ロクでなし魔術講師と赤髪の天災魔術師 (リメイク)   作:クッペ

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大分長くなりましたね


第五話

 

 2-2の教室ではカインと天の智慧研究会のテロリストとの戦いが始まっていた。

 

 どうやら敵の戦い方は【コール・ファミリア】の改変魔法なのか、もしくは彼の固有魔法なのか、人間大の猫、虎、烏、鷹の使い魔を使役させて戦わせるようだ。通常【コール・ファミリア】は小さい動物を使役させて状況視察させる程度の魔術なのだが、どうやらこの男はそれを戦闘用に特化させたらしい。

 

 しかし一匹一匹の強さはカインの前ではどうやら大したことが無いらしい。CADから発動される【ライトニング・ピアス】によって呼び出された使い魔が次々と葬られていく。本来なら使い間を倒しつつ敵にダメージを与えられる広範囲の攻撃をすることが理想なのだが、どうやら彼の魔術によって後ろに縛られてるクラスメイト達の安否を考えると、使えないということだろうか。

 

 しかし敵の使い魔が50匹辺りを超えたところで遂にカインが切れた。彼の使い魔のストックがどれだけあるかは不明なため、長期戦ではもう一つの戦況が悪化した場合のことを考えると、カインは早々に決着をつけることにしたのだ。

 

 カインは後ろを振り向きクラスメイト達に言い放つ。

 

「いいか、お前ら。俺が今から普通に魔術を使ってあいつを倒す。俺がCADを使わないで魔術を使うとどうなるか見ておけよ」

 

 そう言って今まで敵の使い魔を倒していたCADを懐にしまって別のCADを敵に向けつつ左手をかざして呪文を唱え始める。

 

「≪我は神を斬獲せし者・我は始原の祖と終を知るもの―――・・・」

 

「何!?その魔術は!?」

 

 魔術を妨害しようと使い間を次々と召喚するが、カインが右手に持っていた、先ほどとは違う拳銃形態の魔導器の引き金を引くことによって、使い魔たちは次々と消滅していった。

 

「多重起動!?しかも、その魔術を唱えながらだと!?」

 

 驚くのも無理はない。まず魔術を右手で起動していることがそもそもおかしいのだが、これは拳銃形態の魔導器を使っているから可能なことである。もう一つの驚くことが、カインが今から使おうとしてる魔術は、セリカが過去に邪神の眷属を殺すために編み出した、ほぼオリジナルに近い固有魔術を発動していることにあった。その魔術と右手による魔術起動、これで驚かないほうが無理もない。敵が逃げようと教室を出ようとするが、教室の扉は開かない。先ほど教室に入った際、カインが開かないように細工をしてあったためだ。

 

「―――其は摂理への円環へと帰還せよ・五素よりなりしものは五素に・象と理を紡ぐ縁は乖離すべし・いざ神羅の万象は須らくここに散滅せよ・遥かなる虚無の果てに≫―――ッ!黒魔改【イクスティンクション・レイ】―――ッ!」

 

 カインの左手から巨大な光の波動が走り、この教室の全てを吹き飛ばしていた。彼の後ろにいた生徒たちは無事だったが、彼の前方に見えるのは外の景色だけである。

 

「大丈夫か?」

 

 後ろに衝撃がいかに様にはしたが、如何せんあの威力である。その衝撃が後ろに全く届いていないとは思えなかったため後ろに縛られているクラスメイト達に確認をしてみた。

 

「あぁ、問題は無いが、あれは一体・・・」

 

 無事を確認するとカインはCADをクラスメイト達に向けて引き金を引く。【マジック・ロープ】と【スペル・シール】は消滅して自由に動き回れるようになった。

 

「みんなが捕まってから来たことは謝ろう。流石に得体のしれない魔術師三人を同時に相手取って勝てる保証は全くなかったんだ。今から俺は連れていかれた二人を助けに行く」

 

「なら俺も」

 

 そうカッシュが言うがカインは首を横に振る

 

「お前らもわかってるだろ?あいつらがクラスに入ってきたとき、お前らはどうした?あいつらから自分の身を守れないようなやつが来ても俺がお前らを守り切れるとは限らない。それにここにいればお前らは安全だ。それに兄さんも生きている。今戦闘の真っただ中なんだ。その戦闘が終わったらこの教室にシスティーナと向かわせよう」

 

 グレンが生きている。その言葉を聞いたクラスメイト達は少しだけ表情が明るくなった。なんだかんだで彼らはグレンのことを信頼しているのだろう。

 

 言いたいことを言ってカインは壊れた教室を元に戻してから、連れ去られた人物を救出するために教室を後にした。

 

* * * * * * * * * *

 

 グレンは現在天の智慧研究会のテロリストのダークコートを着た男、レイクと戦闘中だった。【ディスペル・フォース】の重ね掛けによって追い込むも、グレンの固有魔術の【愚者の世界】の発動よりも早くにレイクが自動剣を起動させてしまい、追い込まれていた。

 

「【ディスペル・フォース】の重ね掛けには驚いたが、所詮はその程度だったか」

 

(やべーな、こりゃあとうとう勝ち目がなくなったか・・・)

 

「白猫!お前はとっとと逃げろ!もうこれは勝てない!」

 

「嫌です!私はルミアを助けたい!こんなところで立ち止まっていられないんです!」

 

(そうは言ってもな・・・)

 

 どうにかして逃げる時間を稼ぐための作戦を考え始めたところでレイクは剣をこちらに向けてきた。

 

「終わりだ」

 

(やべえ!?)

 

 諦めかけたその時、目の前でレイクの剣が一本だけ効力を失ったものを残して消滅した。

 

「なんだ!?」

 

「兄さん!いまだ!」

 

 そう言ってグレンは残った剣を拾ってレインの心臓に剣を突き立てる。

 

 レイクはそのまま息絶えた。

 

「二人とも、大丈夫じゃなさそうだけど・・・」

 

 そう言ってカインはCADをグレンに向けて引き金を引く。すると今までグレンが負っていた傷がなくなって戦闘前の状態に戻っていた。

 

「悪いカイン、助かった。クラスの方はどうだ?」

 

「俺が解放しておいた。あとは俺がやるよ。こんな状態になってもう今更だけどテロリストの掃除は本来なら俺の、軍人の仕事だ」

 

「軍人!?カイン、あんたって一体・・・?」

 

「システィーナ、お前はルミアの関係者だから教えたが、このことはクラスの連中には黙っててもらえると助かる。それと、ルミアは俺が助ける。安心しろ、ちゃんとお前のもとに帰すさ」

 

「え、えぇ・・・分かったわ」

 

「とりあえず兄さんたちは教室に戻っててくれ。みんな心配してる」

 

「カイン、あんまり心配はしてないけど、死ぬなよ」

 

「俺を傷つけられる奴なんて存在しないさ」

 

 そう言い残してカインはこの学園全体に知覚を広げる。すると転送塔に二人の人の反応があった。

 

* * * * * * * * * * 

 

 転送塔に到着したが、転送塔はガーディアン・ゴーレムがいた。ここに誰かがいると言ってるようなものである。

 

 カインは向かってくるガーディアン・ゴーレムを消滅させながら転送塔の螺旋階段を上っていると、最上階に到着したのか閉ざされていた扉があった。そこを開けると転送方陣の上で白魔儀【サクリファイス】に閉じ込められているルミアと、糸目の青年がいた。

 

「・・・カイン君?」

 

 ルミアは彼がここに来たのが信じられないような驚き半分、カインが来てくれたことの安堵半分が入り混じった表情でこちらを見ていた。

 

「よぉ、助けに来たぜ?」

 

 カインは気軽にそう応じていると

 

「あなたは?一体誰なのでしょうか?この学院の生徒のようですが・・・見覚えはありませんね?」

 

「学院の生徒を知っているってことは、あんたは元ここの関係者か。あんたは一体誰だ?」

 

「私はヒューイ・ルイセン。2-2の担当講師をしていた者です」

 

「ふーん、まぁいいや。で、何でルミアを誘拐した?目的は何だ?」

 

「言うと思いますか?」

 

 するといつの間にか抜いていたのか、拳銃形態の魔導器を一つヒューイに向けており、もう一つはルミアに向けられていた。ルミアに向けられている魔導器の引き金を引くと、五層あったサクリファイスの一層目が消失していた。

 

「いやーすまんすまん。本当は全部ぶっ飛ばそうと思っていたんだけど間違えて一層だけぶっ飛ばしちゃった。で、もう一回聞くな?何でルミアを誘拐したんだ?お前たち、天の智慧研究会の目的は何だ?」

 

「・・・彼女は異能者なのです。感応増幅者なんですよ。そんな彼女を、我が組織はとても興味を持っている」

 

 そういうとルミアは表情を附してしまったが、カインはそんなことに構わず質問を続けていた。

 

「本当にそれだけか?感応増幅者は他にもいるだろ?なぜこのタイミングでルミアっていう感応増幅者を狙ったんだよ。それだけじゃ説明は付けられない」

 

「・・・彼女は今は無きアルザーノの王女殿下、エルミアナ=イェル=ケル=アルザーノ殿下です。病死したはずの、いないはずの王女殿下、そこに利用価値があるのでしょう。」

 

 ヒューイがそういうとカインはルミアに向けた魔導器の引き金を引く。するとサクリファイスの第二、三層めが吹き飛んだ。

 

「お前は一体なんだ?なぜ少し前まで講師をしていた人間が、今回の事件の黒幕なんだよ?」

 

「僕は爆弾なんですよ。十年前に、いずれ入学してくるかもしれない一生徒のために、組織によって使わされていました。今日この日の為にね。このまま時間までサクリファイスが解除されなかったら、その転送方陣によってルミアさんは組織のもとへと飛ばされ、僕は自爆してこの学園を吹き飛ばす。そんな計画だったのですが、あなたのせいで全てが狂わされてしまった。」

 

「あぁ、そうだな」

 

 そういうとカインは再び引き金を引いてサクリファイスの残りの層を吹き飛ばした。このことによってルミアは解放され、ヒューイは嘆息しながら上を向いていた。

 

「僕はどうすればよかったんでしょうね・・・このまま組織に使いつぶされるか、今日のような結末を迎えるか。でもね、彼女が解放されてほっとしている自分が確かにここにいるんですよ。」

 

「あっそ。知らねえよ」

 

 そう言ってカインはヒューイに向けて引き金を引く。すると肩の付け根、脚の付け根に小さな穴が穿たれていた。神経を鑢で削られたような激痛によりヒューイは気絶した。

 

「カイン君・・・その・・・助けてくれてありがとう。」

 

「別に、大したことはしてねえよ。それよりもさっきの話、あれって本当か?」

 

「・・・うん、全部本当。私は異能者で、アリシア女王陛下によって追放された王女、エルミアナ。それが私の正体なの・・・」

 

「そうか・・・」

 

(つまり三年前の助けた少女がルミアだったってことか)

 

 そうカインが考えているとルミアは顔を上げてこちらを見てきた。

 

「また、助けられちゃったね」

 

「・・・・・・」

 

「否定はしないんだね、三年前の誘拐の時、そして今日。私二回も君に助けられちゃった。」

 

「三年前のことを知ってるなら話が早いだろ。これだって偶然居合わせただけで、テロリストの殲滅と被害者の救出は立派な俺の仕事だ」

 

「それでも、私が君に助けてもらった事実は変わらないよ?だから、これはお礼」

 

 そう言って近づいてきたルミアはカインの頬に軽くキスをする。

 

「なッ・・・!?」

 

 不意打ちでされたことにカインは酷く狼狽する。その様子を見てルミアは頬を染めながら微笑んでいる。

 

(あぁ・・・これはダメだ・・・頭がおかしくなりそうだ・・・正常な思考ができてる気がしねえや)

 

「・・・ルミア、少し目を閉じてくれねえか?」

 

「え?う、うん・・・」

 

 そう言って目を閉じたルミアに圧縮したカインのマナを打ち込む。そうすることによって彼の固有魔術の副産物による眼の支配下に置くことができ、今どこにいるか程度は分かるようになる。

 

「もう開けていいぞ」

 

「えっと・・・いったい何をしたのかな?」

 

「お前の正体を知ってるテロリスト集団がこれからも狙ってこないとは限らないだろ?これからは俺がお前を守ってやる。俺のマナの一部を圧縮してお前に打ち込んだ。これでお前がどこにいるか程度は分かるようになった。安心しろ、私生活を脅かすとかそういうことはするつもりは一切ない。さぁ帰ろうぜ?システィーナ達が待ってるぞ?」

 

 そう言ってカインはルミアの手を引いて転送塔を後にした。

 




エピローグ書いたら原作二巻に入ります

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