チート能力持ちのありきたりな冒険   作:ぎが

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3話にもなってやっと出発する主人公にはまったく呆れたものです。(すっとぼけ)
登場キャラも2名ですし。
これから頑張りますよこれから...
続きをどうぞ...


3話 美少女と、あとなんか、そう、美少女。

気がつくとそこは草原であった...

 

心の中でそんなことを思いながら、すこしボヤける思考を落ち着かせる。

 

「痛...頭打ったかな...」

 

落ちた、という感覚だけを覚えている僕は、落ちて頭を打ったのかと思ったが別に外傷はないため、そういうわけでもないのだと思う。

 

「まあ、ずっと寝てても仕方ない。少し周りを見て回るか。」

 

僕は周りを見渡す。草原、と言ったが、それは横になって近くを見ていた時の感想であり、周りは少し草木が生い茂る林に近い地形だった。

 

「うわ、なんともファンタジーにありそうなダンジョン感...」

 

ダンジョン感、という語感のいいワードにテンションが少し上がりながら、ゼウスが言っていたことを思い出す。

 

「そう言えば、魔法とかが使えるんだよな...試してみるか。」

 

少しワクワクしながら、頭のなかで魔法について考えてみる。

 

まずは火がいいだろう。初級って感じがするし、イメージもしやすい。

 

「よぉーし火...火...手のひらからこうボワっと...」

 

遠くから見るとただの可哀想なこじらせボーイであったが、幸いにもそこは人っ子ひとりいない林の中である。

 

「火....が、出ない...。」

 

出ない。どれだけ踏ん張っても、火が出るどころかケツから身が出そうである。

 

「もしかして、詠唱とかいるのかな?これ。魔法にも色々ありそうだしなあ。」

 

そんなことを言いながら、ふてくされていたその時、近くのヤブがガサガサと揺れた。

 

「なっ!?誰だ!」

 

モンスターかと思った僕は、つい声を荒げてしまう。誰だ、と言ってしまうあたりまだ異世界に慣れていない感が否めないが。

 

「ひぃぃっ!?なっ、ひゃああ!?」

 

そんな情けないような声を聞き、とりあえず人なのだ、と思う。

 

「ああ、良かった人か...あの、大丈夫?」

 

ヤブの中へと足を運ぶ僕は、そこでとんでもないものを目の当たりにする。

 

「みっ...見ないでぇぇぇ!!!」

 

まず僕の目に飛び込んできたのはお尻、であった。お尻。なんといい語感なのだろうか。

 

そして次にパンツ。これまた美しい語感。薄ピンクに質素でありながら程よい刺繍の施された良いパンツである。良いパンツって何。

 

最後にその下にある、水たまりを形成する何か、である。

 

「うおああ!?」

 

僕は慌てて飛びのく。

 

「見ないで!!あっち向いてて!」

 

「はいぃ!!」

 

いい返事だぞ。スウ。そんなことを自分に言い聞かせ、落ち着こうと必死になっていると、ガサガサとまた音がした。

 

「あの...もう、良いです。...こっち向いても。」

 

「ああ、はい、わかりました。」

 

なぜ敬語?と自分に聞きたかったが、空気が僕にそうさせた。

 

「あの、君は...」

 

誰なの。と、そう言いかけた。その瞬間、僕の目に再び飛び込んできたのは...

 

美少女!!美少女じゃないか!羞恥に顔を赤らめ、涙を浮かべるその顔は天使のような優しい顔立ちであり、髪は長めで金のツインテール。抱きしめたくなるようなコンパクトな身長に、存在を確かに主張する双丘。

 

「きみの...名前は...」

 

力なく言う僕の顔は、とりあえず紳士のそれではなかっただろうが、僕の中では耐えた方であると宣言しておきたい。

 

「私...ルナって言います...あの、お見苦しいところをお見せしまして...」

 

「いえ、見せていただいてありがとうございます。」

 

僕は今度は慌てず、大人の対応を取った。

 

「ふえぇ!?あの、どう言う意味でしょうか...?」

 

ルナはまた顔を真っ赤に染めながら、恥ずかしがっている。

 

そこで、やっと落ち着きを取り戻した僕はルナ全体をしっかり見てみる。この子はおそらく僕と同じくらいか少し上くらいの年齢だろう。

 

少し体格に合わないのでは、という印象を受ける鎧のようなものを身につけており、関節を守っている様だ。

 

短めで深いグリーンのスカートを履き、足にはすね当てがつけてある。それに、耳が隠れるほどのベレー帽に似た形状の帽子を深々と被っている。どうやってツインテールを出しているのかがとても不思議であったが、気にしない。

 

なんというか、戦士?みたいな服装なのである。

 

「あの、ルナ、でいいかな。ルナはここで何を?」

 

野ション、であったが、別にそんなことが聞きたいわけでもない。

 

「えっと、モンスターを狩りに...でも、ここにはあまりいないみたいです。」

 

この子、こんな顔して野ションはするわ、それを見られた直後に見られた相手と普通に喋るわ、モンスターは狩るわで割とアッサリした性格なのだろうか。

 

「モンスターを...ね。あ、そうだ、遅くなったけど、僕はスウ。よろしく。」

 

美少女に見惚れてすっかり自己紹介が遅れてしまった。

 

「スウさん、ですか。よろしくです。」

 

ようやくまともに会話ができる。

 

と、思った瞬間、木がガサッと揺れ、何かが飛び出る。

 

「「!?」」

 

二人が驚いてみる方向にはあらぬ方向に首が曲がった子クマ...

 

を、口にくわえる、ゾウの体にライオンの首をくっつけたような悪趣味なモンスターがいた。

 

「ゴレイ!?こんなのがここにいるなんて聞いてない!!」

 

ルナが驚いた声を発すると、そのゴレイ、と呼ばれたモンスターは咥えた子グマの首を引きちぎり、臨戦態勢を取る。

 

「こいつ...こっち狙ってないか?」

 

震える足に、もう少し立っていてくれ、と心から願うスウに、ルナは強く言う。

 

「狙っていますが、私も冒険者、このくらい乗り越えて見せます!スウさんは下がって!」

 

「くっ...!」

 

魔力があろうが、使い方がわからないのであれば意味がない。今の僕はとにかく無力であった。

 

「ガルルルゥゥゥァァァァ!!!!」

 

少し日が傾き赤く染まる空に、ゴレイの荒々しくも生命力に満ち溢れた叫びが響いた。




やっと美少女の登場です。僕が気をつけていることはその美少女がどんな美少女かを読者さまに伝えることですが、好きなように思ってくれていいです。可愛かったらそれでいいので。
ルナ、ですよ。ルナちゃん。どうぞよろしく。
またね

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