場所はグリゴリの半壊したトレーニングルーム、現在二人の模擬戦闘により更に破壊されていく。
玲士「いきますよ!禁手発動!竜殺しの格闘術は武器よりも強い!『
ヴァーリ「ぐぅっ…!だが肉体スペックなら俺の方が上だ!【Divide!】」
玲士「うぐっ、まだまだいけるよ!やあああ!」
ヴァーリ「うおおお!」
互いに退かず拳による乱打の余波により更に部屋の床や壁が破壊されていく。
アザゼル「おいやめろバカ息子ども!トレーニングルームの耐久力が限界だっつうの!」
玲士「あうっ!?」 ヴァーリ「ぬぅっ!?」
しかしその途中、アザゼルが部屋に慌てた様子で入室し、即座に二人の頭部にゲンコツを叩きこむ。
アザゼル「まったくお前らは…ヴァーリ、お前は少しは自重しろっての。玲士も付き合うのは良いが周りの被害を考えてくれ…。」
玲士「あはは…ごめん義父さん。」
ヴァーリ「むう…俺は強くならなくちゃならないんだがな…。」
アザゼル「はあ…っと、玲士、コカビエルとシェムハザのやつが呼んでたぞ。場所は諜報室だ。」
玲士「師匠とシェムハザおじさんが?分かりました、行ってきますね。」
そう言いながら走り、部屋を後にする。
ヴァーリ「…ふう、玲士義兄さんは凄いな、俺と違って人間だろう?」
アザゼル「そうだな、神器の性能もそうだが潜在能力も高いだろうな。」
ヴァーリ「さて、俺は部屋にもど」
アザゼル「お前はトレーニングルームの修理だっつうの!」
部屋に戻ろうとしたヴァーリの頭を掴んで止めて告げる。
それに対しヴァーリは凄い嫌な顔をしながら振り向く。
ヴァーリ「いや…なんで俺だけなんだ?それなら義兄さんだって…。」
アザゼル「お前が誘ったんだからお前が修理しろ、修理が終わるまで次の特訓は禁止な。」
ヴァーリ「はあ…仕方ないな、分かったよ。」
そう言いながら壊れた部位に向かい、修理を開始する。
アザゼル「さて、俺は研究に戻るからな、夕飯時には戻って来いよ。」
ヴァーリ「ああ。」
アザゼルが部屋を後にし、ヴァーリは一人修理を続ける。
諜報室、そこではシェムハザとコカビエル、その他複数の堕天使たちが機材とにらめっこしていた。
玲士「近衛玲士、ただいま到着しました!」
コカビエル「来たか、また派手にトレーニングルームが壊したようだな。」
玲士「あ、あはは…。」
シェムハザ「大方ヴァーリが誘ったのでしょうね、それよりも貴方の頼みたいことがありまして。」
玲士「頼みたいこと、ですか?」
シェムハザ「ええ、教会方面を調べていたのですが何かをしでかそうとしているみたいで止めに行ってほしいのです。」
玲士「教会って確か天界陣営ですよね?大丈夫なのですか?」
コカビエル「そこでしているのが公表されれば天界陣営の評判が下がるようなことだから問題はないだろうな。全く…何にもない施設襲撃なら戦争になるかもしれないから喜んで行くというのに。」
シェムハザ「それは本当にやめてください、今は三勢力どこも絶滅の危険なのですから。」
玲士「えっと、師匠と一緒に襲撃すれば良いのですか?」
シェムハザ「そうですね、そこにいる施設の所員が非道な事をしていたのならば殺しても構いません、ですが所員以外の、恐らく被害者になる方は保護してもらう事になるでしょう。」
コカビエル「俺は穴を開けた後は外の見張りだ、お前一人でも問題ないと信頼しているからな。」
玲士「任せてください、師匠!」
シェムハザ「ではお願いします、魔方陣起動!私は保護した方たちの住居スペースを作っておきます。」
部屋の中心に魔方陣が展開され、玲士とコカビエルがその上へと乗る。
玲士「えっと空飛べるのは…これだったかな。『
1枚の何重にも拘束された男が描かれた金色のカードを取り出してそう叫ぶと深緑色のポークパイハットとコートを纏い、雷と黒炎を発現させる。
コカビエル「行くぞ、玲士!」
玲士「はい!」
そう返事をした瞬間に魔方陣が光り、部屋より二人は消える。
場所は研究所上空、二人は逆さの魔法陣より飛び出し、落下する。
コカビエル「玲士、俺が事の中心地であろう場所の天井を消し飛ばす、お前はそこから侵入して人でなし共を倒せ!」
玲士「了解!」
コカビエル「まったく、人間を助けるなど俺の役目などでは無いのだが…なっ!」
そう言いながら光の槍を生成、そして真下へと投げつける。
玲士「でも師匠嬉しそうな顔してますよ、禁手は…別にいっか、行ってきます!」
それを確認すると同時に光の槍の後ろに追従しながら突撃する。
研究所の屋上に命中すると同時に消滅し、そこに出来た穴より研究所内部へと着地する。
防護服の男「っ!な、何者だ!?」
子供「…たす、け…て。」
そこには防護服を着ている大人と地面に倒れ伏している小さな子達がおり、子供たちは玲士へと手を伸ばし助けを求める。
玲士「ケホッ…毒が散布されているのか…じゃあ防護服を着ているお前たちは…死んでも文句は無いよ、ねっ!」
言い終わると同時に黒いビームを四方へと飛ばし、防護服を着た男たちの左胸を貫く。
左胸が消えた男達は声を上げずに崩れ落ちて絶命する。
玲士「…あれ?警報もならないのか…。毒の散布している装置はこれで塞いでっと。」
毒ガスが散布されている穴に向けてトリモチを撃ち込み、毒ガスの散布を停止させる。
玲士「とりあえず毒とか消さないと…『夢幻召喚』!」
金色の狂戦士のカードを取り出し叫ぶと帽子とコートが消え、腰にペッパーボックスピストルが入ったホルスターが出現する。
玲士「禁手発動!すべての毒あるもの、害あるものを絶ち、我は力の限り人々の幸福を導かん!『
そう宣言した瞬間、大剣を持った白衣の巨人が現れ、その剣を振り下ろす。
瞬間、その場に存在した毒霧は全て消え失せ、倒れた子供たちの顔色も瞬く間に良くなっていく。
玲士「さて、これでこの空間は安全になったかな。」
女の子「うっ…あ、あれ…?毒が、消えたの…?」
その女の子を皮切りに次々と子供たちは立ち上がり始める。
玲士「みんな元気になったようだね、なによりなにより。」
女の子「え、えっと…私はトスカと言います。あなたは一体…?」
玲士「私の名前は近衛玲士、堕天使陣営の戦士ですよ。」
トスカ「だ、堕天使陣営!?ど、どうして…。」
玲士「人を人として見ない行為をしようとしてると分かりましたのでここを襲撃、あなた方を保護しに来ました。ここにいる方で全員かな?」
トスカ「い、いえ…一人だけみんなで逃した男の子のイザイヤくんが…。」
玲士「…ふむ、少しお待ちください。ここはあらゆる攻撃が無効化されますので誰が来ても慌てず、逃げ出さないでください。」
そう言いながら右耳に手を当て、通信を開始する。
玲士「師匠、この研究所から外で人間の男の子を見ませんでしたか?」
コカビエル『ガキか、遠目に見て赤い髪の女が見えたがそっちの方で悪魔の気配が増えたから既にその男は悪魔に転生しているだろうな。』
玲士「そうでしたか…トスカさん申し訳ありません、そのイザイヤという方は既に悪魔に転生したみたいです。」
トスカ「そう、でしたか…いえ、彼が生きているのであればよかったです。」
玲士「では、皆さんこちらの魔法陣へ、今回の首謀者は副総督ですので皆さんの安全は約束できますよ。」
部屋の隅に魔方陣を展開しながら微笑む。
トスカ「…玲士さん、ありがとうございます。」
礼を述べて魔方陣の上に乗り、次々と少年少女は転移していく。
そして最後の一人が転移し終えたのを確認し、玲士は通信回線を開く。
玲士「師匠、こちらは全員転移完了しました。」
コカビエル『分かった、後は俺に任せておけ、ここは吹き飛ばしておく。』
玲士「了解。では先に帰還しますね。」
コカビエル『おう。』
返事を聞きながら魔方陣に乗り、その場を後にする。
それと同時に禁手による結界が消え失せ、瞬間、爆炎に包まれ、そこへ大量の光が降り注ぐ…。
終わったか、これで今回の話は終了だ。
しかし…俺が光の槍を放つ前に爆発を起こすとはな。
大方証拠隠滅だろうな、ミカエルの奴も部下を管理できないとは神器バカと変わらんぞ。
…俺も丸くなったものだな、戦争よりもあいつの成長を楽しみにするとはな。
さて、俺も戻るとしよう、めぼしい人材は鍛えてやらんとな。
では次回、ヒト。
言葉を話す人型は化物ではなく全てがヒトか、あいつらしいな。