その男、グリゴリの戦士なり   作:雪原野兎

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第12話 聖剣計画の生き残り。

…時間は深夜、ある一軒家の前で一人の青年は立っている。

 

木場裕斗、グレモリー眷属の騎士である彼はフリードが残した紙に記された住所へと来ていたのだ。

 

裕斗「…ここに、フリード・セルゼンが僕に伝えようとした何かが…罠かもしれない、だが…行くしかないか…。」

 

そう言い、敷地内へと侵入し、開いてる場所が無いか探索する。

 

裕斗「っ、この窓、風を通すために開いているのか…。」

 

人が通れるサイズの窓が空いており、網戸を横にずらして家の中へ侵入する。

 

音をたてぬ様に歩き、家の中を探索し始める。

 

裕斗「…ここは、拠点なのか?それにしては普通の家のような」

 

玲士「そこまで、君は誰かな?」

 

裕斗「ッ!?」

 

暗い廊下を歩いていた時、音もなく背後をとられ首にナイフを突き立てられ驚く。

 

裕斗「…君はフリード・セルゼンの仲間かい…?」

 

玲士「私の質問に答えてほしいのですが…。」

 

裕斗「…僕は聖剣の復讐者だ。」

 

玲士「…理由をお聞きしても?」

 

裕斗「かつて、僕たちは聖剣計画で捨てられて殺されそうになった、仲間が僕を逃がしてくれたお陰で僕は生き延びた、それから僕は聖剣に復讐を誓ったんだ…!」

 

玲士「そうでしたか、よく、頑張りましたね。」

 

そう言いながら首からナイフをどかし、頭を撫で始める。

 

裕斗「っ!?な、なにを?」

 

玲士「初めまして…ではないですね、こんばんわ、私は近衛玲士と申します。」

 

一度手を離し、明かりを付けながら自己紹介をする。

 

裕斗「…僕はあなたと初対面のはずでは…?」

 

玲士「『黒騎士』…といえば分かりますかね?」

 

裕斗「っ!堕天使の時にフリードと一緒にいた…!」

 

そう言いながら魔方陣で剣を精製し、構える。

 

玲士「大丈夫、私は敵ではありません、恐らくあなたは私たちが探していた方なのです。」

 

裕斗「僕を、探していた…?」

 

玲士「ええ、トスカさんにメフメラさん、そして『イザイヤ』この名前に聞き覚えは?」

 

その3つの名前を聞き、祐斗は驚く。

 

裕斗「ぼ、僕がイザイヤです!ふ、二人は無事なのですっ!?」

 

言葉を紡ごうとした時、口元に指を持っていって抑える。

 

玲士「今は深夜ですよ、音量は抑えましょう、ね?」

 

裕斗「す、すみません…。」

 

玲士「その質問ですがお二人共、そして聖剣計画の皆さんは全員無事ですよ。」

 

その言葉を聞き、涙を流し始める。

 

裕斗「そう、なんですね…良かった…本当に良かった…。」

 

玲士「リビングの方で少し待っていてもらえますか?今、メフメラさんを呼んできますね。」

 

裕斗「っ!?メフメラ姉さんがいるのですか!?」

 

玲士「ええ、一緒に住んでいますよ。」

 

裕斗「そ、そうだったんだね。」

 

そう返事をした後、祐斗はリビングへと向かい、玲士はメフメラの元へ行く。

 

メフメラを連れてリビングに来た時、メフメラと裕斗は驚き、そして互いに抱き合う。

 

裕斗「メフメラ姉さん…良かった…無事だったのですね…。」

 

メフメラ「ええ、イザイヤくんも無事で、無事で本当に良かった…。」

 

玲士「…ふふ、再会できてよかったです。」

 

裕斗「え、あ…す、すみません。」

 

メフメラ「ご、ごめんなさい玲士さん。」

 

玲士「いえいえ、長い間出会えなかったのですから当然の反応ですよ。」

 

その後、リビングの椅子に座り、互いに過去を話し始める。

 

裕斗「…そう、だったんだね…玲士さん、メフメラ姉さんを助けていただき、本当に…本当にありがとうございます…!」

 

深々と頭を下げ玲士にお礼を言う。

 

玲士「しかしフリードくんがコカビエルを騙る者と一緒に…私に連絡が無かったという事は恐らく師匠からの指示なのでしょうね。」

 

裕斗「そう、なのですか?それに騙る者って、コカビエルではないのかい…?」

 

玲士「ええ、私の師匠こそコカビエルであり、師匠はもう戦争に興味がありませんのでこのような事はしないのですよ。」

 

メフメラ「それに私やトスカちゃんの師匠でもあるんですよ。」

 

その言葉に裕斗は驚く。

 

裕斗「そ、そうなのかい!?じゃ、じゃああの時言っていたアーシアという方はどうなったのですか…?」

 

玲士「彼女でしたら今は聖剣の皆さんと一緒に過ごしていたりシェムハザさんに師事してもらっていますね。」

 

裕斗「あの…堕天使は人間を見下しているのでは…?」

 

メフメラ「…うん、基本的に下の堕天使は私たちを見下しているわ、でもシェムハザさん達幹部や総督さんは私たちの事を見下さず見てくれているのよ。」

 

裕斗「なるほど…。」

 

玲士「イザイヤくん、あなたはこの後どうするのですか?復讐の理由であった皆さんは無事でしたが…。」

 

裕斗「…恐らく、敵にバルパーがいるはずです、僕はその男を倒さなければならない…僕たちを利用し、捨てたあの男だけは…!」

 

玲士「ふむ…お願いがあるのですがよろしいでしょうか?」

 

お願いという言葉に裕斗は戸惑いの表情を浮かべる。

 

裕斗「え、えっと…なんでしょう?」

 

玲士「もし、フリードくんと出会っても今まで通り敵対している振りをしてほしいのです、フリードくんは私の仲間であるので恐らく師匠がその騙る者に対しての指示を出しているはずです。」

 

裕斗「…ですが、それは…。」

 

メフメラ「大丈夫…ニホンには有名なことわざがあるわ、『敵を騙すなら味方から』と、その騙る者を捕まえる為に協力してほしいのだけれど…駄目、かな?」

 

裕斗「分かりました、頑張るよ、玲士さん、メフメラ姉さん。」

 

玲士「ふふ、では話を終わりましたしご飯でもいかがですか?お風呂も沸いてますよ。」

 

裕斗「えっ、し、しかし僕は悪魔で…。」

 

メフメラ「そうだとしてもイザイヤくんはイザイヤくんよ。悪魔であろうと私たちには関係ないもの。」

 

裕斗「す、すいません…お世話になります。」

 

玲士「ええ、では料理を作っておきますね。」

 

そう言い、キッチンへ移り、料理を始める。

 

メフメラ「お風呂場はこっちよ、イザイヤくん。」

 

裕斗「は、はい!」

 

そう言われ、メフメラの後ろをついて行き、お風呂場へと向かっていく…。




今回はここまでだね…メフメラ姉さんが、トスカが…みんなが生きていてくれて本当に良かった…。

待っていろバルパー…みんなの想いを弄んだ事は絶対に許さない…!

あとフリードとは相槌で敵ではない事を知らせないと…彼はとても強いからね。

それにしても…あの時の黒騎士があの様な綺麗な方だったなんて驚いたなぁ。

…メフメラ姉さんの反応を見ると恐らく玲士さんは男なのだろうね。

次回、『名を騙る者。』

でも…初恋が実らなかったのはちょっと悔しいな…玲士さん、メフメラ姉さんをお願いします。

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