エア「いつも、本当にお疲れ様です賢王・・・此度は御身も自らだなんて・・・」
賢王「何、久方ぶりのウルクの危機にキングゥめが飛来してきてな。我も興が乗った訳だ。──あの鬼めは、我が宝物庫に一直線に突進してきたのだ」
《我が宝物庫・・・解せんな。我等の怒りを買うのが目的だなどと、魔神でもあるまいに》
フォウ(思い出したらムカムカしてきた!ムカムカ!)
シドゥリ「ありがとうございます、キングゥ。エルキドゥであったなら、あと三割増し被害が出ていたでしょうから・・・」
キングゥ「フン。母さんが愛した民と土地を汚されるのは本意じゃないからね」
賢王「本来ならば我等の前に姿を現す理由も、ウルクを襲う理由もあるまい。──見立てだが。あの鬼は術者の制御とは異なる動作をしているように思える」
エア「・・・自身で、考えている・・・という事ですか?」
《──恐らく、あれは『懇願』だ。お前も聞いたであろう、エア。ヤツの言葉を》
「・・・此度まで、おいで・・・」
キングゥ「君達を呼んでいる。・・・それはつまり、導こうとしているのかもしれない。たどり着かなくてはならない、何処かへ」
「・・・元凶の、本拠地・・・?」
~
玉藻「えー、結論から言いますとぉ。日本の呪術をベースにして何千年も研磨した呪術で、御主人様風に言いますと、他のスキルツリー全部潰して、呪術にスキルポイントガン振り、みたいな?」
ロマン「密度と規模が異常なんだ。単独レイシフトなんてビーストめいた事も可能、擬似的な不死身を付与、天候操作なんて芸当も出来る。おまけに、自らを特異点として人類史を汚染すらも可能。対象の総てを奪う代わりに、擬似的な因果律掌握も可能といったレベルの呪術なんだ、これは」
オルガマリー「そんな事が可能なのね・・・」
ウラ「──心当たりがある」
リッカ「ウラネキ!?」
ウラ「リッちゃん。悪いがアタシとモモを連れていってくれないか。モモは神桃の加護で人の悪意以外は食らわん。アタシはそもそも呪いから産まれた鬼だ、アタシを蝕めるものはない。・・・こんな事をやらかすヤツに覚えがある。情報として直に獲得したい」
リッカ「──解った!リッカ、モモとウラネキで次は向かいます!」
シオン「ニャル、そしてシバに観測あり!呪術反応!」
ロマン「場所はどこだい!?」
シオン「──閻魔亭です!!」
リッカ「行こう!二人とも!!」
モモ「はいっ!」
ウラ「あぁ!・・・踏ん張れよ、茨木・・・!」
酒呑「・・・まーた、甘いお菓子にでも釣られたんやろか・・・」
「緊急事態緊急事態チュン!おさないはしらない喋らないだチューン!!」
「うるせぇ!囀ずる暇があったら避難を手伝えってんだ!」
「雀は危うきを知らせるチュン!肉体労働は鬼の皆様にお任せチューン!!」
ウルク、舞台を変え此処は閻魔亭。神もあやかしも疲れと澱みを癒す秘境の宿。いつもは大繁盛、満員御礼で騒がしきこの場所も、今は全くの逆。騒乱極まる地獄絵図をもたらしていた。右に左に、山に客を逃し雀が舞う一大事。──その原因は、語るまでもない。根の国より来たりしと見紛う程の招かれざる凶兆・・・祟り神すら及ばぬ怪物が今、閻魔亭の眼前へとやって来ているのだ。おぞましき腐臭と恐ろしき邪気を撒き散らしながら。
【カハ、ァ・・・ア、ァア・・・ゥアァア・・・ッ】
「止まりなちゃい!それ以上、その穢れきった邪気をごーじゃす・ぐらんど閻魔亭に近付ける訳には参りまちぇん!」
聖杯にて、舌が治った紅閻魔でありながら紅閻魔でなくなった女将雀。声を通らせる腹式呼吸にて啖呵を切る。刀を突きつけ、装いは閻魔の裁きを現す十王衣装。澱みに染まったまつろわぬ鬼に、閻魔亭を背に仁王立つ。
(なんでちか、この邪気は・・・!地獄の獄卒、閻魔大王ですら裁けぬ年代の積雪を感じさせる程のおぞましさ!本当に生き物なのでちか・・・?)
【ク、ァ・・・カァァアァ──!!】
「ッ!」
鬼が、呻き声と共に襲い掛かる。重力と法則を無視した驚愕の体勢。紅閻魔の抜刀の間合いに、瞬時に詰め込む。浮かび上がったその拳が、力の限りに叩き振るわれた。
しかし紅の身軽さたるや、濁流のごとき攻撃をひらりとかわし刀一閃、二閃、また三閃。一つで頸を、二つで両腕、三つで脚を切り裂いた。理性なきその振る舞いは、千を越える隙だらけの木偶の坊に等しい。仕込まれし紅の刃は、閻魔の裁きと等しいのだから。
「やったでチュン女将!流石はヘルズキッチンの産みの親でチュン!」
「タケちゃん、また出ていっちゃったけど!これなら大丈夫チュン!」
【───カ、カ・・・】
紅閻魔は距離を取り、油断なく身体を翻し刃に手を掛ける。その手応えは確かに在り、その鬼は頚を落とされた。──だが。その声は決して苦悶の呻き等ではなかった。
【カカカカカカカカカカカカカカカカカカカカ】
「何が可笑しい・・・頚を落とされて、何を笑っているのでちか!」
そう、嗤っていたのだ。閻魔の奮闘を、太刀筋を嘲笑うかのように。腕がゆらりと浮かび上がり、脚がふわりと浮き上がる。頸がケタケタと笑いを漏らし、そして──
【カカカカキキキキキキキィ───!!】
断面から呪詛が迸り、『ソレ』が漏れ出た。──日本に伝わり、世界に悪魔と信仰され、神格にまで至った大罪の一柱。──閻魔亭を、余さず喰らい尽くすモノ。
「──飛蝗・・・でちか・・・!?」
牙を光らせ、黒き呪詛を身体中に含み、紅き眼を爛々と光らせるその偉容。糧にならず、土壌を腐らせ、種も、作物も、木も、総てを喰らい尽くす呪いの厄災を、まつろわぬ鬼は解き放った。その規模は、瞬く間に空をまだら模様に染め上げる。鬼の身体に仕込まれた呪詛は、まさに変幻自在の千変万化。秘めし悪意と呪いは、洗練された脅威に変貌する。
「あわわわわわ蝗害!蝗害だチュン!女将!逃げるチュン!まずいチュン!」
「閻魔亭の材質は飛蝗の好物が殆どだ!あいつらは障子も喰うような化けもんだ!土壌を犯して温泉もダメになっちまう!ヤバい、ヤバすぎる!」
鬼達も雀達も理解している。作物の総てを食い荒らされたらどうなるか。閻魔亭に呪詛の飛蝗が飛んだらどうなるか。それを受けた紅閻魔は──別の思考を巡らせていた。
(これは、もしや・・・閻魔亭の神気が狙いなのでちか・・・!?何か、力を蓄える理由が・・・!?)
【カァァアァァアアァア・・・・・・!】
撒き散らされた呪詛が形を成し、総てを飲み喰らわんと迫り来る。紅が刀を振るい飛蝗を切り刻むが、それは呪詛のほんの水滴の一つを露払ったに等しい抵抗であった。呪詛の災厄が、閻魔亭に殺到する。
「いけまちぇん!皆!逃げて──!!」
紅の悲痛な叫びすらも呑み込み尽くす飛蝗の羽ばたき、災厄の行進は閻魔亭に殺到し、万象一切を喰らい尽くし──
「・・・──あれ?」
「く、喰われて、無い・・・?」
──鬼達も、雀達も、閻魔亭の何処にも。その呪詛が届く事は無かった。そう。何故ならば──
「──お待たせしました、紅閻魔さま。助太刀致します!」
陣羽織に、真なる輝きを魅せるムラクモの剣。輝かしく煌めく、日本一の二つの御旗。鉢巻締めたその兵が、多重屈折斬撃により総ての飛蝗呪詛を切り捨てた。
【──!?!?!?】
「ぜぇりゃあぁあっ!!!」
同時に響く爆音、砕け散り吹き飛ぶ肉塊。世界を砕く金棒・・・疑似金棒の一撃が、まつろわぬ鬼を粉々に吹き飛ばしたのだ。その偉容、その風格。威風堂々たる風貌に雄々しき四本角。グランドバーサーカーの冠位を戴く、無敵の鬼神。
【大丈夫!?えんまちゃん、ケガはない!?】
そしてその二人の大将にしてマスターたる龍が寸での処で救援に参戦を果たす。──運命を、決して取り逃さぬ楽園の主従達。
「元!グランドセイバー、桃太郎!」
「同じく元!グランドバーサーカー、鬼神・温羅!」
【グランドマスター(仮)!!藤丸龍華、楽園カルデアから救援にやって参りましたッ!!】
「「「「「「うぉおおぉおぉおぉおぉおぉおーっっっ!!!」」」」」」
戦慄の絶望が、絶対の希望に変わる。鬼と雀の歓声が一瞬で閻魔亭を包み込んだ。日本の童話に伝わる最強の兵と無敵の鬼神、龍の少女が窮地にやって来たのだ。是非も無いと言うものだろう。
【クァアァアァアァア・・・!!】
まつろわぬ鬼は四散した肉体を燃え上がらせ、怨霊の焔となりて三人に殺到する。風を切る怨嗟の迅速。しかしその動きは『モモの四肢』の稼働速度より遥かに遅きに失している。
「供を穢すに能わず。小手調べ、受けてみよ!!」
たった一振り。一振りムラクモを振るった瞬間に、四肢が粉微塵に切り裂かれ分断される。グランドセイバーたる剣業は、何気無く振るった軽い一手ですら時空を歪め、無限の太刀と化す。
【ガ、グァ・・・!】
「改めさせて貰うからな、茨木よ。お前を縛っているモンがなんなのか・・・!!」
素早く残した頭を掴み取り、その記憶と状態を読み取る。魂を奪いし力を加減すれば、魂を読み取る事に繋がる。そうしてまつろわぬ鬼の記憶を読み取り──
~
ま、待て!吾に、吾に何をする気だ!お前はなんだ、何故、何故この様な・・・!!
ぐわぁあぁあぁあぁっ!!や、止めろ・・・!止めろ!吾から、吾から奪うな・・・!吾が、吾で無くなる・・・!
嫌だ、嫌だ!忘れたくない、忘れたくなどない!止めて、止めてくれ!それだけは、それだけは吾から奪わないでくれぇ──!!
──逃げろぉ!!酒呑──!!
『──ヒヒヒ。鬼にしたげよう。さぁ──たんとお食べ──』
~
【ぐがぁあぁあぁあぁあ!!ォアッ、ガアァアァアァアァア!!!】
「ッ!!」
温羅が記憶を把握した瞬間、口に拡がる腐廃物を何億も凝縮されたものをねじこまれた感触と食感。内側から腐りきって行く感覚を共有すると共に、まつろわぬ鬼が狂ったように慟哭し、やがて霧散する。辺りには、嘘のように静寂が戻りゆく。
【──シュ、テ、ン──】
「・・・──」
・・・最後に、言葉を残して。
「温羅!無事ですか!?」
【大丈夫!?呪われたりしてない!?】
頭を掴んだ右腕にこびりつく刺激臭を消し飛ばし、二人にウインクを返し温羅は静かに立ち上がる。
「──間違いない。あれは茨木童子だ。そして、アイツは・・・黄泉の食物を喰わされた。今のヤツは、この世の理の存在じゃない。あの呪術、その源流は──【
「よもつへぐい・・・」
「そして──予感が当たっちまった。ごめんな、リッカ」
【え・・・?】
「今回の騒動の元は──アタシの知り合いだ。アタシが殺した筈の──鬼のババアだ」
茨木から総てを奪い、黄泉の食物を喰わせた際の吐き気のするあの笑顔。それを思い返し・・・血が出るほどに温羅は唇を噛み締めた──。
閻魔亭
紅「本当にありがとうございました!お三方がいなかったら、どうなっていたことか・・・!」
リッカ「モモとウラネキの対応が迅速すぎて、私は立ってただけだけどね!ハッ!まともなマスター出来てた!?」
紅「リッカちゃまだから、仕えるちゃーばんとは十全になれるのでちよ!」
リッカ「そっかぁ!良かったぁ!」
モモ「はい!・・・ウラ、先の言葉は・・・」
ウラ「確証を得たからな。しっかり伝えよう。あのまつろわぬ鬼、あれは間違いなく茨木童子で間違いない。そして、その魂は術にて縛られ、同時に黄泉の食物を喰わされた。日本古事記に伝わる、黄泉戸喫というヤツだ」
リッカ「・・・イザナミ様が、黄泉の食べ物を食べたせいで地上に戻れなくなった、あの?」
ウラ「あぁ。・・・そして、サーヴァントを召喚し、ソイツをわざわざ茨木にやらかしやがったのが。アタシを作った、鬼のババアだ」
リッカ「!?え、でもその鬼のおばあさんは・・・!」
ウラ「殺した。だがアタシはソイツを喰らわなかった。茨木が見た記憶に、確かにソイツはいた。どういう訳か、五体満足でな。・・・いや、あのババアは今はどうでもいい。今は茨木をなんとかせにゃならん」
モモ「はい。──リッちゃん。お姫様が聞き取った言葉を、覚えておりますか?」
リッカ「えと・・・ここまで、おいで?」
ウラ「それは鬼は言われる側だ。鬼が追われる側に甘んじるのは考えにくい。そして、楽園に直接攻撃せずわざわざウルクを狙った理由もきっと答えがある。──何かわかるかい、リッちゃん」
リッカ「・・・──ばらきーが、助けを求めてる?」
モモ「はい!姿を晒し、無軌道に暴れる。そうすることで、私達に危機を知らせる為の鬼の抵抗と考えられます!」
ウラ「とはいえ、黄泉戸喫の影響は強い。今のヤツは、ババアの影響下と茨木の意志で相反した行動を取ってる筈だ。力を蓄えるためと、助けを求める為のな」
紅「神気を狙ってきたのも、そのせいですか・・・」
「・・・あのババアの手製で再現された黄泉戸喫だ、まだイザナミが食った様な概念束縛は無いのかもしれん。何とかして追い込めて拘束すれば、元には戻せるかもしれん・・・!」
リッカ「──やろう!ばらきーを助けよう!!」
モモ「異論無し!それでは、MOMOを使用し、茨木童子の居場所を探りましょう」
リッカ「出来るの!?」
モモ「はい!残留霊子を辿って行けば・・・!」
ウラ「アタシも予測するに、破壊と救護を両立するならば、茨木が縁深い地へと行く筈だ。となれば──」
オルガマリー『リッカ、聞こえる?あの鬼が現れたわ!足柄山よ!』
ウラ「──坂田金時、発祥の地だ・・・!」
リッカ「──金時兄ぃにも、助けを・・・。待ってて、ばらきー!!」
まつろわぬ鬼【・・・オ◼️、◼️ン、こ◼️◼️。◼️の、◼️ル、◼️◼️へ・・・】
金髪碧眼の子供「・・・?」
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