ロクでなし魔術講師と赤髪の天災魔術師 (リメイク) 作:クッペ
あの実技試験の後、リィエルはクラスメイトから避けられていた。いきなり剣ぶん投げたら、怖くて近づこうとは思わないだろう。だからと言って俺とか兄さんがどうこうできる問題ではない。クラスに馴染むために俺たちが手を貸しても、それはすぐに瓦解する。
リィエル本人はそんなこと気にしないのだろうが、護衛の任務の事を除いても折角学院に来れたんだ。少しは学院生活を味わってもらいたいものだ。
今は昼休みだが、リィエルは自分の席に座ってぼーっと外を眺めている。クラスメイト達は食堂に行くなり、外食しに行くなりしているが、リィエルは一人で佇んでいるだけ。
そこにルミアとシスティーナが声をかけに行った。システィーナはまだややビビっているが、ルミアは全くそんなこと思っていないように振る舞っていた。
「ねぇ、リィエル。お昼ご飯の時間だけど、食べないの?」
「平気。三日は何も食べなくても大丈夫だし、支給された食料は、ここに来るまでに食べちゃったから」
「でもしっかり食べないと、護衛にも差し障るんじゃない?」
「・・・一理ある」
「でしょ!じゃあ一緒に行こう?」
ルミアはリィエルの手を取り、食堂まで一緒に行った。その光景を見て俺と兄さんとセラは微笑む。
「リィエルもちゃんと学院で生活送れそうで良かったね?グレン君」
「別に、そんなこと気にしちゃあいねえよ」
「もう、素直じゃないなあ」
別に俺はリィエルと仲がいいわけではないが、まぁ知り合いというよりも同僚か?が楽しそうに日々過ごせるのは、まぁ微笑ましくはあるな。普段血生臭い世界に住んでる奴なら尚更だ。
* * * * * * * * * *
どうやら食堂でみんなと仲良くなれたのだろう。教室に戻ってくるころには、リィエルは皆から頻繁に話しかけれていた。
もうすぐ遠征学習だということで、この時間はそのことについて話しているそうだ。なぜ他人事かって言われても、俺は参加できないらしいからだ。と言っても任務の進捗状況によっては、後半は参加できるかもしれないということ、単位については学院長と母さんが何とかしてくれるらしい。
「はぁ~、遠征学修な・・・こんなのお出かけ旅行みたいなもんだろ?意味なんてあるのかねぇ・・・」
「ちょっと、先生!引率する先生がそう言うのってどうなんですか!?いいですか、遠征学修というのは――」
システィーナが解説してくれてるようだが、もうほとんど関係ないようなものなので完全に聞き流させていただきます・・・
「僕たちのクラスって、どこ行くんだっけ?」
「白金魔導研究所だろ?僕別の所が良かったなぁ」
白金魔導学研究所はサイネリア島というところにある。馬車に何日か揺られて、さらにそこから船で移動しなければならない。正直軍の任務の方が楽な気がする。
でも何でこのタイミングで俺に任務なんだ?特務分室は確かに人数不足だが、こっちにリィエルとセラを派遣しなければ戦力としては十分なはずだ。さらに今回の遠征学修に限っては、アルベルトまで派遣するという大盤振る舞い。
このタイミングで俺が必要になる任務って、天の智慧研究会のかなり強力な奴の排除か?
「お前ら分かってねえな。白金魔導研究所がどこにあるか、分かってねえのか?」
「サイネリア島で海の近く・・・まさか!?」
カッシュがそう答えて何かに思い至ったらしい。
「そう!比較的温暖でこの時期でも海水浴が可能!さらにこのクラスにはやたらとレベルの高い美少女が多い。あとは分かるな・・・?」
「「「「「先生!俺たちあんたについて行きます!!!!」」」」」
このクラスってバカばっかか・・・
「このクラスってバカばっかね・・・」
システィーナは勿論のこと、今日着任してきたばかりのセラまで同じような表情で呆れている。いや、これはクラスというよりも、兄さんにだろう。
「ねぇ、カイン君・・・」
「うん、どうした?」
「カイン君もやっぱり水着とか気になるの?」
なぜか耳元でこんなことを囁いてくるルミア。顔が赤いけど、どうした?
「まぁ正直気になるっちゃ気になるが、俺ちょっと事情があって遠征学修行けないらしいんだわ」
「え!?事情って!?また危ない事?」
「事情は事情だよ。あんまり大声で言えるようなことでもない。」
それで察したのか、しょんぼりとした表情で落ち込むルミア。すまん、なんか申し訳ない。
「まぁこっちの進捗によっては、後半は参加できるかもしれないから。それと、遠征学習中はリィエルとセラとできるだけ一緒に行動してくれ。俺も見守っているが、すぐに対応できるわけじゃないからな」
「うん・・・分かった・・・」
なんか申し訳なくなってきたな・・・何でこのタイミングで軍の任務に俺が着くかは、まだわからないが、何かあったら飛んでいくから安心しろ。
この後はオリジナル展開になります
でも三四巻の所はそんなに長くはないかもしれないです