FateGrandOrder〜歩みを止めること無かれ〜   作:転輪聖王

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タイトルが少し安直ですがお許しを。


明日はきっと巴へと

side巴御前

 

「巴よ時に、お主は我が家臣か?はたまた愛人であるか?」

私には質問の意図が分からなかった。

 

「何故ですか?」

 

「良いから、申してみよ。」

 

「私はあなたの臣であります。」

 

「そうか、ならばお主に任を与える。心して聞き、何としてでも遂行して見せよ。」

 

「はっ‼︎」

私はこの時あの様な事を言われるとは予想だにしなかった。

 

「東国へ行き我等の勇姿を語り継げ。」

私は一瞬何を言われたのかわからなかった。

 

「義仲様、な、何を仰っているのですか!」

 

「私は果つる時まで御身の側にっ!」

 

「どうやら聞こえていなかったようだな。」

 

「この戦において女子は邪魔だ。疾く去れ、巴。」

 

「義仲さ「三度目は無いぞ‼︎」っ。」

 

「巴よ、我々の勇姿いと雄弁に語り広めるがよい。」ニッ

これが私の見る義仲最後の笑顔であった。

全くこの巴が貴方様の無理を見逃すとお思いなのでしょか。

 

「任しかと承りました。必ずや遂行して見せましょう。」

 

「最後の戦にしてみせ奉らん。」

と言い、大力と評判の敵将・御田八郎師重に馬を押し並べて引き落とし、首を切った。

その後私は涙を飲んで鎧・甲を脱ぎ捨てて東国の方向かい馬を走らせた。

 

 

 

side義仲

 

 

「行ったか.....。」

 

「良かったのですか?」

 

「最後まで勇ましくなどと言うくだらん呪縛に囚われるのは男だけで十分だ。」

 

「本当に義仲様らしいお言葉です。」

 

「我々もそろそろ真剣に腹をくくらねばならぬようですな。」

 

「最後まですまぬな。」

 

「今更ですよ。それに我々は御身が御身であられるからこそここにいるのですから。」

 

「ふっ、そうか。」

 

「おい、義久は生きておるか?」

 

「御身の側に。」

 

「これを巴のに頼む。」

私は義久に文を託した。

 

「御心のままに。」

義久はすぐさま巴が去った方へ駆けて行った。

 

思えば佐々木義久という男は不思議な男であった。

このご時世苗字を与えられた身でありながら我に仕官すると言い出して来た。

それも我々が負け戦をしようとしていた頃である。普通なら疑う。

正しく私も疑った目的は何だと密偵ではないのかと。

しかし違ったあいつの目に敗北や死といった概念は写っていなかった。

ただ明日を愚直なまでに見つめるだけの男だった。

そして我々はいつの間にかあいつのことを信頼していた。

彼がいれば勝てるのではないかという錯覚に陥るほどに。

そこまでに彼を信頼させられていた。

最後の心残りは案外あいつと明日を見つめられないことかもしれんな.....

 

「ふふっ」

自然と笑みがこぼれる。

 

「どうかいたしましたか?義仲様。」

 

「いや、あの男はいや義久は不思議な男であったなと思ってな。」

 

「義久ですか.....えぇ、まったく計り知れぬ男でした。」

 

「与太話もこれで終わりだ。」

 

「行くぞ、これが私からの最後の命だ。」

 

「我々の最後の戦、決して明日から目をそらすなよ。」

 

「はっ」

残り少ない家臣が声を上げる。

 

「行くぞ!」

 

「おぉー!」

 

義久よ巴を頼んだぞ......

さらばだ巴。

 

 

side巴

 

 

私は東国に向け馬を走らせていた。

すると私は大きな崖を見つけた。

私は馬を止めそこに立ち寄った。

ここらか飛び降りれば義仲様に会える気がしてしまったのである。

あと一歩踏み出せばというところで声を掛けられる。

そこにいたのはつい最近仕官して来た、義久であった。

私は何度か彼に助けられた記憶がある。

挫けそうな気持ちを奮い立たせてくれたのはいつも彼だった気がする。

いつも彼が何処を見ているのか私は一度問うたこともあった。

(義久、あなたはいつもどこを見ているのですか?)

(巴様ですか.....そうですね端的に言えば、明日をですかね)ニコッ

あの時はこいつは何を言っているんだと思ったが今ならわかる気がした。

しかし今私の目の前にいる彼はいつもと違った。

 

「何をしていらっしゃるのですか?巴様。」

 

「うっ!き、貴様には関係ない。」

私は彼の冷め切った声に一瞬たじろぐ。

 

「はぁ〜」

彼は一度ため息をつき、続けた。

 

「義仲様、貴方は極めて見る目が無かったようです。」

私はその言葉に明らかな怒りを示す。

 

「何が言いたい。」

 

「本当にわかっていらっしゃらないんですか?」

 

「なに?」

 

「はぁ〜」

と彼は再びついた。そして

 

「貴様などさっさと果ててしまえ。」

ゴミを見るような目で告げられた。

 

「っつ‼︎」

私はそれに対して声を出せなかった。

本当は分かっていた。

何が彼をそうさせているのかを。

しかし私は諦めてしまったのだもうすでに。

私はその場に膝と手を付いてしまう。

私は思考が全くまとまらなかった。

 

「どうした。ここで果てるつもりでは無かったのか?」

 

「死にたかったのだろう?疾く往ね。」

 

私は彼の言葉から逃げるように刀を抜いた。

 

「貴様に、貴様などに私の何がわかると言うのだ‼︎」

私は気の赴くままに刀を振るう

しかしそれは義久によって容易く受け止められる。

 

「わかりたくもないよ。明日から目を背けた者の心理など!」

 

「なにをっ!」

私はまた刀を振るう。

しかしまたも容易くいなされてしまう。

 

「何が違う?君はただ彼の前でいいかっこをしたかっただけだ。」

 

「だから君は彼のまえでは自分は臣であると言った。」

 

「だか、始めから彼と死別する覚悟など持っていなかった。」

 

「黙れ、黙れ、黙れ。だまれーっ!」

私はただただ刀を振るった何かを払うように。

何も考えないように。

 

「ハハッ!まるで子供だな。」

 

「さぞ気分がいいだろうな。」

 

「何も考えず、いや考えないように、自分の見たいものだけを見るのは。」

 

この問答はしばらく続いた。

私はただ彼の言葉を聞かないように刀を何度も何度も振るい続けた。

 

「はぁっ、はぁ、はぁ。」

 

「あれ?もう逃避は終わりかい?」

 

「だ...まれ。」

 

 

「まぁ仕方ない。彼に託されたしね。」

 

「?」

私が首を傾げていると彼は一歩ずつ確実に私に近づいて来た。

しかし今の私にはもう刀を振るう力など残っていなかった。

そして彼は私の前で立ち止まり手を振り上げた。

私は死を覚悟した。

しかしその手は私の頭をそっと優しく撫でた。

 

「辛かっただろう、苦しかっただろう、挫けそうになっただろう。」

 

「よく頑張った。時には涙を流すのも必要だ。」

 

「貴様などにっ!」

 

私は頬に涙がつたう確かな感触があった。

きっとこの人にはバレていたのだろう私が決して涙を流すまいとしていたことを。

 

「私はこれからどうしたら良いのだろうか?」

私は完全に戦意を喪失していた。すると

 

「これは、彼が君にと僕に託されたものだ。」

彼の手には文が握られていた。

私はそれをそっと開ける。

 

 

〜拝啓巴殿〜

 

君がこれを読んでいるという事は

僕は君を逃がす事に成功したようだね。

すまないね、最後まで君の側にいてやれなくて

生憎僕にはこんな方法しか浮かばなかった申し訳ない。

 

我、源義仲よりここに家臣巴最後の任を書き記す。

現刻を持って我らを古典とし

新たなる幸福を追求する事を命ずる。

 

源義仲

 

これは僕のいわば我儘というやつだ聞くも聞かぬ好きにしてくれていい。

今までありがとう心から愛しているよ。

 

 

「本当に最後までずるいお人だ。」

 

「こんなこと書かれたら死なないじゃないですか。」

止めどなく涙が溢れる。

 

「これからどうします?」

 

答えはもう決まっている。

「もう少し頑張って見ようかと思います。」

 

「それがいい。」

 

「それでは、義久貴方も達者で。」

 

「ええ、達者で。」

私はその言葉を聞くとまた馬で走り出した。

今ならわかる気がするよ義久いつかのあの問答の意味が。

そしてやはり君はやはり私の希望のようだよ。ふふっ

 

sideアショーカ

 

「さて私は追っ手の処理でもしますかね。」

 

「仕事だ、氷輪丸。」

 

 

 

 

 

かの王は言った

命とは終わるもの。

生命とは苦しみを積み上げる巡礼だ。

だが、それは、けっして死と断絶の物語ではない。

 

そしてもう1人の王はこう続けた。

愛と希望の物語であると。

 

 




疲れた
これからもよろしくお願いします。

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