それをしていただけたなら、大満足としてお力添えをお願いいたしますわ」
「む・・・力ではなく智恵を試してきましたか。ふむ、重力軽減では運んだとは言わないでしょうから・・・むぅ・・・」
珍しく考え込む桐之助を見て、満足げな紫。妖怪として、人間が困り悩む姿はやはり楽しいらしい。上機嫌なまま、リッカへと問いかける。
「さぁリッカちゃん、これをどうやって運ぶかしら。あなたの力でそれが出来る?」
「──ふっふっふっ。楽園のグランドマスターに問うにはあまりに愚問!妖怪賢者敗れたり!私の答えは!これだーっ!!」
紫の期待とは裏腹に、完璧に勝ち誇るリッカ。彼女は高々と、右手を掲げ──
「そう、サーヴァントを喚ぶのは最低条件。しかしこの量の荷物を運ぶのは──え、ええっ・・・!?」
妖怪賢者に、歯軋りと共に吠え面をかかせたのであった──
温羅「よっこい、しょ!!へへっ、こいつで文句はねぇだろ、妖怪賢者サマ?」
砂埃を上げ、関所前に開いた空間のスキマの前に十台馬車を纏めて運び抜く輝く四本角。賢者の智恵を上回る答え、それはまさしく鬼神の剛力であったのだ。
リッカ「マスターの力は、サーヴァントとの絆の力!ウラネキの力を借りることこそが、この馬車を引く私の力だよ、紫さん!」
紫(むす~・・・)
温羅「わはははは!お前様もそんな顔をするんだな!拗ねた幼児みたいじゃないか!」
「そりゃあ、力づくで引けとは思っていないけど。サーヴァントの力を借りるマスターとしての力を忘れるなとは思ったけれど。もう!何故二つ返事で来ているのあなた!あなたは出たら難題が難題にならないでしょう・・・!?」
温羅「意地悪にはこの手に限るもん。ねー?」
リッカ「ねーっ!」
桐之助「ははははははははは!痛快痛快まさに電車道!どうでしょう御婦人、まさに文句なしの運びでは無いでしょうか?」
紫「うぅ、自分と対等以上の存在と繋がれる人の力をも証明してしまうなんて・・・やはり妖怪は人に退治される運命なのね、よよよ・・・」
温羅「自分と対等以上の相手を想定しないで問題を作ったお前の十割の落ち度だぞ。それに力自慢はアタシだけじゃない。アステリオスくんやヘラクレス殿だっているんだからな?」
紫「くっ、いい気になるのも今のうちよ鬼神温羅!幻想郷で博麗の巫女に言いつけてやるんだから!私の巫女は凄く強いんだから!謝るなら今のうちなのだからね!覚えていなさいよ鬼神温羅ーっ!」
智恵をひけらかして困らせる悪戯のつもりが鬼神コマンドー式解決法により赤っ恥を書いた紫。半泣きになりながら荷物をスキマに放り込み退散していく。その様はまさに意地悪妖怪退治の瞬間であった。
桐之助「ありがとう、リッカ君、鬼神殿。サーヴァントがなき自身では、正解に至ってもどうにもならなかった。八雲紫、なんと狡猾な方か・・・」
温羅「悪いヤツじゃないから許してやってくれな?ほら、その証拠に・・・」
ひらひらと舞う紙を掴み、二人に見せる温羅。其処には、美しき字と紫の便箋にて・・・
『今日はとても愉しかったです。どうぞ私の力を御使いください』
と、振るえば空間が裂ける扇子が同封されていたのだった──。
通りすがりの妖怪賢者が仲間になった!
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