交互に更新していくので、毎日更新出来なかったらごめんなさい。
プロローグ
私は《王国剣士》。
聖剣に認められた、王国最強の《剣士》。
その一撃は岩をも砕き、その一太刀で大樹を倒す。
自分で言うのもなんだけど、大人の身長を遥かに上回る聖剣を軽々振り回す姿は、可憐でおしとやかな私には到底似合わない。
誰もが賛美し、祝福する《王国剣士》という職業だが、私だけはそれを良しとしなかった。
私は人々を癒したり、冷静に魔物を倒す方が似合っているはずだ。
そう…私は…私は…!!
「私は《魔導師》になりたかったんだぁぁぁぁ!!!!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
俺は《王国魔導師》。
聖杖に認められた、王国最強の《魔導師》。
その光で夜を照らし、奇跡を以て人々を癒す。
自分で言うのもなんだけど、ちまちま魔法陣を書き発動させるその姿は、剛健で力強い俺には到底似合わない。
誰もが賛美し、祝福する《魔導師》という職業だが、俺だけはそれを良しとしなかった。
俺は力で敵を打ち砕き、刀で魔物を薙ぎ払う方が似合っているはずだ。
そう…俺は… 俺は…!!
「俺は《剣士》になりたかったんだぁぁぁぁ!!!!」
これはそんな二人のお話。
いつもと変わらない、俺の日常。
サンドレス王国の端の端にある小さな田舎町に住んでいる俺は、決して豊かではなかったが、それなりに毎日を楽しんでいた。
「356…357…356…」
人の腕程太く、大人の身長より長い棒が、俺の手によって上下に振られている。
剣の修行は毎日欠かさない。
親父に、『お前は将来《剣士》にならねばならない、何日いかなる時も修行を怠るな』と言われてから俺は努力を続けてきた。
親父曰く、俺には剣の才能があるらしい。
「700...701...702...」
だからこうしていつも山の中で丸太を振っているという訳だ。
金も、親父の仕送りのお陰で、特に不自由なく暮らしてきたから困ってもいないので、毎日の大半を剣の修練に注いでいる。
素振りの回数が1000回を超える頃、お袋が遠くから声を掛けてきた。
「ロガー!食料減ってきたから山の奥で熊か猪でも狩ってきてちょうだい!」
「おーう、任せろ!」
俺の名前はロガー・スラッシュ。
いつか王国一の《剣士》になる男だ。
さて、それじゃあいっちょ狩りの時間といきますか。
「おっ、やっと見つけた」
山を歩くこと約1時間。
俺の目に入ってきたのは、獣道とその足跡。見た感じ、熊の足跡だろう。
通った時期を確認する為、足跡を軽く指先で触ってみる。
「まだ完全に乾燥してない…多分近くにいるな」
俺は忍び足で足跡を辿り、山の奥へと進んでいく。
熊を仕留める時は、熊に見つかるより先に熊を見つけ、落とし穴を仕掛けて、更には頭蓋骨を砕く勢いで上から石を音すトラップを仕掛ける必要がある。
しかし、腹も減っているのでぱっぱと獲物を仕留め、帰って飯が食べたい。
そんな気持ちもあり、警戒心をゆるめ、集中力を切らせてしまった。
その所為か、足跡を進み、熊を見つけるより先に辿りついた場所は……底に霧がかかるほど深い崖だった。
「なんで足跡がこんな所で途切れてんだ?」
足跡は間違いなく崖に向かっている。
どういう事だ?崖から熊が飛び降りたのか?
いやそんなはずはない。
この高さを落ちるなど、死ぬor死ぬのルーレットを引くようなものだ。
じゃあ一体なんだ…?
俺があれこれ思考を巡らせていると、後ろから低い獣声が聞こえてきた。
「ヴアアァァァッ!!」
「うわっ?!」
慌てて剣を抜いて声の主に向ける。
するとそいつは、剣というのがなにか分かっているかのように一歩下がった。
俺は落ち着いて相手を見据えた。
そこに立っていたのは熊…全長3m程ある巨大な熊だった。
「なんで熊さんが後ろから出てくるんですかね。俺、お前の足跡辿ってきた筈なんですけど」
「ヴアァァッ!」
「く、熊さーん。俺なんか食っても美味しくないぞー?」
「ヴアァァァァッ!」
あー、この熊さん完全に俺を襲う気ですね。間違いない。
まずいな…これは非常にまずい。
俺が背にしているのは底の見えない崖だ、走って逃げようにも逃げれない。
木に登ろうにも、あのサイズの熊だと木くらいなら倒してしまいそうに思える。
運の悪い事に、熊の攻撃に耐えうる木が近くに無かった。
さぁどうする。今持っているのは剣だけ、対する相手は腕一振りで俺を絶命させるだけのパワーを持っている。
「ふっ、悩むまでもねぇな!最強の《剣士》になるなら熊の一体や二体は倒さねぇと話にならねぇ!welcome熊!遊んでやるぜ!!」
少し腰を落とし、体の前に剣を構える。
俺と熊との距離は大体3m。
後ろにある崖との距離は大体5m。
前も後ろも、距離感を誤れば即死だ。
先に動いたのは熊だった。
「ヴアアアァァッ!!」
一歩足を出し、右腕を俺の頭に向かって振りかぶって来た。
が、俺はそれをしゃがんで避け、片手に持ち替えた剣で熊の左足を刺す。
伊達に剣の腕を鍛えてきたわけじゃない、予備動作の多い熊の腕なんて、ノロすぎて相手にならなかった。
「ヴアアァッ…」
足を刺したのが効いたのか、襲ってきた熊が再び距離を取った。
これならいける!
いつもは罠とかで弱らせて仕留めてたけど、今日なら真正面から倒せる気がする。
俺はもう一度腰を落とし、体の目の前で剣を構えた。
さぁ来い、次は右足だ。
再び熊が仕掛ける。
本来なら、もう一度頭を狙ってきた熊の左足を刺し、動きが鈍ったところを仕留める筈だった。
しかし、熊が狙ったのは頭ではなく、まさかの足。
「くっ…!」
俺は一歩下がってギリギリでそれを躱し、間合いを詰めさせないように剣を前に出した。
熊に動きが読まれてる気がして、気持ち悪い事この上ない。
ふと気になって後ろを振り返ると、崖はもうそこまで来ていて、文字通り後戻り出来ない状況になっていた。
どうする、一か八かで懐に潜り込んで急所に攻撃でもするか?
危険な賭けだけど、何もしなきゃどっちにしたって死ぬんだ、構うもんか。
俺は両手で剣を握り、駆けっこのスタートの様な体勢から熊に突っ込んだ。
いきなりの急発進に驚いたのか、熊は慌てて腕を大振りで繰り出す。
「当たるかぁっ!」
俺はしゃがんで腕を躱したが、決して突っ込む速度は落とさず、剣の先端を熊の腹に突き刺した。
………………。
おかしい。
間違いなく剣は熊の腹に刺さっている。
にも関わらず、熊は両手を俺に抱きつくかのように広げ、最後の力で俺に一矢報いろうとしてるではないか。
これは死にましたかね。
熊の抱きつきとか耐えれませんよ?俺。
俺が死を覚悟して目を瞑ったその時の事だった。
「『衝撃術式』っ!」
熊の向こう側で誰かの叫び声が聞こえ、それと同時に、低姿勢だった俺の頭上を、 熊が吹き飛んでいった。
そしてそのまま熊の姿は、後ろにある谷の中に消えてしまった。
そして恐る恐る閉じていた目を開き、あの巨体を吹き飛ばした相手を見る。
あぁ、やっぱりか。
「久しぶりだな、エナ」
「久しぶり。剣一つで熊に挑むとか頭悪いんじゃないの?」
俺が声を掛けると、彼女は呆れたようにため息をついた。
それは、幼馴染みのエナ・ミラック。
自称『未来の大魔導師』との1ヶ月ぶりの再開だった。
同時掲載している「PS4戦記」の方で戦闘シーンが少なくて消化不良だったので書き始めました(嘘です)
交互に更新していくので、毎日更新はまず無理ですが、出来る限り定期的に更新できるよう頑張ります。
後、「お気に入り登録してっ☆」って言うとお気に入り登録して貰えると聞きましたので言ってみます。
………嘘です、読んでいただけるだけで満足でございます。