ふわわは眠る事がとても大好きである。
どれくらい好きかというと、とてもとても大好きなのである。
ふわわの夢の中はいつもふわふわしている。
優しくて、柔らかくて、ふわふわした温かい夢なのである。
だけれど、時折少しさびしい夢を見る時がある。
ふわわは起きた時にその夢を覚えてもいないし、無理に思い出そうと悩む事も無いけれど、ちょっと寂しかった気がするのだ。
ふわわが起きている世界では、みんなが仲良く楽しく生きている。
時折けんかもするけれど、ごめんなさいで仲直り。それがればのんのもりから広がるともだちの輪である。
寂しい時もあるけれど、最後にはみんなニコニコ笑って終わるのだ。
だから、ふわわの夢の中に寂しさがあるなんて何かの間違い――――では無かったのである。
確かに『寂しい』は時折ふわわの夢の中に表れていた。
それは何だったのか、ふわわは少しだけ真剣に夢の中で考えてみた。
ふわわの『寂しさ』の正体。それは―――――――『フワワ』だった。
夢の中で繋がる幾つもの別の世界のフワワ。
自然の守護者として、神々の所有物として、人々の王と争い敗北し、滅んでいく。
友に裏切られ、神々に失望され、人々に踏みにじられる。
そして全てがバラバラになっていくのだ。
フワワ達は、その結末を『寂しい』と感じていた。
だがフワワ達に全く非が無かったかと言えば、そうでは無い。
自然の側の人間であるフワワは、文明に生きる人々を拒絶していた。
互いに拒絶し合って、独り占めし合って、奪い合う。その結果敗北と言う結末があったというだけだった。
だが、その全てのフワワ達はその命の消え去る間際、儚い夢を見た。
夢を、見てしまった。
誰もが縛り合うことなく、手を繋ぎ合う優しい夢を。
だからこそ、怒りでも憎しみでもなく、その優しい世界と同じように在れなかったことに『寂しさ』を感じてしまったのだ。
ふわわは、その夢を起きた後も覚えていた。
だから今度こそ、その夢をふわふわにするためにもう一度寝ようとした。
だが、眠れなかった。コーヒーを飲んだ時のように、いや、その時よりも眠れなかった。
それは、ふわわが寂しい夢をもう一度見る事を恐れていたからに他ならない。
ふと、周囲を見ると、イシュタルが心配そうに見ていた。
それはふわわが暗い表情をしていたからだ。
「だいじょうぶ、だよ…」
ふわわは、そういうともう一度寝ようとした。
でも、体が震えて眠れなかった。
かつて、自然そのものの守護者であったフワワは、全ての人々を恐れさせる側であったフワワは、
自分の夢にさえ怯える弱さを知ってしまった。
ふわわは困った。
だから頼る事にした。ふわわは弱くなったかもしれないが、独りではなくなった。
大切なみんながいるのだ。
ふわわは不安の正体をイシュタルに打ち明けた。
イシュタルも一生懸命考えたが、答えは見つからなかった。
だからイシュタルはエレシュキガルに相談した。
エレシュキガルも一生懸命考えた。
それでも答えは見つからなかった。
エレシュキガルもまた別の者に相談して、その者もまた別の者に相談した。
結局、かみさまも、にんげんも、どうぶつたちも、それいがいのものたちも、
めそぽたみあのみんなでかんがえることになり、みんなでいろいろかんがえたけっか、
みんなはなんだかねむたくなってきた。
みんなでおたがいにてをつないでみんなでねむった。
ねむるちょくぜんにかみさまたちが、みんなではいれるような、
おおきなおおきなくものおふとんをよういした。
夢の中にはたくさんのフワワたちがいた。
その誰もが寂しそうで、羨ましそうだった。
今までのふわわならその寂しさが伝染して、夢の中から逃げていったかもしれない。
でも、今ここにはふわわのたくさんの、たっくさんのおともだちがいる。
もう寂しくなんてないのだ。
ふわわのたくさんのおともだちは、沢山のフワワ達の手を取った。
皆、みんなおともだち。
たのしくてやさしくてふわふわするおともだち。
夢の中のフワワたちは心がふわふわしてきたので、みんなえがおになった。
えがおになったふわわたちは、それぞれの世界へ帰っていった。
喧嘩しているギルガメッシュ達と、仲直りの握手をするために。
おともだちになるために。
えがおとあくしゅで、ともだちのわはどんどんひろがっていく。
もりのなかへ、ちいきのなかで、ほしのなかで、そしてべつのせかいへと――――。
そうやってみんながゆるゆるのふわふわのやさしいせかいのおともだちになるのだ。
これはそのはじまりのはじまり。そんなゆるゆるでふわふわのやさしいものがたり。
おしまい
これで一応最終回。
もしかしたら、番外編的な追加があるかもしれませんが、一応はおしまいです。
でも、ふわわたちのものがたりと、ともだちのわのひろがりはおわりません。
それではみなさまよいゆめを。