チート能力持ちのありきたりな冒険   作:ぎが

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さて、おそくなりましたぎがです。
みてくれる人もそこそこいるみたいですし頑張ります。
今日も一日頑張るぞい!(現在2時30分)


22話 脅威

「はあ、頭痛い...」

 

二日酔い。この世界の酒は度数が低く、飲みやすいものが多いため、ついつい飲みすぎてしまうようだ。

 

目が覚めたのは大体10時くらいだったので、日は昇り、頭痛に拍車をかける。

 

「ていうか、ここはどこだろう」

 

横になっていたスウは体を起こすと、そこがギルド近くの宿屋だと思い出す。

 

「そうか。他のみんなはギルドのルームで寝てるんだったな。」

 

スウは結局最後まで飲み続けていたため、次々にダウンしていく女の子たちは段々とルームに帰り、寝ているのだった。

 

「さて、そろそろ起きるか...シャワー浴びないとな...」

 

そう言い、重たい頭を持ち上げてシャワーへ向かった。

 

浴槽へと足を運んで、スウは気付く。

 

「...だれかいるな」

 

スウはバッと振り返り、手を前に伸ばす。

 

「ひゃあん!?」

 

むにっ。としたしあわせな感触が手に伝わる。

 

「おおっ!?」

 

慌ててスウは飛びのく。

 

「す、スウ様。おはようございます。」

 

何もなかったそこには、いつのまにかシルバが立っていた。

 

「し、シルバか...ていうか、いつからそこに?」

 

「ずっといましたよ。酔いつぶれたみなさんを送った後、ふらふらのスウ様をここに送ったのは私ですから」

 

ふふん、と胸をはるシルバ。

 

「でも、さっきまでいなかったはず...」

 

「ああ、それはミューテーションという魔法です。お休みの邪魔になってはいけないと思いまして。」

 

魔法すげぇ...なんでもありだなあほんと。

 

「でも、シルバもかなり飲んでただろ?酔ったりしてないのか?」

 

シルバはスウに次いでガバガバ飲んでいたはずだ。まだ起きられなくてもおかしくはないはずなのだが。

 

「ああ、それなら大丈夫です。魔法でお酒をお水に浄化してましたから。いざというときにお助けできなければ意味がないですからね。」

 

「お、おう...」

 

じゃあシルバはあの夜ずっと水飲んで僕らのテンションに合わせてくれてたのか...なんか申し訳ない

 

「じゃあ少し待っててくれ。すぐシャワー浴びてみんなのところへ行こう。」

 

「スウ様、お背中お流ししましょうか?」

 

「いいから!待っててくれ!」

 

朝から心臓に悪い。

 

 

 

「よし、準備オッケーだ。行こう。シルバ」

 

「はい!」

 

二人は、ゆっくりとギルドへ向かう。そう遠くはないため、徒歩でもすぐに着くだろう。

 

「あれ?なんか騒がしいですね...なんでしょうか」

 

「ほんとだ。すごい人だかりだな。今日は祭りかなにかか?」

 

ギルドの少し前に、大きな人だかりができている。

 

「ん、だれかいるな。だれだろう」

 

人だかりの上に、ひょこんと一つ頭を確認できる。

 

「ああ、馬に乗ってるのか。すごい身長高いのかと思った。」

 

「スっ、スウ様!!あの人は!」

 

シルバが慌てている。なんだろう。

 

人だかりの中を進むと、そこには立派な馬に乗り、鎧を着た男が一人、中心にいた。

 

「あの人はこの国最強の冒険者さんです!私も噂を聞いたことがありますが、恐ろしく強いそうです...」

 

「へぇ、あの人が...」

 

その冒険者は、キョロキョロと何かを探しているような仕草を見せており、スウと目があった。

 

「やあ、君がスウだね?」

 

男は、スウと目が合うなりスウの名前を口にし、重々しい声で話しかける

 

「?ああ、たしかに僕はスウだけど...あんたは?」

 

「はは、まだ俺を知らない冒険者がこの世にいるとは。失礼した。自己紹介をしよう。」

 

「俺はガギアーノアルベルト。ガーと呼んでくれ。君と同じギルドで冒険者をしている。」

 

「僕はスウ。同じく冒険者だ。何か要件があるんだろう?」

 

ガーという男はゆっくりと馬から降りた。

 

「ああ。その話はギルドでゆっくりしよう。ウェン、いいぞ。」

 

ウェン、と呼ばれたその馬は、ブルルッ、と一つ吠えてから足元から掻き消えた。魔法だろうか?

 

「ふむ、人が多いな。スウ君、少し目をつぶってくれるかな。となりのレディも。」

 

「?こうか?」

 

「?」

 

スウとシルバは目を瞑る。

 

「よし、いいぞ。では行こう。」

 

二人が目を開けると、そこは穏やかな日常に戻っていた。

 

「な、さっきの人たちは!?」

 

「なに、人払いの魔法さ。ついでに俺にも人払いを付加しておいた。」

 

「今の俺は君たちとなんの変わりもない、ただのおじさんさ。」

 

なんなんだ一体...

 

 

 

ギルドについた3人は、静かなバルコニーで席に着いた。

 

「さて、本題だ。君がキリンを倒した話を聞いたよ。そのことについて興味があってね。詳しく聞きたい。」

 

「いいけど、楽しい話はないぞ?」

 

「ああ、構わない。頼むよ。」

 

スウは、キリンを倒した時のことを細かく話した。

 

「ふむ、ありがとう。君は相当な冒険者のようだ。そんな君に折り入って頼みがある。」

 

「頼み?」

 

ガーほどの冒険者になればなんでも一人でこなせるだろう。

 

「ああ。俺にはわかる。君はここの人ではないね。」

 

「っ!?」

 

「?」

 

スウはサアッと血の気が引くのがわかった。何者だこいつは。

 

「ここの人ではない?どういうことでしょうか。」

 

シルバは一人不思議そうな顔をしている。

 

「シルバ、お前はみんなのところへ行っていてくれ。僕はガーと話がある。」

 

「えっ、あの、一体...」

 

「頼む」

 

うろたえるシルバは、スウが頼む、と言ってからはすぐに席を立ち、一礼してからスタスタと離れて行った。

 

「いい子だな。尊敬されているんだな、君は。」

 

「そんなことより、話を。ここの人ではない、という表現。なぜ知っているんだ?」

 

「そのことだが、これが君にとって朗報か悲報かはわからないが、とにかく伝えなくてはならないことがある。」

 

ゴクリ。スウは既に何かを予感していた。

 

「君以外にも、別の世界から飛ばされてきたものがいる。あまりにも強大なその力は、俺にもどうすることもできない。だから君に会いにきた。」

 

「やっぱりそういうことか」

 

少しは気づき始めていた頃だった。自分以外にもいるのではないか。転生したものが。そして、その物は自分にとってどんな人物になるのか。

 

「その物は、強い。とにかく強いんだ。一人で国を滅ぼし、根城としているんだ。俺は討伐に行ったんだが、圧倒的な力のためにこうして一度帰ってきたんだ。」

 

「そうか...」

 

ゼウスの言っていたことは冗談や比喩ではなかったのだ。

 

「キリンの話を聞いてピンときたよ。あれこれ調べてみて、確信した。君は異世界からこの世界にやってきたんだね。」

 

「...まだ誰にも言ってないんだ。他の人には黙っててくれるか。」

 

「知っているのは俺だけだ。」

 

よかった。バレると色々厄介だし。

 

「そして、俺のここにきた目的は...」

 

「君を雇いたい。報酬は望む額を約束しよう。そして、このことは内密にする。どうだろう。」

 

僕と同じ転生者。いるなら会いたい。なぜかはわからないが会わなければいけない気がした。

 

「...わかった。けど、時間をくれ。」

 

「ああ。準備が必要だろう。金が必要なら言ってくれ。援助しよう。」

 

「助かる。」

 

最強との呼び声の高いガーが、自分の頼まれた仕事を依頼するくらいだ。相当強いんだろう。

 

そして、スウは考えていた。

 

その人物はもしかしたら自分がなっていたかもしれない、と。

 

これまでの出会いの数々がなければ、僕は力に自惚れ、破壊の王となっていたかもしれない。

 

だから。

 

「救って、やらなくちゃな。」

 

「ああ。では、頼んだぞ。出発前に声をかけてくれ。案内しよう。私は失礼しよう。久々に帰ってきたのだから、挨拶回りでもしてくるよ。」

 

「わかった。また後で。」

 

そうして、二人の話は終わった。

 

スウは、一人取り残されたテーブルで、考え、決心した。

 

そして、スウはみんなの待つルームへ足を運ぶ。

 

「あ、スウさん!おはようございます」

 

透き通った声がスウの耳朶に触れる。

 

「おはよう、みんな。」

 

スウはぐっと力を込めてみんなの方を向き、言う。

 

「みんな、話があるんだ。聞いてくれ。」

 

これもまた、冒険なのだろう。

 

 

 




はい、ぎがです。
あとがきも書くことがなくなってきました。
辻褄合わせのコーナーです。
今回はガーさんについて。
ガーさんは槍使いだと思われていますが、それはガーさんの仕組んだ情報工作です。
本当は最強の魔術師ですが、付加魔法等で槍しか使わないという演出をしています。
魔法はそもそも隠すものですし、やり使いはとにかく間合いを大事にする、という概念のあるこの世界では、槍使いだと思わせていた方が魔法の効果が高まるからです。
敵には容赦なく魔法を使うためよく目撃されていますが敵は確実に死んでいますし、見た一般人も魔法で記憶を消されているため広まっていない、というわけです。
ガーさんはとても技術の高い魔術師ですからレベルの低い魔法なら詠唱無しで発動できます。
スウもやろうと思えばできますが、できることに気づいていないためやったことはないです。

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