ちなみに今回はステイナイトの聖杯戦争に少し近いです。
参加する魔術師は7人。彼ら、マスターは7つのクラスに分かれたサーヴァントを使役し、たった一つの聖杯を巡って殺し合う。それが……
───聖杯戦争
「んっ……」
重く閉じられたいた瞼の隙間から差し込む微量の光が彼の目を覚まさせた。
「ここは……」
目を覚ましてベッドから起き上がると見知らぬ部屋。その部屋はあまりにも簡易的なものばかりが置かれ、生活感を感じられるまるでホテルの一室かのようであった。
なぜ、自分はここに……。
ズキン、と頭が痛む。思い出そうとするとまるで警告するかのように痛みが増す。
「っ……」
痛みに苦しみながら青年は頭を抑えた。この部屋には特に何かを思い出せそうなものはないの明白だった。
「藤丸……立香……」
自身の名前を呟く。ザザッ、とまるで脳内でノイズがかかる。
「そうだ。学校に行かなくちゃ……」
私立穂群原学園……藤丸 立香が通うこととなっている学園だ。ただ、この学校はただの学校じゃない。
山の中腹にあり、登校時は地獄と言っても過言ではない。
立香はいつものように登校し、校舎の中へと入っていった。人のいない廊下をトクトク、と歩き。
「……?」
この時点で立香は違和感に気付いた。何故か、静かすぎた。この時間ならまだ、生徒達の談笑している声が聞こえてくるはずだ。なのに、それが一切聞こえていなかった。
まるで、自分以外はこの学校にいないように。
「……っ!」
立香が額に汗をかいて一歩、また一歩後ろへと下がっていく。
「───あら、まだ人がいたんですの?」
三歩ほど後ろへと下がった時、彼の背後から妖艶な女性の声が耳に届いた。
思わず、立香は振り返った。
「見たところ、貴方もここの生徒ですわね」
振り返るとそこには女生徒が立っていた。長い黒髪の女性。左目は前髪で隠れ、何より、特徴的だったのはその真紅の右目だった。
「君は……」
こんな不気味な校舎の中、自分と同じくこの校舎にいた少女に声を掛けた。
「まぁ、いいでしょう。魔力も充分蓄えましたし、少しぐらい暴れても問題ないですわ」
会話が噛み合わない。いや、そうじゃなくとも彼女はこちらの事を人を鬱陶しそうな発言。
「まぁ、一人ぐらいならライダーの餌となってもらっても構わないでしょう」
目の前の少女がニヤリ、と笑った直後、彼女の背後から黒い何かが現れた。黒い鎧と黒の鉄仮面の人影。
鉄仮面の下からは赤い光が妖しく輝き、見たもの全てを恐怖させるかのような存在だった。
「…………」
その黒い人影は何も言わず無言で立香と彼女の間へと入る。
迫りくる黒人影に恐怖で腰を抜かす立香。
「きひっ!きひひひひっ!!」
それを見て少女は人とは思えないような笑い声を上げる。
そして黒い騎士が右手をベルトのバックルはと手を伸ばし、一枚のカードを引き抜いた。
それは黒い東洋の龍が描かれたカード。
騎士はそれを左手に装着された東洋の龍を模した頭部の篭手へと装填した。
くぐもった機械音が鳴り響く直後、校舎の壁を何かが突き破った。
「なっ……!」
立香はその姿を見て絶句する。それは先程騎士が取り出したカードに描かれた黒い東洋の龍そのものだった。
この世の生物が発さない唸り声を上げて黒の龍はこちらへと振り向いた。
そんな光景を前に彼女は笑う事をやめない。まるでそうなることを知っているかのように。
黒き龍が餌を見つけたかのように口を開く。
(こ、殺されるっ!!)
立香は思わず腕を前に出して目を瞑った。勢いよく立香へと飛付こうとする黒き龍。彼の命を喰らう瞬間だった。
───バチバチッ!
黒き龍に青い稲妻が迸った。
「「「っ!?」」」
その場にいた立香も少女も黒い騎士も目の前の光景に驚いた。立香の背後から飛ばされた稲妻に直撃した黒き龍は吹き飛ばされて黒い騎士と少女の真横を通り過ぎていった。
「何者、ですの……?」
少女が立香の遥か後ろへといる人物へと問いかけた。
「───"名前などない。まだ、生まれて2日目だもの"」
痩せ細った黒髪の男。右手には銀色の杖を左手には左手には年代物の書物を持っていた。
男が詩でも読むかのように口ずさみ、立香達の方へと歩み寄っていく。
「この気配……サーヴァントですわね」
少女が目を細め、男を睨み付ける。
「ハハッ!ソイツをサーヴァントだって言っちまったら他のサーヴァントが怒るぜェ?」
どこからか立香でも立香を助けた男でも、少女でもない声が廊下に響き渡る。
その声の発生源は廊下の窓からだった。
その声の主は一回り大きめな黒い鳥である。
「ほら、お嬢チャンのサーヴァントも怒ってんじゃネ?」
バサ、バサと翼を広げ黒い騎士へと近づいて面白そうに嗤い近づいていく。
鳥は近づいた直後、黒い騎士が拳を振るった。
「おっと!ホラ!やっぱ、怒ってんジャン」
振るわれた拳を間一髪でヒラリと躱して男の腕へと停まった。
「お前が馴れ馴れしく話しかけるからだろう」
はぁと男はため息を着いた。
「サーヴァントが使い魔……キャスターのようですわね」
「さて、そいつはどうかな。コイツを使い魔だというならお前のサーヴァントが使役していた黒き龍も使い魔だろ?」
少女の言葉に男は皮肉わ含めて言い返す。だが、そんな男の言葉に少女は動じなかった。
(確かにサーヴァントの割には反応がかなり弱いですわね。まるで、サーヴァントのなり損ないのような……)
「今日はここらへんにしましょう。流石にここでサーヴァントとやるのは想定外ですわ」
そう言って少女がクルリ、と背後へと振り返る。
「オイオイ、逃げのか?こんなサーヴァントをほっといて?」
不意に鳥が挑発するかのようにわざとらしく大声をあげた。
「勘違いしないでくださいまし。貴方を倒したところで本当にサーヴァントを倒したことになるという確証はありませんわ」
それはつまり、この男が本当はサーヴァントではないという可能性があるということ。サーヴァントとしては反応が弱い。
「わざわざ、蓄えた魔力をここで消費したくありませんの」
ペロリ、と少女が唇を舐め回した。
「またお会いしましょう。詩人さん」
そう言って少女の体が影へと沈んでいく。そして彼女のサーヴァントも姿を消した。
最後の奴は気付く人は気付くんじゃないかな?
ちなみにそいつのマテリアルはないです。