チート能力持ちのありきたりな冒険   作:ぎが

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遅くなってしまって申し訳ないです。
用事で外出しておりました。
さて、みなさん覚えているでしょうかこのお話。
忘れた方は是非またみてください。
ではどうぞ。


16話 パーティ、パーティ。

「ま...っ、待ちなさいったらああああ!!」

 

スウたちは、ギルドに着くといきなり謎の少女に絡まれていた。

 

そして、逃げていた。

 

「あの、いいんでしょうか...?お話、聞いて差し上げても...」

 

シルバが申し訳なさそうに言う。

 

「いや、なんかやばそうだしめんどくさそうじゃん」

 

「私もそう思う。あれ、やばいやつだよ。」

 

スウとランは関わる気ゼロである。

 

「まっでえええおねがいいいぃぃぃ!!」

 

少女は疲れ果てたのか、ぺたりと座り込み泣き出してしまった。

 

「...どうします?」

 

ルナはもう可哀想で無視できない様だ。

 

「はあ...仕方ない、話を聞くだけだからな」

 

「お優しいですスウ様!」

 

シルバは多分僕が人を殺しても褒めてくれるだろう。

 

「ひっ...ぐすっ...にげなくても...いいじゃない...っ」

 

「わかったわかった、ごめん悪かったって。とりあえず名前と要件聞かせてくれる?」

 

ここまでガチ泣きされると優しくせざるを得ない。

 

「ゔん...あたし、パール...仲間に入れてもらいたくて...」

 

「よろしくな、パール。僕はスウ。そんでこっちは...」

 

「ルナです。よろしくです。」

 

「ランよ。ハンカチ貸そうか?」

 

「シルバです。どうぞよろしくお願いします。」

 

みんなが口々に挨拶する。

 

「仲間、っていうとパーティに入りたいってことか?」

 

「うん...色んな人達に声かけたんだけど全部断られちゃって...」

 

パールは先ほどまでの高圧的な態度とは打って変わって、しおれてしまっている。豆腐メンタルなのだろうか?

 

「なんで断られるんだ?冒険者なんだし誰でも需要あるだろ」

 

「あたし、魔族なの...それで、魔族なんかと冒険できるかって言われちゃって...」

 

「魔族?」

 

魔族ってなんだろうか。いつもなら知識がなだれ込んできそうなものだが、まったくわからない。

 

「私が説明するね。」

 

ランが口を開く。本当に博識だ。

 

「魔族っていうのは、魔力を帯びた人、人ならざるモノのことを言うの。」

 

「...?魔力なら僕も使うぞ?」

 

魔法とは、魔力を元に発動しているではないか。

 

「それとはちょっと違ってね、普通の人は生命力を一旦魔力に変えてから魔法に変換するんだけど、魔族は魔力が生命力そのものなの。」

 

「ふうん。でも、なんでそれがみんな嫌なんだ?」

 

むしろプラスではないのか。

 

「それは、魔族がはるか昔様々な種族を虐殺していたからなの。」

 

「あまりに強大な力は暴走を起こして、力のままに暴れまわったわ。これを知らない冒険者はいない。今でこそ昔の話、って言われるけど、まだまだ魔族に対する世間の風当たりは強いね。」

 

まあ私は気にしないけど。とランは付け加え、説明を終える。

 

「なるほどな...なんか元いた世界にもあったなあ。種族って人種みたいなものなのかもなあ。」

 

「ルナも、魔族は苦手か?」

 

そう言って、ルナの方を見る。

 

「...?いいえ?見れば見るほど普通の女の子だと思います。」

 

この子は差別やいじめとは最も遠いところにあるタイプだ。

 

「シルバは?」

 

「私も貴族が魔族を虐げていたのは見てきました。助けてあげたいです。それに、奴隷であった私を助けて下さったスウ様なら、きっと助けてあげられる、と信じています。」

 

全く、信頼してくれるのは嬉しいが荷が重い気がするなあ。

 

「と、いうわけで、パール。僕達はお前と冒険がしたい。パーティに入ってくれないか?」

 

パールの顔がパアアッと明るくなる。泣いていた顔はもうどこかにいってしまっている。

 

「うんっ!あたし、がんばるわ!!」

 

調子を取り戻した様で何よりだ。

 

「さて、じゃあこのまま受付行って色々するか。」

 

五人は受付へ歩いて行くのだった。

 

 

「はい。スウ様、ルナ様、ラン様、シルバ様、パール様、の五人でパーティの申請を許可しました。頑張ってくださいね。」

 

「パーティは組めたな。何か恩恵とかあるのか?」

 

「はい。パーティを組むと、クエストの報酬を少し多めに受け取れます。多人数で分ける必要がありますから。それと、パーティルームも借りることができます。」

 

なるほどいいシステムだ。

 

「わかった。あとで行ってみよう。さて、じゃあクエスト行ってみるか。記念すべき初クエストだ。いいやつ選んでくれよ。」

 

「はい!任せてください!」

 

ルナは張り切っている様だ。

 

「こんなのはどうですか?」

 

ルナが持ってきた紙には、「ウサギ型のゴレイが発生。5体の討伐。報酬50カッパー。」と書かれている。

 

「ううーん、簡単すぎないか?もっと手応えあるやつがいいな。」

 

「それでしたら、これなんてどうでしょう。」

 

次の紙には、「雪山の原生種が大量発生中。キングイエティ一体の討伐。報酬5シルバー。」とある。

 

「これもスウ様には簡単すぎるかも知れません。」

 

シルバが言う。

 

「じゃあ、これなんてどうかしら。」

 

そう言ってパールが持ってきた紙には、「謎のゴレイが大量発生中。至急、ゴレイの討伐を。討伐数×1シルバー。高難易度。」と書かれていた。

 

「うん、これくらいならいいだろ。よし、行くぞ。」

 

その紙を持って受付へ向かう。

 

「こっ、この依頼は高難易度ですよ?高い実力をもった冒険者の方でないと危険でとてもじゃないですが...」

 

受付嬢のチカさんは不安そうに話す。

 

「いえ、大丈夫です。危なくなったら逃げますから。」

 

「本当に気をつけてくださいね?生きて帰ってくることが冒険で一番大事なことなんです。」

 

いい言葉だ。

 

「よし、いこう。場所は?」

 

「森林地帯、ね。」

 

ルナが言う。そして、五人は森林へと向かう。

 

五人の影が森林へと差し掛かったころ、スウが聞く。

 

「そういえば、パールは職業とか何なんだ?」

 

まだ名前と魔族ということしかきいていなかった。

 

「あたしの職業は...」

 

ガサササッ!と音でパールの話は遮られる。

 

そこには、前に出会ったゴレイを彷彿とさせるような巨大なゴレイがいた。

 

巨木が獣の姿を借り、四足歩行で立っている様な風貌のそれは、明らかな敵意をこちらに向けている。

 

「敵さんのお出ましね。自己紹介も兼ねて、あたしがやるわ。さがってて。」

 

パールは大きく一歩前に出ると、ぺったんこの胸を張って立っている。

 

「ああ、頼んだぞ。危なかったら言ってくれ。」

 

「大丈夫よ。あたし、これでも強いんだから。」

 

パールは手を高く上げ、魔法を唱える態勢をとる。

 

「じゃあ、自己紹介。私の職業はハデス。魔族だけに与えられた職業よ。そして、これから見せる魔法はその職業の中でもとっておき。」

 

パールの周りにドス黒いもやのようなものが集まってくる。

 

「見せてあげるわ。魔族の本気。」

 

「マリオネット・ワルツ」

 

超短詠唱によって唱えられたその魔法は、パールの横に二体の黒い影を作り出し、その背中からは糸のようなものが垂れ、その先はパールの指先へとつながっている。

 

「まだパーティは始まったばっかりなんだから。退屈させないわよ。」

 

パールが指先を動かすと、影はすごいスピードでゴレイへと突き進む。

 

そう。このパーティは、まだ始まったばかりなのである。




はい。どうだったでしょうか。次回はバトルしまくりの予定です。お楽しみに。
さて、今回のあとがきは魔族について。
説明はありましたが、魔族とは特殊な魔力構造を持つ人間のことです。
主に闇の魔法に適正があることが多く、高い魔力量を持ちます。
体内の生命力は魔力から直接供給されているため、その存在そのものが魔力と言っても間違いではありません。
迫害の歴史がある魔族ですが、その力は圧倒的です。
まず、生命力を魔力に変える必要がないため、その作業である詠唱がほぼ必要ありません。更に、魔力の調節もまさに自由自在、出したい量をピッタリ出すことができます。
普通の人間が原油(生命力)をガソリン(魔力)に変える作業が必要なのに対し、魔族は最初からガソリンを持っている、というイメージです。
そのかわり、作中でも何度かあった魔力欠乏症になってしまうと、生命自体がとても危ない状況になってしまいます。魔族の死因第一位は魔力の使いすぎによる衰弱死です。(ちなみに二位は拷問による殺害、または自殺です。)
パールちゃんの容姿ですが、赤い髪のセミロングで小さなツノが二本あり、背丈は小さめで胸はぺったんこです。服は気にしていないようで、毎日コロコロ変わってます。
またどうぞ。

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