この小説を読んでいただき本当にありがとうございます。
さて、今回は戦闘メインです。やっとモンハンらしくなってきました。
そんな第8話、張り切っていきましょう。
探索を始めて30分程であろうか。現在刀夜は岩陰に身を潜めていた。刀夜の瞳には群れるジャギィとジャギィノスの集団が映っている。
(ジャギィ4体にジャギィノス2体…。始めるか…)
刀夜は獰猛な笑みを浮かべ、タイミングを見計って黛でジャギィ1体に斬りかかる。ジャギィ達は刀夜の存在に気づいたが、時既に遅かった。刀夜の抜刀攻撃がジャギィに命中する。
「ギャゥ…」
ジャギィは弱々しい声を上げたあと絶命した。
(やはり一撃…。凄まじい攻撃力だな)
刀夜はあくまで戦闘中も冷静であったが、その表情は笑っていた。ジャギィ3匹はそれぞれ大きく鳴き声を発し、そんな様子の刀夜に飛びかかる。
(流石にこれは1度に捌けないな…)
そう感じた刀夜はジャギィの間のスペースに向かって、ゲームの動きをイメージし回避行動をとる。その動きはまさしく、ゲーム内のハンターそのもので、ジャギィらの攻撃は空を切る。そして刀夜はすぐさまスキができたジャギィ3匹を順に、縦切り、突き、切り上げにより息の根を止める。
ここで刀夜は、今まで薄々感じていた疑問に対する答えにたどり着く。
(俺は元々前世で引きこもっていた。にも関わらず、こんなに動けることは些か疑問であったが…なるほどな。俺はずっとゲームでハンターの動きを見ていたが、おかげでその細かい所作まで鮮明に覚えている。それを元に体を動かすことでゲームそのものの動きができたと言うわけか…。逆に…)
刀夜はMHの世界になかった動きでジャギィノスを斬りつけるが、その表面の皮を斬っただけであった。
(イメージしなければこうなる訳か…。まあ、意識的にそういうことをしない限り大丈夫だな。俺にはハンターの動きが脳内に焼き付いている。ここがMHの世界でもあることから、無意識にハンターの動きを想像して動いてしまうからな)
そんなことを考えつつ、ジャギィノスの攻撃をうまく回避していく。そして1匹に移動斬り、移動した先にいたもう1匹に縦切りをすると2匹とも絶命した。
「正直余裕だな。ジャギィノスでも一撃か…。黛の攻撃力のそこが見えない、本当にこいつはすごいな…。それに…やはり狩猟は楽しいな。ククク…」
刀夜がそう言って黛を背中にかけ直した直後であった。刀夜の後ろから大きな足音が聞こえる。それに気づき振り向くと、何かを探すようなドスギャギイの姿が見えた。
(恐らくさっきのジャギィの鳴き声が届いたんだろうな…。俺の今の防具はハンターシリーズ、武器が黛とは言え万が一のこともある。岩陰に隠れてやり過ごすか…)
刀夜はここでも慎重であった。岩陰に隠れ、ドスギャギィの様子を見る。そうしてドスギャギィが刀夜のいる位置から離れようとした、その時であった。
「ぐあっ!!」
突如強烈な頭痛が刀夜を襲い、その痛みに思わず大きな声を出してしまう。その声がドスギャギィに届いたのか、振り返って刀夜のいる岩に徐々に近づいてくる。そんな中、刀夜の頭には黛の声が響いていた。
「何故…こんな時に…!」
痛みに耐えながら、刀夜は黛にそう訴える。そんな刀夜に黛は答えた。
(本当はもう少し時を経てから干渉するつもりであったが、如何せん我が主が情けなかったのでな…)
「情けない…だと…?」
(うむ。我が主よ、はっきり言おう。我が主は我、黛という武器を差し引いて見ても目を見張る動きをしている。我の使い方、攻撃のタイミング、回避行動、それらどれを見ても百戦錬磨のハンターに引けを取らない、いやそれ以上のものであった。正直我も驚かされたのだよ…)
この黛の発言に刀夜は驚いていた。この世界におけるハンターもゲームと同様な動きをして狩りをしているものだと思っていたのだ。そんな刀夜の様子を気にせず、黛は続ける。
(それなのに何故、我が主はその力を発揮しようとしない。我が主は自らの行動を慎重だと思っているようだが、まるで違う….。臆病にも程があるというものだ)
「俺の…どこが臆病…なんだ…」
(慎重とは力が拮抗したもの、あるいは格上のものと相対する時に使う言葉である。それに対し、臆病とは圧倒的力を持つものが弱者と相対して逃げ出す時に使う言葉である。我が主にどちらかを当てはめるのだとすれば、明らかに後者であろう…。我が主よ、力を振るうのだ。そして進む道を塞ぐ敵をなぎ倒して行け、我が主にはそれが出来る)
黛の言葉を聞き、刀夜はハッとする。刀夜は自問自答する。
果たして自分は目の前のドスギャギィに敗北を喫するのか、否。勝利の二文字しか頭に浮かばない。何を今まで躊躇っていたのだ、現実でゲームと同じ動きができる自分に適う敵などいない。
「俺は…俺の道を邪魔する敵を…蹂躙する!これは…俺の物語だ!俺の自由を…誰にも邪魔させはしない…!ありがとな…黛。お前のおかげで…前に…進めそうだ」
(それでこそ我が主に相応しい。我としてもこれからが楽しみなのだ、期待している。では、これにて我はこれで失礼する。我が主よ、我を失望させてくれるな)
そうして黛の声が消えると、刀夜を襲っていた頭痛が引いていく。そして刀夜が顔を上げると、ドスギャギィが目の前に立っていた。その瞳には刀夜という獲物がしっかりと映っている。
「ククク…ドスジャギィ、お前は何か勘違いしているようだな。俺とお前の内どちらかが獲物だとすれば、それはお前の方だ!」
そう言って刀夜はドスジャギィの頭に強烈な抜刀踏み込み斬りを叩き込んだ。
ドスジャギィは、そのあまりの威力に怯み、体勢を立て直そうと1歩後ずさる。だが、そんなドスジャギィに出来たスキを刀夜が見逃すはずもなかった。
すかさず回避行動でドスジャギィとの距離を詰め、縦切り、突き、切り上げのコンボを繰り出す。
怯んでしまったドスジャギィにそれを躱すことなど出来るはずもなく、まともに刀夜の攻撃を受け、地面に倒れ込んでしまう。
刀夜はそこに追撃を加えようとすると、黛が薄く発光していることに気づいた。
「この光…まさか練気か!?試してみるか…」
そう呟くと、刀夜は薄く練気を纏った黛で強烈な気刃斬りⅠ、気刃斬りⅡ、気刃斬りⅢをお見舞する。それをまともに受けたドスジャギィはその時点でほとんど体力を奪われていたが、刀夜はそこに更なる強烈な一撃をお見舞する。
気刃大回転斬り。
MHの世界では3回の気刃斬りをした後にのみ繰り出すことが可能になる、太刀最強の技だ。その名の通り、大きく1回転しながら練気を纏った太刀を振るう攻撃である。
そんな技を受けた瀕死のドスジャギィに体力など残るはずもなく、絶命するのであった。
そして気刃大回転斬りを繰り出し、見事ドスジャギィを討伐した刀夜。そんな彼はと言うと黛の刀身が白く発光しているのを見て、やっぱりな、と呟き笑みを浮かべるのであった。
如何でしたでしょうか。自分の中では結構上手く書けたつもりです。
初めての本格的な狩猟が始まりましたね。
刀夜の強さも徐々に明らかになってきました。彼の先行きが楽しみです。
それでは次話で会いましょう。