感想とか欲しいですが、あいにく見てくれる方はあまり多くないので寂しいです。描くの楽しいのでいいですが。
ではどうぞ。
「な...仲間ですか。」
「うん、そう。」
「そう!!」
とても上機嫌になったランとは対照的に、寝起きのルナはなんだかぐったりしている。
「で、今は何時ですか?」
やだなあ。時計なら宿の部屋についてるじゃないですかぁ。
「3時45分ってところですかね。」
「ですかね!!」
ランは本当に元気だ。すこし静かにしなさいね。
「ですかね。...じゃないです!そもそもこの子は誰ですか!」
「だから、仲間。ラン。」
「それはさっき聞きました!!」
じゃあ聞くなよ怖いなあ。可愛い顔が台無しだぞ。可愛いけど。
「こんばんは!わたしラン!スウの彼女です!よろしく!」
「ヴッ!!」
ルナが盛大に吹き出す。
「ラン。僕はお前の彼女になったつもりはないぞ。」
「えぇー?嫌なのぉ?」
色っぽく見せるラン。可愛い。
「...なんなんですかこの女は!!どこで知り合ったんです!!」
「怒るなよ...」
意識がはっきりして来たのか、ヒートアップするルナ。
「ん...?」
一瞬クラッ、としてしまい、目を抑えるスウ。
「そういえば、僕全然寝てないんだったなあ。」
「あ、大丈夫ですか?」
すこし申し訳なさそうに声をかけるルナ。自分が大きな声を出したことを反省しているらしい。
「ああ、大丈夫だよ。ありがとう。」
少しつらいが、寝れば大丈夫だろう。
「あー!わたし、それ治せるかも!回復魔法は万能なんだから!」
ランが名乗りをあげる。
「おお。見るのは初めてだな。ぜひ頼むよ。」
「...」
ルナはあまり楽しくなさそうだ。だが、初めて見る魔法はやはりワクワクしてしまう。
「じゃあ、ほっぺた貸して!」
「返してね。」
どうやらほっぺたが必要らしい。
「いくよ!癒しの加護を。ヒール。」
ちゅっ。
またほっぺたチューされた。
「んおわあ!?」
不意を打たれたスウは驚き飛びのく。
「ちょ...っちょっと!?何やってくれてるんですかぁ!!」
ルナが顔を赤くして猛抗議している。
「ふっふぅーん♪回復魔法は肌に直接触れる必要があるんですぅー。」
ならほっぺたチューじゃなくてもいいんではなかろうか。
「じゃあほっぺたチューじゃなくてもいいじゃないですか!!」
以心伝心、というやつだろうか。僕がつい口に出してしまったのかと錯覚した。
「スウにはほっぺたチューじゃないと効果薄いと思うの。」
上目遣いで頰を赤らめるラン。やめて。惚れちゃう。
「ぐぬぬぬ...じゃあ私にも使ってくださいその魔法!!私だって旅続きで疲れてるんですからっ!」
ルナ、落ち着けよ...。
声に出すと僕が怒られそうなのでいいはしないが。
「ええー?でもまあスウがどうしてもっていうなら、ほんっとうに仕方なく、使ってあげようかなあ?」
「口の減らない小娘...っ!」
ルナちゃん、言葉遣いが乱暴よ。お父さん心配。
「じゃ、手出して。」
「ん!」
バッ!と右手を差し出すルナ。その拳は硬く握り込まれている。
「はい癒しの加護をーヒーールーーっと。」
ほわあ...とランの手が光ると、その光がゆっくりルナへと吸い込まれる。
「!?すごい!体が軽くなった!」
本当にすごい魔法だ。こんな魔法がすぐに使えるランは相当すごい魔法使いなんだろう...な?
「んきゅぅ........」
「ラン!?」
ランがへなへなと座り込む。
「魔力欠乏症じゃないですか!大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫よ。よくあるし。回復魔法は正直二回が限度なの...魔力消費が激しすぎて...。」
「そうなのか...」
考えてみれば、僕とルナがあれだけの疲れを一度に解消できるほどの魔力を送り込まれたのだ。ランの中から魔力が出ていくことを考えると逆に二人も治せたのは素晴らしい程なのではないか。
「ありがとう。それと、これは僕からのお礼。」
そう言うと、スウはランの右手を握る。
「癒しの加護を。ヒール。」
ドッ、と、宿の部屋全体を照らすほどの光が立ち込める。
「「ひゃあっ!?」」
不意に光を放ったスウの右手に驚き、二人は目を閉じる。
ゆっくりと元の静寂へと戻る部屋の中で、二人は目を開ける。
「びっくりしたあ...って、あれ!?」
ランが安堵の直後、驚きを口にする。
「な、治ってる!?しかもすごく調子がいい!」
ピョンピョン飛び跳ねるランをにこやかに眺めるスウを見て、驚きを隠せないルナ。
「す、スウ。回復魔法なんてどこで...!?」
「今見たじゃん。目の前で。」
「ええ!?」
そう、今しがたランが見せた回復魔法を真似ただけである。
「なんかいけそうだったからやってみた。いけたね。」
「な、なんて人...」
呆れに近い驚きに固まるルナ。ランもその話を聞いていたらしい。
「わ、わたしの回復魔法を見ただけで使うってどう言うこと!?光属性の魔法の中でも超高難易度の魔法なのに!!天才と呼ばれたわたしでも5年かかったの!」
憤慨するラン。そんなに難しいのだろうか。
「まあ、治ったんだしいいじゃん。ていうか、この魔法使ってみてわかったけど自分には使えないっぽいね。」
手をグーパーしながら言う。なぜかはわからないが、自分には使えない、という実感だけがある。
「そうよ。結局のところ、自分の魔力を渡すだけだから。自分に自分の魔力渡しても変わんないでしょ?」
なるほど。確かにそうだ。
「なんか蚊帳の外です...」
悲しそうにするルナ。そんな顔も好きだが。
「なんか僕、一回見た魔法はなんとなく使い方わかるんだよなあ。」
「まさかですよ。シックスセンスだって私が教えたじゃないですか。」
「いや、僕あのとき先に説明聞いてたじゃん?その話9割くらい聞いてなかったけど、見た瞬間使える確信があったし。」
「はあ!?」
はしたない声がでるルナ。いけません!そんな汚い言葉遣い!めっ!
「あの魔法は、ワービーストが大事にしている付加魔法の中の付加魔法なんですっ!そう簡単に使われてたまりますか!」
実は、まだ練習中、ということになっていたのだ。教えてもらい出してから3日もたっていないので、できるはずがない、とルナは言いたいらしい。
「だから使えるんだって。シックスセンス。」
ぎゅお、と場の情報が入ってくる。
「ルナ、ケーキ隠してるだろ。」
「ひゃっ」
顔を赤くして引き戸の方を見るルナ。
「ちっ、違うんです!それは後から食べようと思って置いていたというかなんというかいえ食べませんほんとなんですぅーー!!」
うろたえるルナ。ランが一人で大笑いしている。楽しそうで何よりだ。
「って、ケーキ?引き戸は空いてませんしさほど匂いがするものでも...」
「ええっ、シックスセンス!?本当に発動しているんですか!?」
「うん。すごい魔法だな。これ。」
驚きっぱなしのルナ。漫才でもしている気分だ。
しかし本当にすごい魔法だ。自分の周囲何メートルかの情報が手に取るようにわかる。背後にいるはずのランの表情や仕草もわかってしまう。
「念能力の円みたいなイメージだな。」
「「円?」」
「いや、こっちの話。」
きょとんとする二人を見て、知っているはずないか、と思う。
「しかも、この魔法、こんなに五感が鋭敏になっているのに、雑音とかは入ってこないんだな。」
「そりゃあそうですよ。そこまで鋭くなってしまうと、例えば閃光玉や音爆弾なんかが炸裂したら、一発でおしまいですからね。」
いきなり切り札にも近い魔法を操られて機嫌の悪いルナは少しトゲのある口調でそういった。
「やっぱり不思議だな魔法って...」
なんともこころ踊る。
「このシックスセンスって何属性なの?」
「この魔法は光属性です。私がすぐに習得できたのも、そこに原因がありますね。まあ、1年はかかりましたがっ。」
皮肉を言うルナ。無視しよう。
「へぇ...なんかいけそうなんだけど、シックスセンスとヒールって、くっつけて使えないかな?」
「「くっつけて使う?」」
笑いの地獄から帰還したランも聞いてくる。
「シックスセンスを使った後にヒールを使うってことですか?確かに鋭敏になった五感で患部を感じ取ればより効率的に治療できそうですが...」
「いや、そういうことじゃなくって...うまく説明できないから、やってみるよ。」
「「?」」
ふたりとも、不思議そうにこっちを見ている。どう言うことだ?と言う声が聞こえてきそうだ。
だが、やって見せれば納得してくれるだろう。
「ううーん、この詠唱じゃ多分ダメだ...別々になってる感覚があるな...シックスセンスとヒールがうまく噛み合わないと...」
ブツブツと呟くスウをみて、ふたり仲良く首を傾げているルナとラン。
「よし!これなら!!」
ザッ、と態勢を整えるスウ。そして唱える。
「獣王の咆哮!」
ドワっとスウの体から衝撃波のようなものを感じる二人。
「よし、こんな感じだな。」
そんなことを言うスウの体には..
「す、スウさん!?なんですかそれっ!?」
スウの頭にはルナとお揃いの耳が生えており、腰にはルナよりはかなり短い尾が生えていた。
「こうやって同時に、というか一緒にして発動すれば、もっと強い魔法になりそうだったんだけど...って、ラン、どうした?」
わなわな、と震えるラン。
「あっ、あのねスウ!!わたしはどんな魔法だって一度みたら忘れないの!でもその魔法、どこでだって見たことない!新しい魔法なの!」
「あ、新しい魔法!?」
怒るように大声をだすラン。驚くルナ。
「へぇー新しい魔法かあオリジナルってこと?」
「オリジナルの魔法はね、もう長い間作られてないの。研究に研究を重ねて一人の天才が人生を投げ打って発明するような大きな大きな発明なの。」
「ふうん。」
そうなんだ。
「それをスウ。あなたは一生どころか1分もかからずに...何者なの!?」
「僕に言われてもなあ...」
僕はスウだよスウ。知ってるでしょ?
「...まあいいよもう。で?その魔法、どんな魔法なの?」
諦めたようなランが聞く。
「んー、よくはわかってないけど、シックスセンスで上げた五感にヒールを乗せて、即時回復と筋力増強を図ってる。」
「なるほど...常に両方を発動し続けるってことね...」
真剣な表情のラン。どうやらこの子、かなりの学があるらしい。天才というのはどうやら嘘ではないようだ。
「でも、さっき見たと思うけど、回復魔法はとてつもない魔力を使うのよ?それを常に発動って、あなたどれだけの魔力量なのよ。」
なんか急に年を取ったような口調のランにオドオドしながら答える。
「いや別に普通じゃないか?これもそんなにしんどくない。」
しんどくないのは本当だが、普通ではないのだろう。
「っ!?」
その時、急にバチッ、と頭には電気がはじけるような感覚がした。
なんだ?と思った瞬間、頭に情報がなだれ込む。今まで何度かあった知識の波だ。今のは特に大きい。
「そうか!
「この能力は、あらゆる能力や魔法をくっつけたり離したりできるのか!」
急に話しだすスウをみて疑問の顔をする二人。
「なあ、ラン。ほかに何か魔法を使ってみてくれるか」
「なに?急に。でもまあスウの頼みなら。」
「闇の加護を。ナトアー。」
ランの手から黒い球のような物が出る。
「それ、ゆっくりこっちに飛ばしてみてくれ。」
「スウ!?あれは初級魔法だけど闇の魔法です!人間の体なんて簡単に吹き飛びます!!」
闇の魔法はどうやらすごい威力らしい。だが。
「構わない。頼む。」
「...わかった。避けてね。」
スッ、と球を飛ばすラン。ゆっくりと近づくそれに手を向け、一言。
「コレクト。」
フワッ、と黒い球が霧散する。そこには最初からなにもなかったかの様な空間が取り残されている。
「こっ、これは!?」
驚く二人は、スウをみる。
まだ夜は長いようだ。
長くなってしまいました。まあ仕方ないでしょう。
さて、今回のあとがきです。今回は、魔力適正について。
魔力適正、とは、そのまま魔力への適正のことですが、簡単に言えばポケモンのタイプの様なものです。
適正のある魔法を使えばタイプ一致で出せる、というイメージですね。
しかし、この世界では適正のない魔法は、威力の低下は愚か、発動すら危ういです。生まれ持った適正もありますが、訓練次第でほかの適正も獲得することができます。
相反する魔力適正は獲得しにくく、光と闇の魔法両方に適正を持つものはとても少ないです。ランちゃんはまさに天才と言えます。
生まれ持った適正であれば、あまり疲れもせずに発動できます。PP消費が少ないというイメージでしょうか。訓練次第ですが。
スウは全てに適正がありますし、魔力量はほぼ無尽蔵なので、 関係ないっちゃないです。
ちなみに、魔法をくっつけるのはコレクトの効果ですが、一度みればつかえる、というのはスウの元々の特技の様なものです。
長くなってしまいました。見て下さりありがとうございました。
またどうぞ。