君の名は。再演す   作:マネ

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最後かもしれないだろ?

だから、ぜんぶ話しておきたいんだ


眠れる勇者と導きの盟友①

 風景が飛ぶように流れていく。だんだんと建物が少なくなっていく。自然が多くなっていく。新幹線のスピードが速くなっているような気がする。

 

 俺はある人をさがすために、新幹線に乗り込んだのだった。

 

 俺一人で乗るつもりだったのに……。

 

「おまえが心配で来たんだよ。さいきんのおまえ……ようすがヘンだったろ? 学校に遅刻してくるし……すごい目立ってたぞ」

 

 俺はギュッとケータイを握りしめた。

 

「さすがに放っておけないぜ」

 

「メル友に会いに……行くんだって?」

 

 先輩はサンドイッチを頬張りながらきいてくる。

 

「いや……メル友っていうか、なんていうか……」

 

 説明がむずかしい。なんと説明していいかわからない。こんなこと誰も信じてくれないだろうし……。それに友達は友達だけど……友達というよりも……。

 

「出会い系だろ?」

「ちがうって!」

 

「そういうのはまだ早いよ~?」

「ちがいますって!」

 

「離れてみててやるから。ツツモタセとか出てきたら危ないしな」

「ツツモタセが出てきたら、私たちが退治してあげるから……任せて!」

 

 二人して笑っている。

 

 こいつらぁ……。

 

 おもしろがりやがって。

 

 俺の目の前に、小学生のような小さな少年が座って、じっと、こっちをみていた。

 

 ひとりか?

 

 一人で新幹線に乗っているのか? 保護者は? どこに行こうとしてるんだ?

 

 すごい気になる。

 

 

 

 ◆  ◆

 

 

 

 俺は宮水俊樹という人物についてケータイで調べた。糸守町の町長をやっていることがわかった。経歴も載っていた。永都大の卒業生だった。高校も調べた。有名な高校だった。ちょうどその高校に俊樹が在学しているときに、不可解な事件があったらしい。しかし、在校生の捜査によって、その事件は見事解決したようだった。

 

 誰が事件を解決したか、その名前は伏せられていた。検索しても出て来なかった。

 

 俊樹が事件に関わっていたのだろうか?

 

 警察よりも早く高校生が解決した? 現実にそんなことがあるんだろうか? まるで漫画だ。学年トップの成績の俺でも無理だ。現実は不純物が多く複雑だ。とてもミステリーとは呼べない。

 

 宮水俊樹の写真をみる。

 

 彼はいったいどういう人物なんだろう?

 

 名探偵……そんなふうにはみえない。漫画の名探偵も名探偵にはみえないものだけど。

 

 そもそも、名探偵なんて実在するはずがない。

 

 都市伝説だ。真実はネットの闇の中……。

 

 

 

 ◆  ◆

 

 

 

「きゃー、なにコレ、かわいい!」

 

 到着した駅にいたゆるキャラに先輩がはしゃいでいる。

 

 ダメだ。こいつら。

 

 ほんと、いったい何しに来たんだよ。

 

 俺はケータイに視線を落とす。へぇ、彼は巫女と結婚しているんだ。

 

「ねぇ、さっきからケータイで何を調べているの? あなたのためにわざわざついてきたんだよ」

「そうだぜ」

 

 

 

「司クン!」

 

 

 

 俺の名前は。




藤井司視点の特別回です。

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