小説書いてからゲームしたほうがいいですね。
「へっへっへ、サンタがクリスマスしか外出しちゃいけねえってルールはねえんだぜ、お嬢ちゃん」
サンタは無理矢理に低くしたような声で言う。バニーガールはその後ろでデタラメなダンスを踊っている。女は確信する、絶対に疲れる展開になると。せめて話しかけられずに済めばと願うが、まるで狙ったかのようなタイミングでサンタが彼女のほうに振り向く。暫くじっと見つめられる。沈黙に対して女は多少の気まずさを感じるが、それ以上に眠気が尋常ではなかった。瞼を完全に開いているのが難しい。
サンタが沈黙を破り、幼女に詰め寄る。
「何よこの女! 私というものがありながら!」
「そうだそうだぁ~!」
エアギターをかき鳴らしながらバニーガールが便乗する。彼女の顔は全体的に赤くなっており、誰が見ても酔っているのは明らかだった。酔っ払いと、酔っ払いと同レベルの言動のサンタ、2人に迫られた幼女は軽い調子で女に問う。
「ああ、そういえば名前を聞いてなかったな。なんて言うんだ?」
3人の視線が集中する中、女は何も語らない。黙っているだけでなく、ぴくりとも反応しない。3人が覗きこんでみると、彼女は立ったまま寝てしまっていた。サンタが2人の反応を見ながら胸を触ろうとする。バニーガールがそれを叩き落とす。不服そうな顔をするサンタを尻目に、彼女は大袈裟な動きで女に抱き着こうとする。幼女が背中を引っ張ってそれを遮る。不服そうな顔をするバニーガールを尻目に、彼女は目一杯背伸びしてキスをした。
誰よりも大胆なことを、誰よりも躊躇なくやってのけた幼女に向かってサンタが再び詰め寄る。
「えっ、何してんの君? 今、えっ、今、うっ! うわ! 若者こわ! 若者こっぅわ!」
「大袈裟だな。これぐらい挨拶みたいなものだろう?」
「じゃあお前挨拶のつもりでやったか?」
「いや、ありったけの愛を籠めて……」
「アウトやないかーい……カクテルちゃん! ちょっと言ってやってくださいよ!」
サンタがバニーガールに応援を求めるが、彼女は何か言いたそうに、しかし言いにくそうにしている。その様子を見たサンタは渋い顔になり、幼女は深い微笑みを浮かべて言う。
「仕方のない奴だな。ほら……おいで」
唇への刺激と騒がしいやりとりで女は目を覚ます。瞼をなんとか持ち上げて前を向くと、バニーガールと幼女がキスをしていた。目の前で行われている行為から唇に残る感触が何を意味しているのか察する。しかし彼女は恥ずかしがることも抗議もせず、ただため息をついた。
女が目を覚ましたことに気が付いた幼女が舌を抜いて彼女に声を掛ける。
「起きたか。お前の名前はなんというんだ」
「いや唐突すぎるやろ……」
サンタのぼやきは誰にも聞こえなかった。