カドック「準備はいいな、皆。これから僕達は楽園のサーヴァント達の護衛の下、突撃を行い霊脈と地脈を可能なだけ取り返し、同時に汚染された物資を高天ヶ原に持ち帰る!」
アルトリア「四凶の相手はリッカさんがやってくれるようですね。あまり無茶はさせたくありません。迅速に行きましょう」
ぐっちゃん「大体の位置は私が気の流れて掴むわ。ちゃんと言うこと聞きなさいよね。年長者なんだから、私が」
アイリスフィール「極東の神様のお陰で活動時間は伸びているし、まつろわぬ民達の力も抑えられるわ。後は物資と霊脈を少しずつ取り返していけば・・・」
温羅「護衛はアタシとモモに任せろ。まだサーヴァントの皆には何が起きるか解らん。弱い霊脈から取りかかる!覚悟を決めろ、皆!」
カドック「僕らならやれるはずだ。──楽園のグランドマスターである僕らなら!最善を尽くそう!世界を──リッカの故郷を護る為に!」
「「「「了解!!」」」」
マシュ『カドックさん!どうか先輩を、よろしくお願いいたします!』
カドック「ベストを尽くす。温羅、桃太郎!やってくれ!」
温羅「行くぞォ!!開門ォオンッ!!」
モモ「畏れる事無かれ!兵よ──進めぇ!!!」
「「「「うぉおぉおーーーッ!!!!」」」」
【カカカ、カカ、クカカカ】
【ゲゲッ、ゲゲッ】
【グォオァアァアゥ】
【ゴォオォオ!!!ガァアァアァ!!!】
「──・・・・・・」
神の祝福を経て、第一歩を踏み出した禍肚の攻略。あらゆる全てが穢れきった中から地脈を探し、財宝を手に入れなくてはならない多面的作戦に挑む楽園カルデア達。禍肚に材料を探す、カドックらサブマスター探索チームと共に、呪詛汚染と四面楚歌を警戒した電撃作戦を敢行する運びとなった(尚四面楚歌って言うなとぐっちゃんは猛抗議を行った)。探索に命懸けで挑むカドック達。しかし呪詛の中から何処であろうと這い出る四凶在る限り、真っ当な対策など夢のまた夢。故に必要である最も困難かつ重要な任務を、リッカは立候補しタケルと共にやって来た。即ち──四凶の抑制。真っ向からの対決である。
【あまこーと将門公、ヒルコ様のお陰でずっと気持ちと調子が楽だよ!これなら気圧される事も無さそう!】
「・・・・・・」
【頑張ろうね、タケル殿!あっ、タケル殿ってスッゴく言いやすい!此からもそう呼んでいい?】
「構わん。好きに呼べばいい。タケちゃんとも呼ばれたのだ、今更に過ぎる」
話ながらも、タケルは涼やかに、或いは威風堂々泰然自若と構えている。目の前には嘲笑うコントン、喰らい尽くすトウテツ、悪を愛すキュウキ、狂乱闘争のトウコツがいるにも関わらずだ。その様相は凪の如く、邪悪なる神威を流し立つ。
「ヒルコも奮迅を決意した。ならば吾もお前達に意を見せる。・・・言葉にせねば伝わらぬものがあるが、それは吾は馴染みが無くてな。故に・・・──」
【グロォオラァアァア!!!】
タケルが言葉を言い切る前に、狂乱のトウコツが涎を撒き散らしタケルへと襲い掛かる。トウコツは凶暴極まり、撤退なく慈悲なく戦い続ける凶悪の化身。タケルとヒルコに何度も襲い掛かってきた四凶の一柱だ。贄によりますます膨大し、神獣たる力をみなぎらせ人面虎の身体を振るい襲いかかってくる。
【来るよ、タケル殿!じゅん──】
「一つ言うことがある」
身構えるでもなく、拳を握るでもなく。何の気無しと共に──タケルは身体を傾け、脚をつい、と突き出した。白き神衣がはらりと揺れる。いわゆる『足掛け』というヤツだ。一見隙だらけの愚行にしか見えぬ無造作に──リッカは、武神の真髄を見る。
【グゴゴォオァアァア!!?】
その脚にトウコツの身体が触れた瞬間、巨大な岩につまづいたかのように何メートルもある巨体が宙を回転し地に叩き伏せられる。暴虐極まるその暴威が、何の気なしのタケルの所作に完膚無き迄にいなされたのだ。瞠目するリッカ、失態を嘲笑う三体。怒れるトウコツが起き上がり、タケルを睨み付け猛攻撃を行う。
【カカカ、クキャキャキャ】
【ゲゲッゲゲッ、ゲッゲッゲッ】
【グハハハハッ、グルルッ】
【グガァッ!ガッ、ガァアァアァァアァア!!】
「安全な場所にいろ。──
怒り狂うトウコツの突進、爪の一撃、尻尾の薙ぎ払い。それのどれもが人等容易く蹴散らし呪い殺すおぞましき一撃。リッカであろうと傷を腐らす細菌の様に殺すものであるが、タケルの後ろにいるリッカにはそれらが掠りもしない。徒手空拳、何も持たず静かに突き出した腕で、全てをかわしいなしているのだ。
腕の一撃あらば払うように腕を振り流す。突進あらば二歩摺り足にて軌道を反らし手を添え投げ飛ばす。距離を取らんとすれば脚を全く動かさぬ瞬歩にて懐に潜り込み、内臓を揺るがす気功を叩き込む。その動きは、リッカがかつて助っ人を行った部活の一つに覚えがあった。
(合気道!バキでいう渋川さんのヤツだこれ!あくまで演舞でしか出来ないっていう触れずに吹き飛ばすのを、こんな当たり前に・・・!?)
柔よく豪を制す。激流を制するは静水。それの体現にして極致が其処に現れている。傍目にはただ何気なしな所作を行うだけにしか見えない身体の動きが、暴虐と呪いの脅威を柳の風、暖簾に腕押しの如くに無力化していく。それは、日本の武道の極致の一つと言える柔の体現であったのだ。
『魔力じゃない、力場も発生していない!なんだアレ、どういう理屈でじゃれてるんだい!?東洋の神秘はとてもじゃないが数値で生きてる人間には難しすぎるんだよね!?』
『あれは武道『合気道』よ。ジャパニーズ・ジュウドー・・・文化の極み・・・!』
『所長!?』
『驚きましたか!そう、へっぽこな私が何故都で生き残れたか!それはタケちゃんの武の力!サーヴァントでいう、ええと、スキル!スキルの力であるのです!その名も!『武産合気』!!』
武産合気──投・極・打・剣・杖・座技を修し、攻撃の形態を問わず自在に対応し、たとえ多数の敵に対した場合であろうと技が自然に次々と湧き出る段階まで達した一つの境地。無駄な力を使わず、効率良く相手を制する合気道独特の力の使い方や感覚。それを「呼吸力」「合気」などと表現し、これを会得することにより、『合理的な』体の運用・体捌きを用いて『相手の力と争わず』相手の攻撃を無力化し、年齢や性別・体格、体力に関係なく相手を制することが可能になるスキル。その守勢に長けた力を振るい、ヒルコを護る事により最後の希望を護り抜いたのだ。
タケルはその武力、鍛え抜かれた観の目から現状の最適解を素早く理解した。無限の呪詛を喰らう四凶、自らとヒルコでは断つことは叶わぬ。ならばこそ『護り』『繋ぐ』。最後の希望、ヒルコを、楽園を、日ノ本の未来に繋ぐ為に。ひたすらに、黙々と。終わるとも知れぬ守勢に苦悶一つ浮かべず戦い続けた。
哀れなるはまつろわぬ者達だ。脆弱なヒルコを殺せば終わるというに、タケルの守護があまりにも厚く、強い。風に牙は突き立てられぬ。華に爪は意味を為さぬ。強き心に邪悪は染まらぬ。心・技・体。全てを兼ね備えた古代日本の大英雄の守護は、決して暴力と悪に屈する事はなく、ただ一心に、ヒルコを呪いの都にて護り続けたのだ。
【グゴガァアァアァッ!!!?──ガ・・・カカ・・・──】
苛立ちを最高潮に高めたトウコツが、山を崩し門をかきむしる一撃を叩き込まんと襲い来る。後の中国に伝わる猛虎硬爬山の動き。だがそれすらもタケルは両脚を側面から叩き無力化し、後ろ足を払い宙に浮かせ、頭部に手を添え地面に叩き付けた。地割れを起こす程の衝撃に頭蓋骨を砕かれ、痙攣を繰り返すトウコツ。
「──一念、鬼神に通ず。人の心こそ神に通ずる業なれば」
袖を静かに直し、リッカが見とれる程の麗しき所作にて残心を行うタケル。──只の一度も触れられぬ白鳥が如く。その流麗さは邪悪を阻む。
「日ノ本の歴史、此処に在り。貴様ら悪神、阻むも犯すも罷り成らぬと知るがいい」
『聞こえるかリッちゃん!カドック率いるマスター組、無事に地脈の一つを制圧した!そっちが食い止めてくれたお陰だ!』
護衛についていた温羅の通信に、素早くリッカは応える。一先ず作戦は執り行った。皆撤退の準備を行っている。二人もまた、それに倣わねばならない。
【う、うん!でも私は、何もしてないよ!・・・今、見ちゃった!目の前で!】
『見た?何をだリッちゃん?』
【武の極致・・・!ジパングの神秘ってやつ・・・!】
『これが、日本の大英雄・・・いやいや待ってほしい!そりゃそうだよ!神様がこんな個体値ばかりなら子孫だってバグったりするよねこんなの!』
──日本の武神、此処に在り。静かにリッカの身を引くタケルの佇まいに、人の全ては日本の神威の在り方を垣間見た。
【ゲギャッゲギャッゲギャッゲギャッゲギャッゲギャッ!】
【クカカカカカカ!!クカカカカカカカカカカカカ!!】
【ググッ、ガガッ!ガガッ!!】
瞬間、静観を決め込んでいたトウテツ、コントン、キュウキが突如飛びかかり動き出した。情勢が決した瞬間の行動だった。
リッカ【ッ!!】
敵討ち──!そう考え受けて立たんとしたリッカの予想は、最悪のおぞましき手段にて裏切られる事となる。三柱の標的は──リッカらでは無かった。
【グギッ、グギュッ!グギギギッ!】
【ゲギュ!ギヒヒッ、ギヒヒッ!】
【グォオァアァア!!ガァアァアァ!!】
【グェエェェ!!!ガァアァアァ!!ギィイィイィ・・・・・・!!!】
肉を引きちぎり、骨を砕き、耳をつんざく鮮血が辺りを満たす。不覚を取ったトウコツに、三柱が襲い掛かり喰らいついたのだ。そして牙を剥く。その血肉を糧とし喰らい始めたのである。
リッカ【──】
タケル「見るな」
タケルの袖に隠され、リッカは高天ヶ原へと帰る。四凶は決して仲間ではない。そもそも彼等の世界に、仲間、尊重、協力といった概念などない。
弱きものは食らわれる。隙を見せれば死ぬ。故に四凶は互いすらも喰らわんとすることに微塵の躊躇いも見せない。どのみち彼等は不滅なのだ。屈辱、苦痛、嘆きはより強く彼等を形造る。
──禍肚に、震え上がるような断末魔と咀嚼音、その醜態を嘲笑う声音が響き渡り続けた。・・・──そして。
天逆毎【・・・・・・・・・】
遥か空にて、その様子を見下ろす天逆毎。強きが弱きを駆逐する、原初の生命の躍動。それらを麗しく感じもたらしたかの女神の胸中には歓喜が渦巻いていた。
これこそ世界の美しさ。
これこそ世界の理。
──しかし。
【・・・・・・】
・・・力を合わせ、懸命に禍肚に挑む輩の生命と比べ・・・
【──不味いのだろうな。あの味は】
口にしたとき、感じるであろう感傷を呟き。──あの旨味を産み出す者達が消えたと同時に消え去った──
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