最後までどうぞおたのしみください。
ではどうぞ。
スウは、泣き止んだ美少女とルナ、ランと一緒に宿へ戻っていた。
「一体何をしたんだ?ラン。」
まだ状況を把握できないスウは、質問する。
「それは、私がお答えします。」
美少女が言う。いや、みんな美少女なので混乱してしまう。ここでは少女、と表記することにする。
「ラン様は、魔法によって、私が奴隷ではないただの女の子、として認識されるよう世界を変えたのです。」
「???」
全くわからない。世界を作り変えたらなぜそうなるのか。
「つまり、この世界の人々から私が奴隷であったという記憶や思想の一切が消え、普通の女の子と認識されるよう世界が変わったのです。」
わかったようなわからないような?
「だーかーらー、今、この子は普通の女の子で、奴隷だったあの子は元からいないことになったの。」
ランが言う。
「なるほどなあ。こんなことができるなんて。魔法ってすごい。」
もうなんどこの感想を口にしたことか。魔法ってほんとすごい。
「なにが魔法はすごいーよ。スウ、あなたの方がよっぽどなんだからね。」
「はあ。」
わからん。わからんが、まあこの子が無事ならいいや。それで。
「でも、さっき自分は僕の奴隷だーって言ってたじゃん。」
「はい、私はスウ様の奴隷です。救っていただいた上、私に普通の女の子としての人生を与えて下さいました。このご恩は、一生かかっても返し切れるものではありません。」
「奴隷から解放されて僕の奴隷になったら元も子もない気がするが...」
まあ、いいならいいけど。
「でも、助けたのは僕がしたかっただけだし、何より君は自由だ。好きに生きてくれたらそれで満足なんだけど。」
そうだ。この子は自由なのだ。もうこの世界にはこの子をあんな汚い鎖で縛るものはいない。
「私、スウさんのお役に立てます!家事、戦闘、夜伽、なんでも致します!どうか私を連れて行ってください!!」
夜伽って。
「どうする?ラン、ルナ。」
僕は一人では決めかねるため、二人に聞いてみる。
「いいんじゃないでしょうか。この方には行くあてもないでしょうし。夜伽は許しませんが。」
「あ、そっか。」
そうだ。少し前まで奴隷だったのだ。家どころかこの子には身分も、家族もいないのだ。
「わたしもいいと思う。助けたからには責任持たないとね。」
ランが、それっぽいことを言う。
「よし、わかった。一緒に行こう。今日から僕たちが君の家族だ。」
家族。なんとなく口にしたその言葉は、今まで温もりを知らなかった少女にとって、どれだけ暖かいものだったか。
「....っっーーーわあああああああんん!!!」
少女はこれまで溜め込んでいた全てを吐き出すように声を出し、泣いた。
本当に辛い生活だったのだろう。髪は乱れ、肌には痛々しい傷がある。
だが、もうこの少女は一人ではないのだ。そのことが、僕はとても嬉しかった。
しばらくして、ランが口を開く。
「ところで、名前はなんて言うの?」
この少女は、まだ名前を口にしていない。
「わたし、グズっ、名前...っ、ないでず...っ」
まだなきぐずる少女は言う。
当然といえば当然だろう。奴隷にわざわざ名前をつけるもの好きはあまりいない、と知識としてある。
「それは困りますね。呼ぶ時面倒ですし。」
面倒って...。たまに辛辣だね、ルナちゃんは。
「名前、スウ様につけてもらいたいですっ」
「僕が?」
「そうね、それがいいんじゃない?助けたわけだし名前、つけてあげたら?」
「名前かあー」
まさかこの歳で名付け親とは。少し緊張する。
「女の子っぽい名前がいいよなあ。」
「おっ、おんにゃのこっ!」
ぼふん、と顔を真っ赤にする少女。どうしたのだろう。
「ううーん、綺麗な銀色の髪の毛してるし、シルバ、なんてどうだろう。」
「しるば...!いい名前です!私、宝物にしますっ!!」
本当に嬉しそうに言う少女。ルナなら尻尾をブンブンしていそうだ。
「いい名前なんじゃないでしょうか。」
「うん、シルバちゃん、いいね!」
ご好評のようだ。良かった。
「じゃあ早速ですけどシルバさん、私とお風呂に入りましょうか。」
「お風呂っ!?」
びくん、と少女改めシルバは小さく跳ねる。
「お風呂、嫌い...です...。」
「だめですー。綺麗にしないと、スウさんに嫌われちゃいますよ?」
「えっ!?はっ、入る!お風呂、入れてください!」
スウの名前を出した瞬間に焦り、お風呂に入りたがるシルバ。元奴隷とは思えない明るさだ。
「わたしも一緒に入ろっかな。スウ、覗いちゃダメだかんね。」
「覗かねぇよ。」
心外だ。
「けど、よろしく頼むよルナ、ラン。綺麗にしてやってくれ。」
「はい!」「はーい。」
「お手柔らかに...。」
そうして3人は仲良くお風呂へ入って行った。
一人取り残されたスウは、少し考え方をしていた。
「(シルバみたいな奴隷が、この世界にはいくらでもいるんだろうな...。僕になら助けてあげられるんだろうか...。)」
そんなことをぼんやり考えていると、意識がだんだんとぼやけ、いつのまにか世界が暗転していく。
「ううーん...」
感覚としては小一時間くらいだろうか?眠っていたらしい。
「結構長いなあいつら...」
仕方あるまい。シルバはかなり汚れていたし、二人も結構お風呂好きだし。
「スウ様ーーー!!」
「ああっ、待ってください!まだですシルバさんっ!」
騒々しい声がして、お風呂の扉が開くバンッ!と開く。
「うおっ!?」
驚いてそちらを向くと、そこには。
「うわああ!?」
おっぱい。というか、全裸である。一糸まとわぬ姿のシルバが駆け寄ってくる。
「スウ様、綺麗になりました。これで嫌いにならないですか?」
キラキラとした目で訴えかける。
シルバはあれだけ汚れていて美少女とわかるほどの美少女だったので、綺麗になってより一層美少女に磨きがかかっている。
綺麗な銀色の髪は汚れを落とされ、本当に眩しいくらいの銀色で、少し痩せた体は程よく筋肉が付いている。
なによりその胸。気づかなかったが、かなり大きい。少し褐色めいたその肌は、先端の桃色を見ろ、と言わんばかりである。
形のいいその胸は動くたびその存在を主張し、たわわと見せつけてくる。
「わ、わかったから服っ!!」
後ろを指差し、お風呂を見る。
「シルバさん服ーーっ!!...って、ひゃあああんっ!?」
そこには、ルナとランが仲良く全裸でシルバを追うためこちらを向いている。
二人とも甲乙つけがたい美少女であるが、全裸ならなおさらだ。3人ともお湯でぬれ、火照った身体は女の美しさを際立たせている。
「ブッッ!」
スウは幸せのトリプルパンチをくらい、鼻血を吹き出し、幸福な気分のまま、意識を手放すのだった。
さて、読んでいただきありがとうございます。
今回はルナちゃんの使う魔法について。
ルナちゃんは全然使わない魔法をたくさん知ってます。
それは、幼いころ魔法に憧れ勉強したからです。剣の方が上手だったので使う機会はなかったわけですが。
では、ルナちゃんの使っていた魔法について補足をば。
トゥルーラック→運の向上
ハードポテンシャリー→基礎ポテンシャルの向上
ゴットノウズ→能力の底上げ(能力を持たない人にとっては無意味)
マジックエンチャント→魔法量の底上げ
マナポーション→魔法量回復
エンシェントラバー→全ポテンシャルの底上げ。(好感度に比例)
こんな感じに、ルナちゃんは無闇に自分の魔法で強化しようとはせず、スウの元々のポテンシャルを底上げする魔法を使ったわけですね。
これには、「自分は魔法が得意ではない」というルナちゃんの考えが大きく関わっています。
またどうぞ。