ちなみにルナちゃんは毎日能力で着替えてるので違うパンツです。
今日は見られてもいいように可愛いやつにしてます。多分。
「魔法を学ぶって、ルナから?」
教えてくれると言うなら教わりたいが、魔法は得意じゃないんじゃなかったか。
「私じゃだめですよ。てんでダメですから。下級しか使えませんしね。」
「じゃあ誰に?」
誘導されたようだが、聞いてみる。
「私のギルドの人です!もうすぐ着きますよー!」
張り切っているルナ。可愛いなあ。
そういえば忘れていたが、これはギルドに向かっているのだった。
「あ!見えてきました!!」
ルナが指差す方向を見ると、そこにはいかにもと言った様な城を中心とした街があった。
「すっげぇ...栄えてるんだな」
「そりゃもう!都会の中の都会ですから!そして私の住む街です!」
「その名をオリンポス!!」
胸を張るルナを見ながら、何か嫌な感じがしたのはなぜだろうか。
「では、門番さんに話してきますのでここで待っててくださいね」
「わかった。」
ルナはとてとてと鎧を着込んで手に大きな槍とこれまた大きな盾を持った門番に近づき、話しかける。
「かくかくしかじか。とらとらうまうま。」
「なるほど、わかりました。お通りください。」
「スウさぁーん!大丈夫だそうでーす!」
元気な子だなあと思いながら、大きな門をくぐると、そこはとても華やかな街並みだった。
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「なあ、ルナ、ギルドってどこらへんにあるんだ?」
「ギルドはすぐそこですよ。迷子にならない様にしてくださいね。」
本当に冗談じゃなさそうだ。ものすごい数の人?が行き交っている。
その人々の中には羽が生えたものや角が生えたもの、耳が尖ったものもいる。毛むくじゃらだったり、浮いたまま進むものも。
「本当にたくさんの種族がいるんだな。」
「はい、数えきれない程。人間族は少ないです。このオリンポスで地位を持つ人間族はほぼ全員が冒険者かその家内ですから。」
「なるほどな...」
しかし、貧弱だと神に直接言われるほどの種族が冒険者なと務まるのだろうか?
「ちなみに、冒険者最強と名高いギルドの一番槍さんは人間族ですよ。」
「ええっ!?人間族で冒険者最強!?」
なんと言うことだ。僕と同じ身でありながら、最強とは。
「なので、このオリンポスでは人間族の数は少ないですが、差別をする人は少ないです。一重に先人の努力のおかげですね。」
「全くその通りだな。どんな人なんだろう。」
「さあ...私も会ったことないです。」
最強の冒険者に思いを馳せていると...
「着きました!ここが私のギルド!オリンポス最大であり冒険者の登竜門!その名をゼウスです!」
僕は思いっきり吹き出した。
ゼウス。ゼウスといったかこの少女。
「ゼウス様はオリンポスの神様であり、全知全能なのです!」
「知ってる...」
僕は少し疲れた様な顔で言った。
「ゼウス様を知ってるんですか!?はああさすがです全知全能の神さまゼウス様...」
恍惚、と言った表情を浮かべるルナ越しに、何か銅像の様なものを見つけた。
僕はまた吹き出した。
「あっ...あれは?」
「あれはゼウス様の銅像です!名前をお借りするからには作らねばとギルド長が言ってました。」
そこには、10mはあろうかと言う巨大な全裸のたくましい男の銅像があった。酒場のど真ん中にデカデカと。
「ゼウスあんなんじゃねぇよ...」
「え?何か言いましたか?」
「いや別に...」
本物を知る僕からすると、何かと複雑な環境である。
「まあ、いいや。登録はどこでするんだ?」
「あ、こちらです。」
僕はルナに連れられるままに受付へ向かう。
「ようこそゼウスへ!本日はどのようなご用件で?」
とても元気な声で挨拶をしてくれる美人のおねぇさん。身長は高く、耳がとんがっている。恐らくではあるがエルフなのだろう。
「あの、冒険者登録がしたくて...」
「はい、登録ですね、ではこちらへ...」
そう言い、受付から出たおねぇさんは僕を引き連れ、物々しい部屋へと進んだ。
「ここで、血を少しいただきまして、それを血印として保存いたします。その後、適正検査を受けていただいたら終了です。料金として1ゴールド必要ですが、お待ちでしょうか?」
「あ、お金...」
しまった。完全に無一文である。
「お金なら、これを売ればいいんじゃないですか?」
ルナはそう言うと右手からどこからともなく牙を取り出した。二本。
「こっ、これはゴレイの...!?しかもこの大きさは...少々お待ちください。」
おねぇさんはすこし慌てて牙を持ち、出て行った。
「よかったのか?ルナ。僕の登録料に使っちゃって。」
「いいですよ。わたし一人では倒せませんでしたし。困った時はなんとやらです。」
ええ子や...撫でてやりたいがやめておく。
「はい、おまたせいたしました。どちらも良い品です。特にこちらはAクラスのゴレイですね。討伐報酬と素材料、あわせて30ゴールドで買い取らせていただきますが、どうなさいますか?」
30ゴールドとは、どのくらいなのだろう。
「30ゴールドぉ!?」
ルナがとても驚いた顔をした。すごいのかな。
「スウさんすごいです!30ゴールドといえば一年は遊んで暮らせます!吹き飛びはしましたが牙だけでも残ってくれてよかったです...」
それはすごい。登録料を払っても十分すぎるお釣りがくる。
「(このレベルのゴレイを牙だけ残して吹き飛ばす...?何者なの...)」
「で、では、買い取らせていただきまして、登録いたします。右腕を。」
「はい。」
右腕をまくり、前に出す。
「わたしの後に続いてお願いします。ゼウスの名の下に。」
「ゼウスの名の下に。」
追って言う。
受付のおねえさんは僕の右腕に凝った形のナイフを突き立てると、スッと引いた。
血が滴り落ちる。その血が地面に落ちると同時に、部屋が白い光で満ちる。
「はい、これで完了です。追って冒険者登録カードをお渡しするので、外へ出てお待ちください。」
そう言って歩き出すおねぇさんだったが、悲劇はおきた。
古い石畳のその部屋は、どこもデコボコしており、ヒールで歩いていたおねえさんは盛大にすっ転んだのだ。
「きゃんっっ!」
大人のおねぇさんが出す可愛らしい声にドキッとしつつも、僕の目は捕らえた。
こけて四つん這いになるおねえさんのスカートはまくれあがり、純白の布があらわになっている。
「おおっ...!?」
目が釘付けになってしまう。
その布は肉付きのいい腰をつつみ、薄い布地でその体を守っている。白の生地は肌の白いおねえさんによく似合い、そこからすらっと伸びる長い足がなんとも絵になる。
ちなみにおねえさんがこけてからこの感想が終わるまで、1秒に満たない。
「大丈夫ですか?」
僕は、言った。紳士的に。スカートやパンツなどもともとなかったものかのように無視(したように見せる技術)し、おねえさんに手を貸す。
「あ、ありがとう。ごめんなさい、まだここ慣れてなくって...」
かけていたメガネが片方ずり落ちている。このおねえさんはドジっ子なのだ。
「では、戻りましょう。」
僕は、またひとつ、大人に、なった。
なんか長くなってしまいました。申し訳ないです。
さて、今回のあとがきです。
今回はオリンポスにおけるアレコレです。
「30ゴールドで一年暮らせる」と、ルナは言いましたが、
お金は価値の高いものから順に、プラチナ、ゴールド、シルバー、カッパーというお金があります。100カッパーは1シルバー、100シルバーは1ゴールド、と言った具合です。ちなみに農家こだわりのりんごは一個で5カッパーくらいです。なので、1ゴールドはかなりの価値です。
物価は安いですが別に良いものが揃っているとかそういうことはないです。