この小説を読んでくださり本当にありがとうございます。
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さて、今回の話はサブタイトル通りのものとなっています。
第13話、張り切っていきましょう。
「トーヤ…お前さん、この村から離れるのか…?いや、少しの間とは聞いていたが、いきなりで驚いてしまった…」
そう言うケイルにエリスも続く。
「ほんとにいきなり過ぎない…?私、あなたのことはよく知らないけど、ライトから色々話は聞いていたの。ライトはあなたのこと、『トーヤさんは不器用なだけで絶対いい人なんだ』そう言ってたのよ?村から出るなんて知ったらライト、悲しむんじゃない…?」
いつの間にそんな仲良くなっていたのか、刀夜は自分がいない時に2人でそんな話をしていたということに驚いた。
「俺がいてもいなくても変わらない。それより俺は自分の目的を見つけた、だからこの村を出たい、それだけだ」
「確かに俺がトーヤにして欲しかった依頼は全てクリアしている。だが、急な話過ぎてな…」
ケイルは状況が状況なだけに、早く答えを出さなければならないのは分かっていたが、刀夜の条件が予測外のものであり決めかねていた。そんな時、村長であるロイスが3人に歩み寄ってくる。
「話は聞いておった…。セガレよ、トーヤを送り出してやれ…。今はライトの命が心配じゃ。それに、旅に出るというだけで、戻ってこないという訳では無いだろう?」
ロイスが刀夜にそう問いかける。
「まぁ、目的がこの場にあればまた来る」
ゲームをやっていた刀夜は、地震が無くてもナバルデウスがこの村に出現する可能性はあると考えていた。もし、ゲームと同じなら刀夜はナバルデウスと戦ってみたいと思っていたので、その時はまたこの村に来るであろう、そう考えていた。
そしてそんな刀夜の返答にロイスは笑顔になる。
「だそうだ、人生は長い…これが別れではないだろう。セガレ、エリス、旅を望むものの行く手は塞ぎがたいものじゃ。旅をして大きくなったトーヤを、首を長くして待つとしようではないかのう?」
そんなロイスの説得にケイルとエリスは黙り込む。そして2人はしばし考え「急すぎるがしょうがないか…」、「村長がそう言うなら…」そう言って2人は渋々納得した。
「ではトーヤ、お前さんに旅立ち前の最後の依頼をするとしよう。依頼内容は無事に2人で村に帰ってくること!」
「私はライトの成長を楽しみにここで働いているの。ライトを無事に連れて帰ってこなかったらただじゃすまさないからね!」
刀夜は2人の激励に大げさだと思いつつ、無言で頷く。そして孤島につながる桟橋を渡っていくのであった。
刀夜が桟橋を渡っているころ、ジャギィシリーズに身を包んだライトはクルペッコに遭遇していた。黄緑色のボディと赤い鳴き袋が特徴的なそれは川にくちばしを入れて魚を食べている。ライトは警戒心が薄れている今を好機と見て自身の武器、ソルジャーダガーに手をかける。
「せいやぁ!」
そう言ってクルペッコに切りかかる。クルペッコは突然の攻撃に対応出来ずライトの初撃を受けるが、すかさず後方に飛び、翼の風圧でライトの動きを封じる。
そして、クルペッコが地面に足をつけるとちょうどライトと向かい合う形になった。まるでこれから決闘が始まるかのように…。
先に動いたのはライトだった。ソルジャーダガーでクルペッコの弱点である赤の鳴き袋を切りつける。クルペッコはその一撃では怯まず体当たりをしてくるがライトがうまく回避してまた次の動作に移る。そうしてドスジャギィ戦で学んだ片手剣の手数で押す攻撃を器用にしつつ、距離を取って相手の攻撃を避けるヒットアンドアウェイで着々とクルペッコの体力を削っていった。対してクルペッコはクチバシでライトをついばんだり体を一回転させて攻撃するが、適度に間合いをとるライトに有効打を与えれない。
そんな攻防が繰り返され、ライトは手応えを感じ始めていた。
(このままいけば、クルペッコを倒せる!)
ライトの攻撃は見事であった。事前にクルペッコの攻撃動作を学んでいたため、その初動でどんな攻撃が来るのか見極め、適度に距離を置く。そして片手剣の素早い攻撃を繰り出し、確実にクルペッコの体力を減らす。そんなライトの作戦が見事にはまり、クルペッコもダメージの蓄積で何度か怯んでいた。ライトのクルペッコ戦は順調であった。いや、順調過ぎた…。
ライトは攻撃を加えていると、刃が入りにくくなってきていることに気づく。
(刃こぼれを起こして切れ味が悪い…。距離を取って砥石を使おう)
ライトの判断はハンターとして間違ったものではなかった。だが、そのタイミングが悪かった。クルペッコが突如赤い鳴き袋を膨らませる。
「まずいっ!!」
ライトはそれに気づき、完全にソルジャーダガーを研ぎきれないままクルペッコへと走る。だが、砥石を使うために距離を取ったことが仇となり、攻撃を加える前にクルペッコが鳴き真似をしてしまう。
「グァオゥゥゥ!」
ライトはその声を聞いたことがなかった。そのためクルペッコの鳴き真似が成功したことに不安を感じつつも攻撃を続行する。そして攻撃が一段落すると研ぎきれなかったソルジャーダガーを研ぐため一旦距離を取る。
しかし、そこでクルペッコの動きが急変する。怒り状態だ。距離を取ったライトに先程とは段違いのスピードでクルペッコが突っ込んでくる。ソルジャーダガーを研いでいたライトはその攻撃に対応出来ずまともにそれを喰らってしまう。
「がはっ…!」
怒り状態になると攻撃力も段違いになるためライトはその衝撃で吹っ飛ばされる。なんとか立ち上がると、立て直そうと回復薬を飲み、怒り状態のクルペッコとどう戦うか思考を巡らせる。
だが、ライトの思考を打ち切るようにそこで上空から何やら翼の音が聞こえてくる…。
「バサッバサッ」
ライトはその音の主を確かめようと空を見上げると、そこには本でしか見たことのない空の女王、リオレイアが大きな翼を広げ、この地に降りたとうとしていた。
「っっ!!まさか!」
そのまさかである。先程のクルペッコの声真似はリオレイアのものであったのだ。ライトは空の女王の存在感に圧倒され、生物としての格の違いを思い知らされる。
(今あんなのと戦って勝てるわけがない…!悔しいけど、引き返さなきゃ!そして村のみんなに伝えないと!)
しかし、時既に遅かった。リオレイアが地に降り立つと同時に、その目がライトの姿を捉える。そして口を大きく開き、強烈な咆哮を発する。ライトは耳を塞ぎ、その場に硬直してしまう。するとそこへ火打石をかき鳴らしたクルペッコが突っ込んできたのだ。
(この攻撃はまずい!回避しなきゃ!……っ!体が…動かない…!)
ライトの硬直はクルペッコが目の前にきてようやく解けた。それと同時に回避行動に移るが、間に合わなかった。クルペッコの火打石による発火攻撃がライトを襲う。
「ぐあっ……」
衝撃により後方に吹っ飛び、地面に身体が叩きつけられる。ライトは起き上がれない。咄嗟にとった回避行動のおかげで直撃は避けたものの、発火攻撃による火傷も重なってライトは相当なダメージを負っていた。先程の体当たりのダメージも残っており、まさに瀕死寸前である。
(か、回復…薬を…飲ま…なきゃ…。………っ!)
そうしてアイテムポーチに手を伸ばすと、視界の先にライトに向けて火球ブレスを放たんとするリオレイアの姿が見えた。
(避け…られない…)
リオレイアによる火球ブレスが放たれ、それがライトに向かってくる。
そして、ライトが死を覚悟したその時であった。
「……っ!」
急にライトの体が何かに引っ張られ、火球ブレスの直撃コースから外れる。そして間一髪のところで火球をかわす。
ライトが自分の体を引っ張った正体を見ようと頭を動かすと、そこには刀夜が立っていた。
「トーヤ…さん…」
そこでライトは気を失った。
「間一髪ってところか」
ライトを引っ張った張本人の刀夜は、流石に先程の攻撃は危なかったと振り返る。
「というか、こんな所で寝られても困るんだが…」
刀夜は気を失っているライトを見て、そう苦言を漏らす。とりあえず、安全な場所にライトを置いておくことにした。
そして、刀夜は戦闘態勢に入る。
「さて、待たせたな。クルペッコにリオレイア…」
目の前には怒り状態のクルペッコと空の女王リオレイア。本来の依頼内容はライトを連れて無事に帰還することであったが、元より刀夜は目の前の2頭から逃げるつもりはなかった。
「そろそろ大型モンスターと戦いたいと思っていたんだ。それが同時に2頭…。ククク…最高だな」
刀夜は仮登録のハンターである。本来であれば大型モンスターを狩猟してはいけない。だが、本登録のハンターであるライトという存在により、ライトが狩猟したことにすれば何も問題ないと思っていた。
「思う存分殺(や)らせてもらう!」
そう言って刀夜は2頭に向かって走り出した。
ライトくん、頑張ったんですがね…。
次回は刀夜が戦います。
ではまた次話で会いましょう。