※尚、いつものふわふわふわわなのでご安心ください。
ふわふわとはなんだろう。それは哲学であった。それは技術であった。それは魔法であった。
それは何でもなかった。それは――――わたあめだった。
ふわわは、わたあめを初めて食べた。
古代に存在したユルク、またはウルクでは、わたあめは、甘き雲と信じられたという。
即ち、天の雲は砂糖でできており、天の神々はわたあめを食べて生きているという。
無論、そんな事は無い。わたあめばかり食べていては身体を壊すからである。
それに女性的にも色々と問題がある。まあ、黄金の肉体美を持つ神々には肥満は無縁なのかもしれないが。
レバノンの森は今日も平和である。
だが、森にシドゥリという女性がやってきて、少々問題がややこしくなった。
森にやってきて、ゆるふわな美少女を見つけた彼女は、
天の国のわたあめ食べ放題なお話をふわわに話した。
無論、これはおとぎ話の類だった。
だが、ふわわがそれを信じて『わたあめ』なるものを食べたいと言い出した事で事態が動いてしまったのだ。
ふわわと一緒に居たオウムさんや、カピバラさんも『わたあめ』を食べてみたいと言い出した。
とてもあまくて、ふわふわっとした『わたあめ』はぜったいにおいしいはずなのだから。
こうなると、レバノンの森に遊びに来ている天の神々が質問を受ける事になる。
天を司るアヌ神とか、風を司るエンリル神とかが主に質問に答える事となった。
人選、いや神選が良くなかったのかも知れない。
子供に甘かったり、見栄っ張りだったりする2柱が、
なまじ最高神クラスの神々という立場と力を有している事が大きな問題だった。
彼等は、純粋な彼ら彼女らの夢を壊さない為に、そして少々の自尊心の為に、
――――メソポタミア上空の雲をわたあめに変えて、地上近くまで降ろして来たのだ。
ふわわは、いつもより色が濃い雲にさわると、手にべっとりと着いた甘い匂いのするそれをゆっくり口に含んだ。
「――おいしいっ」
ふわわの目はきらきらした。
周りでも動物たちが顔や前脚にわたあめを引っ付けながら、
きらきらおめめでおいしそうにわたあめを食べていた。
レバノンの森の外の人々も、その恩恵にあずかり、天の神々への感謝と尊敬を益々深めたという。
メソポタミア中をふわふわにして、ところどころベッタリにしたわたあめの雲は、夜遅くなると普通の雲になって天に還っていった。
夜遅くまでおかしを食べるのはあまりよくない事だからだろう。神様はまじめなのである。
メソポタミアに住まう者達は、その夜、ふわふわで甘い夢を見たという。
北風が太陽に負けた理由がハッキリとわかるよね。