ラブライブ! LOSTCOLORS   作:isizu8

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海未ちゃんとライ君が会話しているだけの話です。

さっさとアニメ本編の話を進めようと書いていたのですが、思いの他難しかったので、今回は気分転換も兼ねてオリジナルの話を書いてみました。


STAGE10 青 と 蒼 前編

ある日の放課後……

僕は校内を出歩いていると、とある空き教室から声が聴こえてきた。

 

「みんなー! ありがとうー♪」

 

中を見てみると、そこには海未が1人でその掛け声とともにポーズをとっている姿を見かけた。

ライブの練習だろうか?

邪魔をしては悪いと思い、僕はそっと扉を閉じ踵を返した。

突如、教室の扉が勢いよく開かれた。

何事かと思い振り向くと、海未が物凄い形相で僕に迫ってきた。

 

「……見ましたね?」

 

「『見ていない』と言ったら?」

 

僕はその形相に気圧され、咄嗟に誤魔化しの台詞を口にする。

しかし……

 

「つまり『見ていた』と言っているようなものですね……フフフ」

 

さすがに誤魔化せなかったようだ。

やがて海未は不敵に笑みと共に、僕に話しかけてきた。

 

「ライ、少しお話しましょうか……」

 

その表情は笑顔ではあったが、目が笑っていなかった……

どうやら僕に拒否権はないようだ。

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

「ど、どうか! この事はご内密にお願いします」

 

先ほどの様子とは打って変わり、海未は僕に懇願した。

 

「ああ。言いふらす趣味はないから安心して」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

「礼には及ばないよ。それはそうと、先ほどのはライブの特訓かい?」

 

「はい……お恥ずかしい姿を見せてしまいましたね」

 

「別に恥ずかしくはないんじゃないか? ライブの特訓をすること自体は良いことだと思うが……」

 

「そう言っていただけることは嬉しいのですが、やはり人に見られるのは恥ずかしいですね……」

 

確かに、普通は1人で特訓をしている姿を誰かに見られれば、誰でも恥ずかしいと感じるものだろう。

 

もしもこの先、この特訓で下手に邪魔が入ろうものなら、今後のライブなどに何か悪影響が出るかもしれない。

僕はそう考えたところで、ある提案を海未にしてみた。

 

「海未。もし良かったら今後、特訓をするときは僕を呼んでくれないか?」

 

「な、何故ですか?」

 

海未が少し動揺しているが、僕はそのまま話を続ける。

 

「空き教室で誰にも見られずに特訓したいなら、扉の前にでも見張りをつけるべきだ」

 

「それは……そうですね」

 

「だから、その見張りを僕が引き受けよう。それくらいなら僕にも出来ると思う」

 

「そ、そんな! そこまでしてもらうのは悪いですよ。それに、ライは生徒会の仕事や記憶探しのこともあるのでしょう?」

 

確かに、記憶のことや生徒会での仕事があることを考えると、海未の特訓を手伝える時間は無いのかもしれない。

 

「ですから、ライは自分のことを優先すべきです」

 

だが……

僕には、このように気遣ってくれる海未に対する感謝の気持ちがあった。

海未は恥ずかしがり屋で人見知りなところがある。

その性格もあり、このような特訓を皆に内緒で行うこともあるのだろう。

だが僕は、目標のためにこうして努力を欠かさない、そんな彼女の姿に感心を覚えていた。

……その真面目な姿勢が、どこか『彼』に似ている気がするから。

 

だから、些細なことかもしれないが、彼女の力になってみたいと思った。

 

「確かに海未の言う通りかもしれない……それでも手伝いたいんだ。駄目かな?」

 

「そ、そこまで言うのでしたら……」

 

海未はまだ納得はしていない様子ではあったが、とりあえず了承してくれた。

 

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

 

その後、僕たちは特訓の段取りを話し始めた。

適した時間帯や僕たちのそれぞれの用事なども考慮して、スケジュールを作成した。

 

「これで一通りは決まったな。あとは、特訓中に人が来た場合の合図だが……」

 

「でしたら、携帯を鳴らしてはどうでしょうか? 特訓中でも、着信音には気付くと思いますから」

 

確かにいい考えではあるが、これには致命的な欠点があった。

 

「それなんだけど……実は携帯電話を持っていないんだ」

 

「そうなのですか……ちなみに今まで、ご友人やご両親への連絡はどうしていたのですか?」

 

「この学院に来る前は友人と呼べる人は1人もいなかったし、神楽耶さんへの連絡も家の固定電話からしていたから。携帯は特に必要はなかったんだ」

 

「そ、そうなのですか……」

 

すると海未は、哀れむような表情で僕を見てきた。

先ほど『友人は1人もいない』などと言ったからだろうか?

 

「それでしたら今度、一緒に買いに行きませんか?」

 

そして海未は、僕にそう提案した。

 

「僕としては助かるが……良いのか?」

 

「はい。今回のことでお礼もしたいですから。それに……ライはこの街にはあまり詳しくないのでしょう?」

 

海未の指摘の通り、僕はこの街には詳しくない。

この学院に最初に来た頃は、地図を確認しなかったこともあり迷子になったこともある。

ここは、彼女の提案に乗ってみるか。

 

「折角ですから、お買い物が終わった後に街をご案内します。もしかしたら、街を散策することで、何か記憶の手掛かりになるかもしれないですよ」

 

「そうだな……迷惑でなければ、お願いするよ」

 

「私も丁度、街の方で用事がありますから、迷惑などではありませんよ。それに、貴方の記憶のことは、私も気になっているので……」

 

海未はそう言ってくれた。

ここは素直に、彼女の厚意に甘えてみよう。

 

「海未……ありがとう」

 

「いえ……そうしましたら、日にちはいつにしましょうか? なるべく早い方が良いと思いますが……」

 

「そうだな……それでは、今度の休日は空いているかな?」

 

「はい。問題ありませんよ」

 

それから僕たちは今後の予定について話し合った。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

一方、その頃……

 

「ふっふっふっ……良いこと聞いちゃった♪」

 

夕暮れに染まる学院の廊下で、1人の少女がいたずらに微笑んだ。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

そして約束の休日。

早朝から駅前にて待ち合わせとなった。

ルートとしては、早朝の人の少ない時間から街中を散策してその後、携帯ショップに向かおうというものだった。

 

このように当日の予定をきちんと決める海未の真面目さには、素直に感心する。

僕も、彼女の真面目さを見習うべきだろうか?

 

色々と考えている内に、待ち合わせの駅までたどり着いた。

そこには既に海未がこちらを待っていた。

 

「すまない……待たせてしまったな」

 

「いえ、私も今来たところですから……それでは行きましょう」

 

「ああ」

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

一方その頃……海未とライの様子を見ていた2人の少女が話をしていた。

 

「穂乃果ちゃん……やっぱりこういうのは良くないんじゃないかな?」

 

「でもでも! ことりちゃんも気になるでしょ?」

 

「確かにちょっとは気になるけど……やっぱり、これってデートなのかな?」

 

「絶対そうだよ! 2人とも、いつの間にそんな関係に……」

 

「あっ! 海未ちゃんたちが歩き出したよ」

 

「よし! 2人を追いかけよう!!」

 

「う、うん……」

 

後を付ける気満々の穂乃果に対し、ことりはそれほど乗り気では無かった。

 

(良いのかなぁ……こんなことして)

 

しかし、それでも2人の関係は気になっている様子ではあったので穂乃果の後に付いていった……

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

海未と僕は携帯ショップが開店するまでの間、街中を散策していた。

周辺を歩いて暫しの時間が経過する。

どこか気恥ずかしさもあったため、それまでお互い無言でいたが、やがて海未の方から話し始めた。

 

「ここまでで、何か気になったことはありますか?」

 

「そうだな……」

 

そう言われて、少し考える……

色々と街中を見渡してみたが、記憶の手掛かりについては何も感じない。

だが、それでも気になるものはあった。

 

「先ほどからよく見かける、あの丸いカプセルが入ったマシン……あれが少し気になった」

 

「ガチャガチャのことですね。お金を入れ、レバーを回すことで中に入っている商品が出てくるものです」

 

「そうなのか……」

 

ガチャガチャか……

注目していたわけではないのだが、道中に次々とそのマシンを見かけるものだから、つい視線が移ってしまった。

 

「そこまで気になるのでしたら、1度回してみますか?」

 

「そうだな。折角だからやってみよう」

 

僕はその『ガチャガチャ』とかいうマシンにお金を入れ、レバーを回転させた。

すると、不思議な音と共に下の取り出し口からカプセルが出てきた。

そのカプセルを開けると、中には玩具のようなものが入っていた。

 

「どうやら、レアな物が当たったみたいですね」

 

「レア?」

 

「はい。ライが今当てた物は、普段はあまり出てこないものなんですよ」

 

「へぇ……」

 

「それにしても……」

 

海未が片手を顎に添えて、なにか考え事をする様子で一言つぶやいた。

 

「『記憶喪失』というのは、そういうことまで忘れてしまうものなのですね……」

 

「うーん。どうだろう……生活に必要な知識は一通りあるんだけど、『ガチャガチャ』というものは初めてみたな」

 

「なるほど……それはそうと、授業の方は何か問題はありませんか? 理解の度合い……といった意味ですが」

 

「さて、不思議と困らないな。ただ……」

 

「ただ?」

 

海未がそう聞き返してきた。

元々の僕が勤勉な性格だったのか、授業については問題なく付いてこれた。

2つの教科を除いて……

 

「地理と歴史だけは、理解するのに時間が掛かった」

 

「地理と歴史……ですか?」

 

「うん。他の教科については知識が、必要に応じて引き出しからすらすらと出るような感じがあるのだが、今挙げた2つの教科についてはそれが曖昧になるんだ」

 

「なるほど……ですが、先日の歴史の小テストの結果を見る限りだと、少し意外に感じますね」

 

もっとも、その事実が判明した後、その2つの教科を集中的に勉強したから、今となっては問題は無い。

そのことを海未に伝えたら、安心した様子で一言を発した。

 

「それは何よりです。それにしても、ライは真面目ですね」

 

海未がそう評価した。

しかし、僕にとっては海未の方こそ真面目な人間に見えていた。

 

「……こういうことを疎かにすると、自分がやりたいと思うことができなくなる」

 

「良い心がけだと思います」

 

「と言っても、今のは僕の言葉ではないのだけど……」

 

僕はそこまで真面目な人間ではない。

面倒だと思ったことはやらないこともある。

歴史等の学習についても、必要だと判断したからそうしたまでだ。

 

「今みたいなことを言った友達が……いたような気がするんだ」

 

「良い友人ですね」

 

「ありがとう。だけど相変わらず、それが誰なのか分からないんだけどね……」

 

記憶を失う前にいたはずの僕の友達……

そして現在、僕の目の前にいる園田海未という少女もまた、自分の目標のために努力を惜しまない人物なのだろう。

記憶を失くす前の僕は、海未や『彼』のような目標があったのだろうか?

それを探すよりも、今から何か目標を作るべきだろうか?

 

それからしばらく僕たちは無言になった。

やがて、携帯ショップの開店時間が近づいてきた。

 

「そろそろかな?」

 

「はい。では行きましょうか」

 

それから僕たちは、携帯ショップまで向かった……

 




今までの、勢いだけでの執筆に限界を感じてきたので、少しやり方を変えています。
そのため、今後は投稿速度が遅くなりそうです。

ところで、『オリ主』タグはこのまま付けていても大丈夫でしょうか?
私としては『本来のラブライブ!の作品には登場しない主人公』という解釈で『オリ主』タグを付けてはいるのですが……

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