ロクでなし魔術講師と赤髪の天災魔術師 (リメイク)   作:クッペ

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リメイク前のハーレイとの決闘は無くします


第一話

 競技祭の競技はどうやら決定したらしい。クラス全員出さなきゃいけないと思っていたグレンだったが、その必要は無いと知った後いろいろごたごたしていたらしいが。

 

 俺の魔術競技祭の練習なんてものはあんまりない。予想している競技だとしたら模擬戦などをすればいいのだが、相手が母さんだったらむしろイメージが崩れることになる。まぁ強いてやることと言ったら、CADの調整とイメージトレーニングくらいだろう。

 

 そう思ってクラスメイトの練習を眺めていたのだが、後ろから誰か近づいてくる。いや、その誰かっていうのは分かってるんだけど。

 

「なんか用か、ルミア?」

 

「ふぇ!?なんで分かったの?」

 

「前に説明しただろ?お前の事なら常に見守っているさ。どこからでも守れるようにな」

 

「ふ、ふ~ん・・・」

 

 テロリストから助け出したとき説明したよな?それよりも何で頬を染めながら目をそらすんだよ・・・

 

「ところで、競技祭の練習しないの?どんな競技か分からないんでしょ?何かいろんな対策立てておいたほうがいいんじゃないの?」

 

「いや、今は大丈夫。俺が準備をするのは前日だよ。今はとにかく英気を養おうと思ってさ」

 

「どんな競技か予想はついてるの?」

 

「まぁ・・・な。教えられねえけど。言ったら多分全力で止められそうだし・・・」

 

「そんなに危険な競技なの!?」

 

「一般の生徒なら危険だな。ルールによっては俺もやばいかもしれないが、恐らくルールに関しては問題ないだろ。固有魔術の禁止とかあったらやばいかもな」

 

「そうなんだ・・・無茶しないでね・・・?」

 

「大丈夫だ、俺を傷つけられる奴はこの世に存在しない」

 

「え?それって・・・」

 

 その時広場の方で何やら起きたようだ。何が起きたかどうか位は確認しておいたほうがいいかもしれない。ルミアもその騒ぎに気が付いたようだ。

 

「ちょっと見てくる。ここにいるか?」

 

「ううん、一緒に行くよ」

 

「そうか」

 

 そう言って俺の手を取って立ち上がる。何やら顔が赤くなってるが気のせいだろう。

 

* * * * * * * * * *

 

「何をしている、クライス!さっさと場所を取っておけと言ったろう!まだ空かないのか!?」

 

「あ、ユーレイ先輩。ちーっす」

 

「ハーレイだ、ハーレイ!ハーレイ=アストレイだ!貴様、何度名前を間違えれば気が生むのだ!?ってか貴様、私お名前覚える気、全ッ然無いだろう!?」

 

 どうやら兄さんも来ていたらしい。仲裁をしていたようだが、どう見ても煽ってるようにしか見えない。

 

「・・・でええと、ハー・・・何とか先輩のクラスも今から競技祭の練習っすか?」

 

「・・・貴様、そこまで覚えたくないか、私の名前・・・ふん、まぁいい。競技祭の練習と言ったな?当然だ。今年の優勝も私のクラスがいただく。私が指導する以上、優勝以外は許さん!今年は女王陛下が直々に御尊来になり、優勝クラスに勲章を賜るのだ。その栄誉を授かるに相応しいのは私だ!」

 

「あっはっは!うわー、すごい熱血ですねー、頑張ってください、先輩!」

 

 道化じみたグレンの態度に、ハーレイは忌々しそうに舌打ちをした。

 

「それよりもグレン=レーダス、聞いたぞ?貴様は今回の競技祭、クラス全員を何らかの競技種目に参加させるつもりだとな?」

 

「え?あぁ、うん、まぁ、はい、そうなっちゃったみたいっすね・・・不本意ですけど・・・」

 

「はっ!戦う前から勝負を捨てたか?負けた時の言い訳づくりか?それとも私が指導するクラスに恐れをなしたか?」

 

「いやぁ、そうかもしれませんねー、何せハー・・・何とか先輩のクラスには学年でも上位の生徒たちが特に寄り集まっていますからねー。いやー、もう、優勝は先輩のとこで決まりかも知れないっすねー。」

 

 道化を演じ続けるグレンに対して、ハーレイは苛立ったように歯噛みする。

 

「ちっ・・・腑抜けが。まぁいい、さっさと練習場所を開けろ」

 

「あー、はいはい、今すぐ。ええと、あの木の辺りまでければ充分ですかね?」

 

「何を言っている。お前たち二組のクラスは全員、とっととこの中庭から出て行けと言っているのだよ」

 

 そんなハーレイの物言いに、その場にいた二組の生徒は凍り付き、光学迷彩の魔術で隠れて聞いていたカインは苛立っていた?

 

(・・・何言ってるんだあいつ?)

 

 流石にグレンが獣面でこめかみを押さえ、抗議する。

 

「先輩…流石にそりゃ通らんでしょ・・・横暴ってやつですよ」

 

 その言葉にハーレイが吐き捨てるように言い放つ。

 

「何が横暴なものか?もし貴様の本当にやる気があるのならば、練習の場所も公平に分けてやってもいいだろう。だが、貴様には全くやる気がないではないか!何しろ、そのような成績下位者達・・・足手まといどもを使っているくらいなんだからな。」

 

「――ッ!?」

 

「勝つ気のないクラスが、使えない雑魚同士で群れ集まって場所を占有するなど迷惑千万だ!分かったならとっとと失せろ!」

 

 これは酷いな、教育者としてどうなんだ・・・?

 

「お言葉ですがね、先輩。うちのクラス、これはこれで最強の布陣なんすよ。それにやる気が無いのはどっちなんでしょうね?あの謎の競技、先輩のクラスどころかうちのクラス以外どこもエントリーさせてないらしいじゃないですか?うちはやる気のある生徒が立候補してくれましたんで、エントリーさせてもらったんですがね。うちは本気で勝ちに行ってるんで。」

 

「ふん、あんなギャンブルみたいな競技、やるだけ時間の無駄だ。概要もルールもわかっていない競技に時間を割くよりも、他の競技で勝ちに行った方が合理的だ。」

 

「給料三か月分!」

 

 ・・・は?何言ってるの?明日の食費もない兄さんがかけで給料三か月分も賭けたら餓死するぞ?

 

「俺は俺のクラスが勝つのに給料三か月分を賭ける。この賭け乗りますか?いやぁ、三か月分は大きいですよね?負けたら先輩の魔術研究、滞っちゃうんじゃないですかぁ?」

 

「くっ・・・!良いだろう。私も、私のクラスが勝つのに給料三か月分だ!」

 

 どうしてこうなった。取りあえず兄さんは飯の心配をしたほうが良さそうだな。

 

* * * * * * * * * * 

 

~ルミアside~

 

私は最近夢を見る。いや、昔の記憶と言った方が正しいかな。

 

 私は三年前に母親に捨てられて、今住んでるフィーベル家に引き取られた。最初の頃は捨てられたショックから荒れていた。さらにそこに誘拐事件が重なって、私が誘拐されてしまった。これは後に分かったことなのだが、標的は私ではなくシスティだったらしい。

 

 しかしあの時の私にはそんな事実どうでもよかった。私を捨てた母親が差し向けてきた殺し屋だと思っていたし、そのことに対して絶望していた。

 

「ひっく・・・ぅう・・・お母さん・・・やだよ・・・捨てないでよ・・・いい子にする・・・いい子にするから・・・私の事、嫌いにならないで・・・」

 

 恐る恐る周りを見渡すと、その目に飛び込んできたのは死体だった。私をさらっていった、悪い魔法使いの死体だった。

 

「あ、ああああ―――!?嫌ぁあああ―――!何で私ばっかりこんな目に合わないといけないの!?」

 

 その声を聞きつけたのだろう、まだ生きていた悪い魔法使いがこちらに気付いた。

 

 もうだめだと諦めたその時、その魔法使いはいきなり消えた。そして目の前に立っていたのは黒い外套を身に纏っていた二人の少年と青年でした。

 

「兄さん、まだ残ってる連中負かしても大丈夫?」

 

「あぁ、お前は早くそいつを連れて離脱しろ。」

 

 兄さんと呼ばれていたところを見ると兄弟なのだろうか?少年の方がこちらに近づき私を抱きかかえると、敵のない方へと走りだした。

 

「嫌!降ろして、降ろしてよ!もう全部がどうだっていいの!お母さんだって私を殺すつもりなんだもん!今逃げたってどうせまた―――」

 

「少し、静かにしてもらえるか?今仲間が足止めをしてくれてるけど、どこから敵が来るかは分からないんだ。お前がうるさいと敵に見つかる。宛でいくらでも文句は聞いてやるから、今は俺に従ってくれ」

 

 私と同じくらいの年の少年がこの戦場でそこまで落ち着いているのが不思議だった。落ち着いて服装を見てみれば、城にいたころに見たことがある、軍の魔導士の制服だった。

 

「あなたは・・・?」

 

「落ち着いたか?大丈夫だ、俺はお前の味方だから。お前がどんな状況であったとしても、この先何があったとしても、いつまでも俺がお前の敵に回ることは無い。安心しろ」

 

 その時急に彼が茂みに向かって懐から取り出した拳銃を向けて引き金を引いた。いつまでたっても銃声は聞こえてこなかったけど、変わりに聞こえて来たのは悲鳴だった。悲鳴が上がった後、茂みから男が三人飛び出してきました。

 

「貴様、よくも!」

 

 茂みから出てきた男は私たちに向かって魔術を行使してきました。いや、魔術を行使しようとしていました。彼が拳銃の引き金を引くだけで、発動直前だった魔術は霧散していたのです。

 

「ば、化物が!」

 

「言いたいことはそれだけか?おい」

 

 そう言って私の方を向いて

 

「少し、目閉じててくれ、それと俺から離れるな」

 

 言われた通り、私は目を閉じた。少したって目を開けてもいいと言われたので目を開けたら、先ほどまで私たちを倒そうとしていた魔法使いたちは消えていました。

 

「・・・これで回りにいる敵はすべて片付いた。あとはお前を屋敷に届けるだけだな」

 

 そう言って私を抱きかかえてフィーベル邸の方へ歩き出しました。

 

「あの・・・自分で歩けます!」

 

「いや、すぐそこだから大丈夫だ」

 

 その頃には私はすっかり落ち着いていました。何故か彼といるとすごく安心できるのです。

 

「あの!名前を聞いてもいいですか?」

 

 その言葉を最後に私はいつも夢から覚める。




今回長めになりました

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