だから、ぜんぶ話しておきたいんだ
風景が飛ぶように流れていく。だんだんと建物が少なくなっていく。自然が多くなっていく。新幹線のスピードが速くなっているような気がする。
俺はある人をさがすために、新幹線に乗り込んだのだった。
俺一人で乗るつもりだったのに……。
「おまえが心配で来たんだよ。さいきんのおまえ……ようすがヘンだったろ? 学校に遅刻してくるし……すごい目立ってたぞ」
俺はギュッとケータイを握りしめた。
「さすがに放っておけないぜ」
「メル友に会いに……行くんだって?」
先輩はサンドイッチを頬張りながらきいてくる。
「いや……メル友っていうか、なんていうか……」
説明がむずかしい。なんと説明していいかわからない。こんなこと誰も信じてくれないだろうし……。それに友達は友達だけど……友達というよりも……。
「出会い系だろ?」
「ちがうって!」
「そういうのはまだ早いよ~?」
「ちがいますって!」
「離れてみててやるから。ツツモタセとか出てきたら危ないしな」
「ツツモタセが出てきたら、私たちが退治してあげるから……任せて!」
二人して笑っている。
こいつらぁ……。
おもしろがりやがって。
俺の目の前に、小学生のような小さな少年が座って、じっと、こっちをみていた。
ひとりか?
一人で新幹線に乗っているのか? 保護者は? どこに行こうとしてるんだ?
すごい気になる。
◆ ◆
俺は宮水俊樹という人物についてケータイで調べた。糸守町の町長をやっていることがわかった。経歴も載っていた。永都大の卒業生だった。高校も調べた。有名な高校だった。ちょうどその高校に俊樹が在学しているときに、不可解な事件があったらしい。しかし、在校生の捜査によって、その事件は見事解決したようだった。
誰が事件を解決したか、その名前は伏せられていた。検索しても出て来なかった。
俊樹が事件に関わっていたのだろうか?
警察よりも早く高校生が解決した? 現実にそんなことがあるんだろうか? まるで漫画だ。学年トップの成績の俺でも無理だ。現実は不純物が多く複雑だ。とてもミステリーとは呼べない。
宮水俊樹の写真をみる。
彼はいったいどういう人物なんだろう?
名探偵……そんなふうにはみえない。漫画の名探偵も名探偵にはみえないものだけど。
そもそも、名探偵なんて実在するはずがない。
都市伝説だ。真実はネットの闇の中……。
◆ ◆
「きゃー、なにコレ、かわいい!」
到着した駅にいたゆるキャラに先輩がはしゃいでいる。
ダメだ。こいつら。
ほんと、いったい何しに来たんだよ。
俺はケータイに視線を落とす。へぇ、彼は巫女と結婚しているんだ。
「ねぇ、さっきからケータイで何を調べているの? あなたのためにわざわざついてきたんだよ」
「そうだぜ」
「司クン!」
俺の名前は。
藤井司視点の特別回です。