チート能力持ちのありきたりな冒険   作:ぎが

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はい、遅くなってしまいました。
モンハンワールドは本当に時間泥棒だと思います。
良ければマルチでもしませんか?(ぼっち感
ではどうぞ


27話 アヅサ

スウは、倒れたみんなを介抱し、眠るアヅサの処遇について考えていた。

 

「こいつ、どうしようか。あれだけのことをしておいて僕達が許したとしても国の人達が許すかどうか...なにより、まだ何の話も聞けてないしな...」

 

そう考えていると、続々とみんなが起き出す。

 

「ん...はっ!スウ様!お怪我が!大丈夫ですか!?」

 

「ああ、シルバ。お前こそ大丈夫か?一番ひどかったんだぞ。とりあえず傷は治したけど魔力は一旦すっからかんになったんだ。まだ休んでていいぞ」

 

「ううーん...頭いた...ここ、どこ?私何してたんだっけ」

 

パールも起きたようだ。寝ぼけているようだが。

 

「おはよう、パール。といってももう夜だが。頭痛いのか?」

 

「魔族の心配なんかしなくていいのよ。魔力さえあれば死ぬことはないんだから。それより私の心配してー!!濃厚な魔力供給をー!!」

 

起き抜けとは思えないテンションのランは平常運転のようだ。

 

「はいはい、それは後でな。元気そうで何よりだ。んで、ルナは...っと」

 

「はい...起きてます。まだ動けそうにはないですが...」

 

良かった。みんな無事のようだ。それも元気いっぱい

 

「ていうか...」

 

アヅサの方に目をやる。そこには当然気を失って眠るアヅサがいるわけだが。

 

アヅサは気を失って倒れる時、ボクシングで言うなら絶対に起きてこられないようなぶっ倒れ方をしたようで、大の字で伸びてしまっている。

 

最後に使ったゴキブリ?という魔法によって内側から破かれているそのセーラー服のようなものは、服としての役割を果たせていない。

 

「なんとも目のやり場に困る...」

 

大きくめくれたスカートからは大人びた黒のパンツが覗き、中心のリボンが最後の砦としてその秘部を必死に守っている。

 

ズタズタになったセーラー服からは白のブラが見えていて、それなりに膨らんだ乳房をささえている。レースも少し破かれているようで、かなり危ない防御力である。

 

「上下を揃えていないのも生活感があってこれはこれで...」

 

「どうしたんですか?スウさん。」

 

「いやなんでもないぞ。とてもなんでもない。」

 

真顔である。不自然な程に自然な態度のスウに不信感を覚えながらも、ルナはアヅサに目をやる。

 

「この人、どうしましょう...このまま連れ帰っても、拷問に次ぐ拷問の末、引き回しの上広場で断頭台で石を投げつけられながら打ち首がいいところです」

 

「こわっ」

 

さすがに可哀想だ。が、それだけのことをしたのだろう。

 

「言っておくけど、今ルナが言ったのはかなーり優しい処遇よ?死ねるならまだマシね。死なないように細心の注意を払いながら気が狂うまで慰み者コースが妥当かしら?」

 

「こわすぎだろこの世界」

 

ランが可愛い顔で地獄の門番みたいなことを言う。

 

「とりあえず、縛っておきますか...?変な気を起こされてはたまったものではないですし」

 

「それには賛成ね。起きてから話を聞くくらいの権利は私たちにもあるでしょうし」

 

シルバとパールがいそいそとアヅサを縛る。あまりの手際の良さに、スウは戦慄する。

 

「とりあえず、起きるまでは待つか...それまでは各自ゆっくり休もう」

 

そうして、アヅサが起きるまで束の間の休息を取ったのだった...

 

 

「なによこれー!!!」

 

開口一番、なんとも元気な声が城内に響き渡る。

 

「やあ、おはよう。気分はどうかな」

 

少し気取った態度で話してみる。

 

「なにがおはようよ!こんなに最悪な目覚めはないわ!!お気に入りの服までこんなにしてくれちゃって!!」

 

「いや、それに関しては僕らのせいではないと思うのだが」

 

多少は僕らも関与しているだろうが、勝手にビリビリにした服の責任まで負わされる羽目になった。

 

「さて、お前の処遇なんだが、ルナが言うには拷問に次ぐ拷問の末なんたらかんたらで死刑だそうだ。」

 

「なんたらかんたらってなによ!?私の命をそんなに適当に奪わないでくれるかしら!?」

 

「でもお前、あれだけ人を殺しておいて、許されるはずがないじゃないか。外にいた人たちもお前がやったんだろ」

 

城の前の草原に転がされるように倒れ臥す死体が思い浮かぶ。誰が見てもいい気分にはならないだろう

 

「はぁ!?ふざけないでちょうだい!私はこの城を根城にはしてたけど、人を殺したことなんて一度もないわよ!この城に入ってきたのはあんたらがはじめてよ!!」

 

「どういうことだ?お前がやたらめったら人を殺すから、僕らのところに依頼がきたんだぞ?」

 

なんだか話が噛み合っていない...?

 

「何度も言わせないで!!そりゃあ私の城に入ってきたやつは許さないけど、外にきたやつのことなんて知らないわよ!なんでそんな面倒なことしなくちゃなんないのよ。」

 

「私はただこの城に入ってきたやつを倒せってハデス様に言われてただけなんだから」

 

「はです?」

 

ハデスとは一体...?というか、殺したのはアヅサではない...?だとしたら誰が...

 

「話が見えてきたようだね」

 

聞きなれない声がする。と同時に、ルナの鎧が強く光り、目の前に可愛らしいうさぎがちょこんと座っていた。

 

「やあ、さっきぶりだね、ルナ。それに、スウ。話は聞かせてもらったよ」

 

お前、あんなにかっこいい感じに退場したのにすぐ出てくるのはどうなんだ...

 

「その子の言ったハデスっていうのは死を司る冥界の神さ。恐らく、その子はハデスによってこの世界に来たんだろう。それで、ここを守れと命じられた...違うかい?」

 

「そ、そうよ。ていうかこのうさぎどこから?ていうか喋った!?」

 

「グーパ...だったか?なんでそんなことがわかるんだ?お前、生後1時間もいいとこだろ」

 

「今しがたゼウス様に形を与えてもらっただけで、ずっと生きていたさ。そして、精霊であれば誰でも知っているビッグネームってわけだよハデスは。」

 

ハデス...広義には死そのものを意味するその神は、あろうことかアヅサに再び命を与え、この世界に蘇らせた...一体何のために?

 

「その答えは簡単さ。この状況が全てを物語っているじゃないか」

 

心を読むのが流行っているのかこの世界は

 

「君たちを殺すためさ。スウ。」

 

「僕らを殺す...?なおさら何のために...?」

 

殺されるようなことをしただろうか?いや、していたとしてもハデスなんかから咎められるほどのことではないはずだ

 

「正確にはゼウス様に転生を許された君を、だね」

 

「ハデスはゼウス様のことがとてつもなく嫌いなのさ。これは天界では常識の中の常識、タブー中のタブー。ゼウス様が転生させた君が活躍するのを看過できなかったんだろうね。」

 

「んなめちゃくちゃな...ゼウスに直接言ったらいいだろが」

 

「そんなことできるわけがないだろう?ゼウス様がとても大らかな方だから許されているものの、直接意見なんてしたら存在そのものを消されかねない。それはどの神なのさ、ゼウス様は。」

 

あの美少女からは想像もできない程の話に、あたまが追いつかない。

 

「じゃあ、外の連中を殺したのは...」

 

「十中八九ハデスだろうね。君がたどり着く前にあの子がやられてしまっては、元も子もないし。」

 

「そ、そんな...私はただこの城を守っていれば幸せに暮らせるってハデス様に言われて...それで..」

 

だんだんと青くなるアヅサ。この分では、こちらに来てからまだ城から出てもいないのだろう。外の惨状は知る由もなく、何よりハデスが絶対だと思っていたようで、ショックが隠せていない。

 

「なあ、アヅサ。お前、これからどうするんだ?ハデスはもう信用できない。そのまま帰れば多分さっき言った感じに処刑だろう。かと言ってこのままいればそのうちほんとにやられちまうのも時間の問題だ」

 

「わ、私、どうすれば...?だって、だって、ここには知ってる人もいないし町のことなんか全然わかんないし、魔法が使えるだけで他には何も...」

 

「多分、これもハデスは見ているよ。君が真実を知ったことを知れば、ハデスは君に与えていたもの全てをシャットアウトするだろう。特に与えられていたであろう食事は完全に供給遮断。文無しの上食べ物もなし。生きていけるかな?」

 

なかなかズバッと言う精霊だ。

 

「そんな!?私、狩りもしたことないし、ここから出たら襲われちゃうんでしょ!?そんなのやだあああ!」

 

泣き出してしまうアヅサを見て、スウ達は笑いを含めた困り顔で肩をすくめる。

 

「あー、こほん。なあ、アヅサ」

 

「ぐすっ、なによ?あんたがここで殺してくれるの?当然よね。あれだけ戦って勝ったんだもの。その権利はあるわ。拷問されるくらいなら...」

 

「僕たちは冒険者のギルドでパーティを組んで戦ってるんだ。だけど、今回みたいにかなり危なっかしい戦いばっかでな。機動力のある仲間がもう一人欲しいと思ってたんだ」

 

「だからなによ...探したらいいじゃない。私を殺した後で」

 

「だから、僕たちと冒険しないか?僕としては、同じ世界の仲間がいるとすごくやりやすいんだが。みんなはどうかな」

 

そう言って、後ろの四人の方を見る。

 

「私はスウ様の意見に従うのみです」

 

「いいんじゃない?別に。なかなか便利な魔法だと思うわよ?」

 

「またライバルが増えるのはちょっと困るけど、まあ拷問は可哀想だしね」

 

「ルナはどうだ?」

 

ルナは少し考えるような仕草を見せ、こう言った。

 

「アヅサさん。私、スウさんと旅をして、わかったことがあるんです。敵さんだってただ敵なだけじゃないって。その人にもその人の命とか人生があって、帰りを待つ人がいるかもしれない。その人の正義がただそうさせただけなんだって。でも、あなたは一人。それは、すごく悲しいことだと思います。...だから...」

 

「私、あなたと冒険したいです。色々話して、仲良くなって、いつしか仲間になるんです。世界とか神様とかよくわからないですけど、私と冒険、しましょう。きっと、世界はそんなに悪くない、ですよ?」

 

ルナの耳がピコッと揺れ、本当に愛らしい笑顔をみせる。

 

「だそうだ。アヅサ。僕達は君を歓迎する。冒険、しようぜ」

 

「ぐすん...私、いいのかな...もう、寂しくならなくていいのかな」

 

こうしてみると、ただの女の子だ。悲しむ女の子は見たくない。

 

「お前は、僕らの冒険仲間で、パーティで、友達になるんだ。」

 

「みんなでハデスに文句言いに行ってやろうぜ!」

 

「.....!!!うんっ!」

 

ぱあっと花の咲くアヅサの顔は、この日一番の輝きを見せていた。




はい、アヅサちゃん回でした。
ちなみに次回もアヅサちゃん回の予定です。
では、あとがき。アヅサちゃんについて。
アヅサちゃんは魔法適正はほとんどなく、魔力も大したことないです。ついでに身体能力もふっつーの女子高生並み、しかも文芸部クラスの。
ただ、アヅサだけの魔法である「ビートルビート」と言う魔法を使う能力を持っています。つまり能力持ちですが、魔法を使う能力、なんて能力があることは当然誰も気づきません。使えない魔法を使えるすごい人、くらいにしか認識されませんから。
この魔法の発動に使う魔力は本当に微力で、体を強くしているわけではなく宿しているので持続させることも容易です。
スタミナ等の身体能力もその宿したもの次第なので、発動さえしてしまえば超人的な身体能力のまま、戦い続けることが可能です。
作者が思いつく限りの生物を宿すことができます(メタ発言)が、やっぱりその名の通り虫の類に特化した魔法なので、アヅサの好きなふわふわ系の生物ではあまり強くないです。強い奴は強いですよ?
またどうぞ。

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