ロクでなし魔術講師と赤髪の天災魔術師 (リメイク) 作:クッペ
自習ということでやることもない。
俺は自分の拳銃型の魔導器を分解して点検を行っていた。自習ということで各自自分で勉強をしているようだが、見たこともないものに興味を向けるものも少なくなく、やがて大柄な少年、カッシュが聞いてきた
「なぁ、それってなんなんだ?」
「あぁ、これ?これは俺専用・・・て訳じゃないんだけど、実質俺にしか扱えない魔導器だ。今は分解されてた分からないだろうけど、本来は拳銃の形をしてるんだよ。引き金を引くだけで魔術が発動できる代物なんだが、お前らには大吉使えるような代物じゃない」
その説明にクラスから声にならない悲鳴が漏れかけた。
「お前にしか使えない?どういうことだよ?」
「知りたいか?」
「ああ」
「・・・なあ、このクラスで一番強いやつって誰?」
「・・・システィーナ、だろうな」
「あの銀髪か・・・なあ」
「何よ?」
そう言って不機嫌そうにこちらの話を盗み聞ぎでもしていたのか、こちらの呼びかけにすぐに反応する。反応してくれたところ悪いんだが、左手にしていた手袋をシスティーナに投げつける。
「・・・ちょっと、これどういうこと?」
さらに不機嫌そうに声をにじませて聞いてきた。
「いや、俺の魔導器の説明を聞きたいってやつがいるから付き合ってくれよ。魔術を使うからには、決闘って形が一番手っ取り早くて、大義名分もある。安心しろ、別に本気で戦おうってわけじゃない。俺が外に出てもいいように付き合ってほしいだけなんだよ。ちょうど自習でストレスもたまってそうだしな」
「そんなまどろっこしいことしなくても、普通に自習なんだから勝手に説明してくればいいじゃない。」
「まぁまぁ落ち着けよ。喧嘩売った形になっちまったことは謝る。それでもあの魔導器の話聞きたがってるやつは結構いるんじゃないか?引き金を引くだけで魔術が発動できるんだ。面白そうだろ?それに決闘って形を取らせてもらったんだ。この決闘が終わったら、ちゃんと詫び入れるよ。というわけで兄さ・・・グレン先生?外行って来ていいですか?自習ってことで」
「おぉ、行ってこい行ってこい」
そんなわけで2-2クラスの連中を引き連れて決闘という大義名分のもと中庭へと移動した
* * * * * * * * * *
「というわけで、システィーナ。付き合ってくれて悪いな。取りあえず俺に【ショック・ボルト】撃ってくれ。大丈夫。【トライ・レジスト】は既に展開してあるから」
「・・・呆れた、なんであんたに向かって放たなきゃいけないのよ・・・まぁいいわ≪雷精の紫電よ≫ッ!」
そう言って俺に向かって黒魔【ショック・ボルト】が放たれた。俺にあたって紫電は弾けた。
「今のが黒魔【ショック・ボルト】。これはもうみんな使えるな?≪雷精よ・紫電の衝撃持って・打ち倒せ≫、この三節で発動できる。今のあいつみたいに略式詠唱の場合は≪雷精よ≫とか≪雷精の紫電よ≫の一言で発動できるな。でも俺の子の魔導器、俺はCADって呼んでるんだが、このCADを使えば・・・」
そう言って手近にあった木に拳銃を向けて引き金を引く。すると銃口からは【ショック・ボルト】が発動し、木に当たって弾ける。その光景にクラスメイトはみな唖然としている。
「こんな風にこのCADを使えば引き金を引くだけで魔術が発動できる。じゃあなんで俺にしか使えないのか、そう思ってる奴多いんじゃないか?まぁ簡単に言えばこのCADにも代償みたいなものがあるんだよ。通常魔術を発動する代わりに使用するマナの量が三倍近く多い。だから俺以外が使うとすぐにガス欠を起こす。しかも威力は平均的な魔術師よりも半分程度しか出ない。」
俺がCADを使ってもガス欠を起こさないのは貯蔵マナがとんでもない量あるからだ。今まで軍の人間として戦ってきたが、マナ欠乏症なんて起こしたことは無い。兄さんの場合は黒魔改【イクスティンクション・レイ】を使ったら一発でマナ欠乏症なのだが、俺は何発撃っても全くマナ欠乏症にならない。
つまり普通の魔術師よりもマナの量がとんでもないためこんな効率の悪いことをしているということである。
さらに俺の魔術特性[分解・再生]のせいで攻性魔術一つでなんでも木っ端みじんにしようとするために、威力はとんでもないものになってしまうのだ。そういった経緯があって俺はCADを使っているのである
「とまぁこんな感じだ。使ってみたいとか思うなよ?お前らじゃ一発でガス欠だぞ?ん?そろそろ終業か。じゃあシスティーナ、俺に適当に魔術当ててくれ。お前の勝ちで決闘もどき終わらせるぞ」
「・・・はぁ、分かったわよ。≪大いなる風よ≫ッ!」
そうして威力を極限まで落としてくれた【ゲイル・ブロウ】に当たってこの決闘もどきは終了した。
決闘の報酬はクラスメイト全員に昼飯を奢ることとなった・・・
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次の時間の錬金術の授業はグレンが女子の更衣室に侵入し、2-2の女子生徒によるグレンへの粛清の結果、錬金術の授業は中止。
お昼になるとやがて学生は食堂に移動したが、カインは一日朝夕の二食しか食べないので、校内の敷地に生えていた『シロッテの枝』を加えながらとある考え事をしていた。
(やっぱり兄さん、まだ魔術が嫌いなんだな・・・今日の授業はそれが顕著に表れてたし、恐らくこのまま行くとあのシスティーナがきっと何かの行動を起こすよな。どうしたものかな・・・)
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その後のグレンの授業もありていに言って酷いという一言で済まされる。
最初のうちはまだ一応説明をしていたが、日に日に状況は悪くなって行く一方で、教科書を丸写しする。教科書を黒板にくぎで打ち付けると悪化していった。
今日は教科書のページを引きちぎり、黒板に打ち付けようとしたところで
「いい加減にしてください!」
と、システィーナがグレンに詰め寄っていた。
その後システィーナが自分の家の権限を使って、グレンを首にすることを脅していたが、グレンはそれにあやかろうとしていた。
(兄さん・・・それは流石に・・・)
そう考えていると、その少女が左手の手袋をグレンに投げつけていた。
(・・・は?)
カインはそう思わずにはいられなかった。
「ダメ、システィ!早く先生に誤って・・・!」
ルミアがそう言うが彼の少女はそれを聞かずに
「いいぜ、その決闘受けてやる。ただし使う魔術は【ショック・ボルト】、この攻性魔獣のみだ。お前に怪我させるわけにも行かねえしな。」
(なんでそんなルール設定にしたんだよ?そのルールだと兄さん殆ど勝ち目ねえだろ)
俺がそんなことを考えているとクラスに人間は中庭に移動していたため、俺も結果は目に見えているが一応見届けるため中庭へ移動した。
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決闘の結果はシスティーナの圧勝に終わった。
システィーナがショック・ボルトを≪雷精の紫電よ≫という一節詠唱が可能なのに対し、グレンは≪雷精よ・紫電の衝撃もって・打ち倒せ≫という三節にわたって詠唱しなければ、魔術を発動できない。魔術決闘においては先に魔術を発動させた方の勝ちはほとんど確定のため、一節詠唱ができないグレンにそもそも勝ち目などなかった。
(なんでわざわざ自分が勝てないようなルールに設定するのかなぁ・・・)
なんて思ってたらグレンは魔術師同士の決闘の約束を反故にして、逃げ去っていった。そのためグレンのこうしてとしての評価は学院内で地に落ちていた。
CADの設定はこの話のオリジナルの設定です