マシュ「桐之助さん、まさかぐだぐだイベントにこうも適性を見せてくださるだなんて・・・!」
リッカ「そんな事もあろうかと、援軍を呼んできました!大丈夫カドック?しっかり!」
カドック「う、うぅん・・・そうか、ここは信長だらけの戦国乱世。キリシュタリアっぽい風来坊がいてもおかしくないのか・・・」
桐之助「カドック!・・・──あぁそうだ。私はそう、キリシュタリアっぽい何かさ。気にしないで大丈夫だよ」
カドック「解った、気にしない。ぐだぐだではキメられないヤツから死んでいくんだろ?」
マシュ(教育の成果・・・!)
リッカ「それでそれで、最初の依頼はなぁに?」
キリシュタリア「ふむ、実はね。東の地へ移住を決めた方々が行方不明になる事例が多発している。どれも西の方から来たいと志願した片方が、だ」
リッカ「・・・人さらい!?」
カドック「あり得る話だ。宗教っていうのは、異端と離反には全く容赦が無いからな」
桐之助「卑劣な拉致を放ってはおけない。既に協力者とは話してある。仲間入りするかは、君達にかかっているよ」
カドック「力は問題ないさ。リッカがいるからな。・・・リッカ、桐之助、マシュ。この件は、上に頼んで魔玖主には内緒にしてもらおう」
マシュ「?何故でしょう?」
「仮にも協力体勢の最中だ。・・・弱味は、決裂したときのカードになる」
リッカ「たのもしー!」
桐之助「悪い子だ。だが責めまい。全く同意件だったからね!それでは、皆耳を貸してくれ。突入プランなんだけど・・・」
カドック「・・・愉快だな、このキリシュタリアのそっくりさん・・・」
「ふん。西から東の信長の地に渡らんとする不心得者共め。大人しく魔玖主本尊の威光に預かっていれば良かったものを」
人さらい、或いは夜盗の被害。洞窟の奥地にて家族連れや老若男女の集団が縛られ眠らされている。彼等は魔玖主の本拠地たる西から、音に聞こえし活発盛んな営みと笑顔が響く東の地へとの渡来を志した者たち。西の地から東へと向かう最中、謎の男達に捕らわれてしまいこうして捕縛されてしまっている。彼等を捕まえた者たちは約一名と武装した兵士が数名。彼等は──僧兵の姿を取っていた。先の折、ちびノブ一揆集の村を焼き払った者達と同じ姿である。
「東の楽園、西の浄土などと馬鹿馬鹿しい。西以外に浄土などあってはならぬのだ。救済には、幾分かの犠牲が無くてはならんのだからな」
「こやつら、如何なさいましょう」
「無論総本山に送り返す。あの場所にて魔導僧兵として作り替えれば愚かな心変わりなど起こさぬだろう。・・・あぁ、東の越後信長は裏で人さらいを行っているとの吹聴を忘れるな」
聞くまでもなく良からぬ企みを行っているは明白。そんな僧兵らしき男の指示に従い、僧兵達が気絶している人間達を運ばんと動き出す。──が、その時だった。
『───一つ。人の生き血を吸い』
洞窟内に響き渡る草笛の音色。それはすなわち自分達以外の何者かがいることの証左。
「!?なんだ!?この音色は、何者だ!?」
『二つ。不埒な悪行三昧。浄土を騙る生臭坊主、片腹痛し』
その草笛の音は大きくなり、確かに近付いてくる。困惑と混乱の僧兵に歩み寄りしは、白き装いの風来坊。
『三つ。神の名の下悪徳を成す不心得者に、私達が神に代わり成敗しよう!』
そうして高らかに名乗りを上げし、千両役者もかくやに盛大に羽織と笠を投げ捨て姿を現す、粋でいなせな金髪男性──
「そう、菩提桐之助と頼もしき仲間達がね!そうだろう、リッ角さん、カドの助さん!」
高らかにノリノリで叫ぶ風来坊の傍に控えし、水戸黄門の二人の御付きのコスプレに身を包んだリッ角、並びにぐだぐだ睡眠学習を終えたカドの助。リッカは無論、カドックも最早細かいことを気にする倫理は破壊されていた。ちょんまげの被り物を受け入れる辺りに教育の爪痕がみられる。
「いいですともッ!外道、卑劣、悪鬼羅刹の類いを地獄に送り返して差し上げましょう!」
「これが噂のぐだぐだイベントってヤツなのか・・・キリシュタリアと同じ顔のヤツにアゴで使われる日が来るとはな・・・!」
「えぇい!バレてしまっては仕方無い!こやつらを殺せ!生かして返すな!」
魔導僧兵の火炎放射が、二人に向けて放たれる。だが、シミュレーションでワイバーンやドラゴンと毎日戦う楽園のマスターに、今更そんなものはマッチやチャッカマン程度のものでしかない。おそるるに足らず、というものだ。リッカは虚空に刃で円を描き、カドックはクラスカードライダーにアタランテオルタのクラスカードをインストールし、麒麟の礼装を起動。
【変身!!】
「
「そう!これこそロマン・・・同時変身!」
黒き龍が炎を防ぎ、バラバラに砕けリッカの身体に瞬時に装着され、カドックが放った銃弾がクラスカードのゲートとなり展開。彼が其処を走り抜ける事で麒麟礼装・アタランテオルタの装着が完了する。そこからの行動と鎮圧は、迅速であった。
『リッカ、君は右と人質の確保を頼む。僕は左と指揮官の処理に捕縛だ』
【了解!】
その指示に忠実にリッカは動く。刀を抜き放ち、火炎放射を行おうと突き出した腕部を肘から先を両断し、瞬時に両肩を掴み引きちぎる。がら空きになった胴体毎頭部を幹竹割りで一刀両断し決着を着けた。
カドックは洞窟という閉鎖空間を利用し、縦横無尽に動き回り狙いを絞らせず、無駄無く敵の頭部のみを撃ち貫き破壊した。誘爆をさせないよう急所のみを狙ったハンティング技術に通ずる鮮やかな手腕の披露。セカンドプランであるサーヴァントの召喚を行う前に片を付けた。後は指揮官を抑えるのみだが・・・
「くっ!これ以上手向かいするとこいつの命は無いぞ!」
いつの間にやら確保していたのか、手近にいた女性に槍を向け三人を恫喝する僧兵。人質というものだ。自身の保身を行うにはまぁまぁの上策だ。──此処に、卑劣な行いに屈するものがいれば、だが。
【───!!】
『やってみろ。どうあれアンタは此処で死ぬ・・・!』
漆黒の闇が刀から漏れ出る紅と紫の稲妻で照らされ、手にした銃が弓矢に変わりエネルギーが充填される。人質に手を出す前に仕留める。或いは、人質に手を出した瞬間に殺す。異なる行動なれど、僧兵の死という目的は同じ。その行動に、苦し紛れの策は瓦解する。
「こ、こいつら!人質の命が惜しくないのか!?」
「違うね。あなたは人質にする相手を間違えた。ルールは競技を形作るだけにあるのではない。互いの選手を護るためにある。片方がルール無用を望むならば・・・」
桐之助が告げた瞬間、人質に収まっていた筈の女性から煙が上がる。それらは瞬く間に辺りを満たし、男の手からするりと抜け出してしまう。そしてその影は瞬く間に黒く変貌し──
「こちらが無法になるは道理。そして我が忍術、卑劣無法を越えた無影。人質は既に解放させていただいた」
現れしはハサン・・・ではなく、桐之助が話をつけ協力関係にあった『百地ハサン太夫』。既に人質の中に紛れ、手は打っていたのだ。
「そ、そんな・・・」
「さぁチェックメイトだ。リッ角さん、カドの助さん!」
【「──成敗!!」】
速やかなる斬撃と、精密なる射撃が男を貫く。血を吐き、倒れ伏す男。しかし死んではおらず断続的な痙攣を繰り返している。
『リッカ、身柄を確保しよう。見る限り魔玖主教の僧兵だ。新撰組に預けて情報を引き出そう』
【確か新撰組って拷問とか得意なんだっけ。そだね、じっくり話を聞いてみよっか!】
「いやはや、二方とも性根が真っ直ぐな善き方々。そちらの少女の火を噴く様な義憤、そちらの少年の冷徹な決意。迫真にて感じ入ってしまいました」
【あなたが、桐之助さんの言っていたハサ・・・】
「百地ハサン太夫さんだよ。人質を助ける上で協力関係を結んだのさ。そして彼には、ちびノブ忍軍の頭目を任せたい。どうだろうか?」
「承知。これも何かの縁ですな。それでは、我が忍の技を存分にお使いくださいませ」
無事に登用の契約は結ばれ、此処に新参人員が加入する。カドックはその手腕と手際に、呆れるような感嘆するような気持ちを懐く。
「いつの間にそんなに話を進めてたんだ。やっぱり何処の世界もキリシュタリアはキリシュタリアか」
【カドック、卑屈くんになってない?】
「まさか。僕に出来ない事が君達にはたくさん出来るってだけだ。君達に出来ない事が、今の僕にはきっと出来る。それだけで十分だよ」
だが、その振る舞いに悲観や卑屈な態度はない。手にした力は、彼に自信をつけさせた。桐之助の意図を信じ、リッカに完全に同調出来るほどに。
「さて、帰ろう。実りある成果を報告して、金平糖でも貰おうじゃないか」
「おーい!みなさーん!行方不明の方々、全員身柄を確認致しましたー!」
「マシュ依さんに護衛待機させていたが、何事も無かったようだね。それでは決まりの勝鬨を上げるとしよう!せーの!」
【「えい!えい!おーっ!!」】
「洞窟でやらないでいいだろ!声が反響してうるさいぞ!」
「ははは。互いに常識を弁えたものが損をしますなぁ」
情報と大義を得た戦いを笑顔で切り抜けた桐之助達。その帰路は、仲良く晴れやかでありましたとさ──。
茶屋
桐之助「とてもロックだったよ!二人の同時変身!息もピッタリ、まるで特撮の世界のヒーローだ!」
カドック「ふふん、伊達に自分を磨いてきた訳じゃない。ノールック変身も掛け声のタイミングもバッチリだ」
マシュ「リッカ先輩のDVDをこっそり借りてタイミングを練習していましたね、カドックさん!」
カドック「言わなくていい言わないで・・・!」
【びしっ!と決まるとカッコいいよねぇ!次はあれだね、マスター全員変身やってみようね!】
カドック「それ、ライダーというか戦隊じゃないのか・・・」
桐之助「危なかった。私も危うくオロチを使うところだったよ。テンション上がりすぎるとついやっちゃうよね。時にカドック。君のその礼装だが、極めて高位な──」
カドック「知りたいか?ふふっ、あんたにこんな風に自慢する日が来るとはな。ぐだぐだも悪くないじゃないか」
リッカ【じゃあ次は──】
カドック「二度はいい・・・!」
桐之助「ふふっ。君も頑張っているんだね。カドック──」
百地ハサン太夫が仲間になった!
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