「まずは、パーティを組みましょうか。」
「パーティかあ。」
パーティとは、説明不要ではあるだろうが、冒険者数人で作る狩り仲間のようなものだ。
「ルナはハンターだよな?」
「はい。スウさんはオールですから、どこでもいけるとして、回復魔法をつかえる人が欲しいですね。」
「便利なものがあるんだなあ。」
たしかに欲しいものだ。回復魔法。
「とりあえず張り紙をしておきますか。」
二人は仲間募集の張り紙を持って飲み場の端へと向かう。
「ここに張り紙をしておいたら見てくれた人が来てくれるかもしれません。」
ふうむ結構回りくどい気がするが、それが一番なんだろう。
そう思い、ルナの描いてくれた張り紙に目を落とす。
「えぇーっと何々...?仲間募集...あなたの運命の場所はここです!愉快な二人との抱腹絶倒な冒険を楽しみませんか...ってなんだこりゃ。」
ちなみに二人の似顔絵付きである。
「どうでしょうか!」
「どうって、これだと僕ら漫才コンビみたいだけど。」
抱腹絶倒て。ハードル高いわ。
「えぇー...いいと思うんですが...」
「まあ、いいか...これで来てくれるならなんでも...」
僕らはその日張り紙をし、宿を探して泊まった。(残念ながら別部屋である。)
「うう...お腹すいたな...」
夜中に起きた僕は、コンビニでもいくか、という気持ちで宿を出た。もちろんコンビニなんてないが、軽い散歩ということで少しブラブラするつもりだった。
「だれかぁぁたすけてぇぇ!!」
悲鳴。どこからともなく聞こえるそれは、少女の声だった。
「なっ!?この声、どこから!?」
五感を研ぎ澄ませる。
「シックスセンス。」
この前ルナから教えてもらった魔法を使ってみる。五感を限りなく研ぎ澄ませ、未来視にも届きうる域まで意識を広げる。
「っ!こっちか!」
そこは、人通りの少ない路地裏だった。
そこには泣きじゃくる少女と、黒ずくめの男が3人。どうやら不埒なことをするつもりのようだ。
「お前らっ!!」
「ああ!?なんだテメェ!ぶっ殺すぞ!!」
リーダー格であろう男が怒号を発する。
「助けてっ!!」
「今助けるぞ!!」
僕はこんなこともあろうかといくつか魔法を覚えていた。
「今最適なのは...これっ!!」
「スチームカーテンっ!!」
スチームカーテンは、火と水属性の魔法を複合させた上位魔法である。蒸気の壁を作り出し、任意に操ることができる。
「なんっだこれ!!見えねぇ!!」
「クソっ!どこ行きやがった!!」
「さあ、こっち。」
少女の耳元で囁き、手を引き連れて安全そうなところまで運ぶ。
「もう大丈夫。怪我はない?」
「あっ..ありがどううううう....!」
泣きじゃくる少女は、少し年下に見えた。細めの体型だが、胸はそれなりに主張し、なによりその服装がやばい。
「よかったよかった。とりあえずもうすこし明るいところへ行こうか。」
その少女は、頭に大きなリボンをつけ、胸元がザックリ空いた服を着ている。その服はワンピースのような形状になっており、ミニスカートの様な形だ。なによりその服の真ん中には十字架が大きく描かれている。
「僕はスウ。君は一体..?」
落ち着いた様なので色々聞いてみることにした。
「私、ラン。冒険者で僧侶をしてるんだけど、買い物に行こうとして歩いてたらつかまっちゃって...」
悲しそうに話すその肩はまだ小さく震えている。
「そうだ!ラン、僕らのパーティに入らない?」
「パーティ?」
「そう、パーティ。仲間になって僕と冒険「入る!!」えっ」
話している途中なのだが。
「私、スウのこと気に入っちゃった!一緒に冒険したい!私僧侶だし、回復とか得意だよ!」
おお、願ったりかなったりだ。なんとも運命的である。
「じゃあ、もう一人の仲間を紹介するから宿に来てくれ。」
「あ、待って!まだ言わなきゃいけないことがあるの!耳貸して!」
スウは、少し頭を低くして、耳を澄ませる。
「ありがとね♡」
チュ、という音ととても柔らかく暖かい感触が頰に伝わる。
「!?」
驚いて声も出せない僕を見て、ランはいたずらっぽく笑う。
「えへへ、マーキングっ」
全く美少女とは何をしても可愛いものだ。
二人は、夜の街を散歩しつつ、ゆっくりと宿へ向かうのだった。
読んでいただきありがとうございます。
今回は、回復魔法について。
回復魔法とは、魔力を生命力に変えて他者に送り込む魔法です。
ですが、そもそも魔力とは生命力のことなので、
自分の生命力→自分の魔力→中立の生命力→相手の魔力→相手の生命力という、めちゃくちゃややこしい魔法なのです。
それ故に使える人は少なく、とても重宝されます。
ちなみに洗脳魔法も似たようなイメージで、
自分の魔力を自分の魔力のまま相手に受け取らせ、惑わせるという仕組みです。つまり、回復魔法使いは高度な洗脳使いでもあるわけですね。
まだどうぞ。