ラブライブ! LOSTCOLORS   作:isizu8

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ライ君が音ノ木坂学院への入学を薦められる話です。


STAGE02 廃校 阻止 計画

僕はあれから生徒手帳を届けに音ノ木坂学院に向かった。

 

しかし、その学校にはいままで一度も行ったことが無いので結果、道に迷ってしまった……

 

道行く人に学校のことを訪ね、着くのが予想より遅くなってしまったが、なんとかその学校までたどり着くことができた。

 

さて、この手帳の持ち主は分かっているので、後はあの少女にこの手帳を届けるだけなのだが、僕はその学校に入れずにいた。

 

なぜなら僕は男で、女子校に見知らぬ男がいきなり入れば不審者として通報されてしまうだろうから。

 

僕がその場でしばらく立ち尽くしていると、こちらの存在を不審に思ったのか、1人の女子生徒が声を掛けてきた。

 

「そこの貴方、この学院に何か用事でもあるのかしら?」

 

振り返るとそこには金色の髪の女子生徒がいた。

その生徒は、学生とは思えないほど凛としていて、その透き通った青い瞳は真っ直ぐに僕の目を捉えた。

明らかに僕を警戒している様子だ。

そしてその傍らには紫色の髪をした、不思議な雰囲気が漂う女子生徒もいた。

 

「はい。今朝、音ノ木坂学院の生徒が落とした生徒手帳を届けに来ました」

 

僕がこの学院に訪れた理由を説明すると、彼女から警戒心が減ったのを感じた。

 

「そうですか……うちの生徒がご迷惑をお掛けしてすみません」

 

「いえ……部外者の僕がこの学校に入るわけには行きませんので、この手帳のことはお願いしても良いですか?えっと、貴女方は……」

 

「私は絢瀬絵里です。この学院の生徒会長を務めています」

 

「うちは東條希。生徒会副会長をしているんよ」

 

「僕は皇(すめらぎ)ライです。よろしくお願いします」

 

「皇……」

 

「エリチ、もしかしてこの子……」

 

僕が名乗ると2人は少し驚き、何か相談を始めた。

どうやら僕の『皇』という名字に反応しているらしいが……

しばらくすると話がまとまったのか、生徒会長が僕に話しかけてきた。

 

「皇君。今から少し時間をいただけますか?」

 

「特に用事も無いので構いませんよ」

 

「それじゃあ、今から理事長室に来てもらってもええかな?」

 

「わかりました」

 

僕は2人についていく形で理事長室に向かった。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

「貴方はそこで待っていてもらえるかしら?」

 

「わかりました」

 

僕達は理事長室前まで来ていた。

2人は理事長に説明をするため、先に理事長室に入っていった。

僕はただ、落し物を届けにきただけなのだが……

 

しばらくすると理事長室の方から声が聞こえてきた。

 

「どうぞ」

 

その声は生徒会長のものでも副会長のものでも無かった。おそらく理事長らしき人の声だろう。

 

「失礼します」

 

理事長室に入るとそこには生徒会長と副会長、そして2人の中央には理事長と思しき人物が座っていた。

 

「いらっしゃい、皇ライ君。話は聞いているわ。我が校の生徒の手帳を届けにきてくれたんですってね」

 

「はい。しかしこの学院は女子校だと聞いておりましたので、入るのを躊躇っていたところに生徒会長さんと副会長さんが声をかけてきてくれて中を案内してくれました。そして、こちらがその生徒手帳です」

 

僕は生徒手帳を理事長に手渡した。

 

「ありがとう……あら?この手帳は高坂さんの物みたいね」

 

「あの子……」

 

高坂さんの名前が出た瞬間、ほんの一瞬ではあったが生徒会長の表情が曇ったように見えた……

 

何にせよこれで僕の役目は終わった。後は帰るだけだ。

 

「それでは、僕はこれで……」

 

僕はお辞儀をして立ち去ろうとすると、少し慌てた様子で理事長が僕を引き止めた。

 

「ちょっと待って、まだ貴方に用事があるの」

 

「僕に用事、ですか?」

 

「ええ、実は貴方にお願いしたいことがあって……」

 

僕にお願い? 一体なんだろう……

 

理事長は一旦言葉を切り、僕に対しとんでもない提案をし始めた。

 

「貴方、音ノ木坂学院に入学してみない?」

 

「……え?」

 

僕は動揺して、すぐにはその言葉を理解できなかった……

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

「僕が、音ノ木坂学院に入学……ですか?」

 

どういうことだ? 音ノ木坂学院は女子校だと聞いているのだが……

 

「皇くんは知らないと思うけど、現在この音ノ木坂は廃校の危機に瀕しているの」

 

理事長がそう言うと生徒会長と副会長の表情が曇った。

 

理事長がこの学校について話し始めた。

国立音ノ木坂学院……

秋葉原、神田、神保町の3つの町の狭間にある女子高校であり、古くから続いている伝統校である。

しかし、現在では入学希望者は少なく、廃校を検討しているそうだ。

学校の方で廃校を防ぐ手段を何通りか考えているらしいが、どれも今ひとつ成果が上がらない。

その中の手段の一つとして、共学化があった。

 

「この学校の状況は理解しました。しかし、どうして僕を?」

 

「貴方、皇神楽耶さんの息子さんなのでしょう?」

 

「はい」

 

正確には養子として、ではあるが……

 

「私と神楽耶さんは昔からの友人なのよ」

 

神楽耶さんが昔からの仲の良い友人が存在するという話は、前に神楽耶さん本人から聞いたことがあった。

まさかその友人がこの学校の理事長だったとは……

 

「それでね?共学のことについて神楽耶さんに相談してみたのだけど、『それなら良い人がいる』って神楽耶さんが言っていたのよ」

 

「それが僕、ですか?」

 

「ええ。そういうことになるわね」

 

理事長の話によると、この学校では現在、共学に賛成する職員と反対する職員に分かれているそうだ。

そこを理事長が仲裁に入り、期間・規模を限定したお試しの共学を始めてはどうかと提案した。

それは一定期間で数名の男子生徒を体験入学させ、言い方は悪いが、そこで女子生徒の受けが良ければ共学化を決定するというものだった。

 

その男子生徒のスカウトについては、言い出しっぺということもあり、理事長が担当した。

しかし提案したのは良いものの、肝心の男子生徒については心当たりが無く、困っていたところを神楽耶さんが相談に乗り、僕を男子生徒のサンプルとして選んだということだった。

 

……そういえば神楽耶さんが以前、僕に学校へ体験入学してみないかと薦められたことがあった。

僕はそれが記憶の手がかりを掴むきっかけになるのなら、入学してみたいと言ったことがあった。

とはいえ、まさか女子校に入学を薦められることになるとは思わなかったが……

 

「どうかしら?神楽耶さんの貴方についての話を事前に聞いていたことや、今日こうして生徒手帳をわざわざ届けに来てくれたことから、貴方の人となりはある程度分かったつもりです。私としては是非、貴方にお願いしたいのだけど……」

 

さて、どうするべきか……

女子校に入学する男子など、良くも悪くも注目の的になり最悪、変態扱いされる危険はあるだろう。

だが、僕としては環境を変えることで、記憶の手がかりを掴むきっかけになるのならこの提案を受けるのも悪くはないと思っている。

 

もちろん女子校への抵抗はあるのだが、今は自分が無くした記憶を優先したい。

執着しすぎかもしれないが、やはり自分のことが分からないというのは、あまり気分は良くない。

 

それに、行き場のない僕を助けてくれた神楽耶さんには恩がある。

 

彼女が僕を推薦するのなら、僕がその期待に応えることで彼女への恩返しになるのかもしれない。

 

僕はそれだけ考えると覚悟を決めた。

 

「分かりました。僕でよろしければその提案、お受け致します」

 

後に僕は知ることになる。

この選択が僕の今後の人生を大きく変えることになると……

 

 

 




今回話に出た、皇神楽耶という人物はギアス世界の人ではありません。
同姓同名の別人という設定です。
オリジナルの家庭でも良かったとは思うのですが、ロスカラのライ君が皇家やキョウト六家の血縁者という設定があったことや、『皇(すめらぎ)ライ』というフルネームが個人的には響きよく感じたことなどを理由に、こういう設定にさせて頂きました。

それにしても、いくらライ君を音ノ木坂に入学させたいからといって、ちょっと強引な展開にし過ぎましたでしょうか?もう少し考えた方が良かったのでしょうか・・・・・・

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