チート能力持ちのありきたりな冒険   作:ぎが

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がんばれスウ。がんばれルナ。がんばれゴレイ。
ちなみに語らせる気がないのでここで語りますが、ゴレイは別にものを食べなくても生きて(?)いけます。このゴレイが子グマを咥えていたのは、元になった生物の習性からくるものです。
ゴレイに必要なのは魔力なのですが魔力の話はまた後ほど。
楽しんでいってね。


5話 魔法、能力、モンスター。

「gaaaaaaaaaa!!!」

 

声は一層大きく激しくなる。

 

「ぐぅっ...!」

 

今まで聞いたこともない怒号に、スウは気圧されてしまう。

 

「くっ...スウさん!下がって!!」

 

「そう何度も女の子に守られてたまるか!!」

 

そういうとスウは、ルナのとなりに立つ。

 

何ができるかはわからない。わからないが、やってみるしかない。

 

「ルナ!ルナは魔法使えるか!!」

 

「ま...魔法ですか?使えないことはないですが...得意ではないです...」

 

それを聞いて安心した。

 

「そうか。じゃあ、僕も役に立てそうだ。」

 

悠長に話している時間はくれないようだ。

 

林の中から、一層大きなゴレイが現れた。

 

ゴジラの様な形をしているが、元となった生物は恐らくヘビ。

 

ヘビと壊れた教会をごちゃまぜにしたようなおぞましいゴレイであった。

 

「うっ...」

 

あまりの醜さに軽い吐き気を催す。

 

「来ます!!」

 

ルナが叫ぶ。

 

すると、そのゴレイは一瞬でルナに肉薄し、その牙を突き立てんと近づく。

 

「てやぁぁ!!」

 

ルナも負けじとゴレイをかわし横腹へと剣を振るうが、皮膚がかたすぎたようでたった一振りで折れてしまう。

 

「ぐっ...不敗の箱(パンドラ)!!」

 

ルナの右手にはもう一振りの剣が握られる。が、それもまた折られてしまう。

 

「僕にできること...」

 

スウは考える。少しでも役に立てることは何か。

 

「これなら...!!」

 

スウは足元にあったそれを持ち上げる。

 

「んおおらぁぁぁ!!」

 

拳くらいの石を思いっきりゴレイに投げつけた。

 

当然ゴレイにダメージはないが、ゴレイはスウの方を向く。

 

「今だルナ!!思いっきり魔法を打ち込め!!」

 

「で、でも私、初級魔法しか...っ」

 

「いいから!!」

 

叫ぶスウに、ルナは標的を見据える。

 

「うう...でもやるしかない...剣じゃ歯が立たないし...」

 

ルナは初級の魔法を詠唱する。

 

ルナの周りに白くて丸い、何かが舞っている。

 

「光の加護を!」

 

「ホーリーライト!!」

 

叫ぶルナの手に白くて丸い何かが集まり、ダーツの矢を思わせるような形状に変わる。

 

そして、その矢はゴレイの尾に突き刺さる。

 

「goooaaaa!?」

 

きいているようだ。苦しそうに悶えるゴレイだが、すぐに体制を立て直す。

 

「わたしの力じゃ全然ダメ...」

 

「そんな...」

 

膝をつくルナの元へ駆けつける。ルナは強大な敵を前に絶望してしまっているようだ。

 

「魔力がもうないの...私、生まれつき魔力が少なくて...」

 

「そんな話、勝ってからいくらでも聞くよ。」

 

どうにかできないだろうか。いま魔法を覚えるというのは無理があるだろうし、僕には剣も使えない。なら...

 

「ルナ、もう一度だ。もう一度だけ打てるか?」

 

「もう...一度?」

 

涙目のルナは怯えるようにスウを見上げる。

 

「僕も一緒だ。さあ、立って。」

 

スウはルナを抱き上げる。そして、ゴレイの方を向き、ルナの右手をゴレイに向ける。

 

「魔力、足りないかもしれない。それに、威力も。」

 

「大丈夫。きっと勝てる。一緒に勝とう。」

 

ルナはハッとしたような顔をすると、それまでの怯えた表情から一転し、強気な顔を見せる。

 

「...はい!!もう一度だけ、頑張ります!力を貸してください!」

 

「おう!」

 

力を貸してくださいと言ったルナは、支えてもらうくらいのことを想像していただろう。だが、スウの口から出る言葉は支えの言葉などではなく。

 

「コレクト」

 

能力名であった。

 

「!?」

 

驚くルナの体に、信じられない程の魔力が注がれる。

 

「これは一体!?スウさん!?」

 

「まだ教えてなかったよね、僕の能力。能力を集める能力(コレクト)。力の銀行だよ。」

 

「そんな能力聞いたことも...!」

 

「さあ、前を向いて。」

 

ゴレイは警戒しているのか様子を伺うようなそぶりを見せる。チロチロと舌を覗かせ、こちらの出方を探っている。

 

「集中するんだ。全部を出し切ればきっと勝てる。今のルナは誰にも負けない。」

 

なぜなら、僕のいま渡せる全てを渡しているから。親密度で言うと大したことはないだろう。ただ、僕に眠る魔力は想像をはるかに超える量のようだ。

 

スウの1割にも遠く及ばない程の魔力であったが、それでもルナが驚き、たじろぐほどである。

 

「gyaaaaaaaaa!!!」

 

しびれを切らしたゴレイが、二人に飛びかかる。

 

ルナの体から、先程見た光の玉が現れる。その大きさ、眩しさ、量、どれを取っても先程の比では無い。女神が降り立ったかのような姿である。

 

「行きます!光の加護を!!ホーリーライトォ!!!」

 

ルナの透き通った声が林にこだまする。

 

その瞬間、昼になったのかと思うほどの光を放ちルナの右手から飛び立ったそれは、ゴレイにむかい一直線に駆け抜けた。

 

「「うわぁぁ!?」」

 

二人はあまりの威力に後方へと吹き飛ばされる。

 

スウはルナを抱きかかえ、そのまま転がる。

 

「くっ...」

 

転がるうちに肩を打ったようだが、ルナは無事のようだ。硬く目をつぶっている。

 

「...っ、ゴレイは!?」

 

スウはそう叫び、ゴレイのいた方向をみる。

 

未だ土煙をあげるそこは...

 

「何も...無い...」

 

何も無い。さっきも味わったような感覚を覚え、立ちすくんでいるとルナも抱きかかえられていることを恥ずかしがりながら、少し勿体なさそうにスウから離れると、目を点にした。

 

「なに...これ...」

 

ルナが立ち上がる頃には土煙も晴れ、しっかりと前が見えるようになっていた。

 

そこには、まるで最初から何もなかったかのように、一直線にえぐり取られた林の断面があった。その先には、いつのまにか夜が明け、太陽が登ろうとしている。

 

「この...力は...一体...」

 

ルナはそう言い、倒れた。

 

魔力欠乏症。一度に大量に魔力を消費すると、一種の貧血のような症状が出ることがある。

 

「ルナ!?大丈夫...、か....?」

 

バタリ。

 

それはスウも同じの様だった。

 

そうして見事に分断された林の真ん中で、二人仲良く倒れるのだった。




魔法とは、魔力という素材を使い、使い手が調理をし、出す料理みたいなもんです。魔力適正は得意料理とかに該当しますかね。
素材が多ければ出せる料理も当然多いですが、一流のシェフが作る一品には負けてしまいます。
ちなみに、ルナちゃんの魔力は、よく言って下の上。魔力適正は光魔法に大きく振れており、光だけでいうなら上の下くらいです。
スウはどちらもマックス振り切ってます。

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