召喚されて勇者やってたけど平和になったので料理屋をやってます。   作:kaenn

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暇つぶしに書いた初オリジナル作品です。

最近、異世界で料理を作るラノベがあったので面白そうだなぁと思って書いて見ました。


ドラゴンのすてーき

異世界 リストアール大陸

 

今より30年前にリストアール大陸で始まった人魔戦争…、魔軍と呼ばれる者達が大陸を支配する状況を変えようと、人間やエルフや獣人などの種族が暴政を覆すため立ち上がり、異世界から召喚された勇者と呼ばれる者と共に戦った。

 

その甲斐あってか、現在では魔軍最高司令官にして魔国国王のフェンリルとも和解して平和な世の中になりつつあった。

 

 

 

…チュンチュン…

小鳥の囀りが聞こえ始める時間

朝陽が射し込む白い煉瓦造りの建物内で1人の男が料理をして居る。

 

ートン、トントン……グッグツグツ…ー

 

まな板の上に置いた胡瓜の様な野菜をリズム良く刻んだかと思うと、瞬間的に五歩ほど離れた鍋の煮え具合を確認している。

 

男は鼻歌を歌いながら料理を作っていた。

 

すると、男の背後にある住居側の扉から金髪の少女が入って来て、

 

「おはようお父さん!…今日は何からお手伝いしようか?」

 

と、声をかけてきた。

 

そう、入ってきたのは自分の娘で、ニコニコと笑顔を浮かべ、ふさふさな髪と同じ金色の尻尾を嬉しそうに左右に振りながら歩いてくる。

 

「おはようリア、そうだなぁ…じゃあサラダの盛り付けを頼んでもいいかな?」

 

と、言いながら娘のシルフェリア・ジル・D・将紀(愛称はリア)の頭を撫でる。

 

「お父さん、くすぐったいよ〜。」

 

リアの頭の獣耳に手が当たるたび耳と尻尾がピクピクと動きながら嬉しそうに上目遣いで見上げてくる。

 

満足したのかトテトテと、自分から離れていくと、クリスタルで出来たボールを3つ食器棚から取り出し、準備しておいた野菜を盛り付け始める。

 

「そう言えばリア、タマはまだ寝てるのかい?」

 

ふと、いつもは一緒に降りてくる妻がまだ降りて来ない事に気づいてリアに質問すると、

 

「ん?お母さん?今日は体調が”良くなりすぎる”日だから落ち着いたら戻って来るってお外に行ったよ。」

 

リアの言葉に冷や汗をかき、今日の夜は大変だなぁ……と考えていると店の勝手口から金色の獣耳とふさふさの尻尾を持つ、リアをそのまま幼くした様な幼女が入って来た。

 

「お前さま、リア!いま帰ったぞ!」

 

扉を開け放ったのは自分の妻の玉藻・D・将紀で、腰の辺りまで伸ばした金色に輝く髪を風にたなびかせ、晴れやかな笑顔を浮かべている。

 

「お帰りなさいお母さん、今日は何狩ってきたの?」

 

リアが玉藻に近所のスーパーで何を買って来たの?といった感じで質問すると玉藻は、

 

「散歩しておったら、下級トカゲ風情が喧嘩を売って来たもんでな?つい、こう、キュッと…な?」

 

そう……満面の笑みで店の裏口に立つ妻の右手に捉まれているのは赤い大きなドラゴンの尻尾でした…勿論その先には胴体も頭も残っています……。

 

「お前さま!今日の朝のオススメはドラゴンのすてーきか、はんばーぐじゃな!」

 

朝からステーキやハンバーグは重いな…と思いつつも妻の

ーこれでもか!!ー

と、言わんばかりに揺れ続ける尻尾とドヤ顔を見て、

 

「じゃあ取り敢えず解体しとくから、タマはまずお風呂に入って来なさい。」

 

頭を撫でながらそう言うと、

 

「うむ、分かったのじゃ!焼くのは妾に任せるのじゃぞ?お前さまが焼いてしまうとみでぃあむになってしまうのでな!」

 

レアが好きな妻だが、俺が焼くと長年の経験からどうしてもミディアムかミディアムレアで焼いてしまうので、レアに焼く場合は玉藻が焼くのが家のルールになっていた。

 

「お母さん元気だね、………そうだ!お父さん、私ね?弟か妹が欲しいな!」

 

風呂に入りに住居側の扉を開けて中に消えた玉藻を見て、少ししてからリアは俺の方に向き直って、妻に負けず劣らずの笑顔でそう言い切った。

 

ガクッ、とコケた後

 

「リ、リア?急にどうしたんだい?」

 

克馬は唐突に放り込まれた娘の爆弾発言の意図を確認するとリアは不思議そうに、

 

「マリーちゃんがお母さんが元気すぎる時にお父さんにこう言えば弟妹が出来るって教えてくれたんだけど…間違ってた?」

 

と、言ってきたので

また親友の娘の影響か…と頭を抱えてた。

その時リアの背後には、母親譲りの銀髪を掻き上げながら高笑いする何処かの国の王女が見えた気がした。

 

 

「お前さま!切り分けは終わったかのう?」

 

風呂から出て少し上気したピンク色の肌と髪から湯気と石鹸の良い匂いを漂わせながら玉藻が俺に声をかけてきた。

 

「あぁ、切り分け終わって鉄板も準備出来てるよ。」

 

「うむ!では妾が、れあすてーきを焼こうではないか!」

 

俺が切り分けておいたドラゴンの肉をみて玉藻は九本の尻尾を振りながら鉄板の前に立つと徐に鉄板に油をひき始める。

油が鉄板に馴染んだ頃に下味をつけておいた肉を鉄板に乗せて焼くとじゅうじゅうと良い音と煙と香ばしい匂いを立ちのぼらせていく。

 

「ふん、ふん♪ふん〜♪………」

 

鼻唄を歌いながら料理を作る玉藻を見てふと思う。

玉藻は結婚してから相当練習してきたので、今は安心して見ていられるが、冒険していた時や、結婚当初は危なっかしくてとても見ていられなかったのだが、子供ができると今までの事が嘘の様に安定して料理を作れる様になった。

 

「出来たぞ!さぁさ!せっかくの新鮮なすてーきじゃ!暖かいうちに食べようぞ!。」

 

肉だけが魔法で浮いて空中で玉藻の包丁捌きを受けて一口サイズに切り分けられてテーブル上の皿に盛りつけられる。

某中華料理の漫画みたいになっているような気がするが気にしたら負けだ…この世界は異世界なのだから……

 

まだじゅうじゅうと音を立てて、ちょうど良い具合に油も落ちた熱々のレアステーキが食卓に並ぶと、玉藻が尻尾を振って「早く食べよう!」と無言の催促をする。

俺もリアも苦笑しながら席に着き手を合わせて食べ始める。

 

「「「いただきます!!。」」」

 

「リア、すまんがそこにある醤油を取ってくれんかの?」

 

「ん、はいお母さん。」

 

リアに取ってもらった醤油を小皿に入れ、山葵を乗せ切り分けたステーキに、醤油を少し付けて玉藻は自分の口に運ぶ。

 

「んん〜〜〜んまいのう♪流石!妾の焼いたすてーきじゃ!リアもそう思うじゃろ?」

 

嬉しそうなドヤ顔で娘のリアに美味しい?と聞く玉藻にリアは少し困った笑顔で、

 

「うん♪お母さんの焼いたステーキは大好きだよ!……でも私はお父さんの焼いたステーキも美味しいと思うよ?」

 

と、返すと、玉藻も顔を赤くして俯きながら、

 

「………いや、確かに克馬の方も美味いが……じゃが、それを認めてしまうと妾の母親の威厳が………うーむ………。」

 

玉藻が呟きながら悶えていると、外から慌てた男の声がする。

 

「…………ドーラックス卿はいらっしゃいますか!火急の用がっ……。」

 

聞こえる声は、この国の騎士で城からの連絡役として良く来るクリスティアーノという青年の声だ。

 

「ぬぅ…なんじゃ朝っぱらから騒がしい!妾が出る故お前さまは座っておれ。」

 

玉藻が、ばっ!と、顔を上げると立ち上がり扉の前まで歩いていく。

 

「…全くなんじゃと言…」ーバンッー

 

「ドーラックス卿!申し訳御座いません、火急の要請で御座います!付近の街道に大型のレッドドラゴンが現れたそうで………?ドーラックス卿?何故、そんな顔を…?」

 

扉を開け放って目当ての人物を見つけたクリスティアーノは、その人物とその娘が自分に向けて哀れそうな視線を向けているのを見て、どうしたんだろうと考えていると、不意に肩に手が乗っかる感覚がする。

 

「えっ?」

 

背後から恐ろしい殺気を感じてクリスティアーノが恐る恐る振り向くとそこには…

 

「若造……妾に扉をぶつけて置いて謝罪の一言も無しとは……少し…灸を据えてやらねばいかんかのう?」

 

背後に幻影の炎を纏ったラスボスが立っていた。

 

 

 

「それでクリス君?火急の用とはレッドドラゴンの事で良かったのかな?」

 

ひとしきり玉藻の叱責が終わった頃に、克馬はクリスティアーノに声を掛け、用事の確認をする。

 

「……ハッ!そうです!国王様からの正式な要請でドーラックス卿にレッドドラゴンの討伐を…?」

 

使命を思い出したクリスティアーノは要請を伝えていると、克馬は困った様な顔をして背後の中庭を指差す。

 

不思議に思いながら窓から中庭を覗き込むと其処には、

 

巨大なレッドドラゴンが横たわっていた。

 

「へっ?ナンデココニ?」

 

視線を戻すと、困った様な顔の勇者、これでもか!というほどのドヤ顔をした狐耳の幼女、ん?何かあったの?といった顔の狐耳の少女がこちらを見ていた。




続くかは分かりませんが物書きは続けていこうと思いますのでどこかで読んだらオッ?また書いてるな?ぐらいの気持ちで読んで見てください。

5月8日
別サイト様に投稿の為少し加筆しました。

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