この小説を読んでいただき本当にありがとうございます。
今話からどんどんオリジナル設定が組み込まれていきます。MHの世界そのままがいいという方には申し訳ありません。
では、第15話張り切っていきましょう。
夜明け前、出発の準備ができた刀夜は荷物を持って穏やかな海を見ていた。波の音が静かに聞こえ、微かな潮風に当てられる。
そんな刀夜に誰かが近づいてくる。ロイスだ。
「セガレから聞いておったが、今から出発するのだな」
「あぁ…。そうか、ロイス村長に挨拶をしていなかったな。世話になったのにこんな形の挨拶になってすまない…」
刀夜は2週間も過ごした村の長に挨拶もせず旅立つのは申し訳ないと思ったため、素直に謝る。ロイスはそのことに特に気にした様子もなく、穏やかな口調で刀夜に語りかける。
「そのような事気にせんでよい。それよりも少し話す時間はあるかの?」
まだ出発まで少し時間があった。刀夜は挨拶もなかったことを申し訳なく思い、ロイスと少し話すことにした。
「あぁ、少しだけなら大丈夫だ」
「それはよかった。実はお前さんに聞きたいことがあってな…。クルペッコを討伐したのはトーヤ、お前さんであろう…?」
「昨日話した通りだ。リオレイアの攻撃とライトの攻撃でクルペッコは力尽きた」
どこか確信めいた様子で尋ねるロイスに対し、刀夜は頑として否定する。
「そうか…。ライトは先日ドスジャギィを討伐したばかりじゃ。彼にあれほどの短時間でクルペッコを討伐できたとは思えんくての…。リオレイアの攻撃があったとしてもじゃ」
刀夜は無言でロイスの話を聞く。そんな刀夜に対し、ロイスは真剣な表情で続ける。
「それに…お前さんのその武器、かなりの業物だろう?その武器ならあの短時間で倒せたことも納得できるのじゃ」
その言葉を聞いた瞬間刀夜が反応する。そして殺気を言葉に乗せてロイスへと問う。
「ロイス…何故これが業物だと分かる?」
刀夜の言葉にロイスはビクっとなるが、予想していた反応だと心を落ち着かせる。そして、表情を和らげ口を開く。
「すまん…。少々カマをかけさせてもらった、許してくれ…。お前さんのその反応で充分じゃ。もうこれ以上は問わん、無論この事を誰かに話すつもりなど毛頭ない。たとえセガレであろうともな…」
ロイスの言葉に刀夜は殺気を緩める。
「ロイス村長、2度とこのような事はしないでくれ」
「あぁ、誓おう…。だが、何故誰にも頼ろうとしないのじゃ…」
「誰も信じていないからだ」
刀夜の回答にロイスは呆然とする。それを尻目に刀夜は続ける。
「俺は誰も信じていない、それだけだ。それとロイス、これ以上の詮索は辞めろ。お前を斬りたくはない…。さて、時間だ。俺は行くとする。世話になった」
そうして船着き場に停泊する船に向けて刀夜は歩き出す。前回と同様の結果に終わったロイスはその場に立ち尽くすばかりであった。
(少しでもトーヤの気持ちを軽くさせてやりたいと思ったが、本人がそれを望んでいないとは…。彼の目は2週間前と変わらず漆黒の闇のように暗く、そして深い…。ワシにできることは彼の人生が報われることを願うしかないのか…)
モガの村にまだ夜明けは来ない。
刀夜はモガの村を出発した。
船に乗る際、ケイルが1人見送りに来ており「世話になった」と一言声をかけると「いつでもお前さんを待ってる」と送り出された。
船に乗ってしばらくすると太陽の光が地平線から漏れだし、夜明けを迎える。
(まずはリエル王都でギルド登録、それからは片っ端から大型モンスターを狩猟しつつその報酬で旅の金を集めていくとしよう。それと他のギルドにも回ってみたい。本格的な旅だな…。ククク…楽しみだ…)
そうしてカーディナル孤島から出発して3時間、刀夜はゆったりとした船旅を終えヴェノム地方西部のリエル王都がある大陸に到着した。船の船員に聞いたところ、リエル王都は今の位置から馬車で更に3時間ほどの場所にあるらしい。馬車に乗るお金はケイルからの報酬で支払うことが出来たため、刀夜は早速馬車でリエル王都へと向かうことにした。まだ朝であったこともあり、定員8人の馬車の中には刀夜と杖を持った白髪の老紳士、そして老紳士の横に座る刀夜と同じくらいの年齢の女性の合わせて3人しかいなかった。
(それにしても乗り心地が悪いな…。あまり道が整備されていないのもあって段差や石ころで揺れる)
馬車が出発して一時間ほど経ち、目の前に座っている老紳士に話しかけられる。
「目の前の御仁、失礼ながらその身なりを拝見させていただきましたところハンターとお見受けします。リエル王都へはギルドのご用事で?」
刀夜はすることもなく暇であったので老紳士の問いに返答することにする。
「まあ、そんなところだ…」
刀夜がそう答えると老紳士の隣にいた女性が口を開く。
「ハンター様?!あの…もしよろしければモンスターの狩猟についてお話をお聞かせ願えませんか?」
女性は長い青髪に青の瞳でとても整った顔立ちをしており、如何にもファンタジー感溢れる外見であった。
「お嬢様…。初めて会う御仁に失礼ですよ…」
「でも、ハンター様と会う機会なんて滅多にないですから…。ハンター様、よろしいでしょうか?」
そう言って女性が刀夜に頼み込む。刀夜は暇である今なら別にいいか、とも思ったが自分が仮登録のハンターであることを思い出した。
「期待しているところ悪いが、ハンターの中でも俺は仮登録のハンターでな。大型モンスターの狩猟経験はない」
女性は「そうなのですか…」と残念そうに呟く。
「ということは、リエル王都での目的とはギルドで本登録をするといったところですかな?」
「そうだな。本登録と、大型モンスターの狩猟が目的だ」
「では、その狩猟が終わった時は是非ともお話をお聞かせください!」
「その時にはもうお前とは別々の道を行っているだろ」
そう刀夜が言うと「そ、そうでした…」とまたも残念そうにする女性に対し、老紳士は「お嬢様に向かってお前とは…面白い方ですな」とやんわりと笑みを浮かべる。
そんなどこか和やかな雰囲気であった馬車に突如怒声が響く。
「おらぁ!そこの馬車止まれ!中にいる奴らは大人しく馬車から出てこい、そして金品を寄越せ!」
そうして男数名の高笑いが聞こえてくる。女性と老紳士は盗賊の襲来に冷や汗を浮かべている。
「どうしましょうヴァイス…。王都に着く前に盗賊と出くわすなんて…」
「これはまずいですねお嬢様…」
そんな2人とは対照的に刀夜は珍しいものを見たという表情である。
(まさかMHの世界にも盗賊が存在するとはな…。まあ、ちゃっちゃと片付けるか)
そうして刀夜は馬車のドアを開けると同時に、後ろから「お待ちください!」、「いけません!」という声が聞こえたが無視して外へ出る。
「お?一匹大人しく出てきやがった。じゃあまずはお前から金品を頂くとしようかな、ヘヘヘ…」
1人がそう言うと他の盗賊が下劣に笑う。そして何の構えもしていない刀夜に抵抗の意志がないと思ったのか、1人が刀夜に近づく。しかし、それと同時に彼の見ていた世界がひっくり返っていった。
「ボトっ」
そんな音が嘘のようにはっきりと聞こえた。そこで 盗賊達は仲間の1人が首を切られたことにようやく気づく。
「っ!!あいつ、やりやがった!!」
「遠慮するな、やっちまえ!!!」
その声で盗賊全員が四方から刀夜に襲いかかる。しかし、そんな状況でも刀夜は冷静に今の戦況を分析する。
(盗賊は全部で5人。今一人倒したから正確には4人だな。見たところ腕はそこまで良くないようだ。これなら俺一人で殺れる。だが、それにしても人を殺しても罪悪感が湧いてこないとは…なんとも複雑な気持ちだな…)
そうして刀夜はまず前方の2人に突っ込み抜刀気刃斬りを放つ。大型モンスターの硬い表面でもすっと刃が入っていく黛の斬れ味の威力は対人戦でも惜しみなく発揮されていた。黛の刀身を受けきれずまともに喰らった盗賊2人は即死する。
そして、後方から迫る2人の攻撃を流れるように回避し、1人に横移動切り、もう1人に縦切りを加え戦いは呆気なく終わった。
刀夜が一方的に盗賊を蹂躙する様子を馬車から見ていた2人は刀夜の動きに目を見開いていた。
「ヴァイス…あの方、一体何者なんでしょう…」
「あの立ち回りと太刀筋…少なくとも常人の動きではありません…。元ハンターの私ですが、見とれてしまうような動きでした…。それに、彼の武器…恐らく太刀と思われますが、見たことのないものです…」
驚嘆している2人の元へ刀夜が戻ってきた。何事も無かった顔で戻ってきた刀夜が開口そうそう発した言葉に2人は唖然とする。
「人を斬ったが…これは罪に問われるのか?」
リエル王都への道のりはまだまだ続く。
如何でしたでしょうか?
今回新しいキャラが登場しましたね。割とキャラ設定で悩んで時間かかります…。
では、また次話で会いましょう。