この小説を読んでくださっている皆様へ、本当にありがとうございます。お陰様で10話まで進むことが出来ました。こんなものでは終わりませんよ〜。
もし、指摘等ございましたら感想よろしくお願いします。
今回の話は主に村長と刀夜が話す回となっております。
それでは第10話、張り切っていきましょう。
モガの村に刀夜が来て2度目の朝が訪れる。刀夜は昨日と同様、太陽が昇ると同時にその光で目を覚ます。そしてまだ覚めきっていない目を開けつつ、部屋の隅に置いていたアイテム袋を眺める。
「アイテムを集めたはいいが、置き場に困るな…。どうしたものか…」
そうして今日の依頼と探索のための準備をしていると、部屋のドアからコンコンという音がする。誰かが訪ねてきたようだ。
「こんな時間に誰だ…。もう少しゆっくりさせて欲しいんだが…」
ノックの音を無視すると面倒なので刀夜は仕方なく扉を開ける。するとそこには大きな箱を持ったケイルが立っていた。
「おはよう刀夜、こんな朝早くに悪いな」
悪いと思うなら来るな、と思ったが相手は世話になっているケイルだ。刀夜は口には出さない。
「まあ…起きてたし大丈夫だ。何か用か?」
「すまん、こいつを中に入れさせてもらう」
そう言ってケイルは持っていた大きな箱を刀夜の部屋に置く。それを見た刀夜は先程までの不機嫌さが完全に無くなる。
「これは…アイテムBOXか?」
「おー!刀夜、よく知ってるな。なら説明は入らなさそうだな。刀夜にもこれから色々動いてもらうからぜひ使ってもらおうと思ってな」
そう言ってケイルはアイテムBOXの蓋をパカっと開ける。中にはアイテムポーチとは比べ物にならないほどの量が入りそうだ。それに、防具や武器を収納するスペースもある。
「ケイル…これは本当にありがたい。昨日色々拾ったアイテムをどうしようかと思っていたところだ」
「そうかそうか!それなら良かった、存分に使ってくれ」
そう言ってケイルは刀夜の部屋から出ようとすると、何かを思い出したのか刀夜に振り向く。
「あ、そうだ。昨日仕事をしてもらうと言ったが、今日はお前さんにここの施設について紹介しておこうと思う。本当は昨日できれば良かったんだが、どうしても昨日中に依頼していた素材が欲しくてな。まあ、そういう事でよろしく頼む」
そう言ってケイルが出ていくと、刀夜はため息をつく。
「施設紹介…。面倒だな、さっさと孤島に行きたかったんだが…。まあ、鍛冶屋、農場を使うためには避けて通れない。大人しく言う事聞いておこう…」
刀夜が外出の準備をしてから外に出ると、村長であるロイスがいたので一応挨拶しておく。
「おはようございます…ロイス村長…」
「あぁ、お前さんか。おはよう。昨日早速依頼をこなしてくれたのだな、こちらとしてもありがたい限りじゃ。して、トーヤよ。今日は何をするつもりじゃ?」
「今日は依頼ではなく…この村の施設紹介をしてもらえるみたいです」
「なるほどなるほど。分からないことがあれば何でも聞くが良い。セガレとはまた違うアドバイスをできるやも知れぬからのう…」
そうして村長と会話をしていると、ライトがこちらに気づき駆け寄ってくる。
「村長さんに、トーヤさん!おはようございます!」
「おはよう…」
「おうライト、おはよう。今日も元気で良いことだ」
刀夜はこのライトという少年ハンターが特に苦手であった。ケイル、ロイスは刀夜との距離感を見極め、刀夜の嫌がるラインを跨ぐことは一切無かった。だが、このライトという少年はそのラインを土足で遠慮することなく踏み越えてくるのだ。そのためこの少年とは極力話さないようにしていたのだが…。
「トーヤさん、今日はよろしくお願いしますね!」
「なにを…?」
刀夜は不快感を表しライトにそう言うが、ライトはそれに気づかない。
「え?ケイルさんから聞いてないんですか?今日トーヤさん、施設を見て回るんですよね?」
「あぁ…だからケイルを探しに行こうとしてた」
「なるほど、重要なところを話してなかったみたいですね…。えーっと今日はケイルさん、昨日僕達が集めた素材でベースキャンプを作りに行くみたいで…。それで僕がこの村の施設紹介をすることになったんです」
刀夜はそれを聞き、頭では理解しつつも納得はできていなかった。
「そういう事なので、トーヤさん!準備ができたらあちらまで来てください!僕そこで待ってますね!」
そう言ってライトが走り去っていくと、刀夜はため息をつく。そんな刀夜にロイスは声をかける。
「今から言うことは老人の戯れ言だと思って聞き流してくれ…。自分の内側に入り込まれたくないというお前さんの気持ちは分からんでもない。そうすればある程度の面倒事は避けられるしのう…。そんなお前さんの気持ちに気づかず接するライトにも配慮が欠けておったと言えよう」
ロイスは刀夜の他者への姿勢に一定の理解を示すが、しかし、とロイスは言葉を続ける。
「あまりに他者に排他的であると、かえって面倒事を引き起こしてしまうのだ。よくあるもので言うと、ハンターがギルドからクエストを紹介されにくくなる、といったところかの…」
それを聞き刀夜はピクっとするが、ロイスは続ける。
「それにライトはまだ人生経験の少ない少年じゃ…。人の嫌な部分に触れたことがないのだよ。それは彼の短所であり、長所でもある。彼は心優しい少年じゃ。心を許すとは言わないまでも普通に接してやってはくれんかのう…」
ロイスの話を聞き、少し間を置いて刀夜は口を開く。
「ロイス村長の言葉…この心に留めておきましょう…」
それを聞きロイスはそうか、と頬を緩める。
しかし、刀夜の言葉はそれで終わりではなかった。
「ですが、それはあくまで面倒事を避けるためです…。確かに、ロイス村長はたくさんの人生経験を経て人の嫌な部分もたくさん見てこられたのだと思います。ですが…」
そう言って刀夜は内に秘めていた黒い感情を一瞬解放する。ロイスがそれを感じたのは一瞬であったが、その凄まじさに気圧される。
「俺は常に負の感情にさらされて生きてきた…。この感情は決して消せない、いや消してはいけないものだ…」
そう言って刀夜は黒い感情をまた胸にしまい込む。
「ですが、確かに新人ハンターの彼にこの感情をぶつけるのは筋違いでしたね…。感情の制御ができないのは俺の未熟さによるものです。ですのでロイス村長のアドバイスには感謝しています、ありがとうございました」
そう言って刀夜はロイスに頭を下げる。
「では、彼も待っているので俺はこれで失礼します」
そう言って刀夜はライトの待つ元へ向かっていった。1人残ったロイスは冷や汗をかいていた。
「トーヤ…。何がお前さんをそのようにしたのだ…。なにか闇を抱えているのは感じておったが…ここまでとは…」
ロイスはその過去について気になったが、共に背負う覚悟がない自分が聞いてはいけないものだと思った。
「誰か…誰か彼を救ってほしい…。彼の過去を共に背負えるものが…」
そう呟くロイスの声は風の音と共に消えていったのだ…。
現在、刀夜はライトの元に来ていた。刀夜はロイスの先程のアドバイスより、出来るだけライトと普通に接しようとする。
「ライト…来たぞ。施設紹介してくれ」
相変わらずの素っ気ない態度だが、これが刀夜の素である。そんな刀夜にライトは気にすることなく、では始めましょうか!と言って施設紹介を始めるのであった。
施設とそれを管理する人物については概ねMH3の世界と変わらなかった。
食事場、武具屋、加工屋、漁港、雑貨屋、農場…その全ての施設を運営する者と顔見知りになった刀夜はそれらの施設を利用できるようになった。刀夜の会話が素っ気なく、いくつかの施設の運営者と揉め事になりそうにもなったのだが、ライトがうまく仲介してなんとかなった所もある。
そうして施設紹介を終えたあと、刀夜はライトに礼を言う。
「ライト…今日に関しては感謝している…。お前のおかげで、これからここの施設を使えることができる」
「いえいえ、自分は施設紹介をしただけですからお礼など要らないです!それに、まだあと一つすべきことが残っています!」
笑顔でそう言うとライトは刀夜にある提案をする。
「刀夜さん、ギルドに入ってみませんか?」
そのライトの発言に、刀夜は胸が高ぶるのを感じたのであった。
如何でしたでしょうか。
ロイス村長の願いはいつか現実となるのか。それは誰にもわかりません。
それではまた次話で会いましょう。