孤高剣士の歩む道   作:O.K.O

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こんにちは、O.K.Oです。
最近忙しくて更新遅くなりました、申し訳ありません。今後も忙しくなると更新遅くなるかもですがお許しください。

さて、今話でついに刀夜本登録です。
では第17話、張り切っていきましょう。


第17話 ギルド登録

刀夜は「ハンターズギルド」と書かれた看板のある建物の前に立っていた。中からはガヤガヤとした声が聞こえてくる。

 

「さて、行くか」

 

そう言って刀夜は扉を開ける。中には丸テーブルが沢山あり、様々な武器を持ったハンター達がそこで依頼についての話をしていたり、モンスターについて話していたり、昼間なのに酒を飲んだりとしていた。奥の方にはクエストカウンターがあり、受付嬢たちがそれぞれテーブルを前に座っている。

 

「っ!!」

 

その中に刀夜に見覚えがあり、思わず彼女を見たことで目が合った人物がいた。MH3以降多くのMHプレイヤーにその独特のキャラで愛されたギルドの看板娘、名前がアイシャという彼女に似た人物でたる。

ゲームと同様その黒髪を真ん中分けにし、後ろでその髪を括っている彼女がカウンターに座っていた。

 

(エリスはアイシャがリエル王都のギルドにいると言っていたが…。まさかこんなにも早くあれに出会ってしまうとはな…)

 

実は刀夜は彼女が苦手であった。嫌いという意味ではなく、単純に彼女のキャラが苦手であったのだ。ゲームと彼女が同じ性格とも限らないが、刀夜は避けるように別のカウンターへ向かおうとしたその時であった。

 

「そこの方!今目が合って私を見て避けましたね?良いクエスト、ドドーンっと紹介しますよ!」

 

(やはりゲームとキャラも同じか…)

 

ため息混じりで刀夜は口を開く。

 

「いや、生憎クエストを受けに来た訳では無いからな。そういう訳でこっちの人に対応してもらう」

 

そう言って隣のカウンターに行くと、アイシャは他の人が来たのでそちらの対応をし始める。なんやかんやアイシャはあのキャラで好感を持たれているのであろう、彼女のカウンターに行くハンターが多い。

刀夜が向かったカウンターには、やれやれという感じで頭を抱えている受付嬢がいた。こちらは刀夜の見覚えのない人物である。

 

「はぁ…。アイシャ、相変わらずキャラ濃すぎだわ…。すいません、あれがあの子の素なんです、許してあげてください」

 

そう受付嬢が呟くと隣のカウンターから「余計なことを吹き込まないでくださ〜い!」と聞こえた気がしたが気にしない方向で話を続ける。

 

「いや、大丈夫だ。キャラが濃すぎるというのは同感だが…」

 

「ですよね…。……それはそうと、本日は如何されました?」

 

そう言って先程から一転、受付嬢は仕事時の表情をする。刀夜は本来の目的を話す。

 

「あぁ、ギルド本登録がしたいんだ」

 

「申し訳ございません、手続きがございますので少々お時間頂いてもよろしいでしょうか?」

 

「これを渡せば登録時の手間を省けると聞いたんだが」

 

そう言って刀夜はシーナからもらった封筒を受付嬢に渡す。

 

「中身を確認いたしますので少々お待ちください」

 

そう言って封筒を開封し、中に入っていた文書に目を通すと、だんだんと受付嬢の目が大きく見開かれる。

 

「なっ!!ちょ、ちょっと…あなたこれ本物?」

 

驚きで受付嬢の口調が畏まったものからプライベートなものに変わる。

 

「口調…変わったな」

 

「え?あ…ごほん、失礼致しました。上の者に確認を取ってまいりますので少々お待ちください」

 

そう言って受付嬢は奥の部屋に入って行き、しばらくするとまたカウンターに戻ってきた。

 

「こちらの文書…本物のようですね…。シーナ様の紹介ということで手続きは省かせていただきます」

 

「それはありがたい」

 

「こちらの紙にお名前をお書き下さい」

 

そこで刀夜は前にエリスから聞いていたメイン武器の記入は必要ないのか疑問に思い、受付嬢に尋ねる。

 

「本登録時にメイン武器を書く必要があると聞いていたんだが」

 

「普通はそうですね。本登録する際は新人期間ということで1ヶ月間お時間を頂いき、ハンターの基礎知識や記入していただいたメイン武器の扱い方についての抗議を行います。それを終えて初めてクエスト受注が可能になるのですが、今回はシーナ様の紹介状の内容から必要ありません」

 

それを聞き刀夜は文書の内容が気になったがシーナに心から感謝する。

 

(本来1ヶ月の間クエストを受けられないとは…。今度シーナに会ったら礼を言っておかないとな)

 

刀夜は名前と出身地を書いた紙を渡す。

 

「キリサメ トーヤ…。東洋地方出身の方なのですね」

 

「まあそんなところだ…」

 

初対面の人に必ず問われる質問にお決まりの返事をする。

受付嬢はその後白いプレートを刀夜に渡す。

 

「こちらハンターランクプレートになります。一定のラインのクエストを完了することでランクが上がっていき、それに応じて白→黄→赤→緑→青→紫→黒と色が変化していきます。クエスト受注の際などにお見せください。受けられるクエストはソロの場合自分のランク以下のクエスト、パーティーの場合は一つ上のランクのクエストまで受けられます。再発行の際はお金を頂きますのでご注意を」

 

「他人のプレートで自分より上のランクのクエストを受けられるのか?」

 

「いえ、プレートは登録した人以外が持つと白になる仕組みになっております。なのでそういったことは出来ません」

 

(なるほどな…。ゲームでも自分のランク以下のクエストしか受けられなかった。さっさとランクを上げてくか)

 

「他に質問はございませんか?無ければこれで本登録の手続きは終了となります」

 

刀夜はランクによってどんなクエストが受けられるのか気になったがそれは受注の際に確認することにした。

 

「いや、特にない」

 

「では手続きを終了させていただきます。それでは…」

 

そう言って受付嬢は言葉を切る。刀夜は嫌な予感がした。

 

「こちら奥の方へお進み下さい、ギルドマスターがお待ちです。拒否はなさらないようお願いします」

 

「拒否すれば?」

 

「申し訳ございませんが…登録破棄とさせていただきます」

 

この時点で刀夜に拒否権はなかった。「面倒なことになったな…」そんなことを呟きつつ、刀夜は受付嬢にひきつられ奥の部屋へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

部屋に入るとそこには机を前に椅子に座った50代くらいの強面の男がいた。何かの古傷であろうか、左目は1本の切り傷により閉ざされている。刀夜が部屋に入ると男は口を開く。

 

「アリアノーラ、ご苦労だったな」

 

「グライスさん、お疲れ様です」

 

(あの受付嬢、アリアノーラというのか。それにしてもこのグライスという男、半端じゃない威圧感だな…)

 

そう思考を巡らす刀夜にグライスという男が話しかける。

 

「突然呼び出して悪かったな、俺はグライス=リンデバルド。このヴェノム地方西部のギルドマスターをしている」

 

「……俺は霧雨刀夜、先ほど本登録をしたばかり(・・・・・・・・・)の新人ハンターだ」

 

皮肉っぽく刀夜がグライスに言うと、グライスは部屋に入った時の刀夜への威圧を解き、面白そうに笑う。

 

「……ガハハ!俺の威圧をものともしないに加え、この俺に皮肉まで言うとはな。合格だ、シーナ嬢ちゃんが紹介するだけのことはある」

 

「……俺を呼んだ理由はそのためか?」

 

試されていたと思うと気分が悪くなった刀夜は不機嫌そうに話す。

 

「すまんな、気を悪くしないでくれ。まあそれも一つなんだが俺が実際にこの目でその人物を見たかったっていうのが大きいな。第2と言っても嬢ちゃんはこのリエル王都の王女だ。そんなあの子が認めたやつなんだ、この目で会ってみたいと思うのも仕方が無いだろう?」

 

そう言って不敵に笑みを浮かべるグライスに対し、アリアノーラが口を開く。

 

「グライスさん、一国の王女に対して嬢ちゃんというのはまずい気がしますが…」

 

「なーに、そんな硬いこと気にするな。嬢ちゃんは嬢ちゃんだ」

 

「で、俺はもう帰っていいのか?」

 

刀夜はこの場に用がないなら早く立ち去りたいと思っていた。だが、グライスに止められる。

 

「まあちょっと待て、真剣な話もあるんだ」

 

刀夜は頭に疑問を浮かべながらグライスの話を聞く。

 

「今回、特別にハンターランク2の黄色プレートからのスタートにしてもいい」

 

「…宜しいので?」

 

「あぁ、こいつなら大丈夫だと俺は踏んだ。それに実力ある者が下のランクで埋もれているのはギルド的にも世間的にもマイナスだしな」

 

刀夜は目を閉じ、一瞬考える素振りを見せるがすぐに目を開けて口を開く。

 

「断らせてもらう」

 

その刀夜の返答を聞き、グライスはまたも面白そうな顔をする。

 

「ほう…。理由を聞かせてもらえるか?」

 

「まず俺は金や地位が欲しいわけではない。確かに大型モンスターの狩猟はしたいが1からのスタートで学ぶべきことがある」

 

あくまで刀夜の目的はクエストとモンスター狩猟である。刀夜の中でランクはその幅を広げるためのものに過ぎない。加えて刀夜はまだこの世界に来て知らないことがたくさんあった。そのためハンターランクが低いうちにそういったものを知っていこうと思っていた。

グライスは静かに刀夜の言葉を聞いている。そんなグライスを尻目に「それと、」と刀夜は続ける。

 

「それと、実力ある者が埋もれるのはもったいない?ふざけるのも大概にしてもらいたい。本当に実力があるならスタートがランク1からでも這い上がってくる。俺はランク1からのスタートを楽しみにしているんだ。勝手に上のランクからのスタートが俺の望みだと思ってくれるな」

 

そうして刀夜が言い終えるとグライスはガハハ!と笑う。

 

「なるほどな、確かにお前の言う通りだ。やはりお前は面白いな。お前、名がトーヤだったな。その名前覚えておく」

 

そうしてグライスは言葉を続ける。

 

「そう言えばトーヤ、お前モガの村から来たんだってな」

 

そう言うとアリアノーラが驚く。

 

「えっ!てことはエリスとアイシャとは知り合い?!」

 

「アリアノーラ、お前のその驚くと口調が戻る癖は治らんのか」

 

「あ…。申し訳ございません…」

 

またもアリアノーラの口調が変わるが刀夜は気にせず答える。

 

「アイシャの方は今日が初対面だ。エリスは顔見知りってくらいだな」

 

「なるほど…。丁度アイシャとエリスが入れ替わった時期にエリスに会ったというわけですね」

 

アリアノーラは納得したような表情を浮かべる。

 

「まあ、そんな感じで俺からの話は以上だ、長くなってすまない。これから頑張ってな」

 

グライスのその言葉で刀夜は部屋から出るかと思われたが、刀夜はその場に佇んだままである。

 

「ん?どうした?もう帰ってもらって大丈夫だぞ」

 

グライスがそう言うと刀夜はようやく口を開く。

 

「最初の威圧した件はまだ許せたが、一つだけ言っておく」

 

刀夜はそう言うと強烈な殺気をグライスに放つ。

 

「っ!!」

 

「2度と俺の器を測ろうとするな…」

 

そう言って刀夜は部屋から出た。

 

 

 

 

 

 

 

刀夜が出ていき、部屋にはグライスとアリアノーラが残っていた。自分に向けられていなかったとはいえ、側で殺気を感じたアリアノーラが額に汗を浮かべているグライスに向け口を開く。

 

「グライスさん…」

 

刀夜の言う通り、グライスはランク2からのスタートという提案で刀夜を試していた。彼が金や地位、名声に固執するのかということを。そして、刀夜がそれを断ったことでグライスの中での刀夜という人間の評価が高くなった。だが、グライスのその提案が彼を試していると気づかれたのは予想外であった。

 

「今の殺気、凄まじいものだった…。ランク2からの提案、彼を試していたのがバレてたみたいだな…。こいつはとんでもない掘り出し物を拾ったかもな」

 

グライスはギルドマスターである。そこに至るまで幾度とない死線をくぐり抜けてきた。そんな彼でも刀夜の殺気に一瞬気圧されたのだ。

 

「掘り出し物だが、それ以上に彼の実力が見えない。世の中"分からない"ことほど怖いものはない…」

 

そう言って考え込むグライスにアリアノーラが話しかける。

 

「あの、私が彼を担当するのでしょうか…」

 

アリアノーラの声はどこか不安げだ。そんな彼女の気持ちを汲み取ったのかグライスは口を開く。

 

「いや、彼の担当はアイシャにやってもらう。彼はモガの村から来たんだ、アイシャなら上手くやってくれるだろう」

 

それを聞きアリアノーラは安心すると共に苦笑いする。

 

「まあ、アイシャがそこまで考えて動いているとは思えませんけどね」

 

「それが彼女の長所でもある。常に真剣な彼女が彼の担当にうってつけだろう」

 

そう言ってグライスはアリアノーラに仕事に戻るよう促す。アリアノーラはアイシャ、いやこの場合刀夜であろうか、今後の苦労を思い心の中で手を合わせながら部屋を出ていった。

 

「彼ならもしかしたら出来るかもしれないな。それをシーナの嬢ちゃんも感じたんだろう。だが、どう扱ったものか…」

 

1人部屋にいるグライスはまた考え込む。

 

「今はまだ早い…。時期を見てエルザ達に彼の実力を測ってもらうとしよう。あいつらなら大丈夫だろう」

 

そう自分に言いきかせるようにグライスが小さく呟くと、その声は不思議と部屋の中に響くのであった。




如何でしたでしょうか?
今回は文字数多めですね。楽しんでいただけるとありがたいです。

それではまた次話で会いましょう。

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